宮家邦彦の発言 (予算委員会公聴会)

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○公述人(宮家邦彦君) 座ったままでお許しください。
 本日は、誠に誠に光栄に存じます。外交・安全保障というお話ですが、今日は、安全保障と朝鮮半島問題につきましては他にすばらしい公述人がおられますので、私はどちらかというと国際政治を中心に、できれば戦略的な見地から概観をしたいと思っております。
 明後日で東日本大震災からもう六年たちます。私は、この間に世界は大きく変わってしまったと思っております。中でも私が一番懸念をいたしますのは、もしかしたら冷戦時代につくられた国際システムというものが、様々な挑戦を受けながら変質しつつあるのではないかという懸念でございます。
 例えば、国連、世銀、IMF、もちろんしっかりとした部分もありますが、一部は形骸化が進んでいるかもしれません。そして、AIIB等の新興国からの挑戦がある。欧州方面では、EU、NATO、これもやはり大衆迎合的な民族主義によって挑戦を受けている。中東方面では、一九七八年にキャンプ・デービッド合意というのがありました。そして一回安定したかと見えましたけれども、これもイスラムの過激な思想にチャレンジを受けているように思います。そして、もちろんアジアでありますが、アジアについては、一九七〇年代、七二年に米中、日中の国交正常化があって、そして一つの枠組みができました。しかし、今やその枠組みもチャレンジを受けているのではないかという気がいたします。
 非常に皮肉なことなんですが、このようなチャレンジというのは、最大の原因は何かというと、ソ連が崩壊し、ロシアになって、そして冷戦に勝利したことなんですね。
 これから申し上げますことは私自身の仮説でしかありません。今後精査をしなければいけない点が幾らもあるんですけれども、こういう前提で今日は、地球レベルで主要な力がどのように変わっていったかというのをひとつ御披露させていただきたいと思います。地球レベル、言い換えれば大陸間の戦略環境の変化というものをまず押さえて、その上でアジアにそれがどのような意味を持つか、さらにはそれが日本の外交にどういう意味を持つかと、こういう流れでお話をしたいと思います。
 まず第一ですが、現在の主要国間の戦略関係というのを見てみますと、主要国いろいろあるんですけど、残念ながら、これ野球でいえば二部リーグ制でございまして、メジャーリーグとマイナーリーグがございます。日本は残念ながら、残念ながらでもないですが、立派なマイナーリーグでありまして、メジャーリーグと申しますのは、私が言いますメジャーリーグというのはメジャーパワーというものでしょうけれども、条件が六つあるんです。人口、領土、経済力、軍事力、資源、そして何よりも大国としての嫌らしいほどの意識であります。これがないと大国は張れないのでございますが、残念ながら、これに該当する国は米中ロしかないと思います。日本はいい意味でメジャーパワーではないのです。
 続いて、これらのメジャーパワーの力関係がどう変わってきたかを考えますと、地域的にいうと、北米とユーラシアを念頭に置いてください。北米については、アメリカが基本的に過去七十年間、まあ多少の温度差はあるにせよ、力関係は余り変わっていないと思います。それに対してユーラシア大陸の中を見ると、明らかにパワーシフトが起きていると思います。昔はトルコとかペルシャもあったでしょうけれども、最近七十年でいえば、それは、ソ連からロシアへのシフト、そしてロシアから中国へのシフト、力のシフトですね、を感じるのでございます。これに伴って、国際政治も重点が、ソ連から、冷戦時代から、今ロシアということですけれども、国際主義から民族主義に重点がシフトをしている。そして、ロシアから中国ということ、これ西から東に重点なり懸念なり問題がシフトしているように私は思います。
 この中で、ユーラシア大陸でもう一か所非常に重要な場所があります。それは中東地域なんですが、この中東地域については、これまでのところまだ激変には見舞われていないんです。一応アメリカがプレゼンスを維持しているために今の状態が保たれているんですが、今後アメリカのプレゼンスがどうなるか次第では、そのエネルギーにとって極めて重要な地域というものが不安定化する可能性、これも十分否定できない、パワーシフトが起きる可能性は否定できないと思っています。
