山本太郎の発言 (内閣委員会)
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○山本太郎君 ありがとうございます。
まるで予言者のようにお答えをいただきましたけれども、事前に省庁ともいろいろやり取りをさせていただきましたし、恐らくこの話の行き着くところはそこに行き着くんだろうと。九章、九・六条、公正衡平待遇義務と、九・八条、収用及び補償について政府調達は適用されるということを今大臣からお答えをいただいたと。ありがとうございます。
九・六条、公正衡平待遇義務、九・八条、収用及び補償は政府調達でも適用される。つまりは、大目には見てもらえないよと、免責にはならないんだと。これを除外しなかったことで公共事業が外資に食われるおそれ、地方の公共事業が地元企業を優先できなくなるおそれがあるんじゃないかと、ISDSで訴えられるおそれ高まるんじゃないかという懸念です。
適用除外されていなかったこの公正衡平待遇義務、TPP九章の、九・六条に規定されているものだと。資料の三の上が条文、この中に括弧で注という部分がありまして、この条の規定は、附属書九のA、国際慣習法の規定に従って解釈するとあります。
じゃ、九—Aには何と書かれているか。資料三の下。結論として、外国人の待遇に関する国際慣習法上の最低基準とは、外国人の投資財産を保護するためのあらゆる国際慣習法上の原則をいうと書かれているだけ。
先日、本委員会においでくださった磯田宏参考人は、「国民生活への罠 ISDSの狙い」という論文の中で、この九—Aについて、国際慣習法上の最低基準イコール国際慣習法上の原則と言っているだけで、同義反復の無意味なものであると批判されている。つまり、公正衡平待遇義務が極めて抽象的で不明確だということを言われているということなんですね。
加えて、磯田参考人は、この九・六条の条文のうち、具体性を持っているのは第二項(b)の十分な保護及び保障の部分だけであり、そのほかは不明確な内容ばかりが並んでいるとも指摘。第二項(a)では、肝腎の公正かつ衡平な待遇についての説明になりますけれども、結局、裁判を受ける権利を否定しないことを含むということだけが理解可能で、それ以上に何が含まれるのか全く規定がないと磯田さんは批判をされている。
実はこれ、過去の投資協定でも同様に、公正衡平待遇義務の内容についてはその意味するところは曖昧であって、結局、ISDSによる仲裁によって、仲裁廷の段階で裁量を加えた問題含みの裁定を多数下してきたとおっしゃっています。磯田参考人によると、アメリカの既存の通商投資協定下のISDSで外国投資家が勝訴したことが知られている案件は二十九件あるそうなんですけれども、二十二件が待遇に関する最低基準や公正かつ衡平な待遇違反を根拠としたものだといいます。
さて、TPP協定では、かつての投資協定の下で公正衡平待遇義務が濫用されたことを念頭に、附属文書九のAや九・六条三項及び四項を歯止めとして設けたとされているそうです。九—Aが意味がないということは既に述べたとおりなんですけれども、九・六条四項の、締約国が投資家の期待に反する行動を取る又は取らないという事実のみでは、結果として対象投資財産に対する損失又は損害があった場合であってもこの条の規定に対する違反を構成しないとあることも磯田参考人は何らの歯止めではないと指摘されています。投資家の期待に反する政府の行動という事実が公正かつ衡平な待遇違反を構成する重要な要素だということを改めて確認している意味であると、このように指摘されている。
結局、公正かつ衡平な待遇とは何かについて、最終的に仲裁の段階で裁量を加えて判断してきたので、要はISDSで訴えた後で公正衡平待遇とは何なのかを議論していくというものであると。どこまで行ってもこれ、解釈の世界でしかないという話になっていきそうなんですよね。
政府調達において、わざわざ適用除外にしなかった公正衡平待遇義務違反でISDSで訴えられた過去事例、UNCTADのウエブサイトで検索をしました。
全体での提訴案件は八百五十五件、そのうち公正衡平待遇義務違反で提訴があった数は四百十一件、極めて不明確な概念を持つ公正衡平待遇義務違反での提訴が全体の半分近くに及ぶと。例えば、経済危機が起こった国で水道事業を行う企業の株を外国の投資家が取得したと、国民生活が疲弊している中、水道料金を事業者が上げてしまった、水道代未払の家庭に対して水の供給を止めた事業者に対して国がペナルティーを与えると、そのような訴えられた案件もあります。水は命と直結するライフラインですから、料金の滞納があったとしても多少の温情で供給は続けなければならないと。だって、人死にますから。そのような判断で事業者にペナルティーを与えた国が訴えられ、仲裁廷は、緊急状態等の違法性阻却事由は存在しないとし、公正衡平待遇義務違反等を認定したと。
