久保厚子の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(久保厚子君) 御紹介にあずかりまして、今日、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。全国手をつなぐ育成会連合会の久保でございます。
 お手元の方に資料を配らせていただきましたので、少し読ませていただきます。
 近年、インクルージョンや共生社会が求められ、これからの社会にとっては大変重要な考えとなっています。
 我が国が二〇一四年に批准した国連障害者権利条約においては、第二十七条に労働及び雇用を定めており、その中では、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認めると規定しています。また、障害者にとって利用しやすい労働市場及び労働環境において、障害者が自由に選択する権利も明記されています。
 そして、障害者権利条約第二十七条を踏まえて、我が国内においては、障害者雇用推進法が施行されています。
 雇用促進法第一条では、法の目的として、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置などを講じることを挙げています。
 また、第三条の基本理念では、障害者である労働者は、経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるとされています。
 さらに、第五条の事業主の責務では、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する義務を有する、また、能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに正当な雇用管理を行うことが求められており、これについては、職場における合理的配慮の提供が官民問わず義務になっている点に留意が必要です。
 ところが、こうした法令上の規定があるにもかかわらず、とりわけ知的発達障害のある人が働くことができる職域、会社等は少なく、仕事は選択肢が非常に狭くなっている結果として、多くの人が福祉的就労の場を選択するしかない現状にあります。
 以上の法令上における基本的認識や就労の現状を前提として、以下のとおり意見を申し述べます。
 まず、中央省庁、地方公共団体側の受入れに関する水準の明示について申し述べます。
 今般の雇用率水増し問題への対応策として、時限を区切って一定数の障害のある人を雇用する方針を示したことは評価いたしますが、ここまでの議論を見る限り、どういった障害者であれば採用が可能かという視点が中心になっているように思われます。試験方法や採用条件の設定などの議論が中心となっています。
 しかし、今般の課題は、そもそも採用側の省庁、地方公共団体、以下、省庁等と申し述べます、における働く障害者の受入れが極めて限定的でずさんだったことが課題の本質であり、ここを改善しない限り、数合わせの採用や障害者雇用のビジネス化といったリスクが付きまといます。まずは、省庁等の受け入れられるレベル感、対応のスキルや必要な業務の切り出しの実施状況を明らかにすることが不可欠と考えます。その際には、省庁等は、権利条約や障害者雇用促進法の理念を率先して具現化することが求められていること、そして、そのような立場にあるにもかかわらず今般の水増し問題を引き起こしたことを踏まえた、より積極的な対応が必要と考えます。
 次に、雇用時間と雇用率算定の条件について申し述べます。
 雇用時間と障害者雇用率の算定については、週四十時間、年間十二か月働くことが想定されており、現在の障害者雇用も最低週三十時間働くことが前提となっています。いわゆる短時間労働でも週二十時間以上三十時間未満で、雇用率は〇・五人に算定されます、働くことが求められており、それよりも短い時間の就労は障害者雇用の算定から除外されています。除外される人は福祉的就労を選択せざるを得なくなりますが、福祉的就労の場である就労継続B型事業所の工賃は月平均一万五千円で、生活保護費の六万九千円を大きく下回っています。障害基礎年金が対象外となっている場合には親亡き後に暮らしていけなくなることから、生活保護などを選択せざるを得ない人も出てきます。
 そのため、障害特性や体力的な理由により短時間の就労が適している障害者がそもそもの議論から除外されてしまっています。東大先端研が研究する短時間雇用、IDEAモデルの採用なども視野に入れる必要があると考えます。業務能力はあるが移動に困難があり食事やトイレの利用に介助が必要な人、非常に優秀ではあるが週に十時間までしか働けない人、障害の特性により特殊な能力を持つ人などを上手に生かす雇用の在り方をつくることが必要です。
 仕事の切り出しに工夫をしていただきたいと思います。
 障害のある人に適した仕事の切り出しを考える際には、大切なことは、各部署で一番仕事が集中している人は誰か、その中でもこの仕事を誰かが担ってくれると職場が助かるのは何かといった発想で見ていくことです。その上で、一つ一つ職務の要件を詳しく定義することにより、障害のある人が力を発揮できる業務を見出すことにつながります。単に数合わせで配置するのではなく、職場にとって必要不可欠な存在として考えることが重要と考えます。
 次に、既に存在する支援者の活用をしていただきたいと思います。
 障害者雇用の実践については既に中央省庁でも知見の蓄積が進んでおり、特に、二〇〇七年度から内閣府や総務省が実施している公務部門での知的障害者、精神障害者、発達障害者の雇用について職場体験を通した調査研究事業においては、複数の省庁において職場実習の実施が重ねられており、その際に障害のある人の就労を支援した省庁職員が一定数存在しています。このように、当該事業で得た知見は研究事業の報告書等で共有可能であり、携わった職員については職員の異動歴等から容易に把握が可能だと思っています。
 あと、時間が少しもう過ぎていますので端的に申し上げますけれども、この水増し問題に関して各団体から提示されたいろんな取組を推進する必要があると思いますけれども、その際に、中央省庁等が民間企業であればどのくらい納付金が必要であったのかということを考えていただきたいと思います。それを、納付金であったかというのを明示した上で、その額を取組の推進に向けた予算として確保していただきたいというふうに思っております。
 この取組を通して、多様な選択肢とか公平な社会の構築、それから持続可能な社会の実現、新しい価値観の提示を期待しております。仕事は、本人の存在を輝かせ、生活にエネルギーをもたらすものです。本会としては、希望を持って今後の取組を注視したいと思っています。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 119714260X00320181120_003

発言者: 久保厚子

speaker_id: 17724

日付: 2018-11-20

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会