岩永理恵の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(岩永理恵君) お願いいたします。
 日本女子大学で教員をしております岩永と申します。お手元にあるレジュメに沿ってお話させていただきます。
 私は、日常、日本の貧困問題とその解決策、特に生活保護に関係して、最近では住宅や被災者の支援にも目を向けて研究をしてまいりました。今、既に御発言なさった二人と違いまして、研究者の立場で少し、あとちょっと今日とても緊張しているんですけれども、この際なので先生方に根本的な問題を一緒に考えていただきたいと思いまして、発言させていただきたいと思います。
 まず、生活困窮者自立支援法についてなんですけれども、生活困窮者自立支援法とは何かというふうに書かせていただいたのですが、五年前に法ができまして、実施されてからはちょうど三年程度経過していると思います。一方、後で取り上げます生活保護法は七十年以上の実績があって、対照的かなと思います。どちらも今回の法改正については私はやや小規模な内容かなと思うんですが、生活保護法の歴史を研究しておりまして思うのは、このように国会で議論されるということがほとんどないまま通り過ぎてきて、何年か置きに国会で議論されるということそのものがとても大事だなと思って、今回の議論を聞いております。
 レジュメのところで、二〇一三年の法成立時に、厚生労働省がこの法について主な対象者は次のように説明されていたと思います。この内容について、今回、二〇一八年の法案では基本理念が創設されまして、主な対象者と制度の目指す目標とされていたものが法案に書き込まれたのかなと理解しています。
 生活困窮者の定義についても少し内容が付加されたわけですが、では、主な対象者というのは誰なんだろうと思ったときに、まだ絞り込まれていないのではないかなと思います。現場レベルで明らかになったことはケースとしても知られておりますし、件数は明らかにされているんですが、残念ながら現時点で実績データが十分に検討されているとは言えないのではないかなと思います。特に私たちの研究者の立場で分析可能なデータというのが少ない、現時点ではとても少ないので、是非次の見直しのときにはその成果をきちんと検討した上で法をもう一度見直していただく必要があるのではと思います。
 その際、現時点でもすぐに測定可能だと思われるのが生活保護の捕捉率です。つまり、生活保護を受給していない最低生活費以下で暮らしている方というのは、広い意味で生活困窮者となり得る人たちを測定している数値だと思いますので、これを公表し、これを上げていくということと、そこに入ってくる人を少なくするということが生活困窮者自立支援法、そして生活保護法共に目指されるべき方向ではないかと思います。
 まだ、はっきり言って三年分の内容が私自身よく理解できておらず、今後この法制度について、どこに重点を置いて、いかに発展させていくのかというのは難しい問題だなと思いますし、私で十分、何というか、先生方に示唆できることがあるか分からないんですが、今回ここの参考人にお呼びいただくに当たって、金曜日と火曜日の先生方の質問を拝見しまして幾つか挙がった項目があるなと思ったんですけれども、一つは自治体間格差の是正と任意事業の更なる普及、それから一年委託契約の見直し、支援員の待遇の充実、バーンアウトしない仕組み、支援員の質の向上、研修の充実というのが挙げられていて、それぞれ私も大事だろうなと思います。
 ただ、この先もう少し発展させていく上で考えたいのは、ここに関係している人というのは大変多様で、まず、国、地方自治体、委託機関、それから、ここには書いていないですけれども、行政の関係者、もちろん支援員とそれから利用者、様々な人が関係していて、その関係する方一人一人というか、一つ一つの立場を思い浮かべて考えてみますと、上記で欠けているなと思われた点としまして、利用者の制度の使い勝手というのはちょっと考えてみる必要があるのではないかと思います。その際、これは支援員の待遇充実にもつながることなんですけれども、現在の法体系では各事業の最低基準というのが整備されていないのではと思います。
 例えば、次の専門職への信頼を高める方策というのにつながるんですけれども、支援員の資格といいますか、どれぐらいの力量のある人であればこの制度の支援員として適当なのかということがないと、すばらしい実践はいろんなところで聞けることができるんですけれども、全国いろんなところがあると思いますので、それを底上げしていくには何らかの基準というのは必要ではないかなと思います。
 一方で、いろんな基準を作っても、先ほどの奥田参考人のお話にもあったように、生活困窮者の人たちを支援していくというのは、それは多分倫理観だと思うんです。その倫理観を育てるには、専門職としての信頼を、スキルを高めて、その教育を充実していく必要もあるんだろうと思います。その際、研修やスーパーバイザーを付けるというようなお話があったと思うんですが、では、果たしてこの研修の講師やスーパーバイザーとして適切な方がどれくらいいるんだろうというのがやや疑問なところです。
 私も県の研修講師を実はしておりまして、毎年、まだ二年目なんですけれども、何で私がやるんだろうと思いながら試行錯誤しているんですが、その研修する人間、それからスーパーバイズする人の育成も視野に入れていただければなと思います。
