農林水産委員会

2018-11-26 衆議院 全101発言

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会議録情報#0
平成三十年十一月二十六日(月曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 武藤 容治君
   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君
   理事 齋藤  健君 理事 野中  厚君
   理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君
   理事 近藤 和也君 理事 稲津  久君
      池田 道孝君    泉田 裕彦君
      稲田 朋美君    今枝宗一郎君
      上杉謙太郎君    加藤 寛治君
      木原  稔君    木村 次郎君
      小寺 裕雄君    斎藤 洋明君
      坂本 哲志君    西田 昭二君
      福山  守君    藤井比早之君
      藤原  崇君    古川  康君
      本田 太郎君    三浦  靖君
      宮路 拓馬君    簗  和生君
      山本  拓君    石川 香織君
      神谷  裕君    佐々木隆博君
      長谷川嘉一君    堀越 啓仁君
      関 健一郎君    緑川 貴士君
      濱村  進君    大串 博志君
      金子 恵美君    田村 貴昭君
      串田 誠一君
    …………………………………
   農林水産大臣政務官    濱村  進君
   参考人
   (全国漁業協同組合連合会代表理事会長)      岸   宏君
   参考人
   (東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻教授)           八木 信行君
   参考人
   (鹿児島大学水産学部教授)            佐野 雅昭君
   参考人
   (帝京大学経済学部地域経済学科教授)       加瀬 和俊君
   農林水産委員会専門員   室井 純子君
    —————————————
委員の異動
十一月二十六日
 辞任         補欠選任
  稲田 朋美君     簗  和生君
  金子 俊平君     三浦  靖君
  古川  康君     本田 太郎君
  森  夏枝君     串田 誠一君
同日
 辞任         補欠選任
  本田 太郎君     古川  康君
  三浦  靖君     金子 俊平君
  簗  和生君     稲田 朋美君
  串田 誠一君     浦野 靖人君
同日
 辞任         補欠選任
  浦野 靖人君     森  夏枝君
    —————————————
本日の会議に付した案件
 漁業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第八号)
     ————◇—————
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武藤容治#1
○武藤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、漁業法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、全国漁業協同組合連合会代表理事会長岸宏君、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻教授八木信行君、鹿児島大学水産学部教授佐野雅昭君及び帝京大学経済学部地域経済学科教授加瀬和俊君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ、急なお呼出しにかかわらず本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、岸参考人、八木参考人、佐野参考人、加瀬参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、初めに、岸参考人、お願いいたします。
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岸宏#2
○岸参考人 全漁連会長の岸宏でございます。
 先生方におかれましては、日ごろから我が国の水産業の振興に特段のお力添えをいただいておりまして、心からお礼を申し上げる次第であります。
 また、きょうは、この委員会で発言をする機会をいただきました。心から感謝をいたしております。
 御案内のとおり、我が国の漁業は、昭和五十五年以降、二百海里体制の定着によりまして海外漁場からの撤退や、イワシ資源の急激な減少によりまして、遠洋、沖合漁業を中心に六百万トン以上の減産となり、生産金額も三兆円から一兆四千億円まで減少するなど、三十年以上にわたって縮小を続けてきたところであります。
 しかしながら、近年、魚価の上昇などによりまして、平成二十五年からは生産金額は増加に転じておりまして、約二千億円増加するなど、明るい兆しも見えておるところであります。
 このような状況下にありまして、今般の水産政策の改革に当たりましては、私どもは、この機会をしっかり捉え、現状をしっかりとまた点検しながら、漁業者みずからの課題として改革に取り組み、漁業再生のよい機会としたいということを基本に対応いたしてまいったわけであります。
 私ども漁業者は、戦後の疲弊した漁村の復興から今日まで、長年にわたり、それぞれの浜でその時々の先人が、日夜、本当に血のにじむような努力を重ねてまいりました。特に、戦後の復興期における食料の安定供給、また都市部からの労働力の受入れ等々についても大きな、私は、復興における役割を果たしてきたというふうに思っております。
 漁業は、土地を基盤とする農業と異なり、所有権のない海を生業の場といたしております。また、台風等の自然災害や海水温上昇等の環境変化、生態系の変動など、自然条件に大きく左右され、制御できない条件も多い産業であることが特徴でもあります。
 漁業の国民の皆さんに対する使命は、大きく分けて、一つは国民のたんぱく食料の安定供給であります。二つは国境監視機能を始めとする多面的機能の発揮であります。
 現在、我が国の三万五千キロの沿岸には、五・六キロごとに六千三百の漁村が存在し、また、百四十メートルに一隻の密度で二十五万三千隻の漁船を有しているわけでございます。これは、漁業、漁村特有の広大な海のネットワークであり、他の産業に類を見ない特徴でもあります。
 このような漁業、漁村の勢力が我が国水域で操業し、日々の生業、生活を営むことによって、島国日本の安全のための国境監視の役割を始め、環境、生態系保全など、さまざまな多面的機能の役割を果たしてきたところであります。我が国の姿そのものを形づくってきたと言っても過言ではないと思っております。このことを今回のこの機会にぜひ申し上げたいと思っておる次第であります。
 こうした漁業の特徴や役割の中での私どものこれまでの取組や今後の方向性について、三点ほどお話をさせていただきます。
 大きな取組の一つに、平成二十六年からJFグループを挙げて取り組んできた漁業者所得向上戦略であります浜の活力再生プランがあります。これは、漁業者がみずからの進むべき道しるべを、それぞれの地域の特性を生かし、水産庁、また地元行政とも連携しながら、地域で相談し、漁業者みずからが策定、実践する浜の再生計画であります。
 これまで、全国の漁村地域を網羅する六百六十二の地域でプランが策定され、実践をしてまいりました。ことしで五年目を迎えておりますが、全国七割の地域で、当初掲げた所得の向上目標を達成するなど、大きな成果が出ております。
 私の実感として、漁業者の意識が変わった、浜がよくなってきた、若い担い手も帰ってきている、漁業経営もよくなってきた、勝ち組もかなり出ておる、このように感じておるところでもあります。
 今後は、人づくりを最重要課題に、異業種連携も進めながら、担い手の世代交代を促進し、やる気のある漁業者を支えていくことが、私ども漁協、JFグループの役割と認識をいたしております。
 また、浜プランの成果を更に高めていくためには、企業の持つノウハウ等の活用が必要であります。これを促進するため、昨年五月、農林漁業と商工業の連携を通じた地方創生の推進に関する協定書を締結し、異業種との連携も推進をいたしております。
 今後、現在の浜プランを更に深化させ、次のステップへ向かうべく取り組んでまいる考え方であります。
 次に、漁場の管理についてであります。
 先生方御承知のとおり、沿岸域は、共同漁業権漁業、定置網漁業、養殖漁業、許可漁業など、多種多様な漁業が同時に、かつ、ふくそう的に営まれております。この状況の中で、漁場を円滑かつ高度に利用していくためには、複雑な利害調整が不可欠であります。
 このため、これまで、漁業者が組織する漁協が免許を受け、みずから漁業者間の話合いをベースに調整、管理を行ってまいりました。実は、これは大変な苦労を伴うわけで、誰にでもできるようなわけではありません。
 みずから営む者同士で決める、これが漁場の利用調整の基本であり、今後とも、我々漁業者は、漁業権制度に基づいて役割を果たしていきたいと考えております。
 次に、資源管理についてであります。
 これも先生方御承知のように、沿岸漁業では、限定された海域の中で、さまざまな漁法で、実に多種多様な魚種を、魚の来遊状況に応じて漁獲をするわけであります。そうした特徴から、地域ごとにさまざまな管理手法が長い歴史の中で考案され、それを漁業者の共同管理、自主管理という形で実践をしてまいりました。
