千葉哲美の発言 (経済産業委員会)
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○千葉参考人 おはようございます。
宮城県の気仙沼市からやってまいりました、気仙沼本吉民主商工会副会長の千葉でございます。
民主商工会は、全国に約六百近くある、主に従業員九人以下の小規模企業あるいは小企業が参加する団体です。
震災で間近に経験しましたので、その点から意見を述べさせていただきたいと思います。
民主商工会は、気仙沼では一九七四年三月に設立されて、現在、気仙沼市と南三陸町の業者の一割以上が加入しています。その人たちの多くが、この震災で被災しました。私は当時事務局長でしたので、幸い事務所は水が来ませんでした、ただ、電気も水道も、そしてガソリンもないところに都合三週間泊まり込んで、会員の連絡、安否確認に努めました。
以後、地元業者の被災地復旧の奮闘を目の当たりにし、グループ補助金など公的支援の取得に一緒に苦労し、グループ補助金の果たした決定的な役割をつぶさに見てまいりました。
その経験を踏まえて、法案審議の参考に意見を述べさせていただきます。
八年前の東日本大震災は、御存じのように、八年たった現在でも復旧し切れない深刻な打撃を気仙沼地域全体に与えています。
地元業者は、震災直後から、被災地支援あるいはライフライン復旧に奮闘しました。
家族を行方不明にしたある業者は、その捜索もしながら、五百人以上入った避難所での運営に携わり、被災した人々が仮設住宅に移り切るまでお世話をしました。また、家や工場を失ったある業者は、地元消防団の幹部でしたので、寝ずの番にずっと出動しました。
震災の翌日、早朝から道路確保のために動いたのは地元の土木業者でした。私は、震災時、丘の上の避難所におりましたが、次の日の朝十時におりてみると、主要な道路が本当に確保されている、これにはびっくりしました。
水道業者は、被災した業者も被災しない業者も、市水道事業所の依頼を受け、震災翌日から漏水をとめる作業に従事しました。被災地の至るところで漏水していたのですが、本管をとめると、被災していない地域の水道もとめることになります。それを避けるために、津波が押し寄せた地域を一軒一軒回って、瓦れきを撤去して、手作業で止水管を探してそれをとめる、一度通水しても、水が噴き出すとまた戻ってそこをとめる、こういう作業を約二カ月半かけたとのことです。
建設土木の業界では、自主的に協議会を立ち上げ、共同受注で瓦れき撤去に取り組みました。
こうした中で、地元業者復旧の決定的な支援になったのがグループ補助金です。
被災直後の二〇一一年五月、民主商工会の事務所に、店を失った業者が、これは何の役に立つのかと言って店の被災証明書を持ってきました。今でも鮮明に覚えています。当時は、住宅の被害には国から支援金が出ましたが、営業資産への支援は何もありませんでした。一体この紙が何の役に立つのか、そのときは全く何も答えられませんでした。
そういう中で、グループ補助金が発表されたのが、たしか一一年の六月のことでした。この補助金に応募しよう、呼びかけました。奥さんと工場を失ったある会員は、あのときは仕事をやめようと思っていた、あの呼びかけをもらって前向きに考えられるようになったと最近話しています。
気仙沼では、全体で延べ九百者に及ぶ事業者に五百億円を超える補助金が決定されています。グループ補助金は、金銭的にはもちろん、精神的にも、気仙沼の地域経済復旧に大きな、決定的な役割を果たしたと思います。
ただ、震災から八年経過しまして、このグループ補助金にも新たな課題が生じています。
それは、復旧に要した期間が長かったために、お客さんが戻らず、営業が思いどおりに回復しない、こういう事態になっている方がいます。そうした業者の中には、自己調達分の借入金を返済できなくなっているケースがある。そしてまた、補助金で取得した財産、建物や設備ですが、事業継続が困難になり処分をせざるを得なくなったが、処分制限期間の処分のために補助金の返還を求められている、こういうケースも生まれています。
この補助金の取得についての処分は、昨年初めて県の方から説明がありました。補助金を受けるときはこんな説明はなかった、うちはグループ補助金で建てた工場の上に住まいがある、万が一のときにはどうしたらいいんだ、こういう声もその説明会の場ではありました。県の担当者の方は、中小企業庁と相談し柔軟に対応すると話していますが、関係する法律の制約もあると思いますけれども、補助金が被災者支援ということを踏まえて、柔軟に対応していただくようお願いしたいと思います。
グループ補助事業あるいは国の補助事業の改善点についても、この機会に聞いていただきたいと思います。
このグループ補助金ですが、まず、申請するのが大変難しいものでした。
まず、類型区分というのがあります。サプライチェーン型、経済・雇用拡大型、地域に重要な企業集積型、水産加工業型、商店街型、このグループ類型を申請者が選択しなければならない。そして、グループを組む。誰とグループなのかというのはなかなか見えない。サプライチェーンの場合ははっきりしますが、そうでない場合はなかなか見えません。
地域の多くは第三類型の地域に重要な企業集積型を選びましたが、その産業がその地域の主要な産業であることの説明、申請したグループがその産業の中心的なグループであることの証明、この記述が求められました。気仙沼では水産業や造船業が中心産業だとはわかるが、建設業が主要な産業だというのを説明せよ、そして、あなたのグループがその建設産業の中の中心的なグループであることを証明してほしい、こういう説明を求められたのです。そのために、グループをなかなか構成できない、補助金を受けることを断念する、こういう事業所もありました。また、情報が得られずに、グループに参加できなかった事業所もありました。
