伊藤和子の発言 (厚生労働委員会)
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○伊藤参考人 御紹介いただきました、弁護士の伊藤と申します。
ヒューマンライツ・ナウという団体で活動しておりますが、こちらの団体は東京を本拠とする国際人権団体です。その中に、女性の権利に関するプロジェクトがございまして、性暴力の問題について取り組んでおります。
また、私自身、弁護士として、DV、セクシュアルハラスメント、アダルトビデオの出演強要などの被害の問題に長年取り組んでまいりました。その観点から、法案について意見を述べていきたいというふうに思います。
世界では、ミー・トゥー運動というものが展開され、多くの女性が性被害を語り、女性の声に応えた法改正というものも進んでいます。
一方、日本ではどうでしょうか。日本では、セクハラ、性暴力被害は深刻であるのに、女性たちの声が抑圧され、ポジティブな変化がなかなか生み出されていません。
日本で初めてミー・トゥーの声を上げた女性、伊藤詩織さんという方は、過酷なバッシングの結果、海外で生活することを余儀なくされております。最近の報道でもありましたアイドルグループNGT48の山口真帆さんという方は、被害者であるのに公衆の面前で謝罪をさせられ、そして今や孤立した状況に置かれております。
被害に遭った事実を公表しただけで、命、仕事を失う危険を感じている、バッシングにさらされる、そうした恐怖、これは、日常的にセクハラ被害に遭っている女性たちに大きな萎縮効果を与え、被害に遭っても誰にも相談できない、黙るしかないという状況をつくり出しています。私たちのところに相談に来られる方々も、非常におびえて御相談に来られています。
女性にとって生きづらい社会というものを克服するために、国は抜本的なセクハラ対策を推進する必要があるというふうに考えております。
一年前の財務省のセクハラ事件以降、女性たちはずっと、セクハラをなくすための抜本的な法改正に期待をしてまいりました。しかし、上程された政府提出案は、非常に歓迎すべきところもありますが、残念な部分も多いというふうに感じています。
まず、なぜセクハラ禁止規定の条項がないのかということです。
他の均等法の条項には、差別をしてはならないという規定があります。それと同様に、セクシュアルハラスメントをしてはならないということを明記することがなぜできないのかということを申し上げたいと思います。野党案には禁止規定を盛り込んでいただいているということですので、ぜひ与野党で合意して、禁止を明確化するというふうにしていただきたいと思います。
お手元の資料に、国連女性差別撤廃委員会の勧告が載っております。三ページ目ですが、二〇一六年、日本に対して、職場でのセクシュアルハラスメントを防止するために、禁止規定と適切な制裁規定を盛り込んだ法整備を行うことを勧告しています。
また、ことしの六月には、ILO総会で、暴力とハラスメントに関するILO条約が採択される見込みになっております。資料の最後の方に、条約案と和訳をつけております。この五条が、国の責務として、暴力とハラスメントを法的に禁止する、そして、執行及び監視のための仕組みを強化し確立する、被害者が救済及び支援を受けられるように確保する、制裁を設けるというふうに明記をしております。
世界の圧倒的多数の国が支持する大切な条約ですが、この誕生に当たりまして、国際社会の趨勢に逆行してこれを批准しないという残念な選択肢をとるべきではないというふうに考えます。この条約を批准すること、そして、その批准を見越して、これに則した法整備をしていただきたいというふうに考えております。
二〇二〇年にはオリンピック、パラリンピックというものを控え、日本が差別とハラスメントにどう向き合うか、世界が注目をしています。本法案そしてILO新条約への対応は、日本の信用にかかわる問題だというふうに考えます。セクハラそしてパワハラについても、禁止規定を導入していただきたいというふうに思っております。
二点目に、現行法制ではこぼれ落ちてしまうセクハラの被害者がたくさんいることに向き合っていただきたいというふうに思います。
昨日、私たちの団体も協力した院内集会で、セクシュアルハラスメントをなくしていこうというイベントが開催され、二百人の方々が集まられ、各界の登壇者から深刻な被害実態が次々と語られました。報告のあった被害事例は、メディア、流通、保険業、教育実習、演劇、映画、司法修習生、介護、訪問看護、地方議員、セクシュアルマイノリティー、フリーランス、就活中の学生に及びました。セクハラを通り越してレイプ被害もたくさんあるというふうに報告をされました。
