西岡力の発言 (北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会)
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○参考人(西岡力君) 今日はこのような席をつくっていただき、ありがとうございました。
私は資料として産経新聞の四月二十六日に書きましたコラムのコピーをお配りさせていただきました。是非それを見ながらお話を聞いていただけると有り難いと思っております。
飯塚家族会代表からもお話がありましたが、私どもは、今年の二月に家族会、救う会で会議をいたしまして、新しい運動方針として、政府に、拉致問題を最優先とし、今年中に全ての被害者を救出することを求めるという運動方針を決めました。
繰り返しになりますが、家族会、救う会が運動を始めて二十年になります。二十年たっても五人しか取り戻すことができない、本当に言葉にできない悔しさを覚えております。しかし、私は日本が主体的に取り組めば道は開けるというふうに思っています。国際情勢は悪くないというふうに思っております。しかし、何もしなければ拉致被害者救出の旗は北朝鮮の核・ミサイル問題の嵐の中で飛ばされてしまうだろう、ただし、主体的に日本が取り組めば道は開けるのではないかというふうに思っております。
私は北朝鮮問題専門家としてこの間の北朝鮮の行動をずっと見てまいりましたが、彼らが何らかの譲歩をするときというのはアメリカから強い軍事的な圧力が掛かったときであります。過去に二回ありました。九三年、四年の第一次核危機のときが一回目であります。
一九八六年に寧辺のある原子炉が運転を開始し、それをアメリカが軍事衛星で発見し、その原子炉を見ると、発電機も付いていない、送電線もない、大きさは発電にしては小さ過ぎる、実験用にしては大き過ぎる、プルトニウムを作るのに大変ふさわしい大きさの原子炉だと。そして、八九年、九〇年、九一年に、数十日間運転が止まって燃料棒が取り出され、再処理が行われればプルトニウムができてしまうということをアメリカが察知したわけであります。
しかし、そのとき日本はどうしていたのか。金丸訪朝がありました。しかし、そこでは核問題も議論しませんでした。拉致問題も議論しませんでした。そして、その後八回、日朝国交正常化交渉がありましたが、核問題はアメリカの圧力で一定程度議論がありましたが、拉致問題は正式の協議では第三回交渉で一回だけ、それも田口八重子さんのことだけが取り上げられただけでありました。
北朝鮮は、アメリカの軍事的圧力で追い詰められたとき、日本に向けてノドンミサイルを発射しました。富山沖に落ちました。九三年の五月のことですが、日本政府はそのことを隠しました。なかったことにした。しかし、アメリカは、このままいったらば再処理が行われプルトニウムができてしまうということで、原子炉等再処理施設を爆撃するという計画を立てていました。日本に対しても、朝鮮総連から年間千八百億円から二千億円という多額の金と物が北に送られているということをつかんで、それを止めろという強い圧力が掛かりました。日本はそれを止めようとしました。そうしたらば、金日成が出てきて寧辺の原子炉を止めました。
日本のマスコミでは、クリントン政権は軍事行動したらば被害が大きいというシミュレーションが出たので軍事行動を中止したという解説が多いですが、それは事実ではありません。シミュレーションをして被害が大きいということが分かっていても、爆撃計画を検討を続けていました。そうしたら、北朝鮮が原子炉を止めるという譲歩をしてきたんです。
私はそのとき大変悔しい思いをしました。日本側もお金を止めるという努力をしていたのに、アメリカは原子炉が止まったら圧力を掛けるのをやめてしまった。拉致問題はどうなったんだと、なぜ議題にならないんだと思っていました。
二度目のチャンスあるいは危機は、ブッシュ政権のときです。同時多発テロが起きて、ブッシュ大統領が悪の枢軸演説を行いました。その背景には、先ほど申し上げたように金日成が出てきて原子炉は止めましたが、しかし、パキスタンから原子炉を使わなくても爆弾を作ることができる濃縮ウラニウムを作る技術を秘密に導入して核開発を続けていたということをアメリカが察知したからです。
アメリカは、同時多発テロに対する軍事行動で、アフガニスタンに攻撃を掛けました。そのとき、パキスタンが米軍の基地を提供しました。パキスタンに入った米軍は、パキスタンの軍部に対して、誰に核技術を出しているんだ、濃縮ウラニウムを作る技術を出しているんだと厳しく追及したところ、北朝鮮に出しているという証拠をつかみました。技術指導をしたカーン博士にアメリカ当局者が何回も会っている。私はカーン博士に会った人から話を聞いています。
そのことを知った金正日は小泉総理に接近して、二〇〇二年九月のあの拉致を認めるという譲歩がありました。アメリカの強い圧力があったとき、拉致を認めて五人を帰すということが起きました。しかし、残念ながら、日本の当時の外務省は、核をやめさせることでもなく、拉致被害者を取り戻すことでもなく、日朝国交正常化を進めることを最優先にしていました。ですから、北朝鮮が五人生存、八人死亡、それ以外いないという紙切れを出してきたときに検証もしないで、家族には慎重に検証作業をしていますと言って、亡くなりましたという断定形で伝えました。私はまさか政府が家族にうそをつくと思っていないから、本当かなと一晩だけ思いました。
今、また北朝鮮に対してアメリカが、トランプ政権が、アメリカまで届く核ミサイルができる直前まで来ているということで、全ての手段をテーブルの上に置く、つまり軍事的手段も検討しているということで圧力が掛かりました。北朝鮮は核実験をやめるという若干の譲歩を見せています。これから何が起きるのか、韓国の新しい政権など変数が多いので簡単に予測はできませんが、しかし、強い圧力が掛かったとき譲歩をしてきたということを考えると、二〇〇二年型の、アメリカの圧力が掛かったとき拉致で彼らが譲歩をしてくることもあり得るというふうに思っています。
日本が今やるべきことは、もちろんアメリカと歩調を合わせて北朝鮮に対して核・ミサイル開発はやめろという強い圧力を掛け続けることが前提でありますが、その前提の上で、アメリカに対して、日本には拉致問題という命の懸かった絶対譲れない問題もあると、拉致問題を核問題と切り離して先に交渉することについて了解を取る。そして、国際制裁の部分は下ろすことはできないが、日本の独自制裁な部分を下ろすことなどを見返り条件にして、全被害者を帰しなさいと。我々は、全被害者を帰すならばできることはあると。拉致問題を理由にして北朝鮮をいじめるつもりはない、本当に全被害者を取り戻したいと我々は思っているんだという、最高指導者との間でのコミュニケーションを取ることであります。それをすれば、アメリカの強い軍事的圧力、中朝関係も今悪いです、そういう中で、安倍政権に対して秘密交渉に応じてくる可能性は十分あり得ると思っています。
三回目のチャンスです。北朝鮮は、過去二回、アメリカの軍事的圧力があったときに譲歩をしてきました。しかし、それは我々が満足できるような譲歩にはなりませんでした。一回目は日本が拉致をそもそも取り上げなかった。二回目も拉致を最優先にしなかった。しかし、今は拉致最優先という方針があり、過去の二回目とは違って、各、国会にも衆議院、参議院、それぞれ特別委員会まであります。先生方が拉致問題をどう解決するかといって知恵を絞っていてくださいます。是非、最優先で取り組む、今の国際情勢をどう利用するのかという真摯な議論を先生方にお願いしたいと思います。
以上です。