 私どもは、今後も共同管理、自主管理を基本としつつ、数量管理等新たな管理手法の導入を含めて資源や漁場の状況を点検、改善し、資源管理を実施していくことが必要だと考えております。
 次に、水産政策についてであります。
 私どもは、浜プランの取組、そしてこれまで先人が培ってきた漁場、資源管理の取組を基本として、漁協、漁業者が中心となって与えられた使命を果たしていくことを基本として考えてまいりました。
 こうした中で、今年六月、農林水産業活力創造プランにおいて、改革の具体的方向性が示されたわけであります。
 私どもは、六月以降数度にわたって、全国説明会やあるいは各地での説明会を開催し、示された内容につきまして、各浜から、さまざまな疑問や不安点を含め、多くの意見、要望を聞いてまいりました。
 こうした浜の意見、要望を踏まえながら鋭意対応を進め、水産庁もこれを受けとめ、浜の不安の声は相当程度払拭、解消し、また、論点も絞られてまいりました。最終的な詰めの協議を行ってきたところであります。
 今般の水産政策の改革につきましては、私はこれまで一貫して、漁業者が本当に理解し、納得できる改革でなければ成果は上がらないということを強く主張してまいりました。なぜなら、改革を実行するのは漁業者であるからであります。
 浜の理解を得るために最も重要なことは、漁業者、漁協がこれまで果たしてきた調整機能や多面的機能についての評価や位置づけをしっかりと打ち出すことであり、かつ、必要な論点は次の五点であります。
 一つは、適切な取組が行われている漁協に免許されている漁業権は、引き続き当該漁協に優先して免許されること、二つ目は、新たな漁業権に当たっては、地元漁業者、漁協等の意見をよく聞き、漁業調整に支障を及ぼさないと認める場合に設定すること、三つ目は、数量管理やIQの沿岸漁業への導入は、来遊する多種多様な資源を漁獲対象としている沿岸漁業の特性をしっかりと踏まえ、十分な準備が整うまでは行わないこと、四つ目は、沖合漁船の大型化については、国の責任のもとで地元沿岸漁業者、漁協との調整を行い、沖合と沿岸との紛争が生じないようにすること、五つ目は、水協法改正に当たっては、漁協と農協が実態上も制度上も大きく異なることを十分に踏まえ、また、信漁連等への公認会計士監査の導入に当たっては、実質的な負担とならないよう措置することであります。
 このような重点課題、論点につきまして、水産庁や内部で議論をまた行ってまいりました。
 その結果、第一条の「目的」において、「漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑み、」と記述され、漁業者を主体とした調整機能等、その役割がしっかりと位置づけられ、法案レベルでは漁業者を主体とした管理が継続される方向となったこと、二つ目は、第百七十四条において、漁業及び漁村の国境監視を始めとする多面的機能への配慮が盛り込まれたこと、三つ目は、各重点課題への対応がそれぞれ問題がないように条文に位置づけられ、運用面についても漁業者が安心できるような内容の回答を得ていること、四つ目は、我々漁業者の長年の懸案であった組織的密漁への罰則が新設、強化されたこと、このような対応が示されたわけであります。
 このような経過の中で、十月末に、JFグループとして受入れの判断を行ったところであります。
 しかしながら、あくまでも法案は骨格部分であり、漁業権や資源管理、またそれ以外も含めて、今後の運用の考え方は政省令等に委ねられている部分が多くあります。
 今後の政省令等の検討に当たっても、国におかれましては、漁業者そして私どもJFグループと十分な協議を行い、改革の実践者である漁業者が理解し、実践できるようなものとしていただきたい。あわせて、法律の内容や政省令を含む運用の考え方を、現場の漁業者レベルまで丁寧に説明をしていただきたいと思うわけであります。
 また、国が、漁業の成長産業化のもと、水産政策の改革を打ち出すからには、漁業に明るい展望が開けるように、将来の展望をしっかりと示し、革新的な、従来の発想にとらわれない政策と、それを裏づける予算について、しっかりとまたこれも実現していただきたい、このように思うわけであります。何とぞ先生方の御理解と御支援をお願い申し上げる次第であります。
 我々JFグループといたしましても、漁業再生への大きな転換が今であると私は考えております。今回の改革が浜の将来展望を切り開いていくものとなるよう、みずからの課題として組織を挙げて取り組んでいく決意を申し上げ、私からの意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。拍手
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武藤容治#3
○武藤委員長 ありがとうございました。
 次に、八木参考人、お願いいたします。
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八木信行#4
○八木参考人 議長、ありがとうございます。東京大学の八木信行です。
 まず、今回の水産政策見直しには、私は賛成をしております。自国の水産政策を定期的に見直すのは国際的にも普通の行為で、例えばアメリカはマグナソン・スティーブンス漁業保存管理法を、またEUも共通漁業政策を、それぞれ何年か一度改定をいたします。この過程で政策課題が再認識され、関係者がお互いの考えを理解し合うというプロセスが生じます。今回の法律案をめぐっても、既に衆議院本会議などで議論がなされておりますが、実に有益な議論がなされていると感じております。
 二〇〇九年にノーベル経済学賞を受賞した米国インディアナ大学のオストロム教授は、地域の当事者が自主的な努力で資源を管理し、百年以上にわたりその保全に成功している例が世界じゅうに多数存在すると述べております。日本の沿岸漁業もこの一例であると私は考えます。実際、日本の沿岸では、何世紀にもわたり積み上げられてきた知識や技術、また社会的な基盤の存在が今でも重要な役割を果たしております。今回の水産の改革でも、このような基盤を尊重し、有効に活用することが重要です。
 沿岸漁業における日本の伝統的な管理制度は、漁業権です。
 漁業権制度は、資源を利用する者に対して政府が利用権を与えるかわりに、資源の利用者が保全の責任を負う仕組みです。これは江戸時代から続いてきた日本のお家芸とも言える管理の方式です。
 日本近海は、世界の中でも生物多様性が高い海域であり、漁獲される魚の種類も多種多様です。また、漁船の数や水揚げ港の数も多く、小規模な漁業が日本の漁業の九割以上を占めている特徴があります。これらを適切に管理するために、日本では、官民が一体となった共同管理、英語でいうコマネジメントを伝統的に行っています。
 外国では、政府が号令をかけても漁業者がルールを守らないという問題も指摘されていますが、日本のように、漁業者が参加する形でルールを設定し、これが当たり前のように守られているということは、欧米の研究者からも高い評価を受けています。この中心に漁業法が存在しているとの点は、本日御出席の皆様の間でも共通の理解があると考えます。
 今回の法案は、基本的に従来の漁業法の根幹を維持しながらも、現代社会で必要な改良を施し、また法律としてもわかりやすい形に整理されています。したがって、私は、今回の法案でも重要な仕組みは維持されていると考えます。
 今回の法律案では、船舶ごとの漁獲割当てが国の制度として新しく設定されることになっています。これは、欧米各国でIQと呼ばれ、既に採用されている仕組みです。日本でも既に、遠洋のマグロ漁業や日本海のベニズワイ漁業などで業界の自主的な取組として先行的に実施されている例があります。このように、準備が整った漁業種からIQを設定することは一定の合理性があると考えます。また、IQを導入した大臣許可漁業は、船舶の数やトン数制限などを撤廃し、より効率的な漁業が行えるようにしている点も、この漁業の国際競争力を上げる上で重要な改正であると思います。
 ただし、法律を運用する段階では、IQ設定について、準備の整った状態かどうかを判断する基準を明確化させる必要があると考えます。例えば、管理区分に所属する漁業者の八五%が賛成しているなどのことをもって準備が整った状態とするといった具体的な指針を今後国が示すことも求められていくでしょう。
 また、諸外国の中には、IQを市場で売買対象とする制度の国もあります。これを、譲渡可能個別割当て制度、ITQと呼びます。平成二十六年に水産庁が設定した資源管理のあり方検討会では、譲渡性を付与しないとの前提のもとで、更に導入拡大の可能性を検討すべきと結論づけています。その一方、ITQについては、時期尚早との結論になりました。
 ITQは、国際的にも賛否両論があります。この反対意見は、資本力のある一部の漁業者に割当て量が集中してしまい、社会的な公平性が損なわれるというものです。一方で、賛成派は、経済効率性が向上するとの主張です。諸外国も、この両者、すなわち社会的公平性と経済効率の双方のバランスをどう扱うかで頭を悩ませている実態があります。
 今回の日本の法律案では、漁獲割当て割合は、国や都道府県の許可を得た上で、船舶等とともに譲渡が可能になっております。市場で自由に売り買いできないという意味で、ITQではないと言えます。社会的公平性と経済効率の双方のバランスを保つことができる仕組みであろうと考えております。
 最後に、この点を明確にしておかないと加瀬参考人、佐野参考人が納得しないと思われる点について触れておきたいと思います。
 二〇〇七年から、水産の改革をマスコミなどに対してアピールする数人のグループによる活動が顕著化しました。そして、沿岸漁場を使用している漁業者の既得権益を見直して民間企業を参入させれば浜は復活するであるとか、漁業が衰退している原因は乱獲で日本周辺の水産資源が枯渇したからで、資源管理をしっかり行えば漁業は復活するであろうといった主張がなされてきています。
