永原伸の発言 (憲法審査会)

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○永原参考人 日本民間放送連盟専務理事の永原でございます。
 私どもは、昨年十二月二十日の理事会で、憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢を決定しました。また、本年三月二十日の理事会で、国民投票運動CMなどの取扱いに関する考査ガイドラインを決定いたしました。
 本日は、最初に、この基本姿勢と考査ガイドラインについて御説明申し上げます。その上で、CM規制に対する民放連の基本的な考え方について御説明申し上げます。
 お配りした資料の一が、昨年十二月二十日の理事会で決定しました基本姿勢でございます。
 まず冒頭、一ページ目の二段落目で、憲法改正が発議された場合には、番組とCMを通じて正確かつ多角的な情報を提供することが放送事業者としての当然の責務であることを改めて確認しております。番組、特に報道活動に関しましては、三段落目で、留意すべき民放連放送基準の条文、具体的には十一条、三十四条、四十七条への留意を強調しております。
 CMにつきましては、一ページ目の一番下の段落でございますが、テレビ、ラジオCMは生活になくてはならない存在であることをまずうたい、その上で、二ページ目の最初の段落で、留意すべき放送基準の条文、具体的には八十九条、百一条、九十七条を列挙して、より慎重な対応が求められることを強調しております。
 最後のパートは、憲法改正に関するいわゆる意見広告の扱いに関する言及となります。
 これは、先生方よく御存じのことと存じますが、国民投票法百五条で放送を禁止されているのは、憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘するCMでございます。そうしますと、直接的な勧誘を示す表現はないけれども、憲法改正に関して意見を述べる、いわゆる意見広告の形をとるCMは、百五条は直接的には禁じていないこととなります。しかしながら、投票日前の十四日間に憲法改正の意見CMが放送されれば、国民・視聴者が戸惑うのではなかろうかと私どもは考えました。
 百五条の趣旨は、投票日直前については言論の自由市場で淘汰する時間的な余裕がないので、放送を禁止して国民がクールダウンする時間を設定するというものであると理解しております。
 この条文の立法趣旨を踏まえまして、主権者一人一人が冷静な判断を行うための環境整備にも配慮することが、我々放送事業者に対する社会的な要請であると考え、いわゆる意見広告の形をとった憲法改正に関するCMなども、投票日前十四日間は放送しないことを会員各社に推奨することにした次第であります。
 なお、独占禁止法との関係から、選択肢という表現を用いましたとおり、最終的には会員各社が自主的に判断することといたしております。
 この決定に対して、昨年九月の理事会で決定しましたCM量の自主規制を行わないという方針との関係はどのように整理しているのかと思われる向きもあろうかと思いますので、この点を補足させていただきます。これは資料の三、カラーの図をごらんください。
 国民投票法は、百条で国民の表現の自由を不当に侵害しないよう求めています。憲法改正で発議された項目について賛成であれ反対であれ、それが広告という表現形態であっても、その意思の表明は政治的表現の自由として最大限尊重されなければならないというのが国民投票法の精神であると理解しております。
 そのため、広告放送に関しましても、十二年前の立法当時の御議論は、一言で言えば、広告合戦のような事態となっても、それは言論の自由市場で淘汰されるべきであって、安易な広告規制は国民の表現の自由を脅かすという考え方が、自民党、公明党、さらに当時の民主党の法案提出者の一致したお考えであったと理解しております。
 昨今、資金力の多寡によってCM量に違いが出て、それが国民の判断を左右してよいのかというCM規制論が盛んになっていることは、私どもも十分認識しております。しかしながら、私どもは事業者団体ですので、現在ある法律、現在あるルールに従って行動することとなります。今回の場合、国民投票法の条文や立法趣旨に沿って判断するということでございます。
