伊藤孝恵の発言 (本会議)

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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました国務大臣石井啓一君問責決議案に対し、賛成の立場から討論を行います。
 討論に先立ち、この度の豪雨災害で亡くなられた方や、悲しみの中におられる御家族、被害に遭われた全ての方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。また、今日も、行方不明者の生存を信じ、猛暑の中で救助活動を続けている皆様に心からの敬意をささげます。
 災害対応は初動が何よりも大事、元建設省の官僚で国交大臣を三年も務める方が、それを知らないはずがありません。
 今月五日の午後二時、気象庁は臨時で記者会見を開き、数十年に一度しかない大災害、重大な危険が差し迫った異常事態など、あらゆる表現を駆使して記録的な大雨の危険性について繰り返し述べた上で、厳重な警戒と避難を呼びかけました。台風や大雪以外で気象庁がこのような会見を開くのは異例であり、政府は、今後大変なことが起こり得ることを十分に把握していたはずです。
 今日現在、二百二十三人のかけがえのない日常が奪われました。それを守れたかもしれないターニングポイントは、大臣、この日だったのではないでしょうか。
 気象庁の会見を経て、既に十四万人に避難指示が出されていた五日夜、安倍総理や小野寺防衛大臣、上川法務大臣、岸田政調会長や竹下総務会長を始め五十名もの自民党議員が赤坂自民亭なる酒席において赤ら顔で乾杯している写真が、全国のひんしゅくを買っています。
 想定される未曽有の水害に当たり、被災者の救出や災害状況の把握、早期の復旧体制の構築など、陣頭指揮を執るべき総理や、その前線に立つはずの防衛大臣が日本酒の飲み比べに興じていた上、本来なら官邸にへばりついて関係省庁の情報を収集、迅速に指示を出すべき西村官房副長官に至っては、宴会写真をツイッターに添付して、和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題、まさに自由民主党と、正気とは思えぬツイートをされています。
 西村官房副長官が四年前に出版された御著書、「命を守る防災・危機管理」の表紙には、「その瞬間、生死を分けるもの」との能書きが、冒頭には、大災害からの教訓、避難勧告の遅れで避難せずに亡くなった方も多く、早く避難していればと悔やまれることも多いなどと書かれています。
 知見を生かさず、こんなくだらないツイートをしていたのはなぜでしょうか。自民党は若手も物言える空気なんですよ、楽しいですよと言いたかったのでしょうか。写真には、若手らしき方はほとんど写っておりません。あの写真から滴り落ちていたのは、自分は権力に近い、こんなにも近い、それをたくさんの人に伝えたいという浅はかな欲望です。どうか目を覚ましていただきたい。その権力は、あのとき大雨の中で震えていた人のために使うべきではありませんか。
 与党公明党の井上幹事長は十三日の記者会見で、赤坂自民亭について、軽率のそしりを免れない、被害状況は想定できたのではないか、会合自体を踏みとどまるべきだったと厳しい口調で批判されました。全く同感であります。
 しかし、であれば伺いたいのは、豪雨被害が拡大の一途をたどっていた十日、死者は百五十名を超え、広島県でも新たに河川が氾濫し、住民が逃げ惑うさなか、御党の石井大臣が、カジノを含む統合型リゾート実施法案を審議するため、内閣委員会に六時間もの間張り付いて、カジノをつくる意義を説明する必要性はどこにあったのでしょうか。赤坂自民亭以上に、これこそ踏みとどまるべきではなかったのか。死者が二百人を超え、なおも多くの行方不明者が助けを求めていた十二日も、十三日も、昨日も、そして今日も、なぜこれほどまでに急いでカジノ法案を通す必要があるのでしょうか。大臣、必死になるところが違うのではありませんか。
 野党は審議見送りを申し入れました。人命を優先し、災害対応に当たる石井大臣を拘束すべきではないという当然の判断です。人命よりも賭博優先などという決定を、大臣が、公明党がするわけがない、一縷の望みを懸けての申入れでした。
 石井大臣には言っていただきたかった。今は災害対応に専念するときだ、河川や道路の復旧は私の所管だ、救援ヘリによる被災者の救出も支援物資の輸送も全部私の仕事だ、私が今、政治家として、人間として取り組むべきはカジノではない。こんな当たり前のことも言えない空気が今の政府・与党にはあるのでしょうか。堂々と正しいことも言わないのが政治の中枢に居続けるための作法なのでしょうか。