 しかし、このような主張は、裏づけとなる学術論文はありませんし、全体のごく一部をクローズアップして全体に引き伸ばして議論するような無理な筋書きになっていると私は考えます。
 加瀬参考人、佐野参考人も、彼らの主張には強い調子で反論されていることを私も承知しています。今回の漁業法等の一部を改正する法律案が、このグループが行っている主張を取り入れたものであれば、多数の研究者の代表として最後まで反対しなければならないと加瀬参考人、佐野参考人はお考えになっているかもしれません。
 しかし、実際は、今回の法律案は、今話題となっているグループは一切関与しない状況で作成されています。この点は、私は水産庁にも確認しました。そして、私は、このグループとは異なる立場から、今回の法律案を支持しています。
 彼らの論調では、現在の日本の水産業を否定して、新しい仕組みを提案する傾向が見てとれます。しかし、私は、現状の日本の水産業を肯定して、よい部分を生かしながら新しい取組を導入すべきと考えています。これは、先ほどオストロム教授の話を紹介する際にも述べたとおりです。
 更に言えば、現在、世界各国で水産政策の改革が議論されていますが、自国の沿岸漁業者を切り捨てて全く新しいものに切りかえるような方針の国など、世界じゅうのどこにもありません。
 国連食糧農業機関は、二〇一四年に、持続可能な小規模漁業を保障するガイドラインを合意しました。私は、このテキストの作成者の一人です。ガイドラインは、経済が発展する中で経済の縁辺に押しやられる小規模漁業者の権利をどう保障するのかを重視しています。このように、国際的には、小規模漁業者が社会で果たしている役割を改めて見直し、尊重する傾向があります。
 今回の法律案は、このガイドラインにも沿った形で、今までの否定ではなく、従来の漁業者が果たしてきた役割を尊重しながら新しい要素を取り入れるものになっていると私は考えます。
 次に、日本の漁業は世界の中でひとり負け、これは乱獲で周辺の水産資源が枯渇したからで、資源管理をしっかり行えば漁業は復活するであろうといった話がどうなのかという部分にも触れておきます。
 まず、日本の漁業が世界の中でひとり負けしているという部分は事実に反します。
 確かに、近年、日本の漁獲量はピーク時の三割台の水準に落ち込んでいます。しかし、同じように、最近の漁獲量は、ドイツはピーク時の二割台、イタリアもピーク時の三割台に落ち込んでいます。漁業が盛んなフランスやスペインでもピーク時の六割台、ノルウェーでも現在はピーク時の七割台という状況です。その一方で、中国は倍々ゲームで生産量をふやしました。
 つまり、水産で日本が世界の中でひとり負けしているという解釈は間違いであり、むしろ中国がひとり勝ちしているのです。
 先進国で漁業生産が減少しているのは、労働人口が一次産業から二次産業、三次産業へシフトした要因がきいています。生産者が減ったために生産量が減っているという構図です。これは農業も同じ構図です。また、米と同様に、近年、水産物も消費者離れが起こっています。日本への水産物輸入品も近年減少していることも、この水産物需要の減少を裏づけています。つまり、水産物の消費が減退したために、生産量が減少している部分があるのです。
 確かに、一部の沖合漁業などでは新技術導入により漁船能力が増大しており、資源管理がより重要になっているという点はそのとおりです。しかしながら、総合して考えますと、水産物の生産量が減ったのは、市場での需要の減少、産業構造の変化など、水産資源管理とは別の要因も相当きいていると言えるでしょう。
 漁業資源管理をノルウェーのようにうまく行えば、魚の水揚げ価格が向上して船員の給料も上がるといった議論もあります。しかし、これも荒唐無稽な話のように思われます。
 魚の価格は、需要など市場側の要因で決まります。生産側の管理をしっかりすれば自動的に製品の価格が上がるというものではありません。確かに、魚の場合は資源管理を厳しくして供給を絞れば、需要は逼迫して価格が上がるように思えます。ところが、日本の実際は、輸入品が多く存在し、また畜産物などの代替品も存在するため、それほどうまくはいきません。
 そもそも、ノルウェーで船員の給料が高いのは、国民所得が高いからです。国民一人当たりのGDPはノルウェーが八万ドル台で、日本は三万ドル台です。船員の給料もこの差を反映している要素が強いと考えます。
 今回の漁業法の改正は、水産の生産面に特化した改革です。しかしながら、これとあわせて、水産物の貿易、加工、流通、消費の側面や、新規労働者の確保などを含めて、十分な対策を予算措置などを用いて行う必要があると考えます。このように総合的な施策を用いることで漁業、漁村を活性化させることが重要と考えます。
 時間が参りましたので、私の発言はこれで終了いたします。御清聴ありがとうございました。拍手
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武藤容治#5
○武藤委員長 ありがとうございました。
 次に、佐野参考人、お願いいたします。
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佐野雅昭#6
○佐野参考人 鹿児島大学水産学部の佐野でございます。
 私は、養殖業の現場に近いところでふだん活動しておりまして、一昨日も、垂水というところの養殖業者と一緒に餌やりをやり、また、水曜日には香川県の養殖業者のところでまた船に乗ってまいりました。そういう立場からきょうはお話をさせていただきたいと思います。
 私も、漁業法の改革は時代状況に合わせて行われるべきでありまして、改革自体に反対するものではございません。現実にも漁業の担い手不足というのは深刻でありまして、何らかの改革が必要であるというふうには認識しております。ただし、改革しさえすればうまくいくというものでもなくて、どのような姿を目指し、どのようなスケジュールでそれを進めていくのか、その結果、誰かに不利益が生じることがないようにどうすべきかなどと、総合的にしっかりと議論していくべきであるというふうに考えております。
 私は、沿岸漁村の社会的共通資本としての性格、また沿岸漁業における地域政策、そういったものを重要視する立場から、今回の法改正を客観的に評価をしていきたいと思っております。
 先ほど八木先生の方からも少し言及ありましたけれども、この法改正の一年半にわたるプロセスを見てくる中で、全体的には、水産政策が地域政策というものから産業政策に大きく転換したように見えてまいりました。そこに大きな不安を感じてきたのは事実でございます。
 ただ、今回示されました条文を読みますと、当初のいろいろな方針等々で示された内容から、かなり現実的な内容には落とし込まれておりまして、その点ではかなり不安は解消されてきたかなというふうには考えております。そこは評価をしております。ただし、まだ曖昧な部分も多い。実際にどのように運用されるのかイメージが湧かない部分もございます。
 時間もありませんので、きょうは資源管理と区画漁業権の運用を中心に述べさせていただきたいと思います。
 資源管理なんですけれども、まず、漁業、養殖業において量的成長は既に困難であるということを御理解いただきたいと思います。持続的に自然環境や天然資源を利用するためには、今現在そうしておりますように、漁獲量は抑制し、また養殖も環境容量を超えないようにするなど、十分に抑制的な態度が必要です。したがって、生産力の拡大というものは、これまで歴史的にも、新規漁場、新規資源の獲得においてしか行い得ない。論理的にもそうです。
 世界全体でも、特殊な事例を除き、既に成長の段階は終えんをしております。特に日本においては、過去に急激な成長を遂げました。今、成熟しております。こういう状況において日本水産業が目指すべきものは、成長というよりも、むしろ持続的生産の確保、持続的な養殖生産の実現であろうと思います。
 この場合、経済成長は価格向上でしか実現し得ず、成長戦略はすなわち市場戦略でしかあり得ないと思います。この法律は市場戦略は範疇に置いておりませんけれども、市場戦略があって初めての成長であることを忘れてはならないというふうに考えます。
 また、生産性の向上もうたわれておりますけれども、それを目指すのであれば、それは、省力化を進め、就業人口を減らすということでしか恐らく実現はできない。きれいごとではないものが出てきます。そこらあたりを目指すということであれば、相当な覚悟も必要だろうというふうに考えております。
 さて、今回の改正における最大の変更点が、漁業法にTAC法を包含したことです。そして、TAC管理の拡張が規定をされました。
 ここで、法案で示されておりますIQあるいはIVQというようなものは、沖合漁業においては可能であろうかと思います。例えばサンマ漁業、サンマだけしか漁獲しない棒受け網漁業がそのほとんどを漁獲しておりますし、水揚げ港も五港程度に集約されております。こういうものだと、コストが低く、効率的にこのシステムが使える。
 しかし、多様な魚種を漁獲して、数百の漁港で水揚げをしている一般の沿岸漁業での導入は、現実には大変難しいと思います。IQの先進国であるオーストラリアでも、複数魚種を対象とした漁業種類はこういった管理から外されているというふうにも聞いております。
 TACというものはMSYベースで考えられていくものと思いますけれども、これの推定も簡単ではありませんし、正確でもありません。MSYという考え方は、前年の資源量、親の量、これに翌年の資源量が規定されるという、親子関係が存在することを前提にした考え方でありますけれども、こういう関係が明確に存在する魚種は実は少ないということが資源学の常識でありまして、科学的な結論です。
 その結果、ノルウェーなどでも、このTAC制度は必ずしも効率的に動いているとは思えない面もありまして、画一的な管理手法が硬直化するといったケースもあるように聞いております。
