山尾志桜里の発言 (本会議)

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○山尾志桜里君 立憲民主党の山尾志桜里です。
 立憲民主党・市民クラブを代表して、入管法一部改正案に対して質問いたします。(拍手)
 移民国家と言われるスイスの小説家マックス・フリッシュは、このように述べています。我々が欲しかったのは労働者だが、来たのは人間だった。
 これまで日本社会は、日本で働く外国人の四割以上を技能実習生あるいは留学生と呼び、労働者として受けとめることすら拒んできました。ましてや、生身の人間、生活者として尊重し、ともに生きる環境整備は、本格化するのがこれからです。
 この根本的な問題を放置したまま、人材不足を理由に、粗雑な新制度を提示し、日本社会としての議論も準備も成熟しない状況で受入れ拡大にかじを切ることに大きな警鐘を鳴らします。
 既に約百二十八万人の外国人が国内で就労しているにもかかわらず、就労を目的としたビザで正規の労働者として働いている外国人は、その一八%にすぎません。建前と実態の乖離を制度的なごまかしのパッチワークで継ぎはぎしていることが、技能実習生に対する深刻な人権侵害を生じさせています。旅券の取上げや強制貯金、賃金不払いやハラスメントなど、重大な問題を抱えたこの制度を温存したまま新制度を連結させ、さらなる問題の深刻化、拡大に目をつぶる本法案を、このまま見逃すことはできません。
 また、労働者は生身の人間です。仕事が終われば、職場の出口の先には生活があります。家に帰れば家族団らんという心のよりどころを必要とし、病気になれば治療を必要とし、出会いがあり、結婚があり、子供を持ち、その子供たちは学校に通い、いつしか人は、国籍を問わず、生まれ育った町、住みなれた町への愛着を持ちます。
 生活者としての外国人を社会に包摂することに失敗すれば、日本国内に分断と排除の構図を生み出します。社会保障、家族帯同、学校教育、永住資格、こうした根本的な問題から目をそらして、外国人の受入れだけをなし崩し的に拡大することがあってはなりません。
 この国会は、まず、受入れ拡大が日本社会の財政、雇用、医療体制や年金制度、教育現場や地域コミュニティーなどに与える多面的な影響をきちんと予測し理解するスタートラインとするべきです。この作業を法案成立後に先送りにして、大きな政策変更を拙速に決断すれば、必ず禍根を残します。ましてや、移民ではない、単純労働は入れないと言い切ることで、大きな変更を小さく見せ、あるべき議論を封じることは無責任です。
 日本で働く外国人の受入れ拡大を議論するのであれば、現行制度のごまかしを改め、労働者としての権利を保障すること、さらに、生身の人間として社会の一員として受け入れる社会インフラを確立することが不可欠であり、現時点で本法案を見る限り、この必要なハードルを越えるだけの質を持った法案とは見えないということを冒頭申し上げます。
 まず、技能実習制度に象徴される現行制度の深刻な問題について質問します。
 日本で働く外国人約百二十八万人のうち、約二割の二十五万人が技能実習生の名のもとの労働者です。
 先日、技能実習生当事者の声を院内で聞きました。異国の国会で、たくさんの議員やメディアに囲まれる中、今なお続くつらい状況を訴えることは、どれだけの勇気が必要だったでしょう。
 技能実習という名のもとに、安い、使い捨ての穴埋め労働力として外国人を利用するような制度設計は、国家の品格にかけて見直すべきです。
 きょうは、この国会に当事者の方々もいらしていると聞いています。
 安易な新制度による受入れ拡大の前に、建前と実態の乖離、職場移動の自由の否定、中間搾取と人権侵害を許す受入れ制度、こうした問題をいかに解決するつもりか、お答えください。
 平成二十九年における失踪者は、過去最高の七千八十九人に上ります。法務省は、把握できた二千八百九十二人に対して事情を聴取していますが、その分析結果が余りにお粗末です。
 最低賃金以下あるいは契約賃金以下しか支払いを受けられなかったという訴えを、より高い賃金を求めて失踪したとして二千五百十四人に含めて一くくりにし、失踪原因の八六・九%を占めると分析しています。そして、その上で、以下のように結論づけています。より高い賃金を求めて失踪するものが多数、技能実習生に対する人権侵害行為等、受入れ側の不適正な取扱いによるものも少数存在と。
 総理にお伺いします。
 最低賃金以下の支払い、契約賃金以下の支払いは、受入れ側の不適正な取扱いそのものだと思うのですが、異なる認識でしょうか。これらは、より高い賃金を求めて失踪した実習生側のひとりよがりの主張なのですか。
 最低賃金以下、契約賃金以下の支払いしか受けられなかったと訴えた人数は、本当はそれぞれ何名なのでしょうか。失踪者が激増しているという異常な状況の中で、政府は、いつ、この貴重な聴取結果を分析し、公表する予定なのでしょうか。
