岸宏の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(岸宏君) いえ、立った方がいいです。
 漁師の家に生まれ育ちまして、幼少は戦後間もない漁村の復興期でありました。昭和四十五年から漁協系統運動に参画をいたしまして以来、今日まで半世紀携わってきたわけであります。まさに戦後の疲弊した漁村の復興期から今日まで長年にわたって、それぞれの浜で、その時々の先人が、浜の民主化と再興のために日夜を問わず血のにじむような努力を積み重ねてまいった姿を、私自身この目で見てまいりました。
 また、平成二十五年に全漁連の会長に就任したわけでありますが、その当時、TPP問題、さらには燃油高騰対策、東北大震災からの復興、あるいは福島原発の問題、さらには漁業あるいは漁村の再生の問題、まさに私は、この現状は戦後の混乱期にも匹敵する激動の時代であると、浜の将来展望をしっかり自ら挑戦の気概を持って切り開いていこうということで浜の皆さん方にも呼びかけて今日までまいりました。今日はこのような立場からお話をさせていただきたいと思っております。
 御案内のとおり、我が国漁業は、昭和五十五年以降、二百海里体制の定着によりまして、海外漁場からの撤退やまたイワシの資源の急激な減少、これによりまして、遠洋・沖合漁業を中心に六百万トン以上の減産となり、生産金額も三兆円から一兆四千億円まで減少するなど、三十年以上にわたって縮小を続けてきたところであります。
 しかしながら、近年、魚価の上昇などによりまして、平成二十五年から生産金額は増加に転じております。約二千億円増加するなど明るい兆しも出ているのが現状でございます。一方、安定的に推移してまいりました沿岸漁業の生産量は、資源問題のみならず、漁業者の減少と高齢化の進行、生産力の低下などから、減少傾向にもあります。
 一方、このような状況になって、今般、水産政策の改革に当たって、私どもは、この機会をしっかり捉え、現状を点検しながら、漁業者自らの課題として改革に取り組み、漁業再生の良い機会にしたいということを基本に対応してまいったところでございます。
 漁業は、土地を基盤とする農業と異なり、所有権のない海を生業の場といたしております。また、台風等の自然災害や海水温の上昇等の環境変化、生態系の変動など、自然条件に大きく左右される産業でもあります。これが特徴であります。
 漁業の国民の皆さんに対する使命は、大きく分けて、一つは、たんぱく食料の安定供給、二つは、やはり国境監視機能を始めとする多面的機能の発揮であります。現在、我が国の周辺は三万五千キロございますが、この沿岸には五・六キロごとに六千三百の漁村が存在し、また、百四十メートルに一隻の密度で二十五万三千隻の漁船を有しているわけでございます。これは、漁業、漁村特有の広大な海のネットワークでありまして、他の産業に類を見ない特徴でもあります。
 このような漁業、漁村の勢力が我が国水域で操業し、日々の生業、生活を営むことによって、島国日本の安全のための国境監視の役割を始め、環境、生態系保全など、様々な多面的機能の役割を果たしてまいりました。我が国の姿そのものを形作ってきたと言っても過言ではないと思っております。
 こうした漁業の特徴や役割の中での私どものこれまでの取組や今後の方向性について、三点ほどお話をいたします。
 大きな取組の一つは、平成二十六年からJFグループを挙げて取り組んできた漁業者の所得向上戦略である浜の活力再生プランがあります。これは、漁業者が自らの進むべき道しるべを、それぞれの地域の特性を生かし、水産庁、地元行政とも連携し、地域で相談し、漁業者が自ら策定、実践する浜の再生計画であります。
 これまで全国の漁村地域を網羅する六百六十二の地域でプランが策定、実践され、五年目を迎えておりますが、全国七割の地域で当初掲げた所得の向上目標を達成するなど、成果が出てきております。私の実感として、漁業者の意識が変わった、浜が良くなってきた、若い担い手も帰ってきている、漁業経営もだんだん良くなってきた、勝ち組もかなり出てきている、これが率直な感じであります。
 今後は、人づくりを最重要課題に、浜プランの成果を更に高めていくため、昨年五月、農林漁業と商工業の連携を通じた地方創生の推進に関する協定書を締結した異業種との連携も推進しながら、担い手の世代交代を促進し、やる気のある漁業者を支えていくことが私ども漁協、JFグループの役割と認識をいたしております。今後、現在の浜プランを更に進化させ、次のステップへと向かうべく取り組んでまいります。
 次に、漁場の管理についてであります。
 委員の先生方御承知のとおり、沿岸域は、共同漁業権漁業、定置網漁業、養殖漁業、許可漁業等、多種多様な漁業が同時にかつ複層的に営まれております。この状況の中で漁場を円滑かつ高度に利用していくためには、複雑な利害調整が不可欠であります。このため、これまで漁業者が組織する漁協が免許を受け、自ら漁業者同士の話合いをベースにして調整、管理を行ってまいりました。実は、これは大変な苦労を伴うわけでもあります。誰にでもできることではありません。自ら営む者同士が決める、これが漁場の利用調整の基本であり、今後とも、我々漁業者は漁業権制度に基づいて役割を果たしていきたいと考えております。