 TACというもの、MSY利用に基づくTACというものを全ての漁業種類に敷衍をするという上では、まだ科学的な検討が終わっていないのではないかというふうに考えます。
 一方、資源量がどのように変化しても、そのうちの一定割合を間引くという、漁獲率を一定化する努力量規制、これは日本でこれまでずっと行われてきたわけですが、こういったものも大変に有効な資源管理手法でありまして、状況に応じては、もっとよいやり方がある可能性もあります。日本では、多様な資源、多様な漁業の性状に合わせた多様な漁業管理というものが必要ではないかというふうに考えます。海外の管理方式に盲従せず、日本型の、日本の資源に応じた管理方式をこれからも更に追求し続けるという態度が必要だと思います。
 法案では、TAC管理を中心にするものの、他の管理手法も必要に応じて取り入れていくということになっておりまして、こういう考え方は大変評価をできると思います。ただ、順番は逆で、資源量変動に親子関係が確実に影響すると確認された魚種のみをTAC管理に移行させるべきでありまして、基本が漁獲努力量管理で、可能なものから順次TACに移行という考え方が妥当なように思います。
 ぜひとも、現場で柔軟な運用ができるように、資源学の専門家等の意見も取り入れながら、より現実的な資源管理制度を実情に合わせて取り入れていくという運用が必要だと考えます。
 また、法で示された管理方式では、管理コストが非常に膨大になる可能性がございます。日本は漁船が二十二万隻、ノルウェーは八千隻、ニュージーランドは千八百隻程度しかございません。同じ管理を導入しても、効率性で大きく異なってまいります。また、対象となる魚種の数に対して資源研究者の数も全く足りておりません。他方、魚種によっては圧倒的に低コストである漁業者の自主管理、この機能、効果、これをより高める方向での取組もやはり忘れてはならないと考えます。そこに、共同体に支えられて持続的にこれまで存続してきた日本の沿岸漁業の強みがあるように思います。
 TACへの移行を進めるがために、このような、日本の漁民集団と各地域の水産試験場が協力してこれまでつくり上げてきた資源管理型漁業という自主的な管理組織、コマネジメントの枠組み、こういったものを捨て去るのは愚策である、沿岸資源の持続的利用において後退になりはしないかという危惧を感じております。
 さて、次に、区画漁業権、養殖の話に移りたいと思います。
 現行法における区画漁業権とは養殖を営む権利でございまして、現状では、多くの場合、漁協に免許されて、漁協の管理下で組合員が権利を行使しております。
 水は流動的でありまして、複数経営体間を移動します。誰かが私的利益のために漁場を汚染すれば、全体が被害をこうむります。また、同じ場所を他の漁業種類も同所的に、複層的に共同で利用しております。養殖海面は農地のように私有化できるものではございません。このため、養殖では必ず集団的な漁場利用、管理が必要となりまして、現行法では関係漁民全てを網羅している漁協を漁業権者として個別経営より優先するということになっております。ただ、この際、企業等も個人と同じく漁協の組合員となることで権利を行使できるため、参入を排除するものでは全くございません。
 また、区画漁業権は、多くの場合、共同漁業権漁場の上に設置されることが多くて、歴史的に漁村総有の形で利用されてきた地域環境を地域定住者が利用するという地先の環境資源利用形態でもあります。地域環境は、まず、地域定住者により、そのなりわいのために利用され、その果実は地域内に落とされるべきだというふうに私は考えております。それが地方創生の精神ではないかと思います。地域外の資本が地域環境利用上同列に立つということは正当性を持たないし、特に私のように地方にいる者から見れば、それはまことにそうであろうというふうに思われます。
 FAOの持続的漁業の行動規範やSDGsでも、小規模、伝統的漁業者への特別な配慮の必要性が明記されておりまして、これが国際的な常識ではないかと思います。
 ただ、養殖産地の実態を見れば、現時点の制度でも企業参入は円滑に行われておりまして、特に問題はない。もちろん、成功している事例の傍ら、失敗している事例もありますけれども、それは制度の問題ではなくて、技術の問題、放漫な経営の問題、単なる経営能力の問題ではないかというふうに考えております。
 また、改正案では、漁場計画作成段階におきまして関係者から意見を聞くことにしておりまして、計画段階で漁業権者を決めていく手順となります。ここで活用漁業権の規定がされておりまして、これは大変重要だと思っております。争乱が起きないように現在の利用体系に配慮されておるということは評価をしたいと思います。
 ただし、この場合でも知事が認めるということが必要でありまして、そこでやはり漁業権の歴史性と地域のなりわい漁業者への配慮というものが必要ではないかというふうに考えております。地域社会の構造に急激な変化がないように、十分な配慮をいただきたいと思います。
 また、新規区画漁業権漁場の設定も積極的に進めるというふうになっておりますけれども、海面の総合的な最大活用という目的のもとで、例えば、生産性の低い一本釣り漁業者のような零細な高齢な漁業者が一方的に漁場を奪われるというようなことがないようにも考えるべきである。こうした判断も知事に委ねられている面が多うございまして、そこでいたずらに混乱を招くことがないように、十分に指導はしていただきたいと思います。
 かくして、国、県、漁協、全てにおいて事務作業量がかなり増大すると思われます。特に知事には大きな権限が与えられまして、膨大な準備作業と繊細な判断が求められます。そこに、やや、実際、大きな混乱が起こるんじゃないかというふうなおそれを抱いております。
 養殖を営む漁民は今、二つの大きな不安を抱えているように思います。
 一つは、この法改正が生産力の拡大を目指していることですね。今、ブリやマダイ、もう既にクロマグロもそうですが、主要な養殖種目では、既に過剰生産、過剰供給状態にありまして、低価格、価格暴落が定常化をしております。また、環境容量も限界に来ておりまして、毎年巨額の赤潮被害が出ております。
 こうしたことから、国が主導してガイドラインをつくって、今、生産量を抑え込んでいる状況です。漁業者には辛抱してもらって、つくるのを少し抑えてくれと頼んでいる状況です。こういう状況の中で、それとやや矛盾するような、生産力を拡大する、成長させるというような方向が打ち出されているということに対しては、やはりどうしても不安を感じざるを得ないというところだと思います。
 もう一つの不安は、やはり、これまで経験してきたトラブルが各地で多発するのではないかということです。
 かつて、幾つかの事例がありまして、外部からの参入企業が知事に直訴をするような形で新規漁業権を手に入れて養殖をし、経営に失敗してわずかの期間で脱退する、その間に零細な漁業者に多大な迷惑をかけるというようなことがこれまでありました。そう多くはないですが、あります。そういったことがもしかして起こりやすくなるのではないかというふうな危惧があります。これは危惧、杞憂であればよいのですけれども、それが杞憂で終わるような運用、それを期待したいと思っております。
 やはり、同じ地域で同じ水域を活用していく、利用していくのであれば、そこでは地域と調和して持続的でなければならないと思います。同じ漁業権のもとで、同じ漁業権行使規則を遵守する形で、互いに助け合いながら養殖を営んでいってほしいというふうに考えております。今の成功事例は全てそういう形でやられていると思います。
 最後に、全体的に省令や知事の判断に委ねられることが多くて、具体的な運用には大きな幅が出てくるように思います。
 沿岸域では、先ほど申しましたように、漁業、養殖業の成長産業化というものはそもそも大変困難であると思います。むしろ、定住漁民の生活を守ること、持続性を確保すること、これをまず最大の目的とすべきではないかと考えます。それを可能とした上で、新規参入者による新しい取組が地域の漁業の活性化に貢献していくということが望ましいです。
 漁業を通じて、長らく地域の環境を利用して自然調和型のなりわいを営んできた定住漁民に不利益がないよう、彼らの今の生活が脅かされることがないように、この法改正あるいは法の運用、十分に注意をしていただきたいということを希望して、私の意見を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。拍手
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武藤容治#7
○武藤委員長 ありがとうございました。
 次に、加瀬参考人、お願いいたします。
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加瀬和俊#8
○加瀬参考人 こんにちは、加瀬と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、沿岸漁業における漁業権問題、したがって、漁業法改正に絞って意見を述べさせていただきます。
 まず、漁業法改正案の第一の問題点は、第一条で、現行法の二つの目的のうち、漁業の民主化が削除され、漁業法の目的が漁業生産力の発展だけになったことです。
 この理由は、民主化は既に達成されたということのようですが、地元の自然資源を、地元に住み、みずから労働する漁業者が優先的に利用できるという原則を外し、資源がありながら地元漁業者はそれを利用できず、外部の企業が優先的にこれを利用するとなる、戦前型のシステムというものには賛成できません。
 農地改革は小作人に土地の所有権を移しましたから、民主化が達成され、後戻りもできない状態になったと言えますが、同じ時期に実施された漁業制度改革は、海の所有権を地元漁業者に与えたわけではなく、地元漁業者が漁場で操業する権利と企業が漁場を利用する権利とがぶつかった場合には、地元漁業者が優先するという原則を定めたものです。
