嶋津暉之の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(嶋津暉之君) 今日は参考人としてお呼びいただき、ありがとうございます。水源開発問題全国連絡会の嶋津と申します。この組織は、河川、ダム問題の市民団体の全国的なネットワークであります。
 今日、私は、今日お配りしている資料がございまして、陳述書の内容と、もう一つ、それからスライドの代わりということでこういうのがあり、この二つを使って陳述をさせていただきたいと思います。
 まず、陳述書の方を御覧いただきたいと思いますけれども、私は、本法案について反対の立場で意見を述べさせていただきます。
 所有者不明土地の全国的な増加に伴って、公共事業の推進においてその問題への対応が必要であるということ、そして、所有者不明土地の利用の円滑化を図る必要があるという現状については異論はありません。そのとおりであると思います。
 本法案は三つを柱にしております。一つは、国、都道府県知事が事業認定した公共事業について、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定する収用手続に変えることであります。二つ目は、地域福利増進事業を創設し、利用権を設定して所有権不明土地の利用を図ることであります。三つ目は、土地の所有者の探索のために必要な公的情報を行政機関が利用できる制度を創設することであります。
 このうち、二番目の地域福利増進事業の創設、そして三番目の土地の所有者を探索する制度の創設は必要なことでありますので、これについては異論はありません。
 問題は、一番目の収用委員会に代わって都道府県知事が裁定する収用手続に変えることであります。土地収用法が定める収用手続は、憲法二十九条が保障する土地所有権そのものを公共のために権利者の意に反してでも奪うという財産権の侵害度が最も高い手続であります。権利者に対する十分な手続保障があってこそ公共目的で権利を奪うことが正当化されるのでありまして、その手続として収用委員会という第三者機関による公開審理は不可欠のものであると考えます。
 収用委員会は、公共の利益と私有財産との調整を図るために、公正中立な立場で判断する権能を与えられた行政委員会であります。都道府県知事等の機関から独立して職務を行うものであり、収用が財産権の侵害度が最も高い手続であるからこそ、収用委員会による公開審理が必要とされているわけであります。
 ところが、本法案では、所有者不明土地とされる土地は、収用委員会の公開審理をなくし、都道府県知事の裁定に代えることになっております。となりますと、都道府県の公共事業の場合は、事業者も、そしてこの収用の裁定者も同じ都道府県になります。都道府県の判断だけで進むことになり、公正な収用であるかどうか、所有者不明土地とされているが調査を尽くしたものであるかどうかについて第三者機関によるチェックが行われないことになってしまいます。
 現状の土地収用法でも、この所有不明土地はいわゆる不明裁決、すなわち土地収用法四十八条四項ただし書の適用により、収用委員会の公開審理を経て収用することは可能であり、実際に今まで行われてきているわけであります。必要に応じて収用委員会の不明裁決を続ければよいだけの話であります。
 そして、もう一つ問題があります。
 本法案で、収用委員会の公開審理をなくし都道府県知事が裁定するようにすること、さらに、国土交通省が近く策定する事業認定の円滑化マニュアルを普及させることによって、事業認定申請から事業者が所有権を取得するまでの期間を大幅に短縮することになっております。しかし、所有者不明土地への対応が必要だということを名目にして収用手続の簡素化が進められれば、必要性が希薄な公共事業が一層まかり通る可能性が高くなることを強く危惧せざるを得ないわけであります。
 反対意見を無視して、不要不急の公共事業、自然や地元住民の生活に多大な影響を与える公共事業が強行されているという現実があります。その事業用地の取得のため土地収用法により事業認定の手続が取られるわけですが、事業認定の制度は形骸化しておりまして、所定の手続さえ踏めば事業認定が得られ、強制収用が法的に可能となるようになっているわけであります。
 公共事業の必要性の是非について厳格な審査が行われるよう、事業認定制度の抜本的な改善が必要であります。事業認定の厳格化への改善なしに土地収用手続の簡素化を進めれば、必要性が希薄な公共事業が一層まかり通ってしまうことになることを危惧します。
 現行の事業認定制度がどれほど形骸化しているかを示す象徴的な例があります。もう一つのスライドの形になっております資料の二枚目を御覧いただきたいと思います。
 長崎県が佐世保市に隣接する川棚町に建設を予定している石木ダムであります。目的は、佐世保市水道の水源確保と川棚川の洪水調節であります。
 この石木ダムの予定地では、十三世帯の地権者が約四十年前から絶対反対の姿勢を堅持しております。この十三世帯の土地と家屋を強制収用すべく、長崎県と佐世保市は国土交通省九州地方整備局に事業認定の申請を行いまして、二〇一三年九月に事業認定が告示されました。そして、二〇一四年九月から長崎県収用委員会による審理が進められているわけであります。
 しかし、この石木ダムの必要性は極めて疑わしいものであります。
 三枚目は、これは石木ダムの問題を扱った、詳しく書いた新聞記事です。後で御覧いただきたいと思います。
 四枚目を御覧いただきたいと思います。上の方のグラフですけれども、利水面の話です。
 佐世保市の水道の水需要は、二〇〇〇年代に入ってから、このグラフで示すように、減少の一途をたどっております。かつては十万トンを超えておりましたが、今は八万トンを切っております、一日当たりですね。ところが、佐世保市の予測というのは、この実績を無視して、どんどん今後急速に伸びるという架空の予測を行っているわけですね。佐世保市にとって石木ダムが必要だという話をつくり上げているわけであります。