 したがいまして、百条で国民の表現の自由を最大限尊重するよう求めていることを受けて、発議されてから投票日の十五日前までの間はCM量に特化した自主規制は行わないとしつつ、百五条で静かな投票環境を求めていることを受けて、投票日前十四日間は、国民投票を勧誘するCMだけでなく、憲法改正に関する意見CMなどもあわせて放送しないことを会員各社に推奨するということでありまして、百条、百五条という国民投票法の条文、立法趣旨にかなった対応であるという点で、首尾一貫しているものでございます。
 次に、本年三月二十日の理事会で決定した考査ガイドラインについて御説明します。
 資料の二をごらんください。
 一ページ目の放送事業者の責務、ガイドラインの位置づけ、原則。ここまでの記述は、ただいま御説明しました基本姿勢で示した内容を改めて確認したもので、ガイドラインの具体的中身は、二ページ目の中段にございます適用範囲以降となります。
 まず、適用範囲で、憲法改正に関するCM全般が対象であることを明示しております。
 次に、広告主では、門戸は平等に開かれていることを広告主にきちんと示すことが重要であると考え、(7)、(8)のような表現となっております。
 次に、三ページ目に移りまして、出演者で、(9)は、政党その他の政治活動を行う団体の場合は原則党首又は団体の代表のみとしております。
 次のCM内容も具体的な記述が並んでおりますが、これらの記述は、会員各社が政党スポット、意見広告のCMを取り扱う中で、従来から判断基準としていた内容を明文化したものでございます。先ほどの広告主の項目で個人の広告は取り扱わないとしているのも、出演者の項目で原則党首又は団体の代表しか受け付けないとしているのも、従来からの判断基準に沿った内容であります。
 以上が、昨年十二月及びことし三月の理事会で決定した基本姿勢と考査ガイドラインの内容の御説明でございます。
 民放連としましては、昨年九月の理事会でCM量の自主規制は行わないという方針を決定して以来、国民投票運動の放送対応について進めてきた検討作業は、これで一区切りとなります。
 次に、CM規制に対する民放連の基本的な考え方について申し述べたいと思います。
 昨年九月の理事会でCM量の自主規制は行わないという方針を決定して以来、さまざまな場面で、自主規制しないなら法規制してよいのかと問われることがございました。
 十二年前、民放連の参考人が、番組基準の日常的な運用や考査ガイドラインの策定を念頭に、放送事業者の自主規制に任せてほしいという趣旨の発言を行っております。こうした考えは、十二年前も今も基本的に変わりはございません。私どもは放送法で定められた範囲内でしっかりと自主規制を行っていく所存ですし、そこに法令による規制を加えることは望ましくないと考えます。それは、放送事業者の表現の自由を侵害するおそれがあるからでございます。
 放送事業者はメディアですから、メディアに対する行政府や立法府による不当な介入を排除するため、常に自主自立の存在でなければなりません。放送事業者の表現の自由に法令で規制をかける、強化するという動きには、常に、望ましくない、反対であるというのが私どもの一貫した立場でございます。他方で、放送事業者による自主規制では及ばない部分がございます。それが、国民の表現の自由に対して放送法の枠を超えて制約を課すというところでございます。
 これは、国民投票法の精神や百条の条文に反することでございますので、法的な根拠もない中で放送事業者の勝手な判断で行うわけにまいりませんし、行うべきでもございません。そのように考えて、昨年九月の理事会で、CM量に特化した自主規制は行わないと決定したわけでございます。
 国民投票運動CMの問題は、二つの表現の自由が関係します。一つは、放送事業者の表現の自由です。その観点から、私どもの自主的な取組はぜひ尊重していただきたいですし、そこに法規制をかけることには、十二年前も今も変わらずに反対であります。もう一つが、国民の表現の自由です。幾ら自分たち放送事業者の表現の自由が大事だからといって、他者の表現の自由をないがしろにしていいはずがございません。ですから、私どもは、国民の表現の自由に放送法の枠を超えて放送事業者独自の判断で規制をかけることは行わないと決めました。
 わかりにくくて大変恐縮ですが、二つの表現の自由が関係するためのわかりにくさであると御理解いただければ幸いでございます。
 その上で、国民の表現の自由に対する法規制についてでございますが、基本は国会で御議論いただくことでございますけれども、もし私どもの見解を問われたとすれば、これは、事は国民の表現の自由に制約を課すという話でございますので、法律で規制することにはやはり極めて慎重であるべきだと私どもは考えます。
