松田晋哉の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(松田晋哉君) 産業医科大学の松田でございます。今日は、このような機会を設けていただきまして、ありがとうございます。
今日は、研究者の立場から、今までやったことを基にしまして御説明をさせていただきたいと思います。
一ページをおめくりください。
二というところですけど、これは我が国における医師の偏在問題ですけれども、皆様御存じのとおり、日本は西日本が非常に医者が多くて東日本が非常に少ないという、こういう現状があります。じゃ、こういう医師の偏在問題に対して、例えばほかの国は何をやってきたのか、それからあと、日本で今何が進んでいるのかということを少しお話をしたいと思います。
四ページをお開きください。
これは、医師の偏在に関するフランスのデータです。これは、それぞれ産婦人科と一般医の一名当たりの人口を書いてありますけれども、真ん中のパリが非常に医者がたくさんいて、その周辺の、ドーナツ型になっていますけれども、パリ周辺の地域が非常に医者が少ないという、こういう偏在問題がかつてから大きな問題となっていました。この問題を解決するためにフランスでは、医師の養成課程、それから医師になっていく医師国家試験の改革をやっております。
五ページを御覧ください。
これがフランスの現在の医師の養成課程なんですけれども、日本と同じように、高校を卒業して、日本のセンター試験に相当するバカロレアというのを受けまして医学部に入ってくるわけですけれども、一番のポイントは、第二サイクルというのがあるんですが、これは日本でいう学生のベッドサイドティーチングに相当するものですが、フランスの場合は、実はここで日本のいわゆる初期臨床研修に近い研修を行います。いわゆるスチューデントドクターというものに近いと思うんですけれども、かなり臨床的に踏み込んだことまでやります。そういう意味で、全科の臨床を、ある程度実務を踏まえた上で、勉強した上で、卒業時に全国クラス分け試験という、これは日本の医師国家試験に相当するんですが、これによって自分の行く専門科をそこで選択することになります。
六ページを御覧ください。
この専門科なんですけれども、フランスの場合には、地域ごと、それから診療科ごとに実は毎年の募集定員が決まっております。これを超えてそれぞれの地域で医師を確保することはできません。
ここで、この数がどういうふうに決まるのかというと、これはデータに基づいて決まっております。それぞれの地域の医療の提供状況、医療需要の状況に基づいて、それぞれでその各科の専門医が何人必要なのかということを決めて、それに基づいてやるということになっております。
七ページ目を御覧ください。
これは実際の、イル・ド・フランスというパリがある地域のそれぞれの診療科別の医師数、研修に入ってくる人間を数を示したものですけれども、実は、その右側のコラムのところが、これが席次になります。例えば、二〇一三年のところで一般医のところを見ていただきますと、六百五十三人というのが、これは六百五十三人採るということなんですけれども、その七千九百九十五というのは、七千九百九十五番目であればその科を選定することができるという形で、ある程度席次によって進路が決まると、こんな仕組みになっております。
八ページ目を御覧ください。
こういう改革をやってきて何が起こっているかといいますと、地方別に医師数の変化のデータがあります。一番右がノール・パ・ド・カレといってフランスでも一番医師が少ない地域なんですけれども、そこでは一三・二%医師数が伸びております。左側の、ちょっとコルスを除いて、左の二番目のところがイル・ド・フランスといってパリ、それからPACAというのはコートダジュールとかあるところですけれども、そういうところは医師の伸び率が低く抑えられている。こういう形で、国がある程度、卒前の教育と卒後どこに行くかということを、ある程度関与することによって医師の適正配置をやっているということであります。
このように、地域間、ただし、この地域間の配分はできるんですけれども、同じ地域の中での都市部と中山間地域ではやはり偏在問題が残っているという、これは実はフランスでも大きな問題として残っております。
九ページ目を御覧ください。
フランスでは、ベルランド報告という非常に有名な報告があるんです。これは何かというと、なぜ若い医師が地方に行ってくれないかということを調べた非常に包括的な調査なんですが、やはりいろいろと、上の世代と若い世代は医療に対する意識が変わってきています。一番大事なことは、やはり医師は、非常に医師といっても自分のプライベートな生活をかなり重視するようになってきている。それから、やはりいろいろな技術を学ぶことができる都市部を志向している。それから、ソロプラクティスよりはグループプラクティスを希望しているということで、最近やはり病院医師を希望する者が増えているという、そういう特徴があります。
