鳥畑与一の発言 (内閣委員会)

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○参考人(鳥畑与一君) この度は、本法案への意見陳述の機会をいただき、ありがとうございました。
 時間も限られておりますので、お配りした資料を基に発言をさせていただきます。
 一昨年十二月のカジノ推進法に当委員会で発言させていただいたときは、カジノ実施法では建設的な議論ができるものと期待しました。しかし、提出されたカジノ実施法案でのその期待は大きく裏切られました。本文二百五十一条、三百ページを超える複雑な法案は、三百三十一項目もの政省令委任と、さらには条文等にも書かれないルールを忍び込ませ、極めて不透明な法案となっています。それは、カジノ事業の健全な運営を確保するために、カジノ事業者に大きな自由を委ねるために意図的につくられた不透明さであり、この法案の本質はカジノ支援法案だと思わざるを得ません。
 以下、衆議院内閣委員会参考人質疑に続き、改めて私の意見を述べさせていただきます。
 まず、日本型IRとは何なのでしょうか。
 カジノではなく、統合型リゾート、IRだと繰り返し強調されます。しかし、本法案の最大争点が刑法の賭博禁止の違法性を阻却できるか否かにあるように、本質は紛れもなくカジノを合法化し実施するための法という点にあります。
 私は、IRにカジノを組み込んだものをIR型カジノと呼んでいますが、国際的コンサルティング企業PwCも、IRカジノ、IRCと定義しています。では、IR型カジノとはどのようなカジノなのでしょうか。
 政府は、大きな経済効果、公益性を発揮するMICE等のIR施設を支える収益エンジンだとします。しかし、その本質は、カジノ以外のIR施設で集客した客をカジノに誘導して、ギャンブル収益最大化を目指すビジネスモデルにほかなりません。
 IR型カジノのモデルとされるラスベガス、図表一を御参照ください、では、カジノ目的の初訪問客はごく僅かですが、三泊四日の滞在期間中に七十数%がギャンブル体験をし、ギャンブル目的の再訪率が大きく増大しています。注目すべきは、最大支出額がギャンブルの負けであり、ショッピング支出等を大きく上回っていることです。
 カジノ以外のIR施設のためにカジノがあるのではなく、カジノのためにIR施設があるのであり、このことは、シンガポールの二つのIRの収益構造を見れば明らかです。マリーナ・ベイ・サンズもリゾート・ワールド・セントーサもカジノ収益は約八割を占め、EBITDAは五〇%前後という高収益を誇っています。マリーナ・ベイ・サンズは、過去六年間で百九十億ドル近い利益の株主還元を実現しています。
 IR型カジノの特徴は、IR施設の集客力を増すために、カジノ収益を原資としたコンプと呼ばれる料金サービスや豪華施設等で他の類似のサービス提供者に対して競争的優越性を確保する点にあります。アトランティックシティーのボルガタは、収益の三割以上を延べ千三百万人近くの顧客への多様なコンプに費やしています。ラスベガスでも同様です。カジノ収益を持たない競争相手は、極めて不平等な競争上の劣位を負います。
 このIRカジノの集客力、消費力が大きいほど、地域社会は顧客の喪失、売上げ減少というリスクにさらされます。IR以外の施設は、決して公益性を発揮する施設ではなく、地域社会の公益性を破壊するものです。
 地域社会を破壊するリスクの大きいIR型カジノ。
 PwCは、IRカジノの特徴をその巨大さにあるとします。IR型カジノではない欧州型カジノでは、極めてその規模が小規模です。しかし、様々なIR施設を集客装置とするIR型カジノは、巨大な設備投資を必要とし、その投資を回収し、巨大施設を維持運営し、かつ利益を追求するほど、カジノを巨大化せざるを得ないビジネスモデルなのです。
 しかし、当初予定されていたカジノ面積上限一万五千平方メートルでは、ラスベガスの事例を見るように、到底、一兆円規模の投資を行い、目標とする収益率は実現し得ません。IR延べ床面積三%とされていますが、法案上は、カジノ事業の健全な運営を図る見地から適当な面積とされているだけで、必要なカジノ収益を実現するために比率規制も緩和できる仕組みになっています。カジノ面積規定もカジノ管理委員会規則に委ねられていますが、約五十億ドルのカジノ収益実現には、例えばラスベガス基準では二十万平方メートルものカジノが必要になります。収益エンジンとしてのカジノの馬力拡大には、カジノ面積の拡大か、ゲーム機器ごとの収益力アップが必要となります。カジノの射幸性規制や依存症対策強化と根本的に矛盾するメカニズムではないでしょうか。
 全てを賭けの対象にするギャンブル大国の英国ですら、IR型カジノ建設を候補地が決まった最終段階で中止しました。地域社会に危険とされたその規模は、テーブル五十台、スロット千二百五十機、カジノ面積五千平方メートルでしかありませんでした。
 カジノは、賭けを通じた消費力の移動でしかありません。同時にそれは、胴元側であるカジノ事業者が確率的に確実に収益を実現するように設計されたものであり、カジノのもうけの裏返しは顧客の負けというカニバリゼーション、共食いと呼ばれるゼロサムの行為です。もちろん、それは誰にとってもゼロを意味するものではなく、食う側、食われる側の食う側に巨大な利益をもたらすビジネスです。したがって、私たちの社会は、ギャンブルを認める場合でも、この巨大な利益を私益とせず、社会全体に還元する仕組みを担保としてきました。
