大西隆の発言 (東日本大震災復興特別委員会)

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○参考人(大西隆君) 時間を頂戴しまして、陳述させていただきます。
 お手元に、関係資料として事前にお届けしたもののほかに、机上資料として二点あります。そのロードマップ二〇二〇と書いた方が前半の資料になります。後半の最後の部分で拙稿、「福島復興の現状と課題」と書いた論考の一部を引用することになります。
 私は、福島12市町村の将来像に関する有識者検討会の座長をしております。これは二〇一四年十二月に設置され、九回の検討を経て二〇一五年の七月に提言をまとめました。その後、引き続きフォローアップのための会合を年に二回ないし一回のペースで開催してきています。今年は去る五月二十六日に第十三回の会合を開催したところでございます。
 この有識者検討会では、福島県知事が委員のお一人になっているほか、避難指示対象となった福島県内十二市町村の首長又は代理の方々が毎回出席されています。これら被災地の行政責任者の方々を通じて、ある程度被災地の実情を踏まえた議論ができているのではないかと考えております。特に、原発事故からの復興に国が責任を果たすという観点から、被災市町村の方が国に直接意見を述べることができる重要な機会ともなってきました。
 提言では、中長期的に、かつ広域の視点で将来像の検討結果をまとめています。一方で、二〇二〇年に開催される東京オリンピック・パラリンピックは福島の復興を世界にアピールするチャンスであるという観点から、将来像の検討に当たっては、目指すべき三十年、四十年先の地域の姿を示すことに加えて、二〇二〇年に向けた具体的な課題と取組を示しました。
 私は、東日本大震災の直後に政府が組織した東日本大震災復興構想会議に委員として加わりました。そのとき二か月余りで提言をまとめたわけですが、その中で、減災の考え、つまり、再び同じような津波災害に遭わない復興を実現するべきという観点を強調して、それが現在の復興にも生かされていると思っています。
 提言ではもちろん福島の復興にも触れたのですが、当時、原子力災害の全貌がなおはっきりしないということもあって、福島について議論が尽くされたとは言えませんでした。その後、復興庁ができ、こうした形で福島の被災地を対象とした復興への提言がまとめられるのに際して委員として加わることができたので、個人的にも残したことに携わる機会を与えられたという思いがございます。
 福島の被災地の復興は、二〇一七年三月から四月にかけて帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除されるとともに、福島復興再生特別措置法が改正されて新たなステージを迎えています。つまり、私どもの提言を実行するための事業をフォローアップという形でフィードバックを重ねながら進めていける段階に入ったと思っています。
 それでは、提言の内容を紹介させていただきます。福島復興に向けて七つの柱を立てました。
 一つ目は、産業、なりわいの再生、創出です。これには、基幹産業であった農林水産業の再生に加えて、新産業の創出が含まれます。特に、同時期に別な形でまとめられた福島イノベーション・コースト構想は、福島第一原発の廃炉事業と連動した技術開発、産業育成も含んでおり、福島十二市町村の新たな産業振興として重要と考えました。これらについては、ロードマップの一ページ目、右下のページで一ページ目にまとめております。
 二つ目に、住民生活に不可欠な健康、医療、介護の問題です。帰還者に高齢者が多いという現実があり、早めに帰還した方々にも生活関連の施設やサービスが復興していないことへの不安が強いので、国や自治体が健康、医療、介護に注力することが重要と考えました。
 三つ目は、未来を担う、地域を担う人づくりです。小中学校の地元での再開、ICT教育、ふたば未来学園、小高産業技術高校などでの先進的な教育、さらに新たな産業振興のための人材育成も重要であるとしています。
 四つ目は、広域インフラ整備、町づくり、広域連携です。地域の復興には、地域が相互に結ばれるとともに、広域的な拠点と緊密に結ばれることが不可欠という観点から、ふくしま復興再生道路の整備、JR常磐線の早期全線開通を取り上げ、さらに地域内の復興拠点を設けて、そこを中心に復興を図ることを提案しました。これは、特定復興再生拠点として福島復興再生特別措置法改正に盛り込まれたところです。
 五つ目から七つ目の柱が、観光振興や風評・風化対策、文化、スポーツの振興であります。
 特に、復興が十年目の節目を迎える前に開催される東京オリンピック・パラリンピックは、復興の進展を内外に示す機会となります。こうした提言の下に将来像実現ロードマップ二〇二〇、お手元の資料ですが、を作成して、毎年、有識者検討会で国、県、被災自治体も加わって進捗状況を点検しています。今年の検討会は、昨年の特措法の改正で特定復興再生拠点や福島イノベーション・コースト構想が盛り込まれた後に開催されたので、産業と生活の復興が本格的に動き出したと感じました。
 検討会での議論を通じて改めて浮かび上がった課題について、その要点を述べさせていただきます。
 設置法では、復興庁は二〇二一年三月末までに廃止するとされています。しかし、特に福島においては、その時期までに復興が完成するわけではありません。残念ながら、そういうことだろうと思います。したがって、二〇二一年度以降の復興の体制が関心事となってきました。私どもの提言では、原子力災害によって福島にもたらされた深刻な事態の記憶と教訓を決して風化させることなく、省庁の垣根を越え政府一体となって総力で実行していくべきであると述べ、震災から十年以降の福島の復興に向けた政府の組織の在り方について、今後の検討課題であるとしています。長期にわたらざるを得ない福島を始めとする東日本大震災からの復興に省庁横断体制をどのように継続していくのか、是非国会で議論していただきたいと思います。