十ページ目を御覧ください。
じゃ、我が国は何をやっているのかということですが、今、これは私たちが厚生労働省の研究班の中でもやらせていただいているものですけれども、実は日本では今地域医療構想というのが走っております。この地域医療構想って何かといいますと、そこに書いてありますように、医療機関から収集されているレセプト情報を国がデータベース化したナショナルデータベースというのがございます。これを基に地域別に傷病別、年齢別、病床の機能別の入院受療率が計算できます。これを用いますと、それぞれの年度でどのくらいの患者数が機能別にいるのかということが計算できます。これを病床利用率で割ることで病床数が推計できるという、現状追認型ですけれども、こういう推計ができるようになっております。これを用いましていろんなことができるわけです。
次を少し具体的に御説明したいと思います。
十一ページを御覧ください。
これ、ある地方の医療圏、かなり人口が減少していく医療圏ですけれども、二〇一〇年、二〇三〇年、こういう人口構成になっていきます。その一方で、これを前提としまして現在の入院受療率を考えますと、入院患者の推計はこの右下のようになります。全体としてはもう減少傾向にあります。特に分娩が非常に減っていて、増えるものとしては肺炎ですとか骨折とか、いわゆる急性期というよりも急性期以後の患者が増えてくると、こういう現状があるわけです。
十二ページを御覧ください。
じゃ、この医療圏どうなるかというと、そうしますと、やはりこういう人口動態ですので、例えば二〇二五年でいいますと、やはり高度急性期、急性期という病態の患者数は少し減ってくる。ただ一方で、その後のポストアキュートのところの回復期が増えてくる。慢性期も実は、慢性期としては増えるんですけれども、仮にその病床を適正化するとすればこのくらいの数になる。こういう形で実は今、全国のいわゆる構想区域ごとにこういう機能別の病床数の推計というのが二〇二五年、二〇四〇年という形で各地域に示されているところでございます。
十三ページを御覧ください。
そうしますと、これ非常にざくっとした考え方になるんですけれども、この地域医療構想で必要病床数が大体推計できますので、例えば病床当たりの医師数がどのくらい必要なのか、適切なのかということを、ここ掛け合わせますと、それぞれの地域で将来の医師の需要がどのくらいになるのか、こういう推計ができます。恐らく地域単位での大まかな医師数というのはこういう形で推計できると思うんですが、専門診療科別の医師数をどういうふうにするかということについてはまだもう少し研究が必要だろうと考えております。
じゃ、続きまして、十四ページ御覧ください。
高齢化に伴う医療ニーズの変化への対応ということです。
十五ページを御覧ください。
これは、私どもの研究班でやりました、いわゆる二〇二五年にどのくらいの病床数が必要なのかということを推計したものですけれども、これ実は、右側も大事なんですけれども、左側のものが非常に重要になります。これ、現状の分析なんですが、二〇一三年医療施設調査では、この国は療養病床と一般病床が合わせて百三十四・七万床ございます。右の方に今度はその翌年に行った病床機能報告、各病院がどのくらいの病床を持っているのかということを報告したものですが、まず見ていただきますと、合計で百二十三・四万床。療養病床のところと慢性期見ますとほぼ一緒ですので、すると、このデータは何を意味しているかというと、届出漏れを加味しても、この国は現時点で全国でいうと六万床から八万床の一般病床が動いていないということを意味します。実際これ、非常に高齢化が進んでしまったところでは既にもう高度急性期、急性期というフェーズの患者さんが減ってきておりますので、そういうものをどういうふうに、これが全国に広がっていきますので、こういうデータに基づいて将来のことを考えていただくということが重要だろうと思います。
ただし、今度右の上の方を見ていただきたいんですが、仮に今現在入院している人たちがそのまま入院するとしますと、実はこの国は百五十二万床必要になります。これは何かといいますと、いわゆる、少し専門的用語になるんですけれども、医療区分一相当という、少し慢性期の中では軽い入院患者さんがこれから激増します。この人たちをどこで見るのか。療養病床で見るのか、介護で見るのか、在宅で見るのかということがこれから問題になるわけです。実は、この問題というのは地域によって大きな差があります。
十六ページを御覧ください。
これは東京都内二地域の人口推移ですけれども、江東区と多摩市です。全く違った様相になります。江東区は相変わらず建設ラッシュが進んでいますので、人口が増えております。多摩市はもう、いわゆる郊外型のところですので、二〇二〇年以降人口が急速に減少していきます。
十七ページを御覧ください。
