大島堅一の発言 (資源エネルギーに関する調査会)
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○参考人(大島堅一君) 龍谷大学政策学部の大島と申します。このような機会をお与えいただきまして、本日はどうもありがとうございます。心より感謝申し上げます。
私は、環境経済学、環境政策、エネルギー政策を二十五年ほど研究してまいりました。また、原子力市民委員会という民間の組織の座長もしております。
本日は四点申し上げます。コンパクトに、かつ丁寧に申し上げます。詳しくは事前の配付資料及び本日の資料を御覧ください。こちらにも映しますが、かなり大きな資料を作っていただいておりますので、そちらを御覧ください。
二ページ目を御覧ください。(資料映写)
まず第一点目。現在、政府においてはエネルギー基本計画を作成しているところであります。しかし、その策定プロセスがあべこべ、ないしちぐはぐになっているのではないかということを申し上げます。二点目。発電コストを計算する際、最もシンプルな方法を用いて考えますと、現時点で原発は安い電源ではなくなっているということを申し述べます。三点目。電気料金と再稼働との関連について述べます。四点目。政策決定上極めて重要な情報公開について述べさせていただきます。
四ページ目を御覧ください。
エネルギー基本計画は、エネルギー政策基本法に基づきまして、二〇〇三年より策定されてまいりました。今次は四回目に当たります。エネルギー基本計画は三年ほどで改定されていくもので、その後に長期エネルギー需給見通し、いわゆるエネルギーミックスや原子力政策大綱などが策定されていきます。
ここで注目すべきは、二〇〇五年に作られた長期エネルギー需給見通しです。この時点で目標年次が二〇三〇年に置かれております。つまり、中長期的なエネルギー政策の枠組みがつくられ、次に具体的な需給見通し、エネルギーミックスが示されているということになります。
五ページ目、御覧ください。
言うまでもなく、新しい政策というのはこれまでの政策の多面的な評価を行ってからつくられるべきです。また、エネルギーに関する利害関係者をまずは除いて客観的評価を行うべきところです。
六ページ、お願いします。
つまり、多面的評価を行い、その中で経済的評価を行って、その上で基本計画を作るということ、さらに、それに基づいたエネルギーミックスが策定されるというものでなくてはなりません。これは、エネルギー政策基本法の趣旨にも合致するところであります。
七ページ目。
しかるに、残念なことに、前回のエネルギー基本計画では、経済評価をしていないにもかかわらず、原発は安い、運転コストが安価とされて、その後に後付けで計算がされるという手順となりました。これは順番があべこべです。本来ならば、計画策定前に経済性評価を行うべきところでした。
今回も、二〇一五年に作られたエネルギーミックスを前提に、これを達成するためにエネルギー基本計画を作るという、まさに本末転倒な議論がされています。しかも、目標年次は二〇三〇年にすぎません。二〇〇五年の段階で二〇三〇年でしたので、かなり遅れているというふうに言わざるを得ません。
八ページ目、御覧ください。
御存じのように、前回のエネルギー基本計画以降、重要な出来事が多数発生いたしました。パリ協定や東芝の海外原発事業の破綻、原発事故費用の急増、高速増殖炉「もんじゅ」開発からの撤退など、どれもエネルギー政策の根幹に関わる重大なことです。
九ページ目です。
本来であれば、エネルギーミックスを前提とせず、二〇五〇年以降を目標にして基本計画そのものを大きく見直すべきときに来ているところであります。
次に、発電コストについても述べさせていただきます。
十一ページ目です。
原発のコスト計算については幾つかの方法がございます。最も一般的なものはLCOE、つまり平準化発電コストというものです。このほかにも実績値の推計がございます。本来、コスト情報が公開されていればこのような計算は必要ありません。
十二ページです。
LCOEですが、これは評価時点で原発を新設した場合のコストです。
十三ページ、御覧ください。
