竹内純子の発言 (資源エネルギーに関する調査会)
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○参考人(竹内純子君) 御紹介いただきましてありがとうございます。私、国際環境経済研究所あるいは幾つかのシンクタンク、大学等でエネルギー・環境問題を研究しております竹内と申します。今日は貴重な機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。また、ちょっと体調を崩しまして、ちょっと多分お聞き苦しいところがあろうかと思いますけれども、御容赦をいただければ幸いでございます。
私からは、日本のエネルギーミックスをめぐる諸問題と題しまして、長期的なエネルギーのトレンドあるいは基本的な考え方、世界の潮流も含めた上で、エネルギーの動向というようなところをお話をさせていただきたいと思います。
まず、早速入っていきたいんですが、これから日本のエネルギーというのは激変をいたします。どう変わるかは分からないけれども、大きく変わることだけは間違いがない。その変化をもたらすトレンドを、私、昨年九月に上梓いたしましたこの「エネルギー産業の二〇五〇年」という本の中で、四人の共著なんですけれども、五つのDということで整理をさせていただきました。
まず一つ目のDが、ディカーボニゼーション、脱炭素化でございます。これはもうパリ協定という国際的な枠組みだけではなくて、民間企業が今、低炭素化ということに向けて動き出しております。ただ、大幅なCO2削減、これには実は技術的なオプションというのはそれほどございません。
エネルギーの全体像をまずお話しさせていただきますと、日本で今使用されているエネルギーの三割程度が電力で、あとの七割というのは非電力。要は、例えばガソリン車でガソリンを燃やす、あるいは工場のボイラーをたく重油、そういった直接燃焼と言われるものが七割を占めております。
この直接燃焼から出るCO2を減らすには、二つ。一つは高効率化、二つ目は使用抑制ということになりますが、高効率化は今までもかなり進められておりますし、これ以上なかなか難しいところもある。もちろん、これからもやるんですが、難しいところもある。使用抑制となると、これは国民生活への抑制あるいは負担ということになる。
これを踏まえまして考えると、有力な手段としては、実は二次エネルギーと言われる何かからつくるエネルギー、要は電気あるいは水素というのは何かからつくるエネルギーで、つくり方によっては、要は再生可能エネルギーあるいは原子力等でつくりますとCO2を出さずに得ることができるエネルギー、これを活用するということでございます。
ただし、水素というのも期待されるエネルギーではある一方で、今のところですが、配る、送るためのインフラがないので、今、世界各国は、要は直接燃焼で使っている部分のエネルギーを電化する、例えばですけれども、ガソリン車を電気自動車にする、そうした上で掛け算として電源の低炭素化、これを図る。この掛け算というのが一つ世界の大きな潮流となってきます。
ですので、最終エネルギー消費というエネルギーの全体像は減るんですけれども、これから二〇五〇年に向かって大幅な脱炭素化をするとなると、実は電力需要というのは増えていくということが予想されます。この本の中でも、人口減少や省エネを踏まえた上でも、要は人口減少、省エネといった減少トレンドを踏まえても、二、三割、現在と比べて電力需要が増えるのではないかということを予想をしました。
二点目のDが、人口減少、ディポピュレーションでございます。
人口減少、過疎化というのはこれから急速に日本の中で進む、二〇五〇年までに現在の居住区の六割以上で人口が半分以下になるという見通しを国土交通省さんも出しておられる。こうなると何が起こるかというと、全ての社会インフラ、道路、交通、水道、行政サービス等が維持が困難になるわけでございますけれども、電力でいえば、特に全ての送配電線、これが赤字路線化をするというおそれがございます。今、送電線、配電線というのは、大規模電源で発電をして送って、その売った売上げで投資を回収しているという形なんですが、この人口減少が進むと、今まで三千人の村だったのが例えば三百人になるとか、そういうことになりますと、売れる電気の量、当然減ります。投資回収がどんどん難しくなるということが起きてくるということでございます。
三点目が、ディセントラライゼーション、分散化でございます。
この分散化というのは、実は太陽光発電、風力発電、もちろん皆さん再生可能エネルギーというふうにお呼びだと思うんですけれども、あちこちに分散して置かれるので分散電源ともいう言い方をします。こうした今までの大規模集中電源から分散した発電あるいは蓄電という形のものが導入されるということは、これは世界的な潮流でございます。日本でも当然分散化というものは進むわけですが、まず、日本の再生可能エネルギーの普及拡大をするには、諸外国の数倍に高止まりをしているこのコストを引き下げるということ、これが非常に大きな課題でございます。