これは入院の推計なんですけれども、有明地区の開発によって、江東区は分娩以外はこれから急性期も含めて入院需要が非常に増加していきます。片方で、多摩市の方は、高齢化に伴って分娩を除くほとんどの傷病で入院需要が増加するんですが、これは急性期よりは急性期以後の需要が増加することを意味しています。要するに、それぞれの地域でどのフェーズの患者が増えてくるかということが違うわけであります。
十八ページを御覧ください。
これは、東京都の中でもう実は実際に起こっていることです。東京都は、人口の高齢化率は若干低く見えるんですけれども、そもそもボリュームがすごく大きいので、いわゆる高齢者の数としては物すごい数がいます。これは、DPCというものをやっている急性期病院に肺炎で入院している患者さんの中身を見たものです。
見ていただくと分かりますように、まず肺炎がどの地域でも増えています。なおかつ、この緑色のは何かといいますと、これ実は誤嚥性肺炎です。要するに、もう既に要支援、要介護状態になってきている人たちからの肺炎が非常に増えてきていると、こういう問題にどういうふうに応えていくのか。
これは十九ページを御覧ください。
実際、これは都内のある急性期病院の三十分診療圏の肺炎入院患者数の推計というのをやってみました。そうすると、二〇一〇年から二〇四〇年にかけて非常に、一・五倍ぐらいに肺炎患者さんが増えるんですけれども、見ていただいたら分かりますように、増えるのは六十五歳以上の高齢者だけです。
二十ページを御覧ください。
研究班の方ではこのSCRという指標を作っているんですが、これは年齢を調整してその医療行為がどのくらい行われているかということを考えるための指標です。これ一〇〇より大きいということは、年齢の階級を補正してもそれが多く行われていることを意味します。
二十一ページを御覧ください。
区東部、南多摩。江東区がある区東部とそれから多摩市がある南多摩を比較しておりますけれども、両方とも現時点では診療所機能は維持されていますが、いずれも、ただ、一〇〇を切っていることは見て分かると思います。
それから、一般病棟の方でいいますと、南多摩の場合には急性期はもう少し不足ぎみなんですけれども、それ以上に大きな問題は、区東部のところの療養病床が三三・七、非常に慢性期の入院機能が少ないということです。
訪問診療につきましては現時点である程度できているんですけれども、例えば都心部においてこれから慢性期になったらどうするのか、療養病床を増やすことは非常に難しいと思いますので、在宅医療を増やさなければいけないわけですけれども、その在宅医療をやりやすいような町づくりをどういうふうにしていくのかということを考えなければいけない、そういうデータが分かるわけであります。
それから、二十二ページを御覧ください。
これは医療と介護の複合化を示したものです。これ、ある自治体において在宅患者さんがどういう病気を持っているかということを調べたものです。見ていただいて分かりますように、例えば糖尿病ですともう三〇%ぐらいの方が、介護を受けている方の三割ぐらいの方が糖尿病を持っている、あるいは認知症を持っている、あるいはCOPDや慢性心不全を持っているということで、いろんな病気で、もう介護の現場の方は病気を持っているわけです。
こういうものにどういうふうに対応していくのかということを考えたときに、本当に今の医師のつくり方でいいのだろうかと。これからこういう複数の疾患を持ってくる患者さんが非常に増えてくる、しかも慢性期の患者さんが増えてくる、そういう方たちを診てくれる医者をどのようにして育てていったらいいかということにつきまして、やはり、私は今大学にいるわけですけれども、考えなければいけない時期に来ていると思います。
二十三ページを御覧ください。
これは脳梗塞で急性期に入院した患者さん、ゼロというところは入院した月ですけれども、その半年前の状況を見ていただいたらいいんですが、例えば脳梗塞ですと二五%の方が既に介護保険を使っています。それから、股関節の骨折で入院された方は、半年前に四八%の方が既に介護保険を使っています。
要するに、介護保険の現場から急性期の問題が起こっている。そうすると、この急性期と回復期をばらばらに考えるということ自体がもう少し無理が来ているんだろうと思います。そうすると、このような構造変化に適した医師をどういうふうに育てていくかということをやはり考えていかなければいけない時期に来ていると思います。
二十四ページは、そういうものをどういうふうに体系化していくかということの一つのポンチ絵ですけれども、それぞれの地域でこのような、いわゆる日常生活圏域で地域包括ケアを支えるような医療をどういうふうにつくっていくのか。それを関係者が、やはり医療の関係者、介護の関係者がまず合わさっていろいろなことを考えていく、それに基づいて、それを医学教育やその他の医療職、介護職の教育研修に反映させていくということが今求められているんじゃないかなというふうに思います。
以上でございます。どうもありがとうございました。