桃井貴子の発言 (経済産業委員会)

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○桃井参考人 おはようございます。
 気候ネットワーク東京事務所の桃井と申します。
 このたびは、省エネ法改正案の審議において陳述する貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 私が所属します気候ネットワークは、気候変動問題の解決に向けて取り組む環境団体です。近年、異常気象が全世界各地で起き、地球の平均気温は毎年世界最高値の記録を更新し、人類の生存が危ぶまれるレベルに近づいてまいりました。気温上昇を一・五度から二度未満に抑えるというパリ協定の着実な実行と、持続可能な社会の構築を目指して活動をしております。
 今回、省エネ法の改正案が上程され、気候変動政策とエネルギー政策は切り離せない重要なテーマであるということから、お配りさせていただきましたペーパーに沿って、大きく三つの点から問題提起をしていきたいと思います。
 一つはエネルギー政策に関して、二つ目は省エネ法全般について、そしてもう一つは、今回の改正案について申し上げたいと思います。
 そして、補足資料として、今回、二種類のパンフレットをお配りさせていただいております。こちらは、脱原発や気候変動問題にかかわるさまざまな市民団体で結成するeシフトのメンバーが、エネルギー基本計画改定のタイミングに合わせて、真のスリーEプラスSとは何かを提起したものです。そしてもう一つ、こちらは、原発をめぐる世の中の誤解や疑問に対して答えていくために、同メンバー共同で作成した冊子となります。私は、この中で主に省エネ、石炭問題、温暖化問題に関連するパートを執筆しましたので、今回のテーマにも関連するということで配付させていただいております。
 まず最初に、こちらのペーパーに戻りますけれども、日本のエネルギー政策のあり方について申し上げます。
 つい三日前、第五次エネルギー基本計画案のパブリックコメントが始まりました。現在、世界レベルでは、パリ協定が発効され、エネルギーシフトに向けたダイナミックな転換が起きています。原発や化石燃料依存のエネルギーシステムから、省エネを徹底し再生可能エネルギー一〇〇%を目指す方向へと大改革が起きています。そして、気候変動対策こそが経済政策の柱になっています。こうした点からも、エネルギー基本計画の見直しの機会は、日本のエネルギー政策をパリ協定に基づく政策に切りかえる大きなチャンスでした。
 しかし、今回示された案では、これまでも実現可能性が乏しいと指摘されてきた二〇三〇年の電源構成を前提に、現行のエネルギー基本計画の骨格を維持し、現状を変える要素が何もなく、また世界から取り残される道をたどるような、非常に残念な内容でした。基本政策分科会でまとめられた本案は、白紙撤回して見直すべきだと考えています。
 そして、パリ協定ができた今こそ、気候変動政策とエネルギー政策を統合し、原発や石炭重視の政策から、安定した気候を維持し、持続可能な社会に向けたエネルギー政策へと大きくかじを切るべきだと思います。
 さて、次に、二ページ目に示しました、日本のエネルギー政策の構造と決定プロセスの問題について指摘したいと思います。
 現在、国の根幹にかかわる重要な基本政策が、国会の正式な審議や議決を経ずに、経済産業省の官僚の裁量だけで決められているような状況です。
 先日示されたエネルギー基本計画の案がそれを示しており、その上位に位置づけられた長期需給エネルギー見通しという、法的に何ら位置づけのない、経産省主導でつくられたエネルギーミックスも、国会の議論を経ずに決定しました。本来は、国会での審議はもとより、国民全体の熟議をもって決定するべき案件ではないでしょうか。
 現状では、二〇三〇年のエネルギーミックスを達成させるために、省エネ法、再エネFIT、エネルギー供給構造高度化法などの省令や告示のレベルでかなり細かな制度設計が行われてしまっているのが実態です。肝心な部分を経産省の官僚の裁量で決めてしまう、国会軽視のエネルギー政策決定プロセスは極めて問題だと思います。
 日本の温室効果ガス削減目標ですら、IPCCの科学的論拠や二度未満という目標ではなく、経産省主導のエネルギー基本計画ありきでつくられているという実態があります。これこそが、日本の気候変動・エネルギー政策を、パリ協定を遵守するにふさわしい内容に大きく転換できない根源的な問題になっているのだと思います。
 次に、省エネ法について三点ほど指摘したいと思います。
 第一に、情報開示についてです。
 省エネ法では、エネルギー使用量が年間千五百キロリッター以上の事業者にエネルギー使用状況等の定期報告を義務づけていますが、その情報は公表されていません。省エネ対策を強化する上でも、これを公表する法改正が必要だと思います。
 同業種間で比較しても、エネルギー原単位は事業所ごとに大きく異なることがあります。情報公開することで、事業者が省エネに取り組むインセンティブとなり、省エネ水準を底上げする効果を期待できます。
 また、自治体における気候変動・エネルギー政策を強化していく上でも、国が一括して集めたデータを開示する方が無駄がありません。国が事業者のエネルギー使用量、原単位、燃料種構成などの情報を開示し、それをもとに自治体が実態把握や政策立案に使えるようにしたり、地域の企業も、同業種の実態を見て、みずからの対策に使えるようにすべきではないでしょうか。
 加えて、最近では、ESG投資を推進する上での企業の環境情報の開示を求める動きが高まっています。省エネ法で集めたデータを公開すれば、投資家などの判断にも有効に活用されることと思います。
 さらに、誰でもアクセスできる形で事業者の定期報告が公表されていれば、客観的な検証や評価が可能となり、研究者や政策立案者にとっても有益です。