 ここで重要なことは、ロシアというのは資源はあるけれども経済力がない国です、メジャーパワーです。そして、中国というのは経済力はあるけれども資源がないメジャーパワーなんです。ということは、一つの可能性ですけれども、ユーラシア大陸の中で、例えば中国と中東が結ぶときに、それは経済力とエネルギーを両方持つ大きなパワーができ上がるということだと思います。そのようなことがどのような世界史的な意味を持つのか、いろいろ考えなければいけないということです。ユーラシア大陸において、旧ソ連、ロシアに代わって新たなメジャーの、強大なメジャーパワーが出現することになったときにどうなるだろうかと。
 トランプ政権について私はとやかく言うつもりはありませんが、このトランプさんが、そして世界の指導者が、今申し上げたような、私の仮説ではありますけれども、パワーシフトというものをどのように意識しているかは分からないんです。分からないんですが、どうも、ロシアに甘く、そしてイスラムと中国に厳しいアメリカの今の姿勢を見ていると、無意識のうちかもしれませんけれども、これまで述べてきたようなメジャーリーグのこの国際政治の国際主義から民族主義へ、ロシアから中国へ、懸念の対象がですよ、が大きなパワーシフトを起こしているということを、どうもアメリカの少なくとも一部の人々、政権の一部の人々はそのようなことを感じているのかなとすら思います。これはあくまでも仮説でございます。
 続きまして、じゃ東アジアではどういう影響があるかということ、東アジアの国際政治関係の変遷は、変質は何か。
 過去七十年間で、まあいろいろありますけれども、朝鮮半島については後ほど小此木先生からお話があるでしょうから、私はやっぱり過去七十年、最大の変化というのは中国だろうと思います。
 一九四九年の内戦が終わり、そして七一年にアルバニア決議ができて、そして代表権が代わる。そして、九〇年代以降は中国は民族主義化していくわけですね。このような民族主義的な中国の台頭、この三つが私は一番大きな変化だと思うんですが、特に最近のナショナリズムの高まりというのは、もしかしたら、劣化しつつある中国共産党の統治の正統性をある意味で補完しようとしている動きなのかもしれません。もちろん、私にとって、その内政よりも関心がありますのは中国の対外政策なんですが、この分野でも中国には変化が見られます。一昔前のような韜光養晦と、難しい字ですが、非常に慎重に低姿勢で来る国際協調を中心とする政策から徐々にこれ離れていって、より自己主張を強めるような動きが見えてきている。拡大する国益を守るためにと彼らは言うんでしょうが、中国の外交政策が、外交面だけでなくて安全保障についても受動的なものからより能動的なものに、そして国際協調的なものからより自己主張、単独行動的な方向にシフトしつつあるのではないかと懸念をしております。
 こうした動きは実は中国だけではありません。御承知のとおり、欧州の大陸ではロシアが同じようなことをやっているわけです。中国が今東アジアの海でやっていることと、ロシアが今陸でやっていること、これは、現状を不正義と考えて、メジャーパワーが一方的に力による現状変更をしようとしている試みなのかもしれません。
 そして、特に気になりますのは、今の中国で、軍部とかPLA、人民解放軍の中に、一部だと思いますけれども、非常に民族主義的な考え方を持つ人が出てきて、そしてそれに対する十分なシビリアンコントロールがないんじゃないかということを私は危惧しております。当然ながら、このような中国の大きな大きな動きというのは周辺国に大きな影響を与えるわけであります。北朝鮮については後ほどお話があると思いますけれども、見方によっては、最近の北朝鮮の動きというのも、こうした強大化する中国に対する一つの答え若しくは抵抗なのかもしれない。同じようなことは東南アジアでも起きています。ミャンマーもそうですし、フィリピンもそうですし、そしてさらにはタイもそうでしょう。そういうことを考えていくと、やはりこれから東アジアの地域というのは、あらゆる意味で安定よりも不安定、激動の時代に入ってくる可能性が高いのではないかと危惧をいたしております。
