安倍晋三の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上義久議員にお答えをいたします。
働き方改革についてお尋ねがありました。
安倍政権は、高齢者も若者も、女性も男性も、障害や難病のある方も、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に取り組んでおり、その最大のチャレンジが働き方改革です。
高度成長時代の猛烈社員のように、長時間働いたことを自慢するような社会は、根本から改めなければなりません。
今回、史上初めて、労働界、経済界の合意のもとに、三六協定でも超えてはならない、罰則つきの時間外労働の限度を設けます。加えて、勤務間インターバル制度についても、その普及に努めます。
長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者が仕事につきやすくなり、男性も子育てを行う環境が整備されます。
長年議論だけが繰り返されてきた同一労働同一賃金、いよいよ実現のときが来ました。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、非正規という言葉をこの国から一掃してまいります。
子育て、介護など、さまざまな事情を抱える皆さんが、意欲を持って働くことができ、誰もがその能力を発揮できる柔軟な労働制度へと抜本的に改革します。戦後の労働基準法制定以来、七十年ぶりの大改革であります。
学校における働き方改革については、御党からいただいた提言も踏まえ、昨年末に、適正な勤務時間管理の実施、業務の効率化、さらには学校の指導、事務体制の効果的な強化などについて、緊急対策を取りまとめ、必要な経費を平成三十年度予算案に盛り込んだところです。
今後とも、勤務時間の上限の目安を示したガイドラインの検討など、教職員の長時間勤務の是正にしっかりと取り組んでまいります。
教育負担の軽減についてお尋ねがありました。
子育てや教育に係る費用の負担が重いことが少子化の要因の一つとなっており、教育費負担の軽減を図っていくことは重要な課題であると認識しています。
幼児教育の無償化については、二〇二〇年度を目指し、一気に進めます。三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育園、認定こども園の費用を無償化します。これに加え、無償化の対象について、現場や関係者の皆様の声を踏まえ、この夏までに結論を出してまいります。
ゼロ歳から二歳児については、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めるとともに、待機児童の解消に向け、補正予算も活用し、子育て安心プランを今年度から早急に実施します。これにより、二〇二〇年度末までに三十二万人分の受皿を確保し、待機児童を解消することとしています。
これまで自公政権で取り組んできた保育士の処遇改善に加え、今年度、月額三千円の処遇改善を実施し、来年も更に三千円引き上げ、保育士の確保に全力で取り組みます。
御党から御提案いただいた私立高校の授業料の実質無償化については、二〇二〇年度までに、現行の加算額を大きく引き上げることで実質的な無償化を実現します。
大学などの高等教育無償化については、給付型奨学金をこの春から二万人に拡大し、再来年四月からは、学生生活を送るために必要な生活費が賄えるよう大幅にふやすとともに、住民税非課税世帯の意欲ある全ての子供たちに支給します。授業料の減免措置も思い切って拡充いたします。これに準じる経済的に厳しい家庭の子供たちにも、しっかりと必要な支援を行います。
人への投資に力を入れてきた御党とともに、急速に進む少子高齢化という国難に立ち向かうべく、人づくり革命を断行してまいります。
一人親世帯への政府の支援についてお尋ねがありました。
一人親家庭は、経済的にもさまざまな困難を抱えており、きめ細かな支援が必要です。政府としては、これまでも、児童扶養手当の多子加算の倍増、子供の学習支援の充実、養育費の相談支援の強化など、積極的な支援を実施してきました。
未婚の一人親に対する税制上の対応については、議員御指摘のとおり、平成三十年度の与党税制改正大綱において、児童扶養手当の支給に当たって事実婚状態でないことを確認する制度等も参考にしつつ、平成三十一年度税制改正において検討し、結論を得ることとされています。
与党における検討も注視しつつ、必要な検討を行ってまいります。
また、来年度予算においては、一人親家庭への支援として、御党からの御提案も踏まえ、児童扶養手当について、五十万を超える世帯で支給額をふやします。さらに、生活困窮世帯等の子供に対する学習支援事業について、高校中退者等の高校生世代や小学生に対する支援の拡充を図ります。そのほか、保育料の算定などにおいて、未婚の一人親に対する寡婦控除のみなし適用を実施します。加えて、来年からは、児童扶養手当の支払い回数を年三回から六回にふやします。