 したがって、今回の改正で、その点を事実上企業優先に変更するわけですから、それは戦前のシステムに後戻りすることを意味することになります。
 言うまでもなく、私たちは、漁場の全ての利用を地元漁業者優先にせよと言っているわけでは決してありません。日本の漁業が利用している世界の漁場、その中で、日本だけが操業する権利を持っている二百海里漁場、岸辺から約四百キロあるわけですが、その中で、わずかに地先一キロないし三キロという非常に狭い漁業権漁場、その範囲だけは地元漁業者が伝統的に利用してきた漁場なので、地元漁協と協調する形で企業は入ってくださいということが、現漁業法を守りたいと思っている私たちの主張です。
 漁業権の範囲は極めて狭いものです。瀬戸内海では陸地からたった一キロ未満のところが大半で、日本全体でも三キロ以内がほとんどですから、一人乗りの小さな漁船でも五、六分も走れば漁業権のない沖合漁場に出てしまいます。広い沖合漁場は全て企業の参入に開かれており、沿岸漁場を沖合に広げることは沖合漁業との対立をもたらすとして、明治以降、実質的に拡張は禁止をされております。せめて、現在沿岸漁業者が優先的に使用できている沿岸漁場については、地元漁業者が使用する権利を奪わないでいただきたいというのが私どもの主張です。
 これまでは、この民主化条項がありましたので、同じ漁場を企業と漁協が争った場合には、漁協が優先されることによって地元漁業者が操業する権利が守られていたのですが、今後は、こうした優先順位の考え方が廃止されますので、漁協と企業がともに申請できる漁場については知事が裁量的に決定する権限を持ち、その他の漁場については、企業にしか免許が与えられない漁場と、漁協にしか免許が与えられない漁場とに二分される形になってしまいます。
 これまで操業していた漁業者から漁業権を奪うと直接明示的に書いてある条項はありませんが、それは、知事が漁場が適切、有効に利用されていると判定した場合に限られています。法の目的が漁業生産の発展だけに変わりましたから、沿岸漁業者が操業している漁場の水揚げ高が一億円、企業が入ってクロマグロ養殖を行ったら三億円という試算ができるような漁場の場合には、漁業生産の発展が実現できると考えられ、漁協組合員の漁場利用を不適切と知事が判定をすることは十分あり得ることではないかと危惧しております。
 地元漁業者よりも外部の企業に漁場を使わせたいと知事が判断しても、現在の漁業法ではそれは不可能です。地元の漁業者が養殖業を希望し、それを代表して漁協が漁業権を申請すれば、現行法の優先順位の規定によって、漁業権は漁協に免許されるからです。
 これに対して、今回は、企業が養殖業をもっと積極的に実施できるようにするという点が法改正のメーンの目的ですから、新設漁場の大半が初めから企業用として、すなわち個別漁業権として設定されてしまい、漁協は、その漁場部分については申請する権利がなくなることになります。
 民主化条項の廃止にかかわって、海区漁業調整委員の公選制の廃止も重大問題です。
 これまでは、漁場利用、漁業調整等についての県の決定に不満があっても、自分たちが選んだ代表が参加して決めたのだから従わなければならないという理由で漁協、漁業者は納得をしてきましたが、この制度が変更されることによって、納得する根拠を失うことになるからです。知事が知事の提案に賛成することが見込める人だけを選んだ委員会は、漁業者にも漁協にも、公平な組織として受け取られることはなくなると思われます。
 就労機会の乏しい漁村において、地元資源に依拠して生活を成り立たせてきた沿岸漁業者から生存権の最も確実な保障である漁業権を奪うことは、何としても回避していただきたいと切に願っております。
 続いて、第二の論点として、海区漁場計画にかかわる問題を取り上げます。
 その第一の問題は、策定プロセスが曖昧になり、有力企業と行政との癒着が必ず生じる方式になってしまう点です。
 具体的には、漁業法案第六十二条第二項に当たりますが、漁場計画を策定、告示する時点で、それぞれの区画漁業権に漁場の位置、形状、養殖対象物、漁協免許か経営者免許かの別が特定されていなければならないとなっていますし、七十一条では、その内容と異なった申請に免許を与えてはならないと言われています。
 これでは、行政、すなわち知事が、この企業に免許を与えたいと考えた相手に即して、漁場の形状、位置、漁獲対象物、経営者免許であることなどを定める形にならざるを得ません。
 したがって、その意味で、漁場計画ができてから、これが公示されてから、操業したい人たちがそれに申請をし、その中から適切な人が法律の優先順位に従って選ばれるということではなく、漁場計画の策定プロセスにおいて免許権者が事実上決定してしまう、そうなる以外にはないというふうに思われます。
 海区漁場計画にかかわる第二の問題は、法案の解釈に不明の点が多い点です。
 これは、この法案が期限の余裕のない中で少人数で急いでつくられたために起こったことではないかと思われますが、六十三条で、漁場計画のうち、既存の漁場が更新される場合の要件として、次のように書かれています。活用漁業権が団体漁業権であるときは、同一漁業権が団体漁業権として設定されていること、これが要件とされています。六十三条です。
 これを文字どおりにとれば、現在、クロマグロ養殖の大半の漁場は漁協免許になっていますから、その漁場は引き続き漁協免許のままとなるはずであり、企業が操業しているところも漁協免許のままになるということを意味します。新しい方式が適用されるのは、今後拡張される新規漁場についてだけと解釈されます。
 この点について、最初の切りかえ時点である二〇二三年において個別漁業権として設定されるのは、新設される増加漁場だけであるのかどうか、それともクロマグロ養殖の既存漁場を含むのかという点は法案からは非常に読み取れませんので、明確にすべきだと考えます。
 これに関連してですけれども、もし個別漁業権がその時点で認められるとすれば、現在養殖業を営んでいる地元漁業者の中からも、漁協から脱退して、独立した経営者免許への変更を申請する者があらわれることが予想されます。こうした場合に県がどのように対処するのかという点について伺いたいと思います。
 具体的には、一つの沿岸漁場に対する区画漁業権、たった一個の区画漁業権が、その中で二十の法人があれば二十個と、あと八十個の漁業者の区画漁業権とに分かれる形で免許されるということになります。すなわち、一個の区画漁業権が二十一個の区画漁業権になる、そういうふうに解釈していいのかどうかという点を明確にしてもらいたいと思います。
 漁場計画に関する第三の問題は、新水産政策では養殖漁場を積極的に新設することを打ち出していますが、それによって、地元漁業者から失われる、共同漁業権漁場が狭められてしまうことに対して何の補償策もなく、それが過度にわたらないような歯どめの措置や拒否権なども全く考慮されていないことです。
 養殖は、あいている漁場ならどこでも始められるというものではありません。施設が壊れないように、入り江の中の静穏域に限られていますし、しかも、静穏域でありながら潮通しがよいこと、水深が深いこと、大雨でも土砂をかぶることがないこと、漁港に近いことなどなど、さまざまな条件が満たされているところが選択をされています。
 また、企業が参入する場合には、生けすが一つや二つでは採算が合いませんから、組合員が使っている漁場よりもはるかに広い区画が必要になります。そのために、組合員が使っていた刺し網漁場、養殖漁場などを条件のもっと悪いところに移し、広い空きスペースをつくるといった措置が、これまでは企業が参入する際に漁協によって配慮されてきたわけです。
 そうした調整的な措置は、外部企業が漁協の一員となって、組合員と同等の権利と義務を負う形で、それを前提にしてなされてきたわけです。今後は企業体は漁協とは没交渉になってしまいますので、そうした調整は起こり得ず、県行政が企業に漁業権を免許することによって、地元漁業者の漁場を奪う決定をすることになり、両者の対立が決定的になるように思います。
 この点で、水産庁が区画漁業権の設定をただ応援するのではなく、地元の漁業者の側にこれに協議し対抗する措置が何もないという仕組みではなく、例えば、地元漁業者の三分の二が総会決議又は書面によって反対した場合には新規漁場についてはさらなる手続を必要とするといった方式が必要ではないかというふうに考えます。
 最後に、法案百九条から百十六条までの沿岸漁場管理団体について意見を述べます。
 これは、漁協が沿岸域全体の管理の義務と責任、それから権利、これを失うことになる今回の仕組みの中で、資源の保全、産卵場への配慮、藻場の育成、赤潮対策、あるいはレジャー等の利用との調整、こういった漁場全体にかかわる問題を解決する団体がなければ、全て行政が負って解決できなくなってしまうという配慮から出たものだと思いますが、法案によれば、第一に、申請主義をとっていますが、申請する団体がない場合にはどうなるのか。漁協はもうこうしたシステムの中では申請をしなくなると思われますので、申請する団体がない場合どうするのか。二つ目に、複数の団体が申請した場合はどうなるのか。三つ目に、一般社団法人もなれるとありますので、レジャー団体や海洋開発を行う建築会社の団体などがなった場合には、漁業との間で非常に大きな対立ができるような漁場管理のシステムができる可能性がなきにしもあらずだというふうに思われます。
 そうした危惧があることを前提にしますと、この法律は更に現場との対立をなくせるように熟議の必要がある。そういう意味で、早急に成立を急ぐということではなく、現場の状況を十分に把握した上で、長い時間をかけて、七十年というこの法律の期間に匹敵するだけの検討をした上で成立をさせるというのが、成立する場合でも必要になるのではないかというふうに考えます。
