神津里季生の発言 (厚生労働委員会)
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○神津参考人 御指名いただきました連合の神津です。
本日は、このような場で私ども連合の意見を表明をする機会をいただきました。大変にありがとうございます。
私は、今回、法案のベースになりました働き方改革実行計画の策定を行った働き方改革実現会議に参画をし、真に働く者のための働き方改革を実現するという強い決意のもと、長時間労働の是正、そして、いわゆる非正規雇用という形態で働く方々の処遇改善の必要性を強く主張をしてまいりました。
この日本には、連日の長時間労働で休みもとれず、心や体が悲鳴を上げている多くの労働者がいます。年間二百人前後の方々が過労死、過労自殺として労災認定をされているのは御承知のとおりであります。
そして、他方では、パートタイマーだから、あるいは派遣社員だからという、雇用形態の違いだけでまともな説明のついていない理不尽な待遇差があります。こうした現状を改善しなければ、日本の未来はないと思います。
罰則つきの時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度の導入、そして同一労働同一賃金の法整備は、まさにこうした現状を変えるものとして欠かすことができない政策であります。そのことをまず申し述べておきたいと思います。
私たちは、ことしの春季生活闘争、いわゆる春闘でありますが、この中で、長時間労働の是正、そして同一労働同一賃金、これらにつきまして、法改正に先行して、法を上回る取組を闘争方針に掲げて、全国の職場の仲間たちが懸命に交渉を進めました。
その結果として、資料をお配りをしているわけですが、三六協定の見直し、あるいは勤務間インターバルの導入、そういった長時間労働の是正、さらには、非正規と言われる形態で働く方々にも正社員と同様の制度を設けるなどの同一労働同一賃金、これらについて、多くの組合が成果をかち取ったところです。
しかし、労働組合がない職場ではどうでしょうか。残念ながら、現在の労働組合組織率は二割弱にとどまっています。労働組合のない職場では、三六協定の仕組みが適切に機能せず、長時間労働に全く歯どめがかからないケースが横行しています。
非正規と言われる形態で働く方々の処遇改善に向けても、労使交渉のきっかけすら見出すことができない、そういう職場が多くあるわけです。そんな現実があるわけです。法規制が進まなければますます格差が広がってしまう、このことを憂慮いたします。
今回の法案に盛り込まれている罰則つきの時間外労働の上限規制、そして同一労働同一賃金の法整備は、労働組合がない職場も取り残すことなく、全ての働く者が安心して健やかに働くことができる最低限のセーフティーネットを張るものであります。
本来であれば昨年秋の臨時国会で審議されるべきところ、あの冒頭解散で延び延びになってしまっています。こうしている間にも、この日本のどこかで、過労死、過労自殺のふちに追いやられようとしている労働者が悲鳴を上げているのであります。これらのセーフティーネットの内容については、一刻も早いスタートを強く求めるものであります。
一方で、政府提出の法案には、幾つかの問題点、懸念点があります。
まず、中小企業にかかわる問題です。
昨年の九月に労働政策審議会で法案要綱を諮問、答申した後に、時間外労働の上限について、中小企業における法施行日が当初の予定より一年延期とされてしまいました。施行期日を先延ばしすることは大変残念です。働く企業の規模がどうであろうと、働く者の命を守る最低基準は同じであるべきです。
ただでさえ、中小企業で働く労働者は、月間の時間外労働が六十時間を超えた場合の割増し賃金率について例外扱いとされ、大企業の労働者との間で二五%もの差をつけられるという不公平きわまりない状況が約八年も継続しているのであります。今回の法改正でこの点は解消されるはずですが、このような状態が続く限り、中小企業のあすを支える若手人材を確保することはますます困難なものとなると言わざるを得ません。