今後とも、一人親家庭の自立を支援し、子供たちの未来が家庭の経済状況によって左右されることのないよう、子供の貧困対策に全力で取り組んでまいります。
医療的ケアを必要とする子供の支援についてお尋ねがありました。
近年、医療的ケアを必要とする子供が増加する中、こうした子供たちが安心して生活し、学ぶことができるようにすることは、一億総活躍社会の実現に向けて極めて重要な課題と認識しております。
このため、学校においては、医療的ケアに当たる看護師の配置を支援し、子供たちの教育環境の充実に努めてきたところであり、平成三十年度予算案においても看護師配置の充実を図ることとしております。
また、在宅支援については、平成三十年度から、障害児の居宅を訪問して必要な支援を提供するサービスを創設するとともに、通所施設への看護職員の配置を報酬上評価するなど、支援体制の整備を進めてまいります。
今後とも、政府全体で、医療的ケアを必要とする子供たちの支援にしっかりと取り組んでまいります。
財政健全化の道筋についてお尋ねがありました。
安倍内閣では、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針のもと、これまでアベノミクスを進めることで財政健全化に大きな道筋をつけてきました。国、地方を合わせた税収は約二十四兆円増加し、新規国債発行額は約十一兆円減っています。
今後、人づくり革命を力強く推し進めていくため、消費税率引上げ分の使い道を見直し、子育て世代、子供たちに大胆に投資するとともに、社会保障の安定化にもバランスよく充当することとしました。
これにより、プライマリーバランス黒字化の達成時期に影響が出ることから、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化は困難となります。ただし、財政健全化の旗は決しておろさず、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持してまいります。
御指摘のように、今後、医療や介護などの社会保障費の増大に伴う財政上の課題が想定されます。プライマリーバランス黒字化目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、この夏までに、プライマリーバランス黒字化の達成時期と、裏づけとなる具体的かつ実効性の高い計画を策定してまいります。
診療報酬と介護報酬の同時改定についてお尋ねがありました。
御指摘のように、団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年に向けて、どこに住んでいても適切な医療や介護を安心して受けられる地域包括ケアシステムの構築を進めることが重要です。このため、平成三十年度の診療報酬、介護報酬同時改定においては、地域包括ケアシステムの構築を第一の柱として議論を進めます。
具体的には、今回の同時改定において、住みなれた場所でも必要に応じて医療が適切に提供されるよう、自宅で暮らす方に対しては、複数の医療機関の連携を図り、患者の状態に応じた質の高い在宅医療や訪問看護が受けられるようにするとともに、特別養護老人ホームで暮らす方に対しては、施設と医師との緊密な連携を図り、病状が急変するなどの緊急時にも医師が対応できる仕組みを整備することとしています。
また、長期にわたって医療と介護がともに必要となる方が主として入所する介護医療院については、入所された方が日常的な医学管理を受けながら生活を営むための施設にふさわしい基準や報酬を設定するとともに、介護療養病床からの円滑な転換を図ることができるよう、転換支援、促進策を設けることとしています。
国民一人一人が状態に応じた適切な医療や介護を受けられるよう、しっかりと取り組んでまいります。
認知症対策についてお尋ねがありました。
認知症は誰もがかかわる可能性のある身近な病気です。認知症の方ができる限り住みなれた地域で暮らすことができる取組を進めていく必要があります。
このため、御党の御提案も踏まえつつ、我が国の認知症国家戦略として策定した新オレンジプランに基づき、介護者支援、見守り体制の構築など、総合的な施策を推進しています。
御提案いただいている認知症の方の意思決定支援については、認知症の方御本人の意思決定を介護者や家族の方たちが支援するための指針について、来年度なるべく早くお示しできるよう検討を進めています。
また、認知症施策推進基本法の制定という御提案をいただきました。政府としては、認知症の人を社会全体で支えるため、まずは新オレンジプランに掲げた施策を政府一丸となって推進してまいりたいと思います。
介護人材の確保についてお尋ねがありました。
介護離職ゼロに向けて、介護サービスが利用できず、やむを得ず離職する方や、特養に入所が必要であるにもかかわらず自宅待機する方をなくすため、二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受皿の整備を進めていきます。
その大きな目標に向かって、介護人材確保への取組を強化します。