ただ、ここでちょっと申し上げておきたいのは、分散電源や蓄電池の導入というのは、政策的な措置をすればある程度進みます。日本も、フィードインタリフ、全量固定買取り制度を二〇一二年に導入してから、日本は再生可能エネルギーまだまだ遅い遅いと言われながらも、太陽光発電、これ、世界に例を見ない勢いで急速に普及をいたしました。今、OECD加盟国中、発電量でいえば第二位ということでございます。
こうやって政策的な措置をして分散電源を導入するということはある程度できるかと思うんですが、この上で考えなければならないのが、実は安定供給を確保するには従来型電源、送配電網を適切に維持をしなければならない。分散化を進めるという方に政策の目は向くんですけれども、逆にその調整役を担う方をどう適切に維持するかというところを見落としがちなので、諸外国もここの制度設計がおろそかになって後で苦労するということが実は起きております。
というのは、四点目に書いております自由化、ディレギュレーションの世界に調整役を担う火力発電は既に置かれているということなんですね。再生可能エネルギーの調整役を果たす火力発電というのは、自由化市場に置かれている。自由化というのは、要は経済性で勝つ事業者が勝者として生き残って、敗者は市場から出ていってくださいという、そういう制度です。
ただ、エネルギー政策というのは、経済性だけではなくて、安定供給や環境価値、こういった価値を含めて、バランスを取って考えなきゃいけない。どういう方向に誘導するのかが非常に難しい。調整する役回りを担う火力発電を自由化市場に置いて、自由化直後というのは、まだこれまでの総括原価の下で培った設備がありますので、設備がある意味だぶついている状況でございますので問題が顕在化するということはなかなかないんですが、時間がたつと顕在化してくる。これが自由化と先ほどの分散化というようなことが相まって、これを同時に進めた欧米諸国、特にその目配りが、送配電網、従来型電源の維持というところに目配りが十分でなかった欧米諸国が今この問題に直面しているというところでございます。
そしてまた、自由化のところで考えなければならないのが原子力。自由化市場ではやっぱり民間事業者が原子力事業にチャレンジするということは基本的になくなるということで、もし国にとって原子力が必要だということでありましたら、こうした点を補完する制度設計が必要になるということでございます。
そして、最後のDが、デジタライゼーション、デジタル化ということでございます。
デジタル技術の進歩によって、特に計量や課金の仕組みが非常に安価、手軽になりました。こうなると、例えば自宅の太陽光で余った電気を自宅の前に設置した電気自動車のチャージャーで人に売るというようなこともどんどんできるようになっていく可能性はあります。今はちょっと計量法の縛り等もございますのでどこまでできるか不明ですが、エネルギービジネスの在り方というのは大きく変わるということが予想される。
これが五つのDで整理をさせていただいた大きな潮流ということでございます。
これからのエネルギーミックスをどう考えるかというところに話を移してまいりたいと思いますが、まず考えなければならないのは、時間軸の問題でございます。
実は、エネルギーのような大きな社会インフラを変えていくというのは、非常に大きな長い時間が必要となります。二〇三〇年、日本はパリ協定の目標を二〇三〇年の目標として出しておりますが、あと十二年、エネルギーのインフラを入れ替えるという点では十分な時間とは到底言えませんので、パリ協定に提出した日本の温室効果ガス削減目標を国内で達成するということでありましたら、原子力の再稼働次第ということになるというふうに言えると思います。ただ、二〇五〇になると、十分とは言えないまでももう少し時間的猶予がある、かつ、多分非連続な変化が起こってくるというようなところが予想をされてまいります。
さて、次に、エネルギーミックスの考え方という点で基本的なところ、これを皆様、釈迦に説法ではございますけれども、お話し申し上げたいと思います。
その際に重要な考え方というのは、各エネルギー源が抱えるリスクというものはそれぞれあるということでございます。原子力は、もう顕在化をしております事故のリスク、災害のリスクというようなところもございますし、ではそれ以外のエネルギー源がリスクがないかというとそんなことはなくて、再生可能エネルギーでいえば天候がどう振れるかというようなリスクもございますし、化石燃料には国際市場の燃料価格のボラティリティーですね、変動を含む地政学のリスクといったようなものも当然ございます。
エネルギーミックスを強靱にするということは、これ、政治の責任として当然考えなければならないことでございまして、リスクを勘案したポートフォリオを考えるというようなことが重要になってこようかと思います。
見落とされがちなリスクというのは、非常時明らかになります。東日本大震災を含めて、今までの経験に学び尽くすという必要がございますけれども、例えば、東日本大震災直後、東京電力管内では計画停電が実施をされました。
