植山直人の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(植山直人君) 全国医師ユニオン代表の植山です。
 本日、参議院厚生労働委員会でこのように発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。心からお礼を申し上げます。
 私は、医師の労働組合の代表でありますから、働き方改革を中心に意見を述べさせていただきます。
 まず初めにですが、ちょっとこれはお願いになりますけど、現在、厚労省の医師の働き方改革に関する検討会が開かれて議論がされていますが、残念ながら医者の労働組合の代表は一人も入っておりません。労働側から三名の方が入っているかもしれないんですけど、医師の労働組合の代表はいないということで、医師の働き方改革なんで、医師の労働実態とか労働現場を知っている労働組合側の人がいないというのは非常に納得がちょっといかないところがあります。簡単に終わるものではないし、今後このような検討会が引き続き行われていくというふうに私は考えていますので、人選等に対してはそういう面もしっかりと検討していただきたいということをちょっとお願いしたいと思います。
 本日は初めてこういう場で発言させていただけるということで、これに関しては本当に心からお礼を申し上げます。
 私の基本的認識ですけど、医療法、医師法改正においては、医者の働き方改革、また少子化対策、これを推進するような内容であるべきであるというふうに考えています。
 働き方改革においては、ILOですね、こういう条約である、要するに、働き方のグローバルスタンダードが非常に重要であると。非常に日本の医師の働き方というのは特殊なんですね。EUの医師の労働に、働き方に学ぶ必要があるというふうに考えています。例えばILOは八時間労働制、これ工業労働者ですけど、今から約九十九年前にこれを条約として第一号議案として採択しています。この頃からワーク・ライフ・バランスを考えているんですね。そういう意味では、ヨーロッパの医師の働き方に関して非常に重要な参考にすべきものであるというふうに考えています。
 それから、私が最近感じるのは、将来日本の人口が減るので医師を早く減らすべきだというような主張があります。ただ、これは少子化対策が失敗することを前提にしたような話だと私は考えます。よく将来八千万人に人口が減るというふうな資料が出てくるんですけど、じゃ、その先には六千万人に減って、四千万人に減って、要するに、日本はなくなってしまうというようなことを後押しするような議論ではないかというふうに、つまり日本の亡国の理論というふうに私は考えるんですけど、本来やるべきは、医療は少子化対策として何ができるのか、どういうことが医療が行うべきなのか、これを考えて政策化することであるというふうに思います。
 それから、必要医師数というのが非常に問題になってきますけど、文明が発展すれば医者は必要になってくると。第二次産業から第三次産業、そしてITとかバイオ、こういうものが発展する中で国民の健康に対する意識も非常に高まるし、人権も発展していくと、こういう中では世界的にも医者は増え続けているという現状を踏まえる必要があるというふうに考えます。
 日本の医療が抱える問題についてちょっと若干考えてみたいと思います。絶対的な医師不足というところで、三ページの資料、図の一と二を見ていただきたいというふうに思います。
 日本の医師数とOECDの医師数の比較ということで、明らかに日本は伸び率も低くて、OECDの三割方少ないと。図二を見ていただくと、赤い線が日本の医者の労働時間です。過労死ラインをはるかに超えている、これ男性と女性と分けていますけど。ヨーロッパでは、五十時間ちょっと超える国はありますけど、多くの国が五十時間以下ということで、これだけ労働時間に開きがあるということですね。これはやっぱり医師数の問題とリンクしていると捉えないと説明が付かないのではないかというふうに考えています。
 それで、私たち、昨年、勤務医労働実態調査二〇一七というものを行いました。その中から特徴的なものをちょっと御紹介したいと思います。
 当直問題ですね。日本では、通常勤務を行った後、夕方五時から次の朝八時まで当直を行って、明くる日も通常勤務という非常にあしき伝統があります。この点に対して調査をしましたが、交代制勤務があるかと答えると、なしが八三・八%ですね。二交代というのが五%、これは若干五年前の調査より増えたかもしれませんけど、三交代が一・一%。当直明けの勤務、通常勤務が七八・七%と、相変わらず非常に多い。半日でいいというところが若干増えて一五・四%ということで、三十時間を超える長時間労働が相変わらず続いていると。過労死の元凶だと私は思っています。