 なお、気候ネットワークでは、昨年十二月に、電気事業者における省エネ法ベンチマークの定期報告の情報開示請求をしましたが、大手電力会社の情報は、大半が非開示で、黒塗りにされてきました。温暖化対策推進法で開示が前提になっているはずのCO2排出量まで黒塗りになっているケースもあります。非開示の理由は、企業の競争上の不利益をこうむる可能性があるということですが、全てのデータを開示する事業者もあり、非開示の理由として適当ではありません。あらかじめ全て公表することを法律に位置づけておくべきです。
 第二に、省エネ法のベンチマーク制度についてです。
 ベンチマーク制度は、あくまでも目指すべき指標であって、達成が義務づけられていません。二〇三〇年のエネルギーミックスでは、省エネ対策として五千三十万キロリッター程度とされていますが、その内訳は、産業千四十二万キロ、業務千二百二十六万キロ、家庭千百六十万キロ、運輸千六百七万キロとされています。これを削減率に置きかえていくと、産業が六%、業務が一九%、家庭が二四%、運輸が二一%と、産業部門の削減率が最も小さいことがわかります。
 よく、乾いた雑巾だと言われる産業部門ですが、省エネ法で業界ごとに設定されたベンチマークを達成すれば、鉄鋼、セメント、製紙など、大半の大口産業でかなりの深掘りをすることができ、決して乾いた雑巾ではないのです。省エネ法でのベンチマーク達成を義務づけ、より確実でより大きな削減を実行するべきだと思います。
 現状ではベンチマーク達成が義務づけられていないため、例えば高炉製鉄のように、達成した企業が一つもないような状況が長年続くということも起きています。
 次に、事業者の省エネはトップランナー制度が導入されていません。また、事業所単位の最高水準の省エネ実績も公表されていません。事業所単位でのトップランナー制度を導入し、省エネ対策を強化するべきです。
 その際の指標としては、原単位だけではなく、CO2排出量での評価も行われるべきです。会社単位ではなく事業所単位とするべきは、会社単位にしてしまうと、効率の悪い工場の改善のインセンティブがかかりにくくなるためです。
 さらに、ベンチマーク制度の問題として、業務用の指標がばらばらであるという点が挙げられます。対象が業務部門のさまざまな業種に拡大されているところですけれども、ベンチマーク指標は、業界団体の意向で決められ、算定方法も違い、場合によっては効果がわからないものが採用されています。
 産業部門なら生産量当たり、業務部門なら床面積当たり、運輸部門なら輸送量当たりのエネルギー使用量にするといった、シンプルな統一した指標で比較できるようにしておくことが重要です。
 第三に、省エネ法は気候変動を防ぐ目的がないため、気候変動対策から逆行する政策がとられている点について指摘しておきたいと思います。
 現在、先進国の多くが、石炭火力発電所からの脱却を目指しています。イギリスは二〇二五年、フランスは二〇二三年、カナダは二〇三〇年に既存の石炭火力発電所を廃止する方針を打ち出しました。アメリカの州や都市を含む自治体政府による脱石炭の宣言もふえており、昨年は、いわゆる脱石炭連盟も発足しています。
 一方、日本では、石炭火力発電所の新規建設計画が、二〇一二年以降、五十基にも上りました。世界からは大批判を受けています。一昨年、省エネ法のもとに、火力発電事業者のベンチマーク制度や新規火力発電の効率基準が設けられたので、一定の規制となることが期待されましたが、実態は、現状の石炭火力発電所の新規計画を容認し、既存の石炭火力発電所を温存する制度になっています。
 火力発電の発電効率では、トップランナーだと、LNGコンバインド火力で五四%の発電効率を出しているものもあるということですが、このとき定められたのは、新規計画で石炭火力四二%でした。実質的に現状の大型石炭火力発電所の計画はこれを達成する技術が採用されているため、建設を承認するシグナルになっています。
 また、ベンチマークは、発電所ごとの効率基準を定めるのではなく、複雑な計算をもとに算定した二種類の指標が採用されました。また、燃料に副生ガスやバイオマスなどをまぜれば効率を高く見せかけることができる上、さまざまな企業間の共同実施による達成も可能としているので、もはや古い石炭火力発電所の規制にもならない可能性があります。
 むしろ、石炭火力発電所に関しては、業界団体がみずから掲げている〇・三七キログラム・パー・キロワットアワーというCO2排出原単位を制度に位置づけるべきです。また、将来的には電力部門のCO2排出量はゼロを目指していくべきです。
 最後に、今回の改正案についての意見を述べたいと思います。
 これまでに指摘したとおり、現状の省エネ法は、定期報告で集められた情報の開示がなく、ベンチマーク制度の基準を遵守する拘束力もなく、トップランナー制度も導入されていない現状です。本来は、まずこうした制度強化をすることによって、省エネを更に推進するような改正が必要だと思います。
 また、今回改正案として示された企業連携についてですが、ここで言ういわゆる連鎖化については、個々の事業者の省エネのインセンティブを損ねないようにすることや、事業者単位の情報の収集、そして省エネの継続的な取組につながることを担保することが重要です。本来事業者単位ごとに報告されるべきところが、連鎖化という形で、企業単位よりも更に大きなグループ単位の情報に集約される仕組みとなり、これまで以上にわかりにくくなることが懸念されます。連鎖化が省エネの後退につながらないようにしておくことが重要です。
 また、貨物分野の強化についても、今回の法改正では努力規定にとどまります。ここは、他の業種と同様、報告義務を課すべきではないかと思います。
 以上が、今回の改正案に関する所見です。
 冒頭にも申し上げましたように、省エネルギー政策は、パリ協定を遵守する上でも極めて重要な政策ですし、日本でも、実は、産業分野を含め、活動量を減らさずとも削減ポテンシャルに満ちています。省エネ分野での新しい産業を活性化させるためにも、政策全体の強化に向かっていくことを望みます。
 私からの陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 桃井貴子

speaker_id: 16309

日付: 2018-05-22

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会