黒田東彦の発言 (財政金融委員会)
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○参考人(黒田東彦君) 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。
まず、我が国の経済金融情勢について御説明します。
我が国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働く下で、緩やかに拡大しています。企業部門では、輸出と生産が、海外経済の着実な成長などを背景に、増加基調にあります。そうした下で、企業の収益や業況感は改善基調を維持し、設備投資も増加基調を続けています。家計部門では、雇用・所得環境が着実な改善を続けています。失業率が二%台半ばまで低下するなど、労働需給の引き締まりが続いているほか、今春の賃金改定交渉において五年連続となるベースアップが多くの企業で実現するなど、賃金も緩やかに増加しています。こうした下で、個人消費は、振れを伴いつつも、緩やかに増加しています。
先行きの我が国経済は、二〇一八年度は、海外経済が着実な成長を続ける下で、極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けると見られます。二〇一九年度から二〇二〇年度にかけては、設備投資の循環的な減速や消費税率引上げの影響を背景に、成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれます。こうした中心的な見通しに対する先行きのリスクについて見ると、二〇一八年度はおおむね上下にバランスしていますが、二〇一九年度以降は、海外経済の動向をめぐる不確実性などから、下振れリスクの方が大きいと考えています。
物価面では、企業の賃金、価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景に、エネルギー価格の影響を除いて見ると、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて、弱めの動きが続いています。もっとも、マクロ的な需給ギャップが改善を続ける下で、企業の賃金、価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も高まると見られます。この結果、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、二%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。このように、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けており、先行きについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に、下振れリスクの方が大きいと考えられます。
次に、金融政策運営について御説明申し上げます。
日本銀行は、二〇一六年九月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みの下で、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促しています。四月末の金融政策決定会合では、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする金融市場調節方針の維持を決定しました。我が国の長短金利の動向を見ますと、こうした金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが形成されています。
現在、我が国では、内外需要がいずれも増加基調をたどり、息の長い景気回復が続いています。しかしながら、二%の物価安定の目標の実現にはなお距離があります。また、経済、物価の先行きの見通しに関する不確実性についても注意深く点検していくことが必要な情勢です。こうした下で、日本銀行としては、物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために、現在の強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当であると考えています。
ありがとうございました。