竹下義樹の発言 (文部科学委員会)
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○竹下参考人 この証言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
日本盲人会連合の竹下といいます。よろしくお願いいたします。
私は、十四歳で失明をして、その後、日本で初めて司法試験の点字受験を認めていただいたおかげで、現在、弁護士という仕事につけている人間であります。そういう意味では、点字あるいは音声訳というものが、視覚障害者の生きる上で、あるいは職業選択の上で極めて重要であるということを実感している当事者であります。
きょうは、マラケシュ条約の批准と、それに伴う国内法の整備としての著作権法の改正を準備いただいたことに心からお礼申し上げます。ここでは、その関係で著作権法三十七条三項の改正が審議されていることを心から歓迎申し上げます。
御存じのとおり、視覚障害者の場合には、情報を得るためには、点字化、音声化、そして弱視の方は拡大文字、この三つの方法が情報を得るための手段であります。
日本においては、点字にせよ、録音にせよ、そして拡大文字の作成にせよ、全てはボランティアの方々によってその支援が行われております。その活動を支えているのが三十七条三項ということになるわけであります。
今回のマラケシュ条約の批准に伴って、その受益者の範囲が、視覚障害者だけでなく、手が動かないためにページがめくれない、本が持てない寝たきりの人たち、あるいは、発達障害の人たちのように、出版物そのもののままでは内容を自分のものにできない人たちのために書き直しをする問題、そうした受益者の範囲を広げていただいたことは非常にありがたいと思っております。
ただ、今回の三十七条三項の改正によって、そうした受益者の範囲が、出版物をそのままでは自分では利用できない人たちの全てに行き渡るのかどうか、ここが若干懸念しているところであります。
もう一つは、冒頭に申し上げたように、日本では点字化も音訳化も拡大文字もボランティアの手によって担われているわけでありますが、そうしたボランティアの活動が、今回の三十七条三項によってどこまで自由に活動できるかということが問題になるわけでございます。
すなわち、これまでは、文化庁の長官の認可を受けた団体、あるいは点字図書館といった政令で定められた団体、そういうところが音声訳をすることは権利制限として許されてきたわけでありますが、そのボランティア団体の人たちというのは、点字図書館をはるかに超える社会資源として支援をする人たちがおられて、その人たちの活動のおかげで我々は読書ができているわけです。そうしたボランティアの人たちの活動がどこまで自由にできるようになるか、このことが今回の三十七条三項改正と政令の制定によって大きく広がることを期待しているわけでありますが、この制限がどういう形でまた残るかが懸念しているところであります。
最後に、三十七条三項の改正だけでは、情報障害を持っている私たちの仲間が全て救済されることにはならないということに目を向けていただきたいと思っております。
例えば、この間の文科省の努力や議員の先生方の御理解で、検定教科書につきましては、発行元が電子データを提供することが義務づけられました。そのおかげで、検定教科書は、点字化するときも拡大文字をつくるときも非常にスムーズにできるようになりました。しかし、問題集であるとか副読本であるとか参考書であるとかそうしたものについては、いまだ出版元からデータが提供されないために、教育の場面においても十分な援助が受けられない現実があります。
すなわち、今どきは、出版は、ほぼどの分野においてもというか、出版者においても電子データをお持ちなわけでありますが、その電子データを十分に、あるいは自由に利用できるという環境がないことであります。もちろん、著作権の問題があるわけでありますから、その利用には十分なルールが必要であることは承知しております。
問題は、そういう出版者が、点字化するときや音声化するとき、拡大文字化するときにそうした道筋をつけていただけるかどうか。
すなわち、電子データ、とりわけテキストデータを自動点訳にかければ、私がここで今読んでいる点字になるわけです。それから、テキストデータをスクリーンリーダーというソフトにかけると、全部音声で読み上げてくれるわけです。それから、拡大文字に関しましても、電子データだと、十八ポイントであろうが二十二ポイントであろうが、その障害者に合わせたポイントに自由に変換できるわけです。そうしたものが十分に制度的に保障されるようになることこそが、出版された図書の多くが、私たち障害を持った仲間の読書へのアクセスになることを御理解いただきたいと思っております。
そして、国会図書館、公共図書館、点字図書館、それらの全ての、社会資源がお持ちの電子データをインターネットでつないでいただいて、ユーザーである障害者がそういうデータを利用できる環境をつくっていただく、ここまで発展させていただくことが今回マラケシュ条約が求めているものに近づくことをぜひ御理解いただき、私からの訴えにかえさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)