特に一点申し上げますと、横行する就活セクハラというものが非常に悪質です。資料にも掲載しましたが、最近、大林組、住友商事の社員が就活中の女子学生に性暴力を行い、逮捕されたということが報道されております。しかし、これは氷山の一角と思われます。
ウエブメディアのビジネス・インサイダーが就活生約六百人にとったアンケートでは、半数がセクハラ被害に遭ったというふうに回答しております。また、資料に添付しておりますが、メディア関係労組が行った四百二十八人の女性労働者を対象とするアンケートでは、七四%の女性がセクハラ被害に遭ったと回答し、死にたくなるなどの心情を訴えていらっしゃいます。
しかし、ほとんどの被害者が誰にも相談できず、被害届も出さないまま泣き寝入りをしていらっしゃいます。多くが、労働者というものを対象とする均等法の枠組みから十分に保護されていない、こぼれ落ちているということもございます。救済制度もございません。
先ほどのILO新条約案では、二条において、就職希望者、実習生が労働者に含まれると明記をしております。また、四条には、クライアント、顧客、サービス事業者、利用者、患者も被害者及び加害者に含まれるというふうにしております。
均等法も対象を広げて、広く事業にかかわる全ての関係者がセクハラから保護されることが必要です。そして、企業には、こうした外部者にも救済へのアクセスを保障することを義務づけていただきたいというふうに感じております。
三点目に、いわゆるSOGIハラへの対応についても必要だと考えております。
性的マイノリティーに対するハラスメントは非常に深刻であり、近年、アウティングに伴い、大学生が自死をされています。命にかかわる問題であり、法のすき間で保護されないということがあってはなりません。
ILO条約案の七条には、女性労働者のほか、脆弱なグループが条約の対象とされ、性的マイノリティーが想定されております。国際基準に基づいて、今回の法制度で、性的マイノリティーへのハラスメントが許されないことや、事業主の義務が法的に課されるということを期待しております。
四点目に、女性活躍推進法です。
この法律の公表義務は大変重要だと認識しておりますが、今回、対象事業者を広げるとともに、セクハラに関する企業としての指針、セクハラに関する規則についても公表対象としていただくと非常に実効性が上がっていいのではないかというふうに感じております。
それから、第五点目に、調停等の救済手段に関してです。
いずれも活用は比較的少数にとどまっていますが、私が知る限り、なかなか期待に沿えない結果になっている、非常に残念な結果に終わっているという声をたくさん聞きます。ぜひ、ユーザーの方の声、被害者の方の声を取り入れて制度の見直しを進めていただきたいというふうに思っております。
最後に、制裁についてです。
セクハラに関する対応が不適切な事業所については、企業名公表のみならず、刑事罰などの制裁を科すべきだと感じております。行為者本人に関しては、懲戒解雇等の労働法上の制裁にとどまらず、レイプに相当するセクハラ行為は厳しく処罰されるべきだというふうに感じております。
別件になりますが、先日、実の娘を性虐待し続けた父親が準強制性交等罪に問われ、無罪となりました。その背景には、日本の性犯罪の構成要件、例えば抗拒不能又は暴行、脅迫といった要件が余りにもハードルが高過ぎ、無理やり性行為をされたケースの多くが不処罰に終わるという現状があります。
お手元にありますピンク色の冊子は、当団体が十カ国の性犯罪規定について調査をした結果ですが、諸外国では、同意に基づかない性行為を禁止する法制を次々と成立させています。日本は、こうした世界の趨勢におくれ、性被害が救済されていません。
こちらのピンクの冊子の七ページに書いてありますが、隣の韓国では、業務上優位にある者が威力や偽計を用いて性交した場合、五年以上の懲役となっております。また、被害者に不利益な対応をした雇用主は、三年以下の懲役刑に科されるとなっております。日本でも同様に、刑法を抜本的に改正し、意に反する性行為を行う加害者を広く処罰するとともに、均等法の制裁も強化する必要があると考えます。
今日も、セクハラによって苦しみ、夢を断念し、職場を去ることを余儀なくされ、未来を絶たれている女性たちがいます。若い女性たち、そして未来ある子供たちが苦しまないように、今こそ実効性のある法制度を導入いただくことを訴えて、私の話を終わりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)