 それから、当直明け後の休みについて、休日問題で調査しました。先月の休みがゼロ回というのが一〇・二%いました。労働基準法には四週間で四日以上の休息というのが明確に述べられていますが、それを満たしていない医者は三割を超えていると。
 次に、安全性の問題ですが、医療の安全性で、当直明けの勤務では八割の医師が集中力、判断力が低下すると回答しています。約七割の医師が医療ミスが増えると。これは当然のことでありますが、実態としてこういう数値が出ているということですね。
 それから、健康。医師の健康について聞きますと、健康と答えたのは五八・二%で、健康に不安が三三・四%、大変不安が三・八%、病気がちが二・九%ということで、非常に医者の健康状態は悪いと。この健康に不安に思っている方々はまず当直には入れないと思うし、将来的には常勤医として働くことを諦めざるを得ない、そういう医師が増えてくると。非常に悪循環になりやすいというふうに感じます。
 それから、医師の労働条件で何を一番改善してほしいかというと、断トツで完全な休日を増やしてほしいというものが出ました。それから、改善に有効な方法はと、これも一位は断トツですが、医師数の増員であるということです。
 それから、次の問題が法案とは非常に関わってくると思うんですけど、診療科の偏在ですね。これが労働条件と関わるかという問いをしたところ、九割の人が診療科の偏在と労働環境は関係しているというふうに答えました。ここまで高いのかというふうに思います。
 七ページにある図の十ですね、これも非常に大事なデータだと思います。自分が診療科を選択したときに労働環境関係したかという調査です。五十代、六十代の医師は、八割の人は労働条件なんて関係なかったよという答えをしていますが、若い世代になるとだんだん増えていって、特に二十代になると極端に、もう五〇%以上の人が労働環境を考えて自分の診療科を選んだというふうに、世代間格差が大きくなっていると。
 図十一を見ていただくと分かるように、医師の労働といいましても診療科によって大きく違うと。これちょっと母数が少ないので、診療科になると必ずしもこれが正しいデータだとは思いませんけど、傾向は非常によく出ていると。救急、産婦人科はとっても大変だと。眼科、リハビリは、当然、リハビリ深夜にやることはありませんし、緊急で呼び出されることもない、そういうことを考えると、非常に労働時間、時間外労働は少ないと。
 これを今の若い医学生が見たときに、これを見てどの科に行こうかというときに、労働環境を重視する医師は決して救急や産婦人科に行けないと、なおさら、こういう非常に厳しい中で働いている診療科は偏在が進んで悪化してしまうと、そういう事態になりかねないということですね。
 それから、図十二については、先ほど厚労省の検討会に医療からも入るようにということをちょっとお願いしましたけど、検討会の医療界の方々の発言は、医者は労働者ではないであるとか上限規制は医者にはなじまないという発言が多かったんですが、実際聞いてみると、労働時間規制に賛成する医師が五一・六%、過半数を超えています。反対している人は一三・九%と。今の状態では、厚労省の検討会に入っている医師の方々はこの反対する一三・九%の人に偏っているのではないかということがちょっと感じます。
 それから、そうですね、働き方と地域医療、ちょっとお話ししたいと思います。
 先ほど見たように、日本は非常な過重労働によって現場の医療を支えていますので、医師数を増やさずに働き方改革が進めば当然医療崩壊が起きてしまうと。どういうことが起きるかというと、一番に救急からの撤退ですね、当直体制回せません。外来の縮小。それから産科、小児科からの撤退、周産期医療も守れません。それから医療機関の経営破綻、これは救急とか外来縮小すれば当然収入減ります。それから五、当然医療の質の低下に結び付くと。六番、集約化が進んでいくとアクセスの低下や利便性の低下、こういうことが起きると。地域によっては、これがもう医療崩壊に直結する地域がいっぱい出てくるんではないか。特に、私は、東北、北海道は非常に厳しいんではないかというふうに思っていますが、ここを医師の働き方改革とどう整合性を持ってやっていくかということは労働組合にとっても大きな課題だというふうに感じています。
 それから、法案の問題点として私はちょっと気になった言葉がありまして、最初に提案理由が説明してあるんですね。そこに、医師数については、戦後一貫して増加しているというふうに書いてあって、偏在に対してはまだ解消されていないと。まるで医師数問題が解消されているような記載になっています。戦後一貫して医者は増加しているというけど、増加していない国はあるんでしょうか。多分、戦後一貫して医者が増加していない国は一つもないというふうに私は思っています。だから、この認識は非常に問題があるんではないかと。特に、日本は医師数抑制の閣議決定二回、八〇年代と九〇年代にやって、その後、過労死が非常に多く出たということをやっぱり踏まえる必要があるんではないかと。