御指摘のとおり、既に、自公政権で月額四万七千円の処遇改善を行いましたが、来年秋からは、リーダー級の職員の皆さんを対象に、更に、八万円相当の給与増を行えるような処遇改善を実現することで、他産業との賃金格差をなくしてまいります。また、その運用に当たっては、他の介護職員なども対象とすることができるようにしてまいります。
あわせて、一旦介護の仕事を離れた人が再び介護の仕事につく場合の再就職準備金の貸付けや、介護福祉士を目指す学生への返済免除つきの奨学金制度による就業促進、ICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進による業務負担の軽減や、職場環境の改善による離職防止などにも取り組み、介護人材の確保に全力を尽くしてまいります。
がん対策についてお尋ねがありました。
国民の二人に一人がかかると言われているがんは、国民の関心が高く、早期発見、早期治療とともに、療養中の生活の質の向上が重要であると考えます。
昨年十月に、御党からの御提案も踏まえながら、二〇二二年度までを計画期間として、第三期がん対策推進基本計画を策定しました。
平成三十年度においては、この計画に基づき、がんゲノム医療提供体制の構築を図るための中核となる拠点病院の整備、がん患者の仕事と治療の両立支援を図るためのモデル事業の実施などの新たな施策について取り組みます。
今後も、議員の御提案にあるように、がん教育における医師等の活用、新たな治療法の研究の推進、傷病手当金制度の見直しの検討、医療者への緩和ケア研修の充実などの取組を通じて、がん対策の充実に努めてまいります。
また、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを目指し、受動喫煙防止対策を徹底することが重要です。必要な法案を今国会に提出すべく、現在、与党及び関係省庁において調整を進めています。
中小企業、小規模事業者の生産性革命と事業承継のための支援についてお尋ねがありました。
賃金上昇、景気回復の温かい風を全国津々浦々へと広げていくためには、地方経済の中核を担う中小・小規模事業者の皆さんの生産性向上が極めて重要です。深刻さを増す人手不足の問題に対応するためにも、攻めの投資を力強く支援してまいります。
公明党の皆様のお力も得て、今後三年間で百万者のIT導入を支援するほか、自治体の判断により、固定資産税をゼロにする新しい制度など、これまでにない大胆な政策を実施し、中小・小規模事業の生産性革命を強力に後押ししてまいります。
また、今後十年で、中小・小規模事業者の経営者の六割が七十歳を超えるという現実があります。後継者が決まらないまま黒字廃業といった事態は、我が国経済にとって大きな損失であり、この事業承継問題は、日本経済の屋台骨を揺るがしかねない、待ったなしの課題であります。
そうした強い危機感のもとに、事業承継税制を抜本的に拡充し、承継時の贈与税、相続税の支払い負担をゼロにすることといたしました。
また、後継者による新しいチャレンジを応援する補助金など切れ目のない支援を実施することで、我が国の宝である全国各地の中小・小規模事業を次の世代へとしっかりと引き渡してまいります。
農林水産業の持続的な発展についてお尋ねがありました。
安倍内閣においては、農業を産業として強くするため、米の生産調整の見直し、農地集積バンクによる農地集積や輸出促進、さらには、若者の新規就農の支援、収入保険制度の創設によるセーフティーネットの整備など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。
また、中山間地域に対しても、日本型直接支払制度による地域の共同活動への支援や、中山間地農業ルネッサンス事業による地域の特色を生かした取組の支援など、地域を元気にする施策を展開してまいりました。
これにより、四十代以下の若手新規就農者が、統計開始以来、初めて三年連続で二万人を超え、農林水産物・食品の輸出は五年連続で過去最高を更新するペースで伸び、生産農業所得も過去二年で約九千億円も伸び、直近で三兆八千億円になるなど、着実に成果があらわれ始めています。
こうした農政改革に加え、意欲ある林業経営者に森林経営を集積、集約させる森林バンクの創設など、戦後以来の林業改革に挑みます。新たに創設する森林環境税も積極的に活用してまいります。水産業についても、資源管理と成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上を実現する改革を確実に実行してまいります。
さらに、TPPや日・EU・EPAによる新たな国際環境のもとでも安心して再生産できるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、十分な対策を講じてまいります。
安倍内閣では、農林水産業の持続可能な発展に向け、引き続き、農林水産業全般にわたって改革を力強く進めます。若者が夢や希望を持てる農林水産新時代を構築してまいります。
防災・減災対策の前進についてお尋ねがありました。