 もう一つの治水についてはどうかということですけれども、下の方の図を御覧いただきたいと思います。
 川棚川流域図を示しておりますが、石木ダムが造られるのは、川棚川に下流の方で合流する石木川に造られます。この石木ダムで対応できる流域面積は、川棚川流域全体の僅か十分の一です。余りにもこの石木ダムの効果は限定的なんですね。こういうものに河川予算を使うのではなくて、河川改修の方にその石木ダムの予算を回すべきです。ということで、この石木ダムの必要性は極めて疑わしいということです。
 にもかかわらず、次の五枚目の資料を御覧いただきたいんですが、この事業認定が告示されて、実際に収用委員会の審理が進められているわけであります。ということは、どういうことかといえば、現行の事業認定制度に根本的な欠陥があるということです。この事業認定のフローチャートが下の方に書いてありますけれども、どういう問題があるかを次にちょっとお話をしたいと思います。
 六枚目の資料を御覧ください。
 まず第一の問題は、認定庁の中立性の問題であります。
 事業認定は、国土交通省あるいは地方整備局ですね、国の事業あるいは都道府県知事が行う事業については国土交通省が認定庁になります。しかし、この国土交通省というのは公共事業の総元締であります。言わば、子分の行為に対して親分がお墨付きを与えるようなものであります。したがって、事業認定庁が国土交通省では、事業認定に関して公正な判断が行われるはずがないわけであります。事業認定庁を国土交通省から切り離して、中立性が担保される機関が事業認定の是非を審査するようにすべきであります。
 二つ目の問題は、公聴会がセレモニーになっているということです。
 この事業認定の過程で意見を述べることができます、公聴会で。これは三十分の範囲で意見を述べ、そして事業者とやり取りをすることができるんですが、どのような意見を述べようとも、これは事業認定に影響を及ぼすことはありません。この公聴会は、こういう今の形ではなくて、事業認定庁とは別の第三者が議長になった、そういう場で公述者と事業者が徹底した討論を行える、そういう双方向性の公聴会に変えなければなりません。
 次の七枚目の資料を御覧いただきたいんですけれども、公聴会で幾ら公述しようとも、この上の資料に書いたように、こういう意見がありました、それに対してこう考えますという、そういう対比表が作られるだけでおしまいということです。
 さらにもう一つ、三つ目の問題。学識経験者に意見聴取が行われます。これが形骸化しているということです。
 この認定庁が国交省関係の場合は、国土交通省社会資本整備審議会公共用地分科会の意見が聞かれます。しかし、これは国交省が人選した委員会でありますから、公正な審議が行われるはずがないんですよ。事業認定庁から独立した中立性が担保される委員会でなければなりません。
 次の八枚目の資料を御覧いただきたいんですけれども、しかもこの公共用地分科会は非公開で行われ、議事録も公開されません。秘密裏に行われて議事録も公開されないということですね。非公開が徹底されているわけであります。情報公開請求でこの議事録を取り寄せることはできるんですけれども、その取り寄せたものがこの下の資料です。委員の発言が全部黒塗りになっているんですね。こんなものなんですよ。これでは各委員がどういう発言、全く分からないということですね。
 ただ、極めて簡単な議事要旨のみが公開されます。それがこの九枚目の資料ですけれども、これはもう本当に事業認定が相当だという、そういう議決の結果が主に記載されておりまして、僅かに主な意見が記載されておりますが、これは、この意見を見ると、石木ダムの是非について真っ当な審議が行われた形跡がないんですね。
 ということでありますので、今の事業認定制度はこういうふうに形骸化しているわけです。必要性が極めて希薄なこの石木ダムについても、このように事業認定がされているということです。
 ということで、この三つの問題を申し上げましたけれども、これを抜本的に変えて、真っ当な審査が行われる、事業の是非について、そういう事業認定に変えなければなりません。
 あと、最後、この資料の十枚目ですけれども、石木ダムの現状を少しお話しいたしますと、今この強制収用の手続が進められようとしております。これに対して、余りにもこれはひどいではないかと、必要性が希薄な石木ダムのために十三世帯の家屋と土地を奪うのはおかしいという世論が大きく盛り上がっております。「強引な手法許されない」という新聞記事がありますけれども、これがそのことを表しているので、後でお読みいただきたいと思います。
 ということで、最後のまとめになりますけれども、所有者不明土地への対応が必要だという名目にして、本法案により、土地収用手続の簡素化が進められれば、石木ダムのような必要性が希薄な公共事業が一層まかり通る可能性が高いということを危惧せざるを得ないということであります。公共事業の必要性の是非について厳格な審査が行われるよう、先ほど申し上げたように、事業認定制度の抜本的な改善が必要であります。この事業認定の厳格化への改善なしに土地収用手続の簡素化を進めるべきではないと私は考えます。
 以上が私の意見でございます。

発言情報

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発言者: 嶋津暉之

speaker_id: 7528

日付: 2018-05-31

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会