計算方法は非常に単純でございまして、新しい原発を新設した場合に、四十年間に掛かる費用を四十年間の発電量で割るという方法で計算しております。
十四ページ目です。
政府の最新の試算は、先ほど申しました二〇一五年の試算となります。このときの化石燃料価格は非常に高く、原発のコストが相対的に安くなるというふうになっております。今回は申し上げませんけれども、再生可能エネルギーの費用がここでは非常に高く評価されておりますのも特徴でありまして、これは世界の潮流から大きく外れております。
十五ページ目です。
しかし、計算方法自体に問題がございます。一つ目は、福島原発事故以降に造られる原発のコストを試算するというものであるにもかかわらず、事故前の原発を建設すること、これに追加的安全対策を施すということを前提としております。
十六ページ目です。
世界では、コアキャッチャーをあらかじめ装備するなど、設計段階から安全性を高めることが求められるようになっています。しかし、これは反面、建設コストの上昇を招きます。実際、現在建設予定のイギリスのヒンクリーポイントCという原発では、キロワット当たり百二十万円程度というふうになっております。これは二〇一五年の計算の前提であるキロワット当たり三十七万円の三倍です。アメリカでも二倍程度となっているところであります。日本だけ格安にできると考えるには無理がございます。仮にイギリス並みとすると、資本費は上昇して、発電コストはキロワットアワー当たり十七円となります。つまり、原発は非常に高い電源と評価することができます。
十七ページ目です。
事故費用の計算に当たっても重大な問題がございます。一つは、事故発生頻度という概念を使って計算していますが、事故発生頻度を二分の一になったというふうに評価してしまっています。さらに、事故発生頻度を利用しているにもかかわらず、事故費用の絶対額が非常に大きいことから来るリスクプレミアム、これを足す必要がございますが、それを考慮してございません。この辺りは十八ページから二十一ページで説明してございます。割愛させていただきます。
二十二ページ目ですが、結果的に事故費用を大幅に値引きしております。更に言えば、二十三ページ目でございますが、済みません、急がさせていただきますが、現実の福島原発事故の費用は二十三・五兆円というふうになっております。二〇一五年の計算時の想定は十二兆円でした。
二十四ページ目です。
仮に、事故の発生頻度の考え方を取らず共済方式という現実に近い方法での計算を行うと、事故費用はキロワットアワー当たり一・六円というふうになります。したがって、次の表ですが、二十五ページ目ですが、全てのコストを加えると、キロワットアワー当たり十七・六円になります。これは一つの試算にすぎませんが、これでは原発が安いとは到底言えないということになります。
二十六ページ目ですが、二〇一五年の計算方法は今述べましたように非常に問題が多いということですが、この問題の多い政府の試算方法を用いたとしても、現在、右端の十二・五六円から十五・一四円程度というふうになり、他電源に比べて高くなるというふうに言うことができます。したがいまして、少なくとも経済評価を行わずにエネルギー基本計画を作るべきではありません。経済性評価をやり直し、その結果を国民に示すべきだというふうに考えます。
二十七ページ目に申し上げます。原発再稼働と電気料金についてです。
二十八ページ目です。
一般に、原発再稼働すれば電気料金は下がると言われております。これは正しい見解です。ただし、真理の一面にすぎません。原発再稼働をすれば電気料金が下がるのは事実ですが、原発ゼロイコール原発を廃止すると現時点より電気料金上がるということではありません。イコールではありません。
二十九ページ目に申し上げます。
電気料金が下がるのは、二つあります。一つは、右側、再稼働するということです。原発が動いていないので、火力のたき増しがあります。このとき再稼働をすれば、火力のたき増し分が減ります。それが電気料金が下がる原因です。
次に、再稼働ではなく原発廃止した場合どうなるでしょうか。すると、左側のように原発維持費が減ります。その分、電気料金の原価が減ります。どうしてそうなるのか。それは、現在、廃炉決定していない原発が、稼働していないにもかかわらず維持するための費用が掛かっているからです。