大企業と同様の働き方改革がなかなか進まないのであれば、その根本の原因にこそメスを入れるべきであります。下請いじめの撲滅などの取引慣行の是正や、理不尽な買いたたきを拒み値段を上げることによって真の生産性を向上させることや、雇用確保を大前提とするもとでの再編を含めた強化策等、本質的な問題に本気で取り組むという明確な意思につなげていくためにも、今こそ、労働基準に差があって当たり前というような、あしき常識を断ち切ることを強く求めたいと思います。
次に、運輸、交通の業界等における自動車運転業務にかかわる問題であります。
時間外労働の上限規制の適用猶予業務であります自動車の運転業務については、これまでの例外扱いをなくす一方で、改正法の施行期日の五年後においてもなお年間九百六十時間以内という、極めて長時間の水準の規制が適用されることとなっています。
今回の法案の提案理由の説明には、過労死を二度と繰り返さないため、長時間労働の是正が急務とあります。本当にそう考えるのであれば、過労死の最も多い自動車運転の業務こそ、長時間労働の是正に向けて真っ先に取り組まなければならないのではないでしょうか。五年の適用猶予後には、上限規制の一般則を適用すべきだということを強く申し述べておきたいと思います。
さらに、医師や教職員についても、過労死、過労自殺の問題を含めて、長時間労働の体質が明らかになっている職種であります。抜本的な是正策に向けて検討を進め、着実な進展が図られなくてはなりません。公務の現場の長時間労働是正も大きな課題です。その点も強調をしておきたいと思います。
次に、高度プロフェッショナル制度の問題について申し述べたいと思います。
今ほど申し述べましたように、私たちは、どのような仕事、どのような職種であっても、過重労働により心身の健康がむしばまれることがあってはならないと考えます。そして、いかに専門的業務であろうとも、いかに高年収であろうとも、もちろんそのことは同じであります。
いや、むしろ夢中になって打ち込んで働くという日本人の労働風土を踏まえるならば、今回の高度プロフェッショナル制度の創設は、働き過ぎの助長につながってしまうのではないでしょうか。長時間労働是正とは方向の全く異なるこの内容が一くくりにされたという点を含めて、極めて遺憾であるということを申し述べておきたいと思います。
本日、全国過労死を考える家族の会の寺西代表も参考人としてお見えになっておられます。家族の会の皆様は、高度プロフェッショナル制度が創設されてしまえば、労働時間の把握は困難になり、労災認定されなくなるのではないか、このような懸念を示されているとお聞きをしています。
長時間労働を助長しかねない高度プロフェッショナル制度の創設は実施すべきではないとの考え方を改めて申し上げておきたいと思います。
次に、法の実効性確保に関して申し述べたいと思います。
法律ができても、それだけで職場が変わるわけではありません。私ども連合は、労働組合のない職場で働く人たちに向けて、本日配付をしております資料などを活用して、三六協定とはそもそも何かを知っていただく取組を行っています。ルールを知ること、権利を知ることが、職場環境を変えていくために不可欠であります。そのため、私たちは、学校教育段階や地域でのワークルール教育を求めてきております。
厚生労働省の調査によれば、三六協定を締結していない事業所が約四五%もあります。また、別の調査では、約四割の企業において、選挙といった民主的手続によることなく、会社側から過半数代表者を指名するなど、不適切に過半数代表の選出がなされているということからも明らかなように、使用者の中にワークルールが行き届いていないというゆゆしき現実もあります。
現在、超党派の議員で構成される、ワークルール教育推進法案、これが準備、検討をされていると伺っています。ワークルール教育を社会全体で広げていくための法整備を進めていただくことを強く要請をするところであります。
最後に一言申し述べて、発言を終えたいと思います。
今回の働き方改革に関しましては、立憲民主党と国民民主党から、それぞれ大変充実した法案が提出をされています。働く環境をよりよくしていきたいという理念に基づいた両法案には、具体的かつ有効な内容がちりばめられています。
国会審議においてぜひ議論を深めていただき、これらの前向きな内容を具現化することで、働く者のための働き方改革を実現していただきたいと思います。
以上であります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)