 偏在対策で、医師確保の体制を都道府県に強化するということは重要な点だというふうに思います。ただ、医者が非常に少ない中でこれが非常に強化されると、都道府県間での医者の取り合いが起きかねないと。本当に必要なところに行くんじゃなくて、力を持っている都道府県に行ってしまうんではないかということが危惧されますので、この点に対してはそういうことが起こらないような法案にしていただきたいと。基本的には、都市部から医者の少ない過疎地、地域に医者を流すというような、そういうイメージを私は感じるんですが、都市部の医師不足をどうするのか、大学の医師不足をどうするのか。厚労省の調査でも、地方より都市部の医者の方が労働時間長いんですね。で、一番労働条件が悪いのは大学です。これはもう断トツで大学の労働条件は悪いと。
 先週、読売新聞の論点スペシャルに聖路加病院の福井院長がコメントをしていました。日本でベッド数当たり一番医者が多いだろう病院の一つなんですが、その福井先生が医者が足りなくて困っていると。特に救急、これはもうずっと今も募集しているけど全く来ないと。あれだけ医者が多い病院でさえ医師が足りないと言っていると、このことを真摯に受け止めて考えていく必要があると。
 偏在対策というのはしきりに書いてあるんですが、診療科の偏在に対しては全く触れられていないです。さっきも言ったように、今のままでいくと診療科の偏在はどんどんどんどん広がっていくと。これに対する対策をきちっと入れていく必要があると。
 求められる対策として私が考えたのは、当然、働き方改革を進めるんであれば、長時間労働をなくす、三十数時間なんてばかなことは起きないようにするとなると、EUのような交代制勤務を取る必要があります。これを取った場合の必要医師数が全く分からないと。だから、現状で、先ほども言いました、医師が少ないために地域によっては医療崩壊が本当に起きかねない。かといって、大学も非常に悲惨な労働条件になっている。これをどうしていくかという、本当に必要な医師数ですね、働き方改革をやった上での。これを地域別と診療科別とセットにしてやる必要があると。で、必要な医師数を動員すると。
 さっきフランスの話が出ましたが、やっぱりどの地域に何科の医者が何人必要かという数字が出ない限り、対策は打てないです。ただの医師数、合計で何人という話では、少子化対策でいうと、地域で子供を産み育てるということが一番大事だと思うんですが、小児科、産婦人科がどの程度要るかと、そういうものも含めて出す必要があると。
 医療の安全面ですね。安全に対して私たち厚労省に要求してきましたけど、担当する部署もありません。トラック業界では、一日十三時間、例外でも十六時間以上拘束してはいけないというようなルールがあります。パイロットはもっと厳しいです。四、六、十一、一日のフライトは四回まで、飛行時間六時間まで、労働時間十一時間まで、これ全部守ります。飛行機落ちると会社自体の存続が危ぶまれると。
 あと、大学の再生ですね。大学は補助金等を非常に減らされる中で、研究、臨床、教育を十分にやる人材がいません。これをやっぱり手当てしないと、大学は医師養成の要ですから、診療科の偏在に対してもうまく機能しないと。
 それから、応招義務ですね。これに関しては、個人で対応できるものではないです。行政の責任、医療機関の責任、医師個人の責任をきちっと分けて、これは明確にするべきだと。
 最後に、自由開業医制の見直しということを私はちょっと書いてみました。要するに、勤務医の労働条件は守られなくて、自由開業医制だけは守ってきたというのが日本の現状だと思います。その点はフランスと非常に大きく違うと。医師にとっても国民にとっても納得できるようなやっぱりルールが必要で、ただの自由という言葉だけが独り歩きするのは非常に良くないと。だから、どの診療科を選ぶか、またどの地域に開業できるのか、こういうのも含めたルール作りのコンセンサスが必要ではないかというふうに思っております。
 御清聴ありがとうございました。失礼いたします。

発言情報

speech_id: 119614260X01220180515_013

発言者: 植山直人

speaker_id: 3097

日付: 2018-05-15

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会