では、右と左、どっちが安くなるのか。これは、そのときの火力燃料費や電力会社の電源構成で変わります。一概には申し上げられません。ですが、右左どちらでも電気料金は下がるということを念頭に置いていただければと思います。
三十ページ目。
これは再稼働して電気料金が下がった関西電力の場合の資料でございます。
三十一ページ目。
このときに出された資料を基に関西電力について試算してみました。ここでは、再稼働や廃止した場合に、これに応じて変化する原価のみを計算しております。同じことは関西電力も行っております。
高浜三、四号機再稼働で値下げしたのは二〇一七年で、一番左の数字です。これは九千九百億円ということになります。仮に、大飯三号、四号機を再稼働すると、更に下がり九千二百六十七億円になります。この分値下げになります。さらに加えて、高浜一、二号機、美浜三号機、全てで原発を再稼働すると八千七百九十九億円となります。原発廃止のケースは一番右です。この場合八千五百六十九億円となりまして、原因は原発維持費が下がるためになります。つまり、最も電気料金は下がるということになるのではないかと思われます。結果的に、高浜三、四号、大飯三、四号機再稼働だと大体七・三九%値下げ、全部再稼働だと九・六九%の値下げ、これに対して原発ゼロだと一〇・八二%だと考えられます。
ただし、これは注意点がございます。この試算は、あくまで二〇一七年値下げ時に関西電力によって公表された数値を基礎にしているという点です。現時点で依拠できる数字はこれしかありませんので、正しい計算はこれ以外の数字が明らかになれば可能となります。
はっきり言えることは、再稼働して電気料金が下がるということ。加えて、原発廃止、原発ゼロにしても現行より電気料金は下がるということです。電力会社が再稼働を強調するのは多少理解できますが、本来、中立公正であるべき政府が原発ゼロでの電気料金を示さないのはいかがなものかというふうに考えています。
次に、三十二ページ目、現実のコストデータについてです。
三十三ページ目です。
これまで述べてきましたが、原発のコストが現実に幾らなのかはっきりすれば、試算する必要はございません。ですが、三十三ページ目で挙げた費用が実ははっきりしません。
三十四ページ目です。
福島原発事故の費用も根拠も具体的に示されておらず、今後幾らになるか分かりません。
三十五から三十七ページ目は、廃炉のための積立て、再処理のための拠出金。これは国民、電力消費者から広く徴収されています。このための単価は省令に基づいて計算しているというふうに説明されています。しかし、本当に現実に幾らなのか、これについては全く明らかにされてございません。
三十八ページ目。
情報公開の在り方はエネルギー基本計画にも書かれてございます。第三者が独自の視点で整理するとまで書かれております。しかし、このようなことは全くされたことはございません。むしろ、二〇一六年暮れに東京電力福島原発事故のコスト負担の在り方を検討した東京電力・1F問題委員会というのがございました。このとき、これは、この会議は非公開で行われました。情報公開とは正反対のことが行われております。
原発のための様々な費用のための措置で本当に費用は足りるのか、お金が足りるのか、足りなかった場合どうするのか、これは国民的な関心事でありますが、議論すらできない状況です。国の予算ではございませんので、このままでは国会でも直接審議されることもございません。しかしながら、国は現実に原子力に強く関与しています。国民が隠れた形でコスト負担も行っています。そうであれば、正確なコスト情報を公開することが強く求められます。
情報を分かりやすく出すのが情報公開ではございません。情報をアクセスしやすい形で全て公開する、検証可能にするというのが情報公開です。これを進めなければ適切なエネルギー政策が形成できないのではないかと強く懸念するところです。
以上、駆け足で四点述べてまいりました。国会の先生方におかれましては、これからのエネルギー法制度の策定に当たって御考慮いただきますよう、よろしくお願いいたします。
以上、ありがとうございました。