 さあ、最後、日本の外交のあるべき姿なんですが、日本の国家戦略を、目的があって、外交というのはそれを実現する手段でしかありませんが、しかし、日本は低成長になりました。人口も増えません。これってどうやってこの今申し上げたような激動の世界を生き延びていくのか、私はサバイバルが一番大事なことじゃないかと思っております。
 そして、ここで、例えば最近一番、一言だけ北朝鮮について申し上げたいのは、ミサイルを撃ちましたと、そしてそれが在日米軍に対する攻撃の訓練だということを公式に言っておるわけですね。あれ、米朝関係の、人ごとのような報道がありましたけれども、私はとんでもないと。在日米軍を狙うということは日本を狙うということなんです。これ、安保条約上の六条事態の極東有事ではないんです。これ、五条事態、日本有事なんですよね。ということは、撃たれたら即これ自衛権発動しなきゃいけないし、発動すべきなんです。
 そのときに我々は、今議論しているのは、まさにミサイル防衛で何発落とせるかという議論しかしていないわけですが、本当にこれだけでいいんでしょうか。私は、安倍総理ほか皆さんが新しい段階に入ったと言うのは本当にそういう意味だと私は思っていますので、その意味でも議論はより深くしなければいけないなとつくづく思うわけでございます。
 日本の外交はどうあるべきかということですが、簡単に言えば、日本は島国です。そして、大陸において勢力均衡を図り、大陸で覇権国家が出てこないようにする、そして島国はシーレーンを確保して、そして自由貿易で栄える、これが島国の生きる道でございます。これは英国の対欧州大陸戦略にも通ずるものでございますが、島国としての同盟、これはやはり日米安保条約が一番効果的だということ、これはもう言うまでもありません。これの安保による現状維持を図るというのがまず第一でなければいけないと思います。
 同時に、もう一つ言えますことは、普遍的な価値の共有ということであります。現状維持勢力である、日本も現状維持勢力ですが、NATO、特に英国との関係、これを強化するのも一つの方法かもしれません。
 それから、朝鮮半島については、これは半島に住む方々が最終的に決めることだとは思いますが、日本にとって大事なことは、自由で民主的で独立して安定して繁栄する、そして米国の同盟国である朝鮮半島、こういうものを目指していくのが日本の外交のあるべき姿ではないかと思います。
 もう一つ言えますことは、東南アジアの現状維持、南シナ海、東シナ海、言うまでもありません。そして、湾岸地域までのシーレーンの確保、さらには中央アジアの重要性、多々ございます。
 ここで、あと二分しかありませんので、最後に申し上げたいことがあります。それは二つ。
 一つは、このような激動の時代に日本の外交を考えるときに、特に参議院はこれが可能なんですけれども、と思うんですが、よりイデオロギーにとらわれない現実的で冷徹な計算に基づいた超党派の外交というものを是非考えていただきたいと思うんです。もちろん意見が違うのはよく分かります。しかし、それだけではやはり我々生き延びられないんじゃないかということをつくづく感じるわけでございます。
 最後の最後ですが、日中関係について実は一言も述べておりませんので、お話をいたします。
 最近の日中関係を見ますと、どうも今申し上げたような国際政治環境の変化に伴って日中関係も変化してきましたし、これからも変化していかざるを得ない部分があるんだと思います。そして、中国との新たな、より安定した大人の関係をつくること、これが日本の外交にとって最も大事な課題だと思っております。一九七二年以来積み重ねてきたこの遺産というものを基に、良いものは残しながら、変わってしまった部分は新たな合意によって補強していく、これが日中関係について求められる姿勢ではないかと思います。
 ちょうど時間となりました。私の話はこれで終わります。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 宮家邦彦

speaker_id: 19233

日付: 2017-03-09

院: 参議院

会議名: 予算委員会公聴会