岸宏の発言 (農林水産委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○岸参考人 全漁連会長の岸宏でございます。
 先生方におかれましては、日ごろから我が国の水産業の振興に特段のお力添えをいただいておりまして、心からお礼を申し上げる次第であります。
 また、きょうは、この委員会で発言をする機会をいただきました。心から感謝をいたしております。
 御案内のとおり、我が国の漁業は、昭和五十五年以降、二百海里体制の定着によりまして海外漁場からの撤退や、イワシ資源の急激な減少によりまして、遠洋、沖合漁業を中心に六百万トン以上の減産となり、生産金額も三兆円から一兆四千億円まで減少するなど、三十年以上にわたって縮小を続けてきたところであります。
 しかしながら、近年、魚価の上昇などによりまして、平成二十五年からは生産金額は増加に転じておりまして、約二千億円増加するなど、明るい兆しも見えておるところであります。
 このような状況下にありまして、今般の水産政策の改革に当たりましては、私どもは、この機会をしっかり捉え、現状をしっかりとまた点検しながら、漁業者みずからの課題として改革に取り組み、漁業再生のよい機会としたいということを基本に対応いたしてまいったわけであります。
 私ども漁業者は、戦後の疲弊した漁村の復興から今日まで、長年にわたり、それぞれの浜でその時々の先人が、日夜、本当に血のにじむような努力を重ねてまいりました。特に、戦後の復興期における食料の安定供給、また都市部からの労働力の受入れ等々についても大きな、私は、復興における役割を果たしてきたというふうに思っております。
 漁業は、土地を基盤とする農業と異なり、所有権のない海を生業の場といたしております。また、台風等の自然災害や海水温上昇等の環境変化、生態系の変動など、自然条件に大きく左右され、制御できない条件も多い産業であることが特徴でもあります。
 漁業の国民の皆さんに対する使命は、大きく分けて、一つは国民のたんぱく食料の安定供給であります。二つは国境監視機能を始めとする多面的機能の発揮であります。
 現在、我が国の三万五千キロの沿岸には、五・六キロごとに六千三百の漁村が存在し、また、百四十メートルに一隻の密度で二十五万三千隻の漁船を有しているわけでございます。これは、漁業、漁村特有の広大な海のネットワークであり、他の産業に類を見ない特徴でもあります。
 このような漁業、漁村の勢力が我が国水域で操業し、日々の生業、生活を営むことによって、島国日本の安全のための国境監視の役割を始め、環境、生態系保全など、さまざまな多面的機能の役割を果たしてきたところであります。我が国の姿そのものを形づくってきたと言っても過言ではないと思っております。このことを今回のこの機会にぜひ申し上げたいと思っておる次第であります。
 こうした漁業の特徴や役割の中での私どものこれまでの取組や今後の方向性について、三点ほどお話をさせていただきます。
 大きな取組の一つに、平成二十六年からJFグループを挙げて取り組んできた漁業者所得向上戦略であります浜の活力再生プランがあります。これは、漁業者がみずからの進むべき道しるべを、それぞれの地域の特性を生かし、水産庁、また地元行政とも連携しながら、地域で相談し、漁業者みずからが策定、実践する浜の再生計画であります。
 これまで、全国の漁村地域を網羅する六百六十二の地域でプランが策定され、実践をしてまいりました。ことしで五年目を迎えておりますが、全国七割の地域で、当初掲げた所得の向上目標を達成するなど、大きな成果が出ております。
 私の実感として、漁業者の意識が変わった、浜がよくなってきた、若い担い手も帰ってきている、漁業経営もよくなってきた、勝ち組もかなり出ておる、このように感じておるところでもあります。
 今後は、人づくりを最重要課題に、異業種連携も進めながら、担い手の世代交代を促進し、やる気のある漁業者を支えていくことが、私ども漁協、JFグループの役割と認識をいたしております。
 また、浜プランの成果を更に高めていくためには、企業の持つノウハウ等の活用が必要であります。これを促進するため、昨年五月、農林漁業と商工業の連携を通じた地方創生の推進に関する協定書を締結し、異業種との連携も推進をいたしております。
 今後、現在の浜プランを更に深化させ、次のステップへ向かうべく取り組んでまいる考え方であります。
 次に、漁場の管理についてであります。
 先生方御承知のとおり、沿岸域は、共同漁業権漁業、定置網漁業、養殖漁業、許可漁業など、多種多様な漁業が同時に、かつ、ふくそう的に営まれております。この状況の中で、漁場を円滑かつ高度に利用していくためには、複雑な利害調整が不可欠であります。
 このため、これまで、漁業者が組織する漁協が免許を受け、みずから漁業者間の話合いをベースに調整、管理を行ってまいりました。実は、これは大変な苦労を伴うわけで、誰にでもできるようなわけではありません。
 みずから営む者同士で決める、これが漁場の利用調整の基本であり、今後とも、我々漁業者は、漁業権制度に基づいて役割を果たしていきたいと考えております。
 次に、資源管理についてであります。
