山口昇の発言 (予算委員会公聴会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○公述人(山口昇君) ありがとうございます。
山口でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
日頃から日本の安全ということをいつも考えております。陸上自衛官として三十五年間自衛隊に勤務をしておりました。そういうバックグラウンドもございまして、常に日本の防衛ということに頭を集中をさせておりますが、そういう者の立場から、今、政府が進めておられる積極的平和主義、これは私は、憲法前文の「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という精神をまさに体現しようとするものであって、この積極的平和主義を体現するための施策が今いろいろと講じられている、それを私は非常に日本にとって有り難いことだと思っております。その理由を今日は三つ述べまして、最後に、これから私として考えなきゃいけないなと思うことを幾つか挙げさせていただきたいと思います。
お手元にパワーポイントの図がございます。こちらを御覧いただきながら話を聞いていただければ幸いであります。
一つは、日本がしっかりしなきゃならないという理由の一つは、中国が台頭します。台頭する中国が穏健になるのかあるいは強硬になるのかということは非常に大きな要素でありますし、それから、米国がアジアにコミットし続けるかどうかという点、このアメリカと中国がどうなるかということは日本の安全保障にとって極めて重要な要因だと思います。
この一ページ目の図の下は、四つの象限ございますが、右上の象限、これは、アメリカが引き続きというか非常に強固にアジアに残って、かつ中国が穏当になるという、まあ言ってみれば夢のようなことかも分かりません。それで、逆にこの左下の象限というのは、アメリカがもういなくなってしまって、しかも中国が非常に強硬になるという、少し考えたくないような象限でございます。
この中で私は右上がいいと思うわけですが、この右上になるのかどうかということを日本として所与の条件として考えるべきではないと思っております。日本としてより望ましい方向を求めるために努力をする余地は大いにありますし、またそのような努力をすべきであると思うわけであります。
その一つは、若干飛躍をいたしますが、我が国自身がしっかりとした防衛の態勢を整えるということでございます。先ほど安保条約五条のお話が出ましたけれども、安保条約の五条というのはアメリカが日本を守るということではありません。アメリカか日本が日本の領域内で攻撃をされたらアメリカと日本が一緒に立ち上がるという趣旨でございますので、日本が立ち上がるということが重要であります。それをしっかり見せるということは、米国に対して関与を明瞭にするものでもありますし、これは中国に対しても、凜としたたたずまいというものを見せることによって、また日米同盟が確固であることを理解していただくことによって、中国が国際秩序を守る側に立つように促すことができるのではないかということでございます。
私が、この積極的平和主義といいますか、今の政策が重要だと思う理由の二つは、我が国を取り巻く安全保障環境が非常に厳しいということでございます。
二枚目の図を御覧いただきたいと思います。
やや旧聞ではございますけれども、二〇〇六年、アメリカの国防省が、二十一世紀、今世紀の脅威として四つの類型を挙げております。これも四つの象限でありますけれども、この図の半分から下は主体が伝統的な主体、国家といった主体、上の半分はテロ組織ですとか犯罪組織あるいはならず者国家あるいは破綻国家というような、今まで余り考えたことのない主体でございます。
左下の象限、伝統型。これは私のように自衛官として冷戦の間を生き抜いた人間としましては非常になじみの深いものでありまして、国家と国家、軍事力と軍事力、それも通常戦力による紛争という脅威でございます。その上、これはテロ組織ですとかあるいは破綻国家あるいはならず者国家というようなものが非正規的な手段、拉致なんかはそうなるわけでありますが、破壊行為、そういったことをやるもの。そういった主体が大量破壊兵器あるいは核・化学・生物兵器、こういったものを使用しますと破滅的な効果をもたらしますので破滅的と規定をしております。右側の下は、今台頭しつつある国、中国とかインドとか、あるいは復古しているようなロシア、こういった国がどっちの方向に行くのかということによって世界の秩序が大きく変わるという混乱型の脅威でございます。
この四つのカテゴリーといいますものを特に北東アジアに当てはめてみますと、例えば伝統型の脅威というのはロシアとの間に若干残っているだけで、ヨーロッパの東と西という対峙はもうないわけでございます。
ところが、我が国周辺を見てみますと、北方領土、これはまさに冷戦の残滓というものが残っているわけでありますし、朝鮮半島に至りましては、北朝鮮総兵力百二十万、韓国が約六十万、合計しますと百八十万以上の軍隊がこの小さな半島で、軍隊と軍隊、国家と国家という形で対峙をしているわけであります。まさに伝統的な脅威がまだ残っている地域であると。さらに、北朝鮮の拉致、不法行動というのは、これは非正規型の行為でありますし、イスラム過激派などによりますグローバルなテロリズムというのが日本に波及するようなことになれば、やはりこの地域にもそういった危険があるわけでございます。