 大臣は、委員会の開会中でも秘書官を通じて災害対応の指示ができると釈明されました。私は、その釈明に絶望を感じます。己の正義を封印して流されてしまう程度の矜持で大臣を務めておられるのか。誰の力になるために大臣はその経験やポストを手に入れたのか。
 石井大臣、物事には優先順位というものがございます。その順位を入れ替えることができるのは人間の心だけです。ポストを持った人間の務めは、優先順位を間違えないよう細心の注意を払うことです。損得ではなく、そんたくでもなく、当たり前を見失わず、後世に恥じることのない決断を下すことです。その意味で、今回の大臣の振る舞いは、残念ですが十分問責に値します。
 カジノ法案の問題点の第一は、法案審議の進め方です。
 今回の立法目的が、世界中から観光客を集め、日本を観光先進国に引き上げるためなのであれば、まずは、なぜその手段がカジノだったのか。誰をターゲットとして、どの程度の経済波及効果を見込み、そのメリット、デメリット双方を鑑みた調査結果、定性、定量のエビデンスを議論の場に示さねばなりません。
 その上で、日本において刑法上の重罪である賭博、カジノを、公営でなく民営で解禁していいものかについて熟議を尽くし、それでも推進すべきとなって初めて、どんな規制や条件が必要か、具体的な整備案について話し合うのが立法府のあるべき姿です。
 来日する外国人観光客のニーズは、日本の四季や歴史、伝統、文化や繊細な食であり、カジノではありません。また、カジノに訪れるのは外国人観光客ではなく八割が日本人だと見込まれ、経済波及効果の政府試算は皆無。衆参両院での審議が進めば進むほど、国民の疑念は深まりました。直近の調査では、七六%の方がカジノ法案を今国会で成立させる必要はないと言っています。大臣が説明義務を果たしたとは到底言えない状況です。
 第二の問題点は、法案の中身です。
 刑法との整合性、つまり、賭博罪の違法性阻却の明確な根拠の不在や、カジノ業者による無利子貸金業務の問題、施設面積の上限が外されたことや、周辺地域を含む治安対策の不十分さに加え、大臣が度々答弁された世界最高水準の入場規制はこの法案のどこからも読み取れません。余りにも多くの課題、また、具体的な制度設計など、肝腎な部分は今後の検討課題として、ほとんど政令や省令に任せるという無責任なこの法案を通すわけにはまいりません。
 なぜ入場者を外国人観光客に限らないのですか。外国資本の出資が無制限なのですか。カジノを管理、規制すべきカジノ管理委員会にカジノ業者が入れるのはなぜですか。そして、推進法案のときは自主投票だった公明党が、整備法案になったら賛成に転じたのはどうしてですか。全員で賛成するにはそれなりの理由や党内議論があったはずで、それを教えていただきたいのです。
 法案成立後に想定されるリスクへの手当てが不十分な点が第三点目です。
 特に深刻なのはギャンブル依存症の問題で、現在、日本には三百二十万人のギャンブル依存症患者がいると言われています。パチンコ産業の年間売上額はおよそ二十三兆円。アメリカのカジノの総売上げは七兆円。世界全体で見ても十五兆円足らずであることからも分かるように、日本は既にギャンブル依存大国です。カジノは間違いなく、病を生み広げ、本人のみならず家族の人生を壊します。
 問責決議の最後の理由は、昨年来、国会で多くの時間が費やされている森友学園問題について、大臣が無責任な態度に終始している点です。
 疑惑の核心は、国民の財産である国有地がなぜただ同然で売却されることになったのか。公文書の改ざんや隠蔽、虚偽答弁など前代未聞の大事件に発展せざるを得なかった、隠したい真実とは何だったのか。そして、この責任は誰が、いつ、どう取るのか。
 行政が自浄作用を失ってしまった理由も含めて、国会の責務で真相を明らかにし、同じ過ちを犯さない仕組みをつくらなければなりません。大臣の姿勢は、強大な国政調査権を死蔵させ、行政監視の責務を軽んじ、全容解明を妨げるものにほかならず、もはや大臣として到底信任できません。
 以上、国務大臣石井啓一君問責決議案に賛成する理由を申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 119615254X03520180718_007

発言者: 伊藤孝恵

speaker_id: 17711

日付: 2018-07-18

院: 参議院

会議名: 本会議