 次に、資源の管理についてであります。
 これも先生方御承知のように、沿岸漁業では、限定された海域の中で様々な漁法で実に多種多様な魚種を魚の来遊状況に応じて漁獲をするわけであります。こうした特徴から、地域ごとに様々な管理手法が長い歴史の中で考案され、それを漁業者の共同管理、自主管理という形で実践をしてまいりました。私どもは、今後も共同管理、自主管理を基本としつつ、数量管理等新たな管理手法の導入を含めて資源や漁場の状況を点検、改善し、資源管理を実施していくことが必要であると考えております。
 次に、水産政策改革についての対応であります。
 私どもは、浜プラン取組、そしてこれまで先人が培ってきた漁場・資源管理の取組を基本として、漁協、漁業者が中心となって与えられた使命を果たしていくことを基本に考えてまいりました。こうした中で、今年の六月、農林水産業活力創造プランにおいて改革の具体的方向性が示されたわけであります。私どもでは、六月以降、数度にわたって全国説明会やあるいは各地での説明会を開催し、示された内容につきまして、各浜から様々な疑問や不安点を含め多くの意見、要望を聞いてまいりました。こうした浜の意見、要望を踏まえながら鋭意対応を進め、水産庁もこれを受け止め、浜の不安の声は相当程度払拭、解消し、また論点も絞られてまいり、最終的な詰めの協議を行ってきたところでもあります。
 今般の水産政策の改革につきましては、私はこれまで一貫して、漁業者が本当に理解し、納得できる改革でなければ成果は上がらない、このことを強く主張してまいりました。なぜならばであります、改革を実践するのは漁業者であるからであります。浜の理解を得るために最も重要なことは、漁業者、漁協がこれまで果たしてきた調整機能や多面的機能についての評価や位置付けをしっかりと打ち出すことであり、かつ必要な論点は次の五点であります。
 一つは、適切な取組が行われている漁協に免許されている漁業権は引き続き当該漁協に優先して免許されること。二つは、新たな漁業権に当たっては、地元漁業者、漁協等の意見をよく聞き、漁業調整に支障を及ぼさないと認める場合に設定すること。三つ目は、数量管理やIQの沿岸漁業への導入は、来遊する多種多様な資源を漁獲対象としている沿岸漁業の特性を踏まえ、十分な準備が整うまで行わないこと。四つ目は、沖合・沿岸・遠洋漁業の大型化については、国の責任の下で地元沿岸漁業者、漁協との調整を行い、沖合と沿岸との紛争が生じないようにすること。五つ目は、水協法改正に当たっては、漁協と農協が実態上も制度上も大きく異なることを十分に踏まえ、また信漁連等への公認会計士監査の導入等に当たっては、実質的な負担増とならないよう措置することであります。
 このような重要課題、論点につきまして、水産庁や内部で議論を行ってまいりました。
 その結果、一つは、漁業法第一条の目的において、漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑みと記述され、漁業者を主体とした調整機構等、その役割がしっかりと位置付けられ、法案レベルでは漁業者を主体とした管理が継続される方向となったこと。二つ目には、第百七十四条に、漁業及び漁村の国境監視を始めとする多面的機能への配慮が盛り込まれたこと。三つ目には、各重点課題への対応がそれぞれ問題がないように条文に位置付けられ、運用面についても漁業者が安心できるような内容の回答を得ていること。四つ目には、我々漁業者の長年の懸案であった組織的密漁への罰則が新設、強化されたこと。このような対応が示されたわけであります。この経過を踏まえ、十月末に、私どもJFグループとしては受入れの判断を行ったところであります。
 しかしながら、あくまで法案は骨格部分でありまして、漁業権や資源管理、またそれ以外も含めて、今後の運用の考え方は政省令に委ねられている部分が多くあります。今後の政省令の検討に当たっても、国におかれましては、漁業者、そして私どもJFグループと十分な協議を行い、改革の実践者である漁業者が理解し実践できるものとしていただきたいと考えております。あわせて、法律の内容や政省令を含む運用の考え方を現場の漁業者レベルまで丁寧に説明をしていただきたいと考えております。
 また、今回、国が漁業の成長産業化のため水産政策の改革を打ち出すからには、漁業に明るい将来展望が開けるよう、革新的な、従来の発想にとらわれない政策とそれを裏付ける予算についてしっかりと実現していただきたいと思っております。何とぞ、先生方の御理解と御支援をお願いを申し上げる次第であります。
 終わりに、我々JFグループといたしましても、漁業再生への大きな転換期が今であると認識しており、今回の改革が浜の明るい将来を切り開いていくものとなるよう、自らの課題として組織を挙げて取り組んでいく決意を申し上げ、私からの意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 岸宏

speaker_id: 20141

日付: 2018-12-06

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会