神津里季生の発言 (経済産業委員会)
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○神津参考人 改めまして、おはようございます。
働く者の立場から、こういった形で意見を述べさせていただく機会をいただきまして、心より感謝を申し上げたいと思います。
まず、総論的に、生産性向上ということに対しての連合としての課題認識について、若干述べさせていただきたいと思います。
まず、生産性三原則の重要性を、いま一度、社会的合意としていくことが大事だという点であります。
御承知のとおり、私ども連合は、今、春闘のさなかにあります。私どもは、底上げ春闘、底上げこそ大事だということを標榜しておりまして、まさに今その真っただ中におきまして、全ての働く者の賃金の底上げ、底支え、格差是正の実現、そして全ての労働者の立場に立った働き方の見直しの実現、これを目指して取組を重ねています。
そのもとで、昭和三十年以来、日本生産性本部が唱道をし、長年にわたって労使で確認をされてきています生産性の三原則、すなわち、雇用の維持拡大、そして労使の協力と協議、成果の公正分配、この三原則に基づいた生産性向上、このことの重要性をいま一度社会的合意としていかなければならない、こういったことを、この春闘、春季生活闘争の考え方の中に改めて入れ込んでいるところであります。
経済、社会の健全な維持発展のためには、異なる立場にある労使が、生産性向上とそこから得られる成果の公正配分、これを実現するために徹底した協議を重ねる、この緊張感と相互信頼に基づく関係こそが生産性三原則の根本理念だと思っております。
政府が我が国産業の生産性向上に正面から取り組む、このときには、まずこの原則の重要性の認識が社会的合意となることを目指しつつ施策を講じていただくということが重要だというふうに考えております。
次に、企業間における公正かつ適正な取引関係を確立する観点であります。
中小企業の生産性向上を妨げている根本の課題として、取引における構造的な問題があると思います。中小企業の多くは、原材料費の高騰やエネルギーコスト増に加えまして、人材不足による人件費の高騰などを価格転嫁できていない、そういう実態に少なからずあると認識せざるを得ません。
この間の関係省庁あるいは産業横断的な取引の適正化に向けたさまざまな取組、これにつきましては一定程度評価をするものでありますけれども、まだまだ多くの中小零細企業にまでは及んでいないというのが現実ではないかと思います。
中小企業の生産性向上には、取引の適正化が不可欠であると思います。サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配を実現するため、企業間における公正かつ適正な取引関係の確立に向けて、下請法を始めとする関係法令の周知とその遵守を徹底する必要があります。幾らいい製品やサービスが生まれても、その価格が上がらなければ生産性向上にはつながらないわけでありまして、そういった中では全ての施策はお題目に終わってしまう危険性が高いということを申し上げておきたいと思います。
次に、変化に適切に対応するためにも、労使が参画する枠組みの構築を求めたいというふうに思います。
我が国におきましては、IoT、ビッグデータ、AI等の技術革新が急速に進むと同時に、既に始まっている人口減少、超少子高齢化が急速に進んでまいります。このような中で、産業構造や就業構造には大規模な変化が必須だと思っております。
これらに的確に対応するためには、政府と研究機関、産業界、労働界などが連携して、総がかりとなって、イノベーションによる新たな価値の創出及び組織の枠を超えたオープンイノベーションの促進に向けて、研究開発や設備投資に取り組むことが求められるところであります。
また、これらの構造変化に対応したセーフティーネットの構築や、働く者の学び直し、企業の職業能力開発に対する支援、これらを強化する必要があります。その際には、持続的、安定的かつ包摂的な成長を実現する観点から、特に中小企業を含めた支援体制の構築が重要であります。
連合に参画をいたします多くの労働組合は、日本生産性本部及び全国労組生産性会議の枠組みにおきまして、労使の共同参画により、これらの問題への深掘りを行ってきております。関係する施策を円滑に進めていく上では、これらの点も踏まえまして、労使が参画する枠組みを構築する必要があると考えます。
次に、今回の具体的な法案への受けとめについて、幾つか申し述べさせていただきたいと思います。
今回の法案につきましては、中小企業における設備投資やIT化を支援する施策が多く盛り込まれていると思います。中小企業の負担軽減、底上げ、底支えに資するという方向性についてはおおむね評価できるというふうに考えております。
その上で、個別の課題につきまして、生産性三原則、先ほど改めて申し述べましたけれども、その中でも、とりわけ雇用の維持拡大、労使の協力と協議、それらの重要性などの観点も交えて、以下、幾つか意見を申し述べたいと思います。
まず、生産性向上特別措置法案における主な措置事項についてであります。
幾つか申し述べたいと思いますが、まず、プロジェクト型規制のサンドボックス制度についてです。
この制度につきましては、新技術の実証実験を行おうとする取組を促進させるものでありますから、その意義については理解をするところであります。