 二つ目は、福島では、今後、数十年間にわたって廃炉事業が実施されることを重視すべきという点です。
 廃炉は、これから世界の多くの原発が直面する課題です。福島で開発される新技術、新たな知見は、今後の世界の廃炉事業に応用可能なものであります。是非、そうした視点で廃炉にももっと光を当てて、我が国の新たな技術や人材育成分野として位置付けていくことが必要だと思います。
 また、除染、中間貯蔵施設、放射性物質流出防止、さらに廃炉には既に多くの人材が投入されています。これらの方々が地域の新たな担い手になっている現実もあり、定住者として地域復興の一端を担ってもらうという発想も重要だと思います。
 第三に、復興の段階が市町村ごと、さらにはその中の地域ごとに異なることをどう考えるかです。
 二〇一七年春における大幅な避難指示解除後も残される帰還困難区域が相当部分を占める自治体では、本格的な復興はまだ先になります。種々の復興事業を実行していける地域と、まだ準備の段階が続く地域というステージの差異が生じています。いずれ全ての地域が本格的な復興活動を行える状態になるとしても、当面はステージのずれがあることを率直に認識して、自治体間の連携や協力を強めることが必要と私は思っています。
 この点は、有識者検討会で、特に有識者委員と地元自治体の首長さんとの間で意見が分かれたところでもありました。もちろん、特定再生復興拠点での除染を早急に行うことなどを通じて、避難指示をできるだけ早期に解除することが必要であることは言うまでもありませんが、国や県は、本格復興に時間の掛かる地域に対しても、各時点で最善の復興計画が実施できるように、長期にわたって復興に関わることが必要と思います。
 第四に、産業、生活や観光やスポーツに至るまで非常に多方面の復興事業が挙げられ、それらがロードマップの形で進捗管理されているのは重要なことだと思います。
 その上で、例えば育成された人材が、地域で新たに起こると期待されるロボット産業や再生可能エネルギー産業などの技術者や担い手になるなど、復興事業間の緊密な連携も重要なポイントだと思います。現在は、復興庁の下で多数の省庁が復興事業に一体的に関わっています。その中で生まれている事業間の連携関係が今後とも継続されるように、諸事業を横につなぐ機能が失われないようにすべきだと思います。
 最後に、有識者検討会座長の立場から少し離れて、私自身の意見も交えて述べたいと思います。
 福島では、避難指示によって多くの方々がやむを得ずふるさと、つまりそれまでの居住地を後にしました。それから七年余りがたち、ふるさとへの帰還という点で人々の意識は多様になっていると感じます。
 復興庁、福島県、被災自治体が協力して行っている原子力被災自治体における住民意向調査によれば、東電福島第一原発に近い地域では五〇%前後がふるさとに戻らないと決めていると回答しています。また、年齢別に見ると、この回答は四十歳未満の年齢層に多く、高齢になると少なくなるという傾向があります。戻らない理由については、医療環境に不安があるから、原子力発電所の安全性に不安があるから、家が汚損、劣化し、住める状況ではないから、生活に必要な商業施設などが元に戻りそうにないからなどが上位に挙げられています。
 こうした意識の背景には、いまだ異常値を超える放射線量が多くの観測点で測定される自治体が存在していたり、さらに、住民が増えないことにも起因して、生活関連施設の復旧が十分とは言えないことなどがあります。もちろん、事故から相当の年月がたって、特に若い世代は新しい土地で新しい生活を開始して定着している人々がいることも想像できます。
 こうした現状を踏まえるならば、私は、福島においては人の復興と場所の復興、これを区別して考える必要があるのではないかと思っています。
 人の復興とは、被災した人々あるいはそこに新たに加わった家族がそれぞれ望む生活を行うことを国と東京電力は支援する責任を有するということです。特に、被災を理由としたいじめへの防止対策、甲状腺検査を始めとする健康管理、生活のスタートアップ等の支援は重要だと思います。
 一方で、被災地の場所の復興も重要です。私がこれまで述べた福島12市町村の将来像に関する有識者検討会での議論は、この場所の復興に関わることが少なくありません。被災者の中で条件が整えばふるさとで生活したい人がいることは言うまでもありませんし、やがて人々が自由に生活できる地となってよみがえることは疑いがないのですから、そのための生活や産業の基盤を着実に整えていくことは重要だと思います。
 その意味で、福島の復興に当たっては、被災者の生活に寄り添った人の復興という視点と、被災地に着目した場所の復興という両方の視点が不可欠であると考えています。別な場所で生活を確立している人々の中にも、ふるさとを思う意識は強いと思います。
 私が会長を務めていた時期に、日本学術会議では、二重の地位、すなわち被災者が新しく生活を始めた地域と被災時に居住していた地域との両地域でそれぞれ住民としての権利を有し、一定の行政サービスなどを受けることができる制度を提言しました。被災地で自治行政機能が回復する中で、改めて制度として二重の地位を導入するべきではないかと考えております。
 私の陳述は以上でございます。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 大西隆

speaker_id: 10262

日付: 2018-07-11

院: 参議院

会議名: 東日本大震災復興特別委員会