それから、中国、ロシア。中国の台頭。中国が私が望むように既存の国際秩序を守るサイドに立ってくれるのであれば、これは非常に歓迎すべきことであります。一方で、そうでない、例えば海洋ですとかサイバー空間あるいは宇宙といったところでその戦略バランスを大きく塗り替えようというようなことをするとすれば大いに懸念すべき混乱型の脅威となるわけでございます。
次のページを御覧いただきたいと思います。
我が国の防衛ということで、ここ約十年間、防衛省、我が国政府は南西地域の防衛というものを非常に重視しておりますが、これは私は非常に的確なことだと思います。
これは米軍の資料でございますけれども、米軍は、対抗する国家が接近阻止あるいは領域拒否、アンタイ・アクセス、エリア・デナイアル、何といいますか、アクセスを妨害するような行動、能力を発揮して、東アジアにおける作戦行動を妨害されるということを非常に懸念しております。
この点を踏まえますと、我が国の南西諸島というのは実はここで言う第一列島線の一番肝に当たる部分になります。この第一列島線に当たる南西諸島、これを我が国がきっちりと防衛をしていくということは、実はこれは我が国自身が対抗する国家の接近を拒否する能力を持つことになります。日本のA2AD能力だということになります。これによりまして、我が国として、我が国周辺において米軍が行動する際の援護の傘といいますか、守る傘を提供することになり、対抗する国家のアクセス性妨害能力を制約する、さらに我が国周辺における米軍の行動の自由を確保することができれば、日米同盟によって我が国を防衛するという態勢がより強固なものになります。
したがって、我が国自身が自らの領域を防衛する能力を保持することによって、米国に対して同盟上の義務をはっきりと果たすんだと意思を明瞭にする、さらに米軍の行動を容易にするということを通じて日米同盟を堅固にするものとする相乗効果をもたらすと考えてございます。
最後に、幾つかこれからの課題だと思っていることを申し上げます。
積極的平和主義というのは、私はもう正しい方向、まさに日本がすべき、進むべき方向だと思っております。それと同時に、統合、これは陸海空の自衛隊が有機的に活動して、しかも、どこかに止まってじっとしているんじゃない、機動、機動防衛力、これを目指すということはまさに重要なことであると思います。他方、防衛力整備のために充当できる資源というのは限界があります。このことを踏まえますと、この先、やはり我が国として優先順位を考えて選択をするという決断をしなければならないと思っております。この点、もう今週のことでもございます、弾道ミサイルという脅威は非常に切迫したものでございますので、そういった脅威から国民を保護するということは、施策の優先順位は極めて高いといいますか、これはマストであろうと思います。
また、南西地域の防衛態勢の強化という点に着目をいたしますと、南西諸島の周辺海空域、ここは実は本州全部に匹敵するぐらいの地理的な広がりを持っております。この地域を守るということを考えますと、陸上の防衛、離島の防衛、それから海域の防衛、それから空域の防衛と、これが有機的に、お互いにそれを、何といいますか、支援をしながら守っていく態勢を取る必要がございます。また、二百を超す離島を擁する南西諸島の全ての島に兵力、自衛隊の部隊を配置するということは極めて困難でございます。
こういうような点から、統合運用の下に陸海空が協力をして、ふだんはいないけれども、いざというときには部隊をちゃんと運べるというための、例えば航空自衛隊の輸送機でありますとか、あるいは陸上自衛隊の大型ヘリコプター、ティルトローター機、あるいは海上自衛隊の輸送艦という機動力を増すような装備というものは非常に重要でありますし、そういった島に緊急に展開をするためのいわゆる水陸両用作戦能力、これを整備することは、これはかなり重要なことだと思います。
実は、今申し上げましたような能力、装備というのは、大規模な災害ですとか、あるいは国際的な平和協力活動においても有用であります。言わば汎用性の高い装備でありまして、どちらかだけにしか使えないというものではございませんので、当面そういったものを、まあ何といいますか、重点とするという考え方はあり得るのではないかと思います。
少し先のことを考えますと、宇宙空間あるいはサイバー空間、それから海洋の秩序、いわゆる海洋安全保障、これはもう広い意味でございますが、そういった分野についても長期的な視点で考えていく必要がありますし、そのためには研究開発の投資が必要でございます。そういったところにどれだけの資源を充当するのかということを考えていく必要があろうかと考えております。
さらに、長期的な課題として、現在の安全保障法制、新しい安全保障法制で相当部分、防衛の態勢を固めることはできるようになっております。
ところが、私、個人的に申しますと、一つ大きな課題が残っております。長期的な課題として、国連を中心とした集団安全保障体制、この中で日本がどういうような役割を果たしていくのだと。もっと具体的に申しますと、国連軍が編成をされるような事態、国際社会が一緒になって立ち向かわなければいけないような脅威、こういったものに対して対処するために日本はどういう役割を負うのか、あるいは対処するためのリーダーシップをどう発揮していくのかということが私は重要な課題であり、これについてはもう国民的な広さでの深い議論というのをずっと続けていかなければならないと思います。
以上でございます。