住民サービスなど民営化を急速に進めてきたけれども、時代が変わってやり方が変わった、そうなることは珍しい話じゃないですよね。そのような揺り戻しが来たときに、正当な市民の要求が通らないという可能性も考えられると。
例えば、選挙のときには絶対に国益を損なうような協定は結びませんと公約をしていた、政権取った瞬間に手のひら返し、国内の公共サービスをどんどん民営化して外国資本や大企業が活躍しやすい国にしていった結果、国民生活は疲弊、後々の選挙で政権交代が行われたとしますよね。自由貿易を名のる協定もどきからは抜けないまでも、今まで協定に基づいてやってきた民営化施策を新政府は見直していくことになった、若しくは、余りに投資家側に有利な条件を与え過ぎていたからそれを見直すということになっていった、こういったことが公正衡平待遇義務違反とか収用という問題にされて、実際にも訴えられている案件です。
このように、公正衡平待遇義務は非常に使い勝手のいいISDSに提訴するためのツールとして多用されているという現実がある。
磯田参考人の論文で、また一つ見逃せない部分があります。仲裁人やそれが所属する法律事務所とISDSシステムの関係における構造的な問題があるという指摘。一言で言えばISDSビジネス。その点を明るみに出した秀逸なレポートが、二〇一二年のプロフィット・フロム・インジャスティス、TPPの特別委員会のときにもそれ出させていただきましたけれども、その内容どういうものか。
第一に、ごく限られた少数の巨大法律事務所と有力弁護士がISDS仲裁人の多くを占めるという、言わば寡占産業になっているという指摘。国際貿易開発会議、UNCTADが把握した二〇一一年までの累積ISDS訴訟件数、四百五十ですけれども、このレポートの作成者が法律事務所自身の二〇一一年時点の公表情報から集計したところによると、仲裁関与件数が最大の法律事務所が七十一件、これ、四百五十件のうちの七十一件ですから一六%、上位三法律事務所が百三十件、四百五十件のうちの二九%、上位十法律事務所が二百二十一件、四百五十件のうちの四九%、そして上位二十の法律事務所で三百二十件以上、四百五十件のうちの七一%を担当していると。非常に偏っているという話ですよね。
また、弁護士個人に即して見ても、仲裁担当件数最多の弁護士は、たった一人で三十九件、上位五人で百六十件、上位十五人で三百三十一件、全体が四百五十件ですから七四%、上位十五人で七四%を担当していると。二百四十七件の裁定、上位十五人、三百三十一件を担当して二百四十七件の裁定を下したとレポートにあります。
第二に、ISDS訴訟で活躍する弁護士や法律事務所が、他方では投資協定や投資条項を持つ通商協定にISDS条項、しかも極めて広範囲な投資概念や待遇に対する裁定基準、公正かつ衡平な待遇といった不明確ゆえに仲裁廷の裁量的解釈を可能にする条項を挿入したり、条項草案を作成するために関係国政府の交渉団、アドバイザーや証人として活動しているとの指摘をしています。また、これらの弁護士が、アメリカの通商代表部幹部や大統領顧問になったり日常的に多国籍企業や医薬品業界団体の顧問や相談役としても活動しているとも報告。
第三に、これら弁護士や法律事務所は、数々の弊害をもたらし批判を浴びるこのようなISDSシステムの改革の動きが出ると、各国政府や議会に対するロビイストや国際法の専門ジャーナル編集者としてそれを妨害する活動を行っているという実態もあるといいます。
要するに、少数、有力なISDS専門法律事務所、弁護士たちが、多国籍企業とその本国になっている政府との間でそれぞれの重要役職を行ったり来たりすることも含めて、固有のコミュニティー、ISDS村を構築。ISDS条項入りの協定、ISDS訴訟の多発、一件平均八百万ドル超の仲裁費用、高ければ時給千ドル超にもなると。仲裁人報酬の獲得と損害賠償金の山分け、多国籍企業の対外投資権益の強力な保護を行うというマッチポンプ構造ができ上がっている。
TPP協定が仲裁廷の公平性、中立性確保の仕組みを有しているってよく聞きますよね。さらに、具体的手段、仲裁人の行動規範を作成することを約束しているので懸念は不要だと政府から説明はされています。だけど、これ説得力がないんだよと磯田先生はおっしゃっている。
その理由として、まず、そのような仕組みが利益相反の防止に効果を発揮できなかったさびついた規定の域を出ない点、次に、具体的手段の内容抜きに各国での承認を迫る反民主主義プロセス、それ自体が国の主権を損なうという点、さらには仲裁廷の公平性、中立性を侵害してきた構造に手を付けないという点が挙げられると。結局は、何重にも説得力とか合理性を欠くようなシステムをTPPの中には組み込んでいるんだと言わざるを得ない。ISDSというものが弁護士や法律事務所の巨大な利権になっているという磯田参考人の御意見なんですけれども。
この磯田参考人のおっしゃっていることであったりとか先ほどのリポートであったりとか、ISDSにそういうISDS村みたいなものがあるよということは、大臣はお読みになったりお聞きしたことはありますか。