山尾志桜里の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○山尾志桜里君 立憲民主党の山尾志桜里です。
 まずは冒頭、昨日からの近畿地方における地震で命を落とされた方々と御遺族に対し心からのお悔やみを、そして被害に遭われ厳しい状況に置かれている皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
 本日は、立憲民主党・市民クラブを代表し、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案につき、反対の立場から討論いたします。(拍手)
 反対の理由は、本質的な一点です。
 今回創設される特別寄与制度の対象から事実婚や同性パートナーが排除されていること、そして、その判断が象徴する現政権の冷たさ、人権意識の致命的な鈍感さを容認できないからであります。
 高齢化が進む中、一人一人が自分らしく人間関係を築き、互いに支え合いながら人生の終盤を彩っていくあり方はさまざまです。しかし、今の相続制度では、そうした多様な支え合いの形を保障できず、不公平が生じています。
 ですから、法律上の相続人以外の方が献身的に介護や看病などの貢献をしたとき、それを評価し、相続人への金銭請求を認めて実質的な公平を図る制度をつくろう、この提案に、私たちは賛成です。
 しかし、その趣旨は、いわゆる長男の嫁のみならず、むしろ、長年連れ添い、実質的には相続人と同じ法的利益を受け取るべき立場にありながら、法律上の相続人になることのできない事実婚や同性パートナーにこそ当てはまるのではありませんか。にもかかわらず、対象からあえて排除するのは、制度趣旨をねじ曲げる不公正ではありませんか。
 委員会質疑でその点を繰り返しただしましたが、政府の弁解は、ただひたすらに、事実婚や同性パートナーを含むと遺産分割が長期化、複雑化するの一点張りでした。
 しかし、そもそもこの新制度は、形式的な不都合を実質的に解消するものでありますから、一定の長期化、複雑化は織り込まれております。だからこそ、期間制限、すなわち、この制度が利用できるのは、相続開始や相続人を知ったときから六カ月、実際に相続が始まったときから一年と、権利行使が限定されているのです。
 長期化、複雑化対策には、この期間制限を全ての対象者に公平に運用することが王道であり、対象者を分断し、社会的マイノリティーを排除することで対応するのは、人権国家として致命的な過ちです。
 そもそも、事実婚の当事者の中には、政府が選択的夫婦別姓から逃げ続けているがために、法律婚を望みつつ事実婚を選択しているカップルが大勢います。同性パートナーは、政府が同性婚を認めないがために、法律婚を望んでもできない状態に置かれています。
 選択的夫婦別姓やLGBT差別解消法、同性パートナーシップ制度あるいは同性婚は、多様で差別のない社会を選択する近代国家の標準装備であります。しかし、私たち野党の中の多くの政党がこうした法案を提案しても、政府・与党は審議や協力を拒否しています。
 法律婚を望むカップルすら法律婚できない環境をあえて放置しながら、他方で、提出してくる閣法では、法律婚でないという理由で排除するのは、無責任な差別と言われても仕方がないのではありませんか。
 法制審のパブリックコメントでも、限定すべしとする立場は九、限定すべきでないとする立場は二十六、約三倍でした。法制審そのものにおいても、終盤まで、親族に限定しない立場を基本として検討を進めると明記されておりました。
 法務委員会では、野党推薦の参考人はもちろん、与党推薦の参考人すら、一学者としての見解においては親族に限定しないことが望ましいという立場に立たれていたことが明らかになりました。
 にもかかわらず、政府はなぜ無理筋、真逆の結論を出したのでしょう。大変不可解です。
 実は、この法案のきっかけは、二〇一三年の最高裁において、婚外子差別による民法相続格差を違憲とする判決にありました。
 報道によれば、そのころの自民党部会において、次のような声が上がったとされております。自民党として、最高裁の判断はおかしいというメッセージを発するべきではないか、国権の最高機関が、司法判断が出たからといって、はいはいと従うわけにはいかない。これほどまでに三権分立の本質を無視する発言が複数与党内からあったとすれば、改めて驚きを禁じ得ません。
 実際、法制審の第一回においても、法務省の事務方が、今回の相続法制見直しの理由について、さきの最高裁判決を受け、法律婚の尊重を図るための措置を別途検討すべきとの指摘がなされたと言及しています。この指摘をしたのは誰なのでしょうか。むしろ、この最高裁判決を受けた世論の中には、多様な家族のあり方を保障するための制度改正を加速すべしとの指摘が多数あったにもかかわらず、なぜそちらは無視されたのでしょうか。
 つまるところ、この法案は、婚外子差別是正判決と法律への巻き返し策としてスタートし、その色合いを今もなお残しているのではありませんか。だから、あらゆる議論の場で、法律上の親族に限るべきでないという意見が優勢を占めても、最終最後、何の合理的説明もないまま親族要件が復活したのではありませんか。
 また、法制審の委員においては、親族要件をつけるべきだという立場に明確に立った委員はたった一人であり、この委員は、メディアにおいて安倍総理の側近であると自認し、総理を人懐っこい兄貴分のような存在と語っていることを付言いたします。
 私たち立憲民主党は、この法案の賛否について最後まで判断を留保しておりました。
 しかし、最終的に、法案の一部であれ、多様で差別のない社会という譲れない価値に本質的に反する法案には、反対の姿勢を明確にし、その理由を議事録にとどめることで、今の安倍政権には発信できないリベラルな価値の発信者となることを選択いたします。
 少なくとも、この社会の普遍的な価値である個人の尊厳を尊重するならば、個人の価値観の多様化がパートナーシップの形の多様化につながることを自然に受けとめ、その多様なパートナーシップを包摂する社会へと進むべきです。
 これに対して、今回の法案は、国家の側が考える個人やパートナーシップの形に当てはまらない人々を排除し、人格の本質的な対等性を傷つけるもので、容認できません。
 法務委員会で、LGBT当事者である鈴木賢明治大学法学部教授が参考人としてお話しされた言葉を紹介します。
 同性カップルを婚姻から排除することは、国が法律によって同性愛者を差別することに加担することにほかなりません。せめて相続法による特別寄与制度から排除しないという姿勢を示すことで、同性愛者に対する法による差別をやめる方向へと転換すべきことを強く求めたいと存じます。法律の小さな文言ですけれども、それが日本を変える力になります。
 私たちは、親族というこの法案の小さな文言が、差別に加担し、固定化する見えない力となることに反対いたします。
 自民党、公明党の中にも、多様性を認める社会を標榜する方がおられます。本当にその価値を信じているなら、たまには国会議員の本分である採決で示していただきたいと思います。
 そして、無所属の議員も含めて、野党の議員の皆さんに心からお願いをいたします。
 国会議員が採決で示すことのできる価値観は、たとえ今は法律が通ってしまうとしても、これからの社会を変える力になります。
 人は、誰しもが、どこかを切り取れば少数者です。小さい文言による大きな差別を見逃さずに、毅然と行動していただきたいと思います。
 私たち立憲民主党は、立憲の言葉を民主の上に置き、多数決でも侵すことのできない少数者の権利と価値を全力で守ることをお約束し、反対の討論といたします。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119605254X03920180619_009

発言者: 山尾志桜里

speaker_id: 12435

日付: 2018-06-19

院: 衆議院

会議名: 本会議