また、参加者や期間を限定することでリスクの適切な管理を図ること等によりまして、既存の新事業特例制度やグレーゾーン解消制度に比べて環境整備が進んでいることや、新たに評価委員会、革新的事業活動評価委員会や一元的窓口を設置することによりまして意見聴取や検討プロセスが充実する点については評価ができるというふうに考えます。
しかし、この制度のもとで、新たな規制の特例措置を雇用、労働に関する諸規制に適用するというようなことによって労働基準を後退させるようなことがあってはならないのは当然であります。また、同様に、国民の安全や健康の確保、環境保全など、社会の質にかかわる規制は除外をすべきだと思います。つきましては、その点を明確にされるよう強く求めておきたいと思います。
加えまして、実証計画の認定の透明性や納得性を高めるための措置を講じることも重要であると考えます。
次に、データの共有、連携のためのIoT投資の減税等についてであります。
ビッグデータの活用促進を目的とする制度創設に当たりましては、データのセキュリティー対策、共有されるデータと個人情報との遮断などが厳格に行われるべきであり、そのための万全の対策を講じるとともに、監視、チェックを行う体制整備が求められます。
また、この仕組みは、一定レベルのセキュリティー対策が確認できた事業者について、国や独法等に対しデータ提供を要請できる手続を創設するという制度でありますから、その対象は大手企業が中心となり、中小企業との格差が拡大するということも懸念をされるのではないかと思います。中小企業にも広く適用されるよう支援が必要だということを申し述べておきたいと思います。
加えまして、そもそも、IT人材、セキュリティー人材は必ずしも十分ではない、いかに確保、育成するかという課題もあります。これらの対策を講じることも極めて大事だということも申し述べておきたいと思います。
次に、中小企業の生産性向上のための設備投資の促進についてであります。
中小企業における設備投資の必要性がある一方で、その設備を使いこなす人材確保と教育が伴っていないという課題があります。そのため、産業界と教育機関等が連携し、中核的人材の確保、育成、技能、技術の伝承の充実に向けた支援を行う必要があると考えます。
また、この制度の対象となる設備投資の要件として、導入により労働生産性が年平均三%以上向上とあるわけでありますが、その算出方法をわかりやすく示す必要があると思います。
あわせまして、生産性向上を図るためには、投入時間とアウトプットだけの問題ではなくて、多能工化や付加価値を生むことができる人材教育、育成が必要であります。そのための支援を同時に進めるべきと考えます。
さらに、中小企業の経営者にとって使い勝手のよい制度として有効に活用されるよう、窓口の一元化や手続の簡素化をあわせて進める必要があると思います。
次に、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案における主な措置事項について幾つか申し述べたいと思います。
まず、会社法の特例措置等についてであります。
MアンドAによります企業買収におきましては、現実に労使関係が悪化をし、雇用問題や組合潰しが生じているケースも間々生じている、散見をされているところであります。また、そこまで行かずとも、事業の再編、再生は、雇用の維持、確保に大きな影響を与える可能性があることは言うまでもありません。従業員の主体的な関与と理解、協力なくしては事業の発展はあり得ないのでありますから、産業競争力強化法のそもそものあり方として、計画の策定、実施に際して、雇用の安定に十分な配慮を行うこと及び労働組合等との協議を前提とすることは不可欠であると考えるところであります。
そのため、産業競争力強化法を補強すべき点として、計画認定の要件に、計画の実施に際しては雇用の安定に最大限の考慮を払うこと、そして、労働組合等と十分な協議を行い合意を得ることを盛り込むこと、また、第百四十二条、雇用の安定等におけます雇用の安定、これにつきましては、直接雇用に限らず、派遣や請負といった間接的な雇用も対象とすることを盛り込むこと、これらをそれぞれ求めたいと思います。
次に、事業継承や創業の促進によります新陳代謝の加速化についてであります。
昨今、黒字企業が継承者不足により廃業するケースが増加していることは問題であります。再編統合による事業承継を後押しすることにより、社外承継における課題の解決を支援する点は評価ができると考えます。地域活性化あるいは特徴ある技能、技術の継承等、輝く中小企業づくりを後押しする施策の実行につなげていくことが必要であると考えます。
あわせまして、経営力向上計画を策定、申請し、認定を受けるまでの手続の簡素化が求められると思います。
もう一つ、時代に対応した経営支援体制の基盤強化であります。
中堅・中小企業におけますIT導入において、ITに精通した人材が企業内に不足していることは大きな課題であります。本施策によりまして、支援体制が整備される点は評価ができると考えます。
先ほどの事業承継や創業の促進とも共通の課題でありますが、必要なときに指導、相談に乗ってくれる専門家の派遣や地域の経済団体との連携を含めた支援策の強化が必要であると思います。
以上、私どもからの発言とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)