高井章光の発言 (経済産業委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○高井参考人 おはようございます。
 本日は、このようなお話をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、日本弁護士連合会で、日弁連中小企業法律支援センターという中小企業を扱うセクションにおります。また、実務において、弁護士実務においても、中小企業問題について携わることが多くあります。
 本日は、法案の一部になっておりますけれども、民法特例に関しまして、事業承継につきまして、実務の観点からお話をさせていただきたいというふうに思っております。
 レジュメも配付させていただいておりますが、二ページ目から御説明申し上げます。
 皆さんよく御承知のとおり、中小企業、今回は事業者がテーマでございますが、小規模な企業、事業者の存在意義というものについては、全面から否定するということはないかと思っております。
 地方でニッチな分野にて、多くの企業、事業者が広範に事業活動を行っている。すき間を埋めた活動は非常に広範でございます。地域社会の生活を支える存在となっております。
 例えば、地方の小売店であったとしても、大企業の経済効率からは外れてしまう、そういうところをカバーしております。廃業して全滅すれば商店街がシャッター街になってしまう、そうすると地域住民の生活に大きな影響が生じてしまう、そういう存在だと思って取り組んでおります。
 では、その事業承継、中小・小規模事業者に関する事業承継の問題点というのはどういうところにあるかということについて御説明いたしたいと思います。
 まず、事業承継、経営の交代になりますけれども、親族内承継に偏りがちという傾向がございます。ただし、問題になっているのが後継者不足ですね。親族が、継いでくれるような方がその事業にかかわっていないというところで承継ができないというところが大きな問題になっております。
 また、事業、経営環境が不安定なことが多く、それではMアンドAをできるかといいますと、簡単にMアンドAの対象にならない、なかなか難しいというような企業も多くあります。一般的に、安定的な収益確保が難しいというところが理由になっているかというふうに思っております。
 さらに、事業規模に比べて負債が多くなっている傾向にある、債務超過の企業も多いということが障害の一つかと思っております。
 また、企業、事業と経営者の資産がほぼイコールという状況ですので、その承継というのは、その資産の承継、相続なり贈与になりますけれども、必ず税の問題が出ますので、それをどうクリアするか、それがかなり大きな問題になってきます。相続税の納税資金を別途に、事業資金と別に持っているというような経営者は少ないわけでありますので、これは大きな問題というふうに理解しております。
 三ページ目ですが、そのような事業承継の問題を抱えた中小企業については、しかしながら早期な対応が重要だというふうに思っております。
 経験例を申し上げます。
 一番目は、事業上欠かせない技術を有していた社長が認知症になってしまった、そういったところから、最終的には廃業に至ってしまった事例についてかかわったことがございます。
 これは、養鱒場という、マスを生けすの中で育てて、それで出荷する。ある地域においては、あちらこちらに養鱒場がありまして、山の中なんですけれども、湧き水が出るということで、その一帯の地場産業となっておりました。
 家族経営で社長が経営者だったわけですが、卵から稚魚をかえして、それをまた育てる、そこがかなり技術があるわけですが、そこは社長しか持っていなくて、長男がかかわっていたんですけれども、長男はまだ外回りしか事業にかかわっていなかった。そういった事業上必要な技術についてはまだ承継されていなかったというところで、ふと、あけてみると、ことしの稚魚は少ないじゃないか、おかしいというところから、見てみるとおやじの状況もおかしい、そこで、痴呆症になってしまって仕事もなかなかうまくいかなくなってしまったということが発覚した。
 そこで、少し債務超過だったんですが、とんとんでやっていたんですが、もうこれだと次の出荷するマスが育たないじゃないか、そうすると、一年間の売上げが上がらない、そういうところも見えてきてしまいまして、廃業となってしまいました。
 事業規模に比べて負債が多かったので、それをどうするかということで、破産ではなくソフトランディングをしようということで、特定調停という手続で金融機関と調整をして廃業に至っております。
 その施設は、生けすなんですけれども、宅地が近くにあるわけですが、宅地造成化するとどこから湧き水が出るかわからないということで、かなり高価格で、なかなか適用できない。同業者がそれを使うのが一番適当だということで、金融機関の方が同業者をその購入先に選定して、同業者がそこを買いました。そうすると、つき合っていた餌屋さんとかそういう出荷卸屋さんも、またそこにそういうような製造元が入ったので、地域産業が守られたというような状況ではございました。
 これが、残念ながら、認知症ということで廃業に至ってしまったというような事例でございます。
 もう一例、昨年、事業承継を検討中に社長が急死してしまったという事例もかかわっております。
 有限会社でございまして、社長一人の取締役、株式も、社長と奥さん、社長がもう九〇%持っていた。そこで突然亡くなってしまいますので、社長が亡くなってしまうと、普通は、皆さん、株主が株主総会で社長を選ぶ、そういうことになるわけですが、その株主も社長だったわけなので、いわゆる組織上、法律上、機能不全に陥ってしまったということになります。
 ただ、店舗は普通に営業してやっているわけですが、それをどうするかというところで、数カ月間は社長不在となってしまいました。
 保証債務があったので、相続放棄を相続人はされてしまったということですので、相続財産管理人というものを、選任を私の方で裁判所にしてもらって、その相続財産、株が相続財産なんですが、価値はそれほどないので、それを譲ってもらって株主が決まって、その上で社長を選任したといった、非常に時間がかかってしまうのと、法律的な手続が余計にかかってしまう、そういったところで事業承継が円滑にいかずに停滞してしまったケースを経験しました。
 ほかにも、事業承継後、MアンドA直後に社長が亡くなったという事例も昨年経験しておりまして、経営者が亡くなってしまうというのは結構な、最近はよく耳にすることで、危機感を覚えております。