皆さん、福島原発の事故に目をとらわれがちですし、あの計画停電でもう大規模集中電源駄目だ、システム改革だという議論になったわけですが、実は東京電力の火力発電所は太平洋側に広く点在させていたわけです。福島県にある広野火力と茨城県にある鹿島火力、百五十キロぐらい離れております。これが同時に被災をした。
本来であれば、日本海側に分散させておいた柏崎刈羽原発が動いていればあのような事態にはならずに済んだんだと思いますけれども、あのとき地理的リスクを分散させておいたにもかかわらず、それをうまく生かすことができなかった。やっぱりこうした災害のリスクという、地理的な分散が必要であるということも考えなければならない。
特に、例えば再生可能エネルギーで地産地消にしていた場合、自然災害でその地域一帯が災害に見舞われた場合に、復旧にエネルギー源ないというようなことにならないようにもしなければいけない。いろんなことに、やっぱりリスクに目配りをするということが必要になってこようかというふうに思います。
こういうリスクの在り方、ここら辺は震災から七年たってもまだ我々対応できていないところが多分にある。今年も関東圏内、かなり需給逼迫ということで供給が危ういという時間帯ございました。これは火力発電所が幾つかトラブルに見舞われたということもありますけれども、太陽光発電の上に雪が積もって数日間発電が全くできなかったというようなこと、こういったこともあったわけです。こういうようなことを、そのリスクというようなものをいろいろ併せ考えておく必要があるということを申し上げたいというふうに思います。
将来のエネルギーを考えるときに鍵となるのが原子力というようなことは、これはもう皆様お疑いのないところであろうかというふうに思います。日本のエネルギーの将来というようなことを考えたときに、もし原子力も必要だということであれば、人材あるいは技術を維持するということが必要になってまいります。諸外国においても、エネルギーのナショナルリスクを考えた上で制度措置を行っている。イギリスは事業予見性の確保をするような買取りというような形に近いもの。米国はあれだけ化石燃料に恵まれながらも全方位政策をやると。英、米、カナダとも、安全性や廃棄物の問題の少ない次世代原子力の技術開発戦略というのを描いて将来を見据えているというようなことで、各国の状況というもの、これは国によって異なるというところでございます。
原子力の経済性についてでございますけれども、高い安いというのは実は比較論でございます。化石燃料が高くなれば相対的に安くはなる。蓄電の技術開発によっても異なる。特に、電源のコストというのは国ごとに条件も異なりますので、実は単純比較というのは結構困難ではございますが、新設原子力については、実は確かに諸外国で一部コストの増大が指摘をされております。これは、OECDもその要因を分析をしておりますけれども、新型炉へのチャレンジ、あるいは数十年開発をしていなかったことによるサプライチェーンの喪失といったようないろんな要因が相まっている。ただ、それが全部ではなくて、中国や韓国等では新設原子力であってもコスト増は確認をされていないというようなところがございます。
既設の原子力でございますけれども、これにつきましては、燃料コストがほとんど掛からないので、相当の競争力を持つというようなところでございます。ただ、ちょっと再稼働に至るまでの時間等も相当掛かってきておりますので、規制行政の在り方、これを問われているというようなところであろうかというふうに考えます。
最後に、日本の議論に今何が足りないのかというようなところを申し上げて、私のお話を終えたいと思いますけれども。
今、日本のエネルギーに関する議論に何が足りないかといえば、我が国なりのリスクのポートフォリオ、これを描くことではないかというふうに思います。そして二点目として、移行のシナリオを描くこと。これ、既にある社会インフラをその安定性を保ちながら新しいものに差し替えていくということは、これは非常に難しい、かつ時間の掛かる、エネルギーというのはやっぱり時間が掛かるんだということ。ですので、これが長期的なビジョンなんだということを国民と共有した上で、掛かる時間軸というものも含めた共有というようなことが必要になろうかというふうに思います。
特に、これからはエネルギー等、例えば再生可能エネルギーの不安定性を吸収する役者として電気自動車に備えられたバッテリーが活躍する、こういう時代も来るかもしれません。そうなると、エネルギーをエネルギーとして考えるのではなくて、モビリティーと融合させながらエネルギーを考えていく、こういったことも必要になってまいります。
政治の在り方、行政の示す示し方の果たすべき役割ということも考えなければならない。そういったあるべき絵姿に向けて適切なモチベーションを与えること、予見可能性を確保して事業者に安心して事業に取り組んでもらうというようなこと、規制の在り方など、政府、政治あるいは行政がどういうふうに関与するかについても議論を深める必要があるだろうというようなことを最後に申し上げて、私のお話とさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。