 また、現時点では難しいとは思うんですけれども、私が大学で社会福祉学科において学生を指導し、ソーシャルワーカーを育てるという仕事をしておりますが、その際、実習に学生を出すんですけれども、その実習先として現在生活困窮者自立支援法の関連機関は入っておりません。それは、先ほど申し上げたような支援員の体制が脆弱であるということによるんだとは思うんですけれども、とてもいい実践をされていらっしゃるところがたくさんあって、是非学生にもそういうところに実習に行ってもらいたいなと思うんですけれども、社会福祉士法の改正は予定されていると思いますので、その法や施行規則の改正などの際にも御考慮いただければと思います。
 そして、支援者の待遇、それから様々なスーパーバイズなどを含めて支援者がエンパワーメントされて、やりがいの搾取にならないような状況をつくっていただければなと思います。
 次に、生活保護法の改正についてなんですけれども、この点につきましては、私は正直、今回の法改正に入っていないことの方が重要だと思っておりまして、一つ目は保護基準の見直しについてです。
 この保護基準については現在水準均衡方式を使っていると言われますけれども、これは一九八〇年代に採用された方式で、私が研究するところでは八〇年代から既に行き詰まっている方式だと思います。事実としては、二〇〇三年から十五年間、全体の傾向として保護基準は引き下げられていて、水準としては下がっています。
 そのこと自体をどう考えていくかというのは次にお話ししたいんですけれども、近年の基準の見直しの結果、これは厚生労働省の資料ですが、レジュメの三枚目にございますように大変算定が複雑です。三年掛けて基準を下げていくに当たって、このような計算式をしなければ基準を算定できないので、私は授業で学生に自分の生活保護費を算定させるんですけれども、これはもう、こうなってしまうと学生に算定させるのはちょっと難しいなと思えるほど複雑になっていて、これはケースワーカーの方にも理解しにくいと思いますし、さらに利用者の方にどう説明するんだろうというのが疑問なところです。
 二点目に、では、保護基準と最低生活費についてどういう議論をしていけばよいのかということについてなんですが、まず、審議の中でも基準見直しの影響を測定すべきではないかという御意見があって、私もそのとおりだと思うんですが、もう一つ検討していただきたいのは、基準を見直したということは、基準が下がったので、そのことによって給付を受けられなくなった世帯がいるということが一番の問題だと思います。なので、その世帯の推計というのは必要ではないかと考えます。
 それから、保護基準の水準均衡方式というのが一九八〇年代から行き詰まっているというお話をしましたが、では、今後どうしたらいいのかということで、二枚目の点なんですけれども、生活保護に負わされている役割というのは物すごく大きくて、負荷が大きいなと感じています。他制度も準拠していて、基準が下がることでほかの制度の基準も下がってしまうと。それはやはり良くないことだとは思うんですが、その全ての役割を保護基準が担うというのは重いと思いますので、保護基準の算定と最低生活費の在り方の議論は分けて、後者は参照基準として、こちらを最低賃金、ほかの非課税限度額とかにも準拠してもらうというのがよいのではないかと思います。
 また、保護基準の議論をする際には、これは運用で決められていることですけれども、資産の額、まあ資産といってもそんなに資産をたくさん持っている方が受給者の方にいるわけではないので、手持ち金の額と扶養義務の範囲の検討を併せて行っていただきたいなと思います。これを議論するのに先ほどの捕捉率の推計も必要だと思いますし、生活困窮者への波及というのも検討できるのではないかなと思います。
 最後に、実施体制についてなんですけれども、ケースワーカーの数が少ないというのはよく取り上げられるんですが、そもそも行政の職員ですので、質は余り問われてこなかったと思います。そのことの問題も大きいと思います。
 他方で、行政に課される業務が相当多くなっているなと感じておりまして、先ほど見ていただいたこの資料で、二〇一三年から三年間、保護基準の変更があったわけですけれども、新聞報道などでも、システムの間違いによる過払いや過少支給というのが報道されていました。
 システムについてなんですが、これは最後のものですけれども、自治体によって使っているシステムが違うわけです。つまり、自治体ごとに開発している。もちろん基準が地域によって違うということはあると思うんですけれども、このようなシステムの構築こそ国がしていただければとてもよいのではと思う点です。
 最後に、法改正をむしろしていただきたいなと思う点について三点挙げさせていただきました。
 一つは、高等学校等就学費を教育扶助に入れていただきたいということです。これは、大学進学が今問題になっていますけれども、高等学校等就学費は今、生業扶助に入っていまして、保護の要否判定の際に用いられる基準に入っておりません。高等学校等就学費を教育扶助に位置付けることも重要だと考えます。
 それから、先ほどの扶養義務の範囲については夫婦間と未成熟の子の親に限定する、又は保有可能な手持ち金額を明記することも必要と考えています。
 以上です。ありがとうございます。

発言情報

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発言者: 岩永理恵

speaker_id: 5172

日付: 2018-05-24

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会