斉藤文代の発言 (北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会)

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○参考人(斉藤文代君) よろしくお願いいたします。
 この度は、北朝鮮による拉致問題に関する特別委員会に出席させていただき、ありがとうございます。
 私、松木薫の姉の斉藤文代と申します。
 薫は、一九八〇年、スペインのマドリッドでよど号の妻たちに拉致されました。一九八八年九月六日、同じく北海道で拉致された石岡さんの自宅に手紙が届き、小さな紙切れに、石岡亨、松木薫、有本恵子、三人が北朝鮮にて暮らしているとのこと。残念ながら、私の父、松木益雄は、平成二年二月二十日、薫に会うことなく亡くなりました。朝、母スナヨが目を覚ましたとき、父は母の肩に手を伸ばしたまま息がありませんでした。
 母は、父を見送った後、認知や徘回が始まり、その姿は涙なしでは語ることはできません。今までの姿はありません。母を見たとき私が、どうしたの、お母さん、しっかりしてと言ったら、そんなに泣かなくてもいいがねと言って、私を抱き締めてくれたのを今でも覚えています。夏の暑い日でした。母の顔が汗びっしょりでした。そのとき、母と約束しました。母ちゃん、薫が帰ってくる日まで私が頑張るから待っていてねと言ったのを忘れません。
 母から薫はどこにいるのと聞かれたとき、海の向こうで元気にしているからと答えたら、それから母は、毎日バス、電車に乗り継ぎ、海岸に行き、暗くなるまで海を見詰め、テトラに座っていました。夕暮れどき、親切な方からおたくのお母さんではありませんかと電話をいただき、迎えに行く毎日になりました。
 その後、病院に入院させましたが、病院内で薫を探すようになり、足が動かなくなりました。命が大事か足が大事か、命を取りました。母は二十一年間、病院で薫を待ちましたが、平成二十六年一月十一日、父の元へ旅立ちました。九十二歳でした。私も悔いのない二十一年間の介護をいたしましたが、残念です。
 兄弟は、男の子が一人で、残り四人は女性です。父は、薫が生まれたとき、かわいいかわいいと笑顔で言い、子供ながらに皆で喜んだのを覚えています。拉致されなければ今頃は、父と約束したとおり大学の教授をして、スペインに行く前、富士山でバイトをしていた頃に付き合っていた婚約者と幸せに暮らしていたでしょうが、それすらかないません。薫に、助けてあげられず、ごめんねとしか言えません。
 拉致され三十七年、私の家族の生活は薫がいなくなったときから変わりました。優しくておとなしい弟で、勉強が大好きな子で、いつも本を持っている姿が目に浮かびます。北朝鮮では生活が一変し、思いどおりにいかず、苦労、病気をしているのではないかと、毎日父母の墓前に手を合わせて、薫を見守ってください、助けてくださいと独り言を言っています。
 帰国された地村さん夫婦に薫の話を少しでも聞きたくて、福井の浜本さんが経営されている宿に一泊させていただき、お話をしていただきました。平壌の招待所の中を散歩中の薫と石岡亨さんの二人が北朝鮮はいいところだと聞いていたけど何もないところだねと話していたとき、擦れ違った方が田口八重子さんだったそうです。日本に帰国し、資料を見たとき、薫さんと石岡さんではないかと思いましたと言ってくださいました。拉致された家族は皆元気でいるのだと少し安心いたしました。
 今度は、平成十四年九月に北朝鮮から松木薫の遺骨が提供され、別人のものであることが分かりました。また何か出されるのではと思っていましたら、二度目の遺骨を出されましたので、受け取りませんでした。全く他人の骨か動物の骨、このようなものを父母の墓前に持っていくことは考えていませんでしたから。
 薫は生きています。私は信じています。拉致被害者を日本に帰国させるためには、北朝鮮が拉致を認めて真相を明らかにし、拉致被害者の安全、生命を確保しなければなりません。もう北にいる家族も日本にいる家族も時間がありません。
 時々心が折れそうになります。朝目が覚めたら、今日も頑張れるのかなという日が多くなりました。でも、負けません。倒れるまで何でもしたいと思っています。薫に申し訳ないと思いますが、乗りかかった船です。目的地に着くまではこぐしかありません。
 薫を抱き締める日まで、国民の皆様、今ここにおられる参議院の先生方、私たちの家族の再会まで一緒になって闘っていただけることを願って、参考人の言葉といたします。松木薫の姉、斉藤文代。
 よろしくお願いいたします。

発言情報

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発言者: 斉藤文代

speaker_id: 16873

日付: 2017-05-10

院: 参議院

会議名: 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会