 そういうことから、事業承継は早期な対応が重要だということでございますけれども、なぜ時間がかかってしまうかということについて述べたいと思いますが、経営者は自分のことは後回しにしてしまう。商売が忙しい、商売は苦しいし忙しい。それから、何か、例えば納期があるようなわけではなくて、いつまでに何をやらなければどうなるのかということがございません。自分が頑張ればもう少し先へできるという状況でございます。締切りがないということでございますので、なかなか着手しても進まないというのが実態として実感をしております。
 そうすると、七ページ目ですけれども、そういった早期対応をしなきゃいけないという場合の課題について、少し中身を見てみますと、後継者を早く見つけなきゃいけない、これはもう第一の課題でございます。まずは、身の回り、親族、従業員、それから知人の経営者、知人の経営者がだめであれば、そこから紹介していただく。さらに、それでもだめであれば、外部のフィナンシャルアドバイザーと呼ばれているFAとかマッチング業者から紹介してもらう。
 ただ、結婚と同じですので、どういう相手に託したらいいのか、向こうもどういう企業なのか、なかなか思いがうまく当たらないでMアンドAがうまくいかないということもございますので、信頼関係があるところから始めるのが成功率が高いというのが私の実感です。
 先ほど、MアンドAの、一般的には難しいんじゃないかと言いますけれども、結構、探してみると、そういった支援先が出てくることもございます。それは少なくはありません。ただ、一般化できないというのが中小企業、零細企業でございます。
 ニッチな事業内容について、MアンドAとしてそれを対象とするというようなこともございまして、これは経験例として、債務超過であったが得意先へ事業譲渡した事例を昨年経験したんですが、社長を含めて四名のちっちゃな町工場でしたけれども、もう高齢なのでやめたい、ただ、借金が少し大きいのでこのままではやめられないということで、取引先に相談したところ、そこが借金ごと引き取ってもらったというような事例がございます。
 それから、税務対応でございますが、これは、事業承継税制が昨年、それから個人版につきましてもできつつあるということで、活用されてくるとかなり大きな税務メリットがあるということで、今後の活用を私としては期待しております。
 その中で、特に、特例承継計画等の計画を事前準備しなきゃいけないというのが、なかなか難しいところで、これはメスを入れて条件になっております。先ほど、後回しになるというところを、計画をつくらなきゃいけない、じゃないと税金上のメリットがないということが、これが一つのきっかけとなって、事前準備に経営者が励むということになってくれないかなと思っております。
 そうなった場合には、次は相続ということが問題になります。そこで、遺留分、これはまた避けて通れない問題でございます。
 遺留分に係る民法特例の確認件数は、それほど多くありませんが、見ていただくとおり、少しずつですが上がっております。ニーズはあるという状況です。特に、個人版事業承継につきまして、さっき申し上げたように、事業資産イコール個人資産、それで、税務の問題が必ずある、相続の問題が必ず出てくる。そうすると、遺留分の問題は必ず処理しなきゃいけないという状況にございますので、今回の民法特例の活用ということについては、私は期待しております。
 それからもう一つ、問題としては負債処理ですけれども、過大な負債で、債務超過であったとしても、金融機関の支援によってそれを適切に処理した上で事業承継する。若しくは、場合によっては、第二会社方式といいますが、一部事業を切り出して処理をする。最悪廃業となってしまっても、何らかの事業資産を従業員が引き継いで第二創業、そういうことも実務としてさせていただいております。
 最後に、今回の民法特例につきましては遺留分対応ということですが、それを我々、実際にやるプレーヤーとしてどういう位置づけを持っているかだけを御説明させていただきたいと思います。
 原則としては、遺言書をつくろうということになります。資産があるところで、会社の資産、事業用の資産については後継者に渡す。もちろん、事業にかかわらない娘さんとか息子さんがいる場合については、預金などほかの資産で分け与える、公平に相続を行う。そうすると、遺留分を侵害しない形でできます。遺言書をつくるときに、全部この人に渡したいよという相談を受けたとしても、後々争いになるので、こういうような、遺留分を十分に考慮した内容での遺言書を作成しましょうというような指導を我々弁護士としてはしております。
 ただ、これは、ほかの資産がある場合はこういうふうに分けることができるんですが、中小零細企業はそういうことがないことが多いです。先ほど申し上げたように、もう事業用資産でいっぱいです、ほかに預金なんかありません。そういう場合につきましては、それでももう少し中規模な企業ですと、じゃ、株を分ければいいじゃないかと。ただ、株を分けると、その事業にかかわっていない娘、息子が経営権を持っちゃう、議決権を持っちゃう、そこでなかなか思い切った経営ができないじゃないか、これが事業承継の問題です。
 では、無議決権株式にして渡せばいいじゃないかと。ただ、無議決権だと意味ないじゃないかということで、じゃ、配当ができるのであるから優先配当権というのをつけて、お金の面ではプラスです、ただ、議決権はありませんよ、こういった形で処理をする、対応するというのが我々の一つのパターンとしております。
 ただ、これも、配当ができる中小企業なんてほとんどありませんので、なかなか実務的には機能しない。
 そこでどうするかが、今回のテーマになっておる民法特例で、そこで皆さんに、じゃ、こういう事情だからということで法定相続人の合意をとって、それで適切な対応をする、そういったことを我々として検討準備として考えております。
 今回の民法特例については、全事業者が事業承継のときに必ず使わなきゃいけないというわけではないわけですね。ただ、必要となる場面は多くあるわけです。そういったことでは重要なものだというふうに認識しております。
 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119804080X00920190424_006

発言者: 高井章光

speaker_id: 18223

日付: 2019-04-24

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会