そしてまた、もう一つは、業種それ自身が除外された業種もありました。店舗賃貸業、あるいはアパート賃貸業、物品レンタル業。このために、店舗の賃貸業、店舗を借りてやったけれども、建ててもらえない。そのために、商店街の店舗形成がおくれたところもありました。
そしてまた、三つ目の問題として、募集が短期間で細切れに行われました。予算が小出しにされました。町の中心的なグループ、三百者以上が参加したグループですが、二次、三次と応募をして、最終的には、震災の翌年、第六次の募集で認定されました。これは地元業者の復旧に深刻なおくれをもたらしたと思います。
そもそも、なぜグループを構成しなければならないのか。グループを構成しないとなぜ補助金が得られないのか。被災した事業所の中では、グループを組めない、あるいはグループに参加できない事業所がありました。これではせっかくの復旧支援が受けられない、こういうことです。
こうした現実を前に、県や市は、被災した個別企業に事業の再開や継続を支援する補助事業を実施する。最近、市の担当者に聞いたら、なかなかグループを受けられない、難しい、グループが組めない、こういう人がいるので、うちは個別に、独自に補助事業を実施した、こういう話がありました。
今後、災害からの復旧支援の補助制度を実施する場合には、グループ構成を求めず、個別企業に直接補助できるようにしていただきたいと思います。
今、地域経済は、震災被害の長期化と人口減の中で大変先が見えなくなっています。
地元の人口減は、まず子育ての世代からの移住から始まりました。残されたのは高齢者です。高齢者は、最初はうちを建てようかという計画もありましたが、だんだん出費ができないということで、災害公営住宅に入る、あるいは集団移転事業の中の賃貸住宅に入る、こういう状況になっています。ひとり暮らしの高齢者が目立ち、買物難民、医療難民、ATM難民が生まれています。近くに郵便局がないので年金がおろせない、ATM難民というんだそうです。
そしてまた、事業主の高齢化、後継者不足が追い打ちをかけています。業界ごとに見ると、例えば建築業界は復興需要がなくなり、いわゆる崖を迎えています。
防災集団移転事業や災害公営住宅は、おおむね二〇一六年にはほとんど完成しました。一七年の建築確認件数を見ると、前年比三〇%にまで落ち込んでいます。これはなかなか今後回復する見通しがないんじゃないかと言われています。
加えて、小さくなった市場はパワービルダーやハウスメーカーがどんどん参入し、地元建築業界は全体の一〇%とか二〇%しか受注できていないんじゃないか、こういうことがささやかれています。このままでは、災害時のライフライン確保、これが果たせなくなるのではないかという心配が出ています。
また、養殖業界を見ますと、御存じのように、福島原発被害のホヤの輸出、これが解禁されていません。ホヤは大体七、八割がこれまで韓国が輸入していたのが、全然輸入できないということで大変な状況になっています。
こうした中で、人口減の中でも地域を支えているのが小規模企業、小企業です。
おおむね、気仙沼域外から売上げを上げて、そして気仙沼の地域経済を豊かにする業種や企業があります。あるいは、サプライチェーンを支える中小企業や小企業があります。
ただ、そうした中で、何よりも人口減社会に抗して、住民の暮らしに密着し、日常の暮らしを支える役割を持っている業種あるいは事業者が多いと思います。あわせて、万が一の際に住民のライフラインを確保するのも小規模企業、小企業の役割です。そして、地域の伝統や習俗、文化を継承する、この役割も小規模企業、小企業の経営者や事業主が担っています。
経済政策あるいは中小企業対策を考えるときに、こうした業者の社会的な貢献、役割に目を向けていただきたい、これこそが、ある面、持続可能な地域経済に資するのではないかと考えています。
その上で、小規模企業、小企業をフォローする中小企業強靱化法についてです。
日ごろから災害に備えることは大切なことであり、BCPを持つことは大切だと思います。しかし一方、BCPの奨励に当たっては、小規模企業、小企業の状況を踏まえた運用を行い、BCPの有無を各種支援助成の判断基準にしないようにしていただきたい。小規模企業、小企業を漏らさないようにお願いしたいと思います。
気仙沼では、中小企業・小規模企業振興基本条例に、災害時における中小企業、小規模企業への支援を規定しました。全国の自治体においても、小規模企業、小企業振興条例を制定する動きが多くありますが、その際には、災害時の小規模企業、小企業への支援を規定するよう、ぜひ政府の方からも促していただきたいと思います。
そして、中小企業、小規模企業を支援する際には、BCP推進に当たって、中小企業同友会や民主商工会など、中小企業、小規模企業を支援している団体あるいは支援しようとしている団体にも広く協力を呼びかけて、広くBCPの推進をお願いしたいと思います。
最後になりますが、中小企業、小規模企業の営業と暮らしを守るために、ぜひお願いしたいことがあります。
その一つは、十月の消費税増税は絶対行わない、延期していただきたいと思います。二つ目は、経営と暮らしを圧迫する社会保険料、国民健康保険税の引下げを図ること。三つ目は、地方自治体に対し、全事業所調査への大胆な支援など、小規模企業支援法に基づくきめ細かい小規模企業支援を促進すること。四つ目は、大災害時には、中小企業の幅広い役割を考慮し、全ての被災企業を対象にする支援事業を実施すること。
以上をお願いして、私の意見陳述とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)