 あわせて、人権侵害行為を技能実習生側の責任に転嫁するような意識の政府だけに、この分析と解決策の立案は任せられません。したがって、プライバシーに係る部分は配慮していただいて構いませんので、聴取票そのものを早く提出していただく必要がありますが、いつになるのかお答えください。
 新制度について、総理は、移民政策ではないと繰り返しています。移民政策か否かと論点を単純化することは、充実した議論の足を引っ張るばかりです。ただ、総理みずからが移民政策ではないとの発信をしている以上、総理がいかなる理由で何を否定しているのか知る必要があります。
 そこで、伺います。
 移民とは社会で多義的に使われていることは理解しています。ですから、焦点を絞ります。総理が、十月二十九日の本会議における枝野議員に対する答弁で、この法案の説明において否定した移民政策とは何かをお答えください。総理自身の本会議での特定の発言における移民の定義を聞いておりますので、例えばという枕言葉がつく説明は成り立たないことを付言します。その上で、なぜそこまで移民政策であることを必死に否定したいのか、お答えください。
 また、総理がいわゆる例示として利用する定義は、米国やカナダの定義とも、国連で使われている定義とも、OECDで使われている定義とも異なります。総理独自の定義なのか、それとも、同様の定義を用いている組織や学説があるのであれば、その具体をお答えください。
 なお、繰り返しますが、移民政策は許されず、移民政策でなければ許されるというような論点整理は不毛です。私たちは実質を議論したいと思っています。
 例えば、新制度の特定技能一号及び二号における就労資格は、それぞれ、永住許可に関するガイドラインの就労資格をもって五年以上在留していることに該当し得るのですか。お答えください。
 該当し得るのであれば、法務大臣の裁量の範囲内とはいえ、新制度による特定技能労働者が永住者となる新たなルートが開かれたことになります。それを、移民政策と、入り口と呼ぶかどうかが重要なのではありません。総理自身の政策選択とその理由を明示し、国会の議論に臨んでいただくことが大切なのです。批判を恐れて政策決定の明示から逃げ、移民政策ではないという無意味なワンフレーズでごまかすことはやめるべきです。
 なお、法務省は、この点、検討中であり、検討終了は法案が成立した後であると私たちの部会で言っておりました。この方針は今も維持されるのですか。維持されるのであれば、なぜこの法案の核心部分の一つについて検討終了を法案成立した後にあえて持ち越すのか、合理的な理由をお答えください。
 もう一つ、総理は、今回の新資格の参入業種につき、単純労働ではないと答弁しています。単純労働への受入れ拡大が移民政策だと批判されることを恐れ、実質はいわゆる単純労働と分類されるのが自然な業種にもかかわらず、専門的、技術的分野であると強弁するのは、責任ある態度とは言えません。しかし、総理みずからが否定する以上、私たちとしては、総理がいかなる理由で何を否定しているのか知る必要があります。総理の言う、この単純労働とは何でしょう。
 法務省は、例えば土を右から左に移動させるだけの仕事と会議で言っていましたが、これは例示として適切なのですか。ティッシュ配りもこの単純労働として例示されていましたが、それは適切なのですか。そのほか、今の日本社会で特段の技術、技能、知識又は経験を必要としない単純労働が存在するというのであれば、その具体をお示しください。
 単純労働には拡大しないという建前に固執して、比較的熟練を要しない仕事の中に無理やりラインを引き、その一部の仕事を単純労働と切り分けることは、仕事をめぐる日本社会の価値観や労働者の尊厳に悪影響を及ぼすことを非常に危惧いたします。
 また、あわせて、政府のロジックを前提とすれば、特段の技術、技能、知識、経験を必要としない極めて限定的な労働は外国人に拡大せず、日本人だけにとっておくという政策になります。いわば、誰でもできる仕事は日本人枠にとっておき、そうでない仕事は外国人にも拡大する、こういった方向性を目指す法案だということでいいのでしょうか。違うのであれば、何が違うのか、お答えください。
 現在、特定技能について受入れを要望している業種として、十四業種が公表されています。この要望把握プロセスは、当然のことながら、たまたま省庁にパイプを持つ業界団体だけが声を届けられるという手続であってはなりません。真に人手不足で、業界団体としての組織運営もままならず、政治献金などもできない業界がこぼれ落ちる手続であってはならないと考えます。
 再三法務省に対し、このプロセスを公表するよう要請していますが、いまだお答えがありません。仮に手続に偏向性があるのであれば、軽減税率同様、業界団体と政治の癒着構造の温床たる制度の発足ともなりかねませんし、当然のことながら、手続を正当にやり直していただく必要があります。