 しかし、今回のカジノ実施法は、初めて私益のカジノを認めるものであり、その私益追求を野放しとした仕組みとなっています。ラスベガス・サンズの巨額の株主配当の受取手は、ほぼ一〇〇%がアデルソン一族です。このようなファミリービジネスの私益のために、日本や地域社会を犠牲にすることはあってはならないことです。
 カジノのギャンブルは、顧客が賭け行為を継続するほど胴元側が安定的収益を実現できるビジネスモデルです。無制限の賭け金額とともに、途中でやめさせない仕組みの一つが、カジノによる信用枠の設定、カジノクレジット又はマーカープレーです。貸すのはお金ではなくチップであり、そのチップ貸付証書であるマーカーにサインすることで金銭債権として米国では法的に保護されたものとなります。
 この信用枠の供与は、米国では富裕層だけではなく一般顧客に対してもなされていますが、例えばラスベガス・サンズの場合は、テーブルゲームの賭け金額の約六割はこの信用枠で行われています。問題は、この信用枠設定が所得だけではなく、預貯金等の金融資産を担保として設定されており、そういう資力の返済能力を超えた負けで自己破産が急増していることです。VIP客においても、ぎりぎり財産がなくなるまで賭けを続けたことで巨額の負けを背負った事例が後を絶ちません。
 信用枠の設定は、支払能力ぎりぎりまで賭けさせるいわゆる略奪的カジノにおいてはなくてはならない手法ですが、決して世界標準ではありません。英国では、持っていない金で賭けてはならないという原則の下、カジノ事業者による信用供与は禁止されております。また、オンラインカジノでのクレジットカードの禁止も検討されています。また、韓国江原ランドでは、昨年九月にカジノによる信用供与の禁止措置がとられたと報道されています。
 日本でも、せめて日本人に対しては、特定貸付業務は禁止するか、貸金業法の所得制限を適用すべきではないでしょうか。
 国際観光振興としてのIRの最大の根拠は、アジアの富裕層、とりわけ中国VIPギャンブラーの獲得でしたが、その市場は大きく縮小しています。マカオでもピークの四割減、この一年間、一割ほど戻しておりますが、プレミアムマスと呼ばれている一般客が有望視されています。確かに、マカオ市場はこのマス層をターゲットに、カジノ数やゲーム機器を増大させつつ、カジノ収益を回復させつつあります。
 しかし、この回復を支えているのは、中国の高速鉄道網を中心とした交通インフラの整備により、中国北東部も含めた全域がマカオのマーケットに組み込まれつつある結果と言えます。このことは、日本にとって空白の中国市場が急速に消えつつあることを意味します。また、このマス層のギャンブル支出は六百ドル程度であり、より多くの交通費と宿泊費を負担して遠い日本のカジノに来ることは非現実的と考えます。一方で、韓国におけるIR建設を含めたアジアでのカジノ市場は急速に飽和化しつつあり、また、カジノ目的のギャンブラーを日本に集客することはますます困難になっています。あのラスベガスですら外国客比率は一六%です。
 実際、外国カジノ資本は、日本の富裕層と家計金融資産をターゲットにしています。香港の投資銀行CLSAの市場分析によれば、カジノ解禁で年間二百五十億ドルのカジノ収益が生まれる根拠は、日本の家計金融資産や所得の大きさと同時に、パチンコ等のギャンブル支出の大きさとなっています。このことは、IR型カジノの成功は、日本の家計金融資産の収奪の成功を意味し、日本人の不幸の裏返しを意味することになります。
 終わりに、カジノなしではIRは不可能なのでしょうか。MICE戦略の展開は不可能なのでしょうか。日本の国際観光振興は不可能なのでしょうか。
 世界のMICE市場は、停滞するカジノ市場とは違い、二〇二三年には一・二兆ドルを超えると予想されています。そのほとんどはカジノに依存することなく高成長を遂げています。例えば、世界の展示施設のランキング上位を見れば、カジノとは関係なくMICEを実現しています。
 例えば、図表二十を御覧になっていただき、ちょっと縦になりますが、例えば世界のMICE大国ドイツ、ハノーバー、フランクフルト、ケルン、デュッセルドルフ等がありますが、ドイツのカジノ市場は全体で六十五カジノで六・九億ユーロの収益しかありません。ハノーバーを運営するメッセ・ドイチェのアニュアルレポートを見ますと、償還を含めてしっかり黒字を確保して運営がなされております。
 米国を見ても、ほとんどはカジノに依拠することなくMICE戦略を進めています。図表二十一を御覧になってください。米国の展示会場とカジノという表を御覧になっていただきたいんですけれども、例えばテキサスは商業型カジノは合法化されておりません。そういう、ヒューストンでも巨大な展示MICE施設が展開をされて、巨大な集客能力を発揮をしているということです。
 公設民営であっても民営部分でしっかり収益を確保することで、カジノに依拠することなくMICE戦略を進めるのが世界の主流ではないのでしょうか。また、国際観光客増大がIRなしの日本がシンガポールを大きく上回っていることは、IRカジノなしでも国際観光振興が可能であることを示しています。それどころか、カジノなしではMICEは無理だという虚構にとらわれることで、本来のMICE戦略展開の可能性を閉ざしているのではないでしょうか。
 本当にIR型カジノしか選択肢はないのか、その立法根拠はあるのか、慎重な調査と検討が必要であることを強調して、私の発言を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 鳥畑与一

speaker_id: 6120

日付: 2018-07-13

院: 参議院

会議名: 内閣委員会