 これも先生方御承知のように、沿岸漁業では、限定された海域の中で、さまざまな漁法で、実に多種多様な魚種を、魚の来遊状況に応じて漁獲をするわけであります。そうした特徴から、地域ごとにさまざまな管理手法が長い歴史の中で考案され、それを漁業者の共同管理、自主管理という形で実践をしてまいりました。
 私どもは、今後も共同管理、自主管理を基本としつつ、数量管理等新たな管理手法の導入を含めて資源や漁場の状況を点検、改善し、資源管理を実施していくことが必要だと考えております。
 次に、水産政策についてであります。
 私どもは、浜プランの取組、そしてこれまで先人が培ってきた漁場、資源管理の取組を基本として、漁協、漁業者が中心となって与えられた使命を果たしていくことを基本として考えてまいりました。
 こうした中で、今年六月、農林水産業活力創造プランにおいて、改革の具体的方向性が示されたわけであります。
 私どもは、六月以降数度にわたって、全国説明会やあるいは各地での説明会を開催し、示された内容につきまして、各浜から、さまざまな疑問や不安点を含め、多くの意見、要望を聞いてまいりました。
 こうした浜の意見、要望を踏まえながら鋭意対応を進め、水産庁もこれを受けとめ、浜の不安の声は相当程度払拭、解消し、また、論点も絞られてまいりました。最終的な詰めの協議を行ってきたところであります。
 今般の水産政策の改革につきましては、私はこれまで一貫して、漁業者が本当に理解し、納得できる改革でなければ成果は上がらないということを強く主張してまいりました。なぜなら、改革を実行するのは漁業者であるからであります。
 浜の理解を得るために最も重要なことは、漁業者、漁協がこれまで果たしてきた調整機能や多面的機能についての評価や位置づけをしっかりと打ち出すことであり、かつ、必要な論点は次の五点であります。
 一つは、適切な取組が行われている漁協に免許されている漁業権は、引き続き当該漁協に優先して免許されること、二つ目は、新たな漁業権に当たっては、地元漁業者、漁協等の意見をよく聞き、漁業調整に支障を及ぼさないと認める場合に設定すること、三つ目は、数量管理やIQの沿岸漁業への導入は、来遊する多種多様な資源を漁獲対象としている沿岸漁業の特性をしっかりと踏まえ、十分な準備が整うまでは行わないこと、四つ目は、沖合漁船の大型化については、国の責任のもとで地元沿岸漁業者、漁協との調整を行い、沖合と沿岸との紛争が生じないようにすること、五つ目は、水協法改正に当たっては、漁協と農協が実態上も制度上も大きく異なることを十分に踏まえ、また、信漁連等への公認会計士監査の導入に当たっては、実質的な負担とならないよう措置することであります。
 このような重点課題、論点につきまして、水産庁や内部で議論をまた行ってまいりました。
 その結果、第一条の「目的」において、「漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑み、」と記述され、漁業者を主体とした調整機能等、その役割がしっかりと位置づけられ、法案レベルでは漁業者を主体とした管理が継続される方向となったこと、二つ目は、第百七十四条において、漁業及び漁村の国境監視を始めとする多面的機能への配慮が盛り込まれたこと、三つ目は、各重点課題への対応がそれぞれ問題がないように条文に位置づけられ、運用面についても漁業者が安心できるような内容の回答を得ていること、四つ目は、我々漁業者の長年の懸案であった組織的密漁への罰則が新設、強化されたこと、このような対応が示されたわけであります。
 このような経過の中で、十月末に、JFグループとして受入れの判断を行ったところであります。
 しかしながら、あくまでも法案は骨格部分であり、漁業権や資源管理、またそれ以外も含めて、今後の運用の考え方は政省令等に委ねられている部分が多くあります。
 今後の政省令等の検討に当たっても、国におかれましては、漁業者そして私どもJFグループと十分な協議を行い、改革の実践者である漁業者が理解し、実践できるようなものとしていただきたい。あわせて、法律の内容や政省令を含む運用の考え方を、現場の漁業者レベルまで丁寧に説明をしていただきたいと思うわけであります。
 また、国が、漁業の成長産業化のもと、水産政策の改革を打ち出すからには、漁業に明るい展望が開けるように、将来の展望をしっかりと示し、革新的な、従来の発想にとらわれない政策と、それを裏づける予算について、しっかりとまたこれも実現していただきたい、このように思うわけであります。何とぞ先生方の御理解と御支援をお願い申し上げる次第であります。
 我々JFグループといたしましても、漁業再生への大きな転換が今であると私は考えております。今回の改革が浜の将来展望を切り開いていくものとなるよう、みずからの課題として組織を挙げて取り組んでいく決意を申し上げ、私からの意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119705007X00820181126_002

発言者: 岸宏

speaker_id: 20141

日付: 2018-11-26

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会