 御清聴ありがとうございました。拍手
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武藤容治#9
○武藤委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    —————————————
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武藤容治#10
○武藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申出がありますので、順次これを許します。福山守君。
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福山守#11
○福山委員 自由民主党の福山でございます。どうぞきょうはよろしくお願いいたします。
 さて、昨日、Fish—1グランプリ、これが日比谷公園でありました。私も昼前にちょっと参りましたら、たくさんの人が来ておりました。沖縄の漁連あるいは福島の漁連、そういう人たちがいろいろ来て食を提供する中で、グランプリ、銚子のキンメダイどんぶりが優勝したようでございますけれども。その噴水の方の、日比谷公園のそちらへ行っているときも、足の踏み場がないというか、もうごった返したような、たくさん。それを見たときに、やはり日本人は魚が好きなんだな、魚というのは本当に大事にしていかなきゃいけないな。
 今回、七十年目のこの法案改正に対して、今、四人の参考人の皆様から御意見をいただきました。そういうような観点から質問に入りたいと思います。
 まず、全漁連会長の岸参考人にお尋ねをいたします。
 岸参考人は、以前から、浜も漁業者自身も変わらなければならないという趣旨のことをおっしゃってきました。
 今回の法改正を契機として、漁業、漁村の将来のあるべき姿についてどのようなお考えをお持ち合わせなのか、改めてお聞かせいただけますか。
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岸宏#12
○岸参考人 福山先生の質問に答えさせていただきますが、きのうのFish—1グランプリ、実は六回目になります。日本を元気にする魚の祭典ということで、全漁連が主催してやりました。六年目になりますが、ことしが一番多い、一万人前年より多かったということでありまして、やはり魚を食べると日本人は元気になる、そのとおりだなと思っております。
 その中で、先ほど御質問の件でありますが、漁業、漁村の将来はどうあるべきかという中で、一つは、まず漁業についてであります。
 先ほどお話し申し上げましたとおり、沿岸漁業の状況そのものは、漁業者が減少しておるとか、あるいは高齢化とか、まさにそういう状況にあることは事実であります。
 その中で、漁業者の中には、今のままでいいではないかという意見もあることも事実であります。私は違うと思っております。
 やはり、今の漁村の現状から将来を見る場合に、漁業者そのものがまず変わるべきである。そういう中において初めて我々が、漁業者がこれからどうやって将来を展望していくのか、また漁村のあるべき姿を求めていくのか。それはやはり、漁業者自身がみずから議論をしながら、あるべき道しるべというものをつくって、地域全体が共有して実践していくということに尽きるということの発想の中で、平成二十六年から、私、たまたま会長に就任いたしましたので、浜の活力再生プランというものをつくろうということで、今まで参りました。その経過と成果は、先ほど申し上げたとおりでもあります。
 やはり漁業者みずからがそういうものを共有してしっかりやっていこうというのが今の浜の動きでありまして、非常にいい方向に向いてきたというふうに私は思っております。
 こういうことからして、これから我々が浜を考える場合に、やはり現在の浜プランをしっかり実践していく、また深化させていくということの大きな流れの中で、担い手の世代を促進していく、これがまず一つあります。これは現在、画期的な支援策として、漁船のリース事業という予算を確保していただいて、浜の漁業者は非常に喜んで活用もいたしておるわけでありますが、そういうものを通じて、やる気のある中核的担い手をしっかり確保していく。そのことが、将来にわたって、国民の皆さんに良質の、安心、安全なおいしい魚を安定的に供給できる漁業がつくれるというふうな思いであります。したがって、そういう責任を確実に果たすような漁業づくりを構造改革してまいりたい、そのように思います。
 それから、いま一つは、漁村の将来はどうあるべきかという大きな議論でありますが、先ほど申し上げたとおり、漁業の、漁村の大きな機能は、そういう漁業を支える浜の機能とともに、島国日本の安全を守る国境監視という多面的な機能が与えられておるわけであります。今回の法案にも多面的機能への配慮が規定されたわけでありますが、このような機能を維持するためには、やはり漁村がしっかりと将来展望を持って、明るい漁村をつくっていかなきゃならぬと私は思っております。
 私も、島根県の小さな、島根県の一番小さい漁村の部類に入るわけでありますが、そこで生まれ、そこで育ち、組合長も経験しながら、きょうまで参ったわけであります。
 非常に、地方の自治の中においては、少子高齢化、学校はほとんど統合されております。教育効果からすれば、私はそれはいたし方ないかなという思いはいたしておりますが、あわせて、行政がいかがなものと思うことは、公民館も全て統合される。逆じゃないかと私よく言うんです。公民館はしっかり学校単位で残して、そこに地域の漁村のコミュニティーというものをしっかりつくっていく。なりわいの場である地域、あるいは老いた人の生きがいの場であり、また、いま一つは都市からの交流の場である。そういうものをしっかりつくっていくことが、私は、漁村のあるべき姿だと。
 そこには、やはり先人がずっとやってきた漁村文化の継承、そういうものが大きな柱として出るわけでありまして、そういう漁村というものを私はつくっていく、その中核となるのが私は漁協である、このように思っております。
 漁業の現状も極めて厳しいわけでありますが、浜プランの中で、我々漁業者自身が議論をしながらあるべき計画をつくったわけでありますから、これからも着実にそういうものを進めながら、漁村の活性化を図ってまいりたい、このように思っております。
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福山守#13
○福山委員 ありがとうございました。
 もう一問、参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
 水産改革においては、漁業法の改正のみならず、漁協などを規定する水産業協同組合法の改正も重要です。
 岸会長みずからも、漁業者の所得向上のために熱心に取り組まれてきたと伺っております。
 漁業者の所得向上のためにも漁協の役割はますます重要になってくるものと思いますが、今後の漁協のあるべき姿、果たすべき役割について、お考えをお聞かせいただければと思います。
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岸宏#14
○岸参考人 まず、漁協とは何ぞや、漁業者とは何ぞやということでありますが、私は、魚をとるのが漁業者であり、まず第一義的に、魚をしっかり売るのが漁協だと思っております。
 加えて、漁協には、やはり、漁場を管理する的なそういう役割、あるいは地域の中核体としての役割、さまざまなそういう役割も課せられておるわけでありますが、先ほども申し上げたとおり、多種多様な漁業がふくそう的に営まれる沿岸海域におきましては、やはり、円滑かつ高度に利用していくためにも、漁業者が免許を受け、利害調整を行ってまいった経過もあるわけであります。同時に、利害の対立する漁業者間で、資源の共同管理、自主管理的な面にも取り組んでまいっております。
 また一面、そういう漁業の基本的な生産活動の基本となる資材の供給、あるいは、先ほど申し上げた漁獲物の販売、そういう基盤、そういうものもしっかりまず整備していくことが必要であります。
 もとより、漁協は、漁業者みずからが組織した、多様な役割を担う浜の自治組織であるわけであります。この役割、位置づけは今後とも変わることはないわけでありますので、漁協に与えられた役割を確実に果たしていくため、具体的には、やはり漁業者所得の向上のために市場を統合する、そういうことをまずやる。事業統合しながら漁業者の負託に応える。加えて、水産物の集荷あるいは出荷機能、事業基盤、そういうものもろもろもやはり体制を整えていく必要がある、このように思っております。
 いずれにしても、やはり、漁業者は魚をとる、それをしっかり売ることによって所得を得る、また、漁業者の皆さん方の子弟がしっかりと勉学にも、学校にも行けるような、そういう所得の向上というものを我々自身がやっていかなきゃならぬと思っております。
 今回、国の方で、そういう漁業の成長産業化、漁業者の所得の向上という大きな目標の中で今回の水産政策が打ち出されたわけでありまして、そういう点でも、国の方でしっかりと支援する仕組み、予算も含めて対応していただければありがたいと思っております。
 こういう取組を通じまして、漁村地域の担い手は漁協であるという自負心を私は持っております。今後とも、しっかり漁業者を引っ張りながら、みずから漁村が変わっていく、そういうきっかけを今回の水産政策の改革のいい機会、場としたい、このように思っておりますので、またよろしくどうぞ御指導いただきたいと思っております。
 以上であります。
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福山守#15