 十二年前の国民投票法の立法過程において、具体的には、平成十八年六月一日の衆議院本会議で当時の民主党憲法調査会長枝野幸男先生がこのように発言しております。テレビ、ラジオの広告放送による改正賛成のキャンペーンについて一律に禁止してしまえば、改正賛成だけでなく改正反対の主張もできなくなり、表現の自由が脅かされます。この考え方に私どもは賛同いたします。国民の表現の自由を最大限尊重することが、議論の大前提、議論の出発点でなければならないと考えます。
 そもそも、国民投票運動は、国民一人一人が萎縮することなく自由に行うことが大原則であり、広告を厳しく規制してしまうと、国民投票運動の萎縮、すなわち、低投票率の懸念リスクを高める可能性があるというのが十二年前の国会の御議論であったと理解しております。
 広告には国民投票運動の盛り上がりを下支えする重要な役割があると私どもは考えます。少なくとも、広告規制と投票率がトレードオフの関係にあることは十分に意識して議論していただきたいと思います。それでも、広告にはさらなる規制が必要で、今ある投票日前十四日間の放送CMの禁止だけでは不十分とお考えになる方もおられるかもしれません。しかし、そうであれば、その場合の議論は放送CMだけを俎上にのせるのではなく、広告全般に対する議論でなければおかしいと考えます。
 民放連では、ことし、インターネット広告費が地上波テレビの広告費を抜くと予測しております。テレビ広告費は、一九七五年に新聞広告費を上回って以来四十年以上にわたって媒体別広告費で首位の座を占めてまいりましたが、ことしはついにインターネット広告にその座を譲るというエポックメーキングな年となります。
 にもかかわらず、一例に挙げて大変恐縮ですが、国民民主党が昨年発表した法案を拝見しますと、政党の広告放送を発議期間中全て禁止するとなっております。つまり、規制の対象はテレビとラジオであります。
 テレビとラジオのCMは発議期間中全て禁止し、インターネット上の動画CMは投票日前十四日間も含めて規制の対象外であるという御主張ですと、これは広告規制ではなく、広告規制に名をかりた放送メディア規制ではなかろうかと懸念しているところでございます。
 その観点から、国会の御議論でも参考になり得るケースを幾つか御紹介させていただきます。
 まず、たばこメーカーは、業界の自主規制によって、テレビ、ラジオだけでなくインターネットでも銘柄広告を全面自粛しております。
 具体的には、日本たばこ協会の製造たばこに係る広告、販売促進活動及び包装に関する自主規準という中で、テレビ、ラジオ、シネマ、TVボード、インターネットサイト又はこれらに類する媒体による製品広告は行わないという規定がございます。
 また、CM規制の議論では、ある特定の団体が全ての放送CMを買い占めたらどうするのかという仮定の御質問を受けることがございます。
 七十年に及ぶ民間放送の歴史の中でそのような現象に一度も遭遇しておりませんので、そのような事態になるとは想像しにくいのですが、それでも心配だということでしたら、貸金業の業界ではテレビCMの月間の上限本数を自主規制してございます。
 具体的には、日本貸金業協会の貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則というものの中で、各放送エリアにおける放送総量について、月間百本(十五秒=一本換算)とし、二十二時から二十四時の時間帯の放送数上限は五十本とすることという規定がございます。
 広告規制には、法令による規制、媒体、メディアの自主規制、そして広告主による自主規制と三種類ございます。
 このうち、法令による規制や媒体の自主規制ですと、国民投票法百条との関係、すなわち国民の表現の自由の問題が避けて通れません。
 これに対して、広告主の自主規制、この場合は政党による自主規制ということになるでしょうが、政党自身がみずからの取決めで広告出稿を自粛なさる、あるいは出稿量を調整なさるというのであれば、国民の表現の自由を脅かす心配はなくなります。
 以上、CM規制に対する民放連の基本的な考え方を申し述べさせていただきました。皆様の御議論の参考にしていただけましたら幸いでございます。

発言情報

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発言者: 永原伸

speaker_id: 17698

日付: 2019-05-09

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会