 そこで、この要望把握プロセスの透明性と公平性について、いかなる手続で担保したのか、お答えください。
 私たちは、充実した議論の前提として、この新制度に基づく受入れ見込み数と内訳を求め続けていますが、出てきていません。一週間以上前の予算委員会でも、本日の法務委員会でも、そしてこの場で総理も、現在精査中であると。そして、大臣は、法案の審査に資するようにしっかりと出していきたいと、これは法務大臣が述べております。
 しかし、他方で、この午前中にも、精査中であるはずの見込み数が複数のメディアで既に報道されております。この報道が誤報でないとするならば、精査中といいながら実は精査は終わっており、立法府に提示する前にメディアに提示されていたということにもなりかねません。極めて重大な問題であると指摘します。
 もとより、本日、法案の趣旨説明がなされたにもかかわらず、正式な数字が出ていないため、審査に資するこのテーマに関する質問が残念ながらできません。いつ出されるのでしょうか。お答えください。
 また、その見込み数について、受入れ分野別に数字が出なければ合計数は出てこないはずですので、分野別に提示がいただけるとの認識でよいでしょうか。
 さらに、その根拠として、分野の選定基準や選定結果、受入れ見込み数の把握手法も御提示ください。
 あわせて、見込み数とは別に、段階的で丁寧な受入れにより社会的包摂を進めていくためには、初年度含めて上限規制を検討すべきだと考えますが、この検討余地があるのかないのか、お答えください。
 なお、さきに総理から、推計を上限として運用するなどという答弁がございましたが、このようなごまかしではなくて、正面からこの上限規制についても検討すべきだと考えます。
 総理は、新たな外国人材の受入れに当たっては、日本人と同等の報酬をしっかりと確保いたしますと述べています。
 そこで、質問です。
 総理は、ある分野における外国人の受入れ拡大が、その分野を担ってきた日本人の賃金水準を今より下げないということまで約束しているのでしょうか。そうであるなら、賃金水準が下がらないことの制度的担保を説明してください。
 それとも、今の賃金水準は下がることがあるかもしれないが、日本人と外国人に同等の賃金を確保するという約束にすぎないのでしょうか。そうであれば、つまり、外国人労働者の受入れ拡大は、労働者の賃金低下という代償のもと、雇用主に利益を与えるという方向での富の再分配政策ということになるのではないでしょうか。この問題点につき、総理の見解をお述べください。
 本制度の提案と並行して、健康保険が適用される扶養家族や厚生年金の受給資格を得られる配偶者に関し、国内居住要件を付す検討がなされているとの報道があります。
 この点、一方で特定技能一号では家族帯同を認めないとしながら、他方で国内に居住しない限り家族に社会保障サービスを与えないとすることの緊張矛盾関係があるとするなら、これをいかに検討するつもりなのでしょうか。お伺いをいたします。
 なお、特定技能二号に関しては、家族帯同が可能になり在留期間更新の上限がなくなるなど、日本社会とのきずなが深い社会の一員となっていくことを促進していくたてつけとなっています。しかし、一方で、人手不足が解消すれば更新を認めないとする矛盾した制度になっています。
 一旦家族ごと社会に包摂しながら、あくまでも人手不足の調整弁たる性質が残存することの制度矛盾をいかに解消するつもりなのか、説明を求めます。
 冒頭に小説家の言葉を紹介いたしました。我々が欲しかったのは労働者だが、来たのは人間だった。
 生身の人間、生身の個人を我々の社会に受け入れて包摂するための制度設計は、少数者の人権に深く関与するものである以上、時の多数派のみの議論で押し切ってはなりません。物ではなく、単なる労働者でもなく、外国から人間を受け入れることは、社会のあらゆる制度や価値観という、この国の形に不可逆的な変化を与え得るものであります。
 外国人という潜在的な少数者の受入れの問題を、私たち日本人が、そして日本国家がどのような価値観で受けとめるのかという極めて重大な国家の方向転換に当たっては、必要な視察や参考人質疑を含め、真剣かつ充実した議論が必要です。私たちは、その議論のプレーヤーとしての役割をしっかり果たすことをお約束いたします。
 必要な審議時間の確保を前提とするのであれば、今国会での成立はあり得ません。真剣な議論をいたしましょう。
 以上、代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

発言情報

speech_id: 119705254X00520181113_011

発言者: 山尾志桜里

speaker_id: 12435

日付: 2018-11-13

院: 衆議院

会議名: 本会議