○福山委員 岸参考人は、力強い言葉でいろいろな思いを述べておられました。当初、一番最初の発言のときに、改革を実行するのは漁業者である、この言葉、本当にまさにそのとおりでございます。そして、政府としては、法律を、政省令を丁寧に漁民の方に説明をする、まさにそれが全てだと思っております。しっかりとこれからも頑張っていってほしいと思います。
 続きまして、帝京大学の加瀬参考人に御質問をしたいと思います。
 御意見を伺っておりますと、今回の改革を実現しても一部の大企業だけを潤す結果になるとお考えのように感じました。しかし、法律案を見ましても、殊さら企業を優遇するような規定があるようには思えません。都道府県知事が何かを決定する場合に、海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならないといった規定もいろいろ置かれております。それにもかかわらず、一部の大企業だけを潤すとは何を根拠におっしゃっているのか、教えていただけないでしょうか。
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加瀬和俊#16
○加瀬参考人 今回の法律改正についての経過という点で申し上げれば、漁業、具体的にはクロマグロ養殖が発達をしてきて、そのクロマグロ養殖が、企業が漁場を得る際に、長崎県や鹿児島県といったところで、現行の漁業規則、すなわち漁業協同組合が得ている漁場を組合員が利用する、その形でもって入ってくるという形で来たわけですね。そういう形で入ってきた時点で、それが自立して、漁協の地域漁場管理全体の指図を受けたくないということ、それから、漁協に対しては、漁場を利用する際に、漁協の経営を維持するための負担金を組合員は皆、面積に応じて払っているわけですが、そうしたものを払わない方が経営効率はよくなるということから今回の法制の改定というものがあらわれたというのが、規制改革推進会議の中で繰り返しこの区画漁業権のあり方が問題になった結果であるというふうに考えております。
 それから、御発言の中で、海区漁業調整委員会に発言の機会があるので企業本位にはならないのではないかという御発言がございましたけれども、海区調整委員会は、それぞれの決定プロセスの中で意見を聞かなければならないという規定は全てあるわけですが、それで現場側の利害というものが守られるのかといえば、海区調整委員会から聞く意見には、当然のことながら対立する意見もあるわけですね。どなたに対しても漁業者は発言できるようになっていますので、対立する意見でも聞けばいいということですから、したがって、委員会の発言を聞かなければならないということが、その地域で大きな問題を避けることができるという保証には全くならないのではないかというふうに考えております。
 私は、企業が入ってくることがまずいというふうに言っているわけではなくて、企業は、現在のシステムの中で入ってくる形が、現場の漁業者と、地元漁業者と企業との協調的な形での操業、これにとって最も適切であると思うからです。
 これを法案のような形で直した場合には、一方の側は一方的に漁場を奪われるという形になってしまうわけですから、その点で敵対が避けられなくなるというふうに理解しております。
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福山守#17
○福山委員 済みません。時間が余りないので。ちょっと今聞いたので再問したかったんですけれども、ちょっと時間が。
 ただ、私、先ほど先生の御意見の中で、海区漁業調整委員会の公選制、今この問題についていろいろ言っておられましたけれども、それが七十年前の云々で来た話で、これが企業に云々という話がありました。そういうのを聞きましたけれども、ただ、実際に選挙を行っている海区はわずかでありますし、地域のバランスをとって漁業者、委員を選ぶために、新たな選出方法の方が、かえって時代に、実態に即しているんではないかと私どもは感じておるわけなんですね。これは、本当はそのあたりを聞きたかったんですけれども、時間の関係上、これはちょっと省かせていただきます。これはまた十分考えていただきたいと思っております。
 それで、時間がありません。最後に、東京大学の八木先生にちょっと御質問をさせていただきたいと思います。
 八木先生は、今回の法律案について、いわゆるリフォーム、我が国の水産業をリフォームする必要があるというふうな形ですね。いわゆる漁業制度には長い蓄積がある、そういう中で非常に複雑な制度になっておりますけれども、当然、現行制度に対していろいろな意見もあるように思われます。実際のところは、既存の制度を全て肯定すればいいというものでもなく、はたまた全てを否定してもよいというものでもないのだと思います。
 参考人は、我が国の水産業をリフォームするというふうな必要があるとお考えのようですが、今回の法律案についてどのように評価しておるのか、お伺いしたいと思います。
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八木信行#18
○八木参考人 御質問ありがとうございます。
 今回の法律案の評価につきましては、私は、バランスがとれたものであるという評価をしています。
 バランスをとるというのは、環境と経済効率のバランス、また社会的な公平性と経済効率とのバランス、こういうバランスをとるのが難しい状況にある中で、法律案はそれをうまく調整していると思います。
 例えば、環境と経済ですが、沖合漁業などで船舶ごとの漁獲割当てを行う、それは環境に貢献する、保全に貢献することだと思います。一方で、トン数制限などの撤廃をして、それで経済効率を上げるということになっておりますので、環境と経済のバランスも調整してある。また、沿岸漁業では、海区漁場計画をつくるということになっておりますが、そこでも、既存の利益を有する者ですとか、いろいろな利益代表から意見を聞くことになっております。その過程でバランスがとれるというふうに思っています。
 リフォームをする上でも、このようにバランスをとりながら行うということが重要だと思いますので、その観点から今回の法律案は評価できると考えております。
 以上です。
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福山守#19
○福山委員 ちょうど私の時間も、持ち時間がなくなったようでございます。
 それぞれ参考人の先生方には、御答弁いただきまして、ありがとうございました。これからも日本水産の発展のために頑張っていただくよう心よりお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
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武藤容治#20
○武藤委員長 次に、稲津久君。
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稲津久#21
○稲津委員 公明党の稲津久でございます。
 まず、きょう、この参考人の質疑、四人のそれぞれの参考人に御出席をいただきました。大変お忙しい中、このような貴重な時間をいただき、また御意見を賜りましたこと、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございました。
 私の方から何点か質問させていただきますが、まず、これは岸参考人にお伺いしたいというふうに思っております。それは何かと申し上げますと、今回のこの水産政策改革についての対応についてお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。
 まさに七十年ぶりの改正ということで、そうした中で、私が承知している範囲では、ことしの六月に、農林水産業活力創造プラン、ここにおいて改革の具体的な方向性が示された。これに基づいて、この六月以降、先ほども岸参考人からもお話がありましたが、各地で、いわゆる漁業組合や漁業者に対する説明会があり、また、意見、要望も重ねて聞いてまいったというお話がありました。大変重要なことであると思っております。こうした意見を踏まえた上で、この法案の骨組みに入っていったというふうに承知をしておりますが、一部、この現場の漁業者、漁組の声を十分聞いているのか、こうした意見も散見されます。
 先ほどの参考人のお話ですと、まさにそこは丁寧にされてきたというふうにお話がありましたが、重ねてお伺いしますけれども、この対応について御説明いただければと思います。
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岸宏#22
○岸参考人 先ほどの質問についてであります。今回の改正案について末端の漁業者が十分理解していないのではないかというような趣旨の質問だと思いますが。
 今回の改正の考え方、またその内容につきましては、先ほど申し上げたとおり、全漁連主催で全国の会議を数回開催いたしました。また、それぞれの県の方へも出向いて、漁業者の皆さんも含めてお寄り合いいただいて、全漁連も説明する。また、水産庁の方でも浜へ出かけていただいて説明会を行う。全国で六十回以上はやったかなというような感じがいたしておりますが、そういう段階で、漁業者の皆さん方の代表、それから、浜のそれぞれの漁業者も、県によっては漁業者が御参集いただいたところもあるわけでありまして、かなりな漁業者レベルでは理解が進んできたというふうに私は思っております。
 ただし、今後の法案の内容とか政省令を含む運用の考え方、なかなか隅々の漁業者レベルまで説明したかということになりますと、まだまだこれから説明していかなきゃならぬ部分もあると思いますけれども、これからも引き続き、また政省令を、段階で具体的な運用、あり方が出るわけでありますので、今まで以上に浜へ入って我々も説明してまいりたいと思っております。