昨年発生した九州北部豪雨や一連の台風による豪雨災害を始めとして、近年多数の災害が発生しており、防災・減災対策は、我が国にとって重要な課題であります。
このため、河川の氾濫を防ぐ対策に加え、氾濫した場合にも被害を軽減する対策や、水害リスクやとるべき避難行動の地域住民への周知等の総合的な取組を、地方自治体と一体となって推進してまいります。
特に、昨年、九州北部豪雨等により中小河川において水害が頻発したことを受け、流木被害の軽減、防止を図るための治山対策や、氾濫防止、土砂流出や流木の防止、水位の監視強化等の治水対策を、今後おおむね三年間で緊急的かつ集中的に推進することとしており、平成二十九年度補正予算及び平成三十年度予算に必要な経費を計上しているところです。
今後とも、国民の生命と財産を守るため、これまでの災害で得られた貴重な教訓を生かし、ソフト、ハードを組み合わせ、地域の企業とも連携して、防災・減災対策に万全を期してまいります。その中で、社会資本の整備を通じ、生産性向上による経済成長や地方創生の実現にもつなげてまいりたいと考えております。
東日本大震災からの復興加速、福島の再生についてお尋ねがありました。
東北の復興なくして日本の再生なし。あの大震災、困難の日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。
東日本大震災からの復興に向け、必要なことは全てやり遂げるという強い決意のもと、心身のケアなど切れ目のない被災者支援、住まいと町のさらなる復興、二重ローン対策などによる産業、なりわいの再生を進めてまいります。
その一環として、震災支援機構による支援の延長や、法テラスの震災法律援助事業の延長に関する議員立法については、政府としても必要な協力をさせていただくとともに、これらの取組を支えてまいります。
福島では、帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除され、帰還困難区域では特定復興再生拠点の整備が始まるなど、復興再生に向けた動きが進んでおります。
今なお続く風評の払拭は、福島の産業、なりわいの復興の大前提です。県産農産物のブランド力を回復するため、農家によるGAP認証の取得を支援するとともに、昨年十二月に策定した風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略に基づき、例えば、全国の小中高等学校などにおいて放射線に関する科学的な知識をわかりやすく伝えるなど、正確な情報発信を一層強化してまいります。
福島イノベーション・コースト構想は、福島復興の切り札です。関係省庁が一体となって、ロボットなど最先端技術の研究開発拠点の整備、産業集積、人材育成などを進めてまいります。
引き続き、国が前面に立って福島の再生に全力で取り組んでまいります。
日本の安全保障の基本的な考え方についてお尋ねがありました。
専守防衛は、憲法の精神にのっとったものであり、我が国防衛の大前提です。この点には、今後ともいささかの変更もありません。
また、いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で、米国の打撃力に依存しており、日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません。この点については、今後ともいささかの変更もありません。
スタンドオフミサイルは、我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するために導入するものです。イージス・アショアは、弾道ミサイルの脅威から我が国全土を、二十四時間三百六十五日切れ目なく防護する能力を抜本的に向上させるものです。いずれの装備も、専守防衛のもと、国民の生命財産、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため、自衛隊の装備の質的向上を図るものです。
今後とも、国民を守るために真に必要な防衛力の強化を進めてまいります。
日中関係についてお尋ねがありました。
まず、井上議員には、昨年の八月と十二月に、自民党の二階幹事長とともに、日中与党交流協議会を開催し、提言をまとめていただくなど、日中関係の発展に御尽力をいただいていることに対しまして、改めて敬意を表します。
日中平和友好条約締結四十周年である本年を、日中関係が大きく改善したと両国の国民が認識できるような一年にしていきたいと考えています。日中与党交流協議会の提言にも挙げられている、観光分野や第三国における両国企業間のビジネス協力を含め、あらゆる分野で協力と交流を推し進めてまいります。
そのためにも、早期に日中韓サミットを開催して李克強首相を日本にお迎えし、その後、私が適切な時期に訪中し、その後には習近平国家主席に訪日していただきたい。このようなハイレベルの往来を重ねる中で、日中関係を新たな段階へと押し上げていきたいと考えています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣石井啓一君登壇〕