 政府の方におきましても、しっかりこれは漁業者レベルまで丁寧な説明を要請してまいりたい、このように思っております。
 したがって、漁業者レベルではかなり進んできたというふうに理解しております。
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稲津久#23
○稲津委員 ありがとうございました。
 ただいまの御説明の中では、これまでも六十カ所以上、またさらに、地域によっては具体的な説明もされてきたということで、大変ありがたいなというふうに思っております。
 そして、もちろん、法律が制定されても、それは施行規則等も含めて、どのようにそれを具体化していくかということについては、これは政府として当然十分な説明が必要だろう。私もそこは求めておきたいと思います。
 二点目の問いですけれども、これは八木参考人にお伺いしたいと思います。
 先ほど、IQについてのお話がありました。IQのことに関しては、今回のこの法案の大変重要な柱の一つであろうというふうに思っております。
 先ほどの参考人のお話の中では、準備の整った漁業種からIQを設定するということは大変合理性があることである、このような御説明があったと思います。私もそのとおりだと思っています。
 資源管理の重要性というのはいや増してきていると思っておりますし、もちろん大変難しいことではあるんですけれども、そこをこれからの時代どのように進めていくかという、これは漁業関係者のみならず我々も含めて重要な政策課題だと思っています。
 そこで、準備の整った状態、これを、ではどういうふうに判断するんだ、そういう基準を明確にすべきだというお話を先ほどされて、私もなるほどな、同感だというふうに強く思ったんですが、ただ、この基準の明確化というのはなかなか難しいことだと思うんですが、そこを現段階では参考人はどのようなお考えをお持ちなのか、少しその辺を具体的にお伺いしたいと思います。
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八木信行#24
○八木参考人 御質問ありがとうございます。
 準備が整うかどうかという御質問ですが、二つの側面があると思います。
 一つは、科学的な情報、科学的な準備が整っているかどうかというところにあると思います。このために、一定の漁獲があり、そして科学データが集まっている、こういう条件があって、かなり正確に漁獲可能量が算出できる、こういったところがまず一点条件になるかと思います。
 もう一つは、それを、漁獲枠を利用する漁業者側の準備ができているかどうかという側面があると思われます。漁業者側の側面としましては、ある魚種はたくさんの漁業種、例えばまき網ですとか釣り漁業ですとか、いろいろな漁種で漁獲されている魚種があります。これらの漁種の各当事者同士の調整がどうできるか、これも重要なポイントになると思います。
 また、一つの漁業種の中で漁業者がどれぐらい賛成しているのかというところも重要なポイントになります。例えば、ニュージーランドなどでは、八五%の漁業者が賛成しているときにITQを導入するという制度になっていたわけなんです。それと類似の漁業者の合意を求める制度、こういったものも今後重要なポイントになるかと思います。
 以上です。
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稲津久#25
○稲津委員 ありがとうございました。
 二点にわたっての御説明をいただきまして、大変論点が整理されたというふうに、私も今お聞きして、そういう心を強くいたしました。
 次の質問は、もう一度、岸参考人に戻ってお伺いしたいと思いますけれども、もう一つの大変重要なポイントであります新たな漁業権についてのことをお伺いしたいと思うんです。
 新たな漁業権のことについては、これは当然、地元の漁業者ですとかまた漁協等の意見を十分聞いて漁業調整をしっかり行うべき、そういうところに設定を新たにしていく必要があるだろうと私は思っています。
 したがって、ここは、既存の漁業者以外が得る場合には、地域の水産業の発展に資するかどうかを総合的に判断すること、最終的には都道府県が漁業権を付与するわけなんですけれども、この一番のポイントは、新規参入を認める場合に地元の漁業者との調整をどのように進めていくかという、これも今回の法案の大きな柱の一つだと思っています。
 このことについて、実際に漁業組合を代表するお立場として、岸参考人からお伺いしたいと思います。
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岸宏#26
○岸参考人 新しい企業が漁業参入する場合の対応についての御質問でありますが、今回、新規の免許についても、参入希望がある場合には、漁協等の利害関係者の意見を聞いて、紛争が起こらないなど、従来どおり調整が行われるということで、都道府県に義務づけられておるわけであります。
 したがって、新たな漁業権が設定される場合、どこに免許するか、その判断については知事に委ねられておるわけでありますが、地域の水産業の発展への寄与が判断基準となるというふうに伺っておりまして、地元の漁協や漁業者との調和が保たれることが不可欠でありまして、企業だけに偏った免許をするということには私はならないと思っております。
 したがって、今まで頑張ってきた漁業者の、十分意見も参考にしながら、漁場利用計画等々が計画されるというふうに理解しております。
 以上であります。
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稲津久#27
○稲津委員 ありがとうございました。
 それでは、次の質問は各参考人にそれぞれお伺いしたいと思います。
 非常に明確な質問なんですけれども、大変難しいテーマにもなるかと思いますので、お許しいただきたいと思います。
 私は、この農林水産委員会で、このことについて、先般の法案の委員会質疑でも私の意見を述べさせていただきましたし、その前の一般質疑の中でも同様のことを述べさせていただいたんですけれども、それは何かというと、今この漁業を取り巻く環境が大きく変わってきているということ。それは、参考人の方からも先ほどそれぞれ少し触れていただきました。資源の減少、それから生産量や漁業者の減少、外国船の操業の増加、活発化、それから、人口減少に伴って消費への影響が出てきている。こういう大きな環境の変化の中で、果たして現行の制度のままで進んでいっていいのかどうか。こうしたことがいろいろ関係者の中でもさまざま御意見があった中で、今回のこの法案提出になってきた、このように承知をしております。
 そこでお伺いするんですけれども、二つのことがあると思うんです。それは、本当に単純なんですけれども、この漁業資源をいかにコントロールしていくか、それをしながらも、もう一方で、漁業者や関係者の所得を向上させていくか。このとても難しいハンドリングがあると思うんですけれども、それぞれの参考人の方々に、私はこのことについてはこういうような処方箋なり方向性なりということを、お一人ずつ、岸参考人から順にお伺いしたいと思います。
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岸宏#28
○岸参考人 なぜ制度改正をしなきゃいかぬのかというような御質問であると思っておりますが、いろいろ浜にも意見があるわけでありますが、やはり将来を見据えた場合には、しっかりと見直しもしながら対応していくということだろうと思っております。
 現在、先ほど申し上げたとおり、漁船のリース事業等も含めて、改革の大きな転機として我々もやっておるわけでありますので、そういうことも含めてこれから対応してまいりたい、このように思っております。
 制度の改正も、その関係の中でやはり必要な部分がある、そこにやはり漁業者が頑張れるような改正の方向性というものを我々も共有していきたいと思っております。
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八木信行#29
○八木参考人 ありがとうございます。
 漁獲量を制限をしながら漁家の所得を向上するということには、魚価、浜で水揚げされる魚の単価の向上が必要です。
 これはなかなか難しいポイントだと思います。ただ、三つか四つぐらいやり方が存在していると考えます。
 一つは、製品価値を、品質を向上させるということです。
 例えば、静岡県の駿河湾のサクラエビは、漁獲管理を厳しくしておりますが、同時に、冷蔵、温度の低い場所でサクラエビを陸揚げ後保存するですとか、品質向上に大変力を入れています。このために単価が向上して、漁家が所得をふやしたということが研究からもわかっています。ですから、品質向上というのが一つの手です。
 もう一つは、加工場との連携です。
 水産加工場は、沖合漁業などで漁獲された魚を一括して買い付けてくれたり、機能がありますが、うまく連携をとることが必要です。そのことによって、加工場が使っていないような施設を、常時、一年じゅう使うことができるなどの対応をすることで、加工場の収益も上がりますし、また、漁業者の、魚価も向上するという効果がありますので、こういう対応も重要かと思われます。
 三つ目ですが、一般の流通をする場合です。
 水産庁が水産白書に何年か前に載せていた数字で、スーパーなど小売店で売られている魚価が一〇〇であるとしますと、漁業者の手取り部分は二五ぐらいしかないという数値が出ていました。その間の七五は、途中段階にある小売業ですとか卸売業、仲買人、そういったところの取り分になるわけです。ここをいかに圧縮して、漁業者の取り分をふやすかという対応も重要だというふうに考えております。
 以上で終わりたいと思います。
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