米村敏朗の発言 (情報監視審査会)
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○米村参考人 着席したままで失礼をいたします。
本日は、この審査会にお招きをいただきまして発言の機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げます。
ただ、私は、今現在、二〇二〇年東京オリンピック組織委員会のチーフセキュリティーオフィサーとして、オリンピックセキュリティー全体を統括する仕事をしております。これは、国の行う情報活動ともいささか関係がございますが、直接情報活動にタッチしているものではありません。あわせて、実務の経験からかなり離れております。ということで、果たして、この報告書等を読ませていただいて御意見等を申し上げたとして、どこまで実態を踏まえているかということには、いささか心配をしております。
また、個別のテーマにつきましては、これまで、当審査会の御尽力によりまして、相当程度意見あるいは質疑が行われ、また、それに対する答弁が積み重ねられているように思います。そういうことでありますので、いわば屋上屋を重ねるような意見を申し上げても余り意味がないかなとも思います。
そこで、冒頭でありますので、私がこれまで長きにわたって国家の行う情報活動というものについていろいろと考えてきたことを少し申し上げたいというふうに思います。
実は、この法案が事務方で策定されている当時、私は内閣危機管理監をしておりました。内閣危機管理監というのは、御承知のとおり、事態対処であります。いわば、国民の生命、身体、財産に重大な被害が生じる、あるいは生じるおそれがある、そういう事態にどう対処するかというのが仕事であります。したがいまして、政策マターには直接タッチをいたしません。発言の機会もないと言っていいかとも思いますが。ただ、当時、事務方の方で、この法案を一度説明に来てもらったことがあります。あくまでも参考ということで来たんだろうと思いますが。
その際、一読して一言最初に申し上げたのが、実は、これで大丈夫かということでした。これで大丈夫かと。その理由は、一つありまして、これはとても役人的な発想なんですが、これじゃとても国会審議がもたないということでありました。もう一つは、実質的なその中身の話なんですけれども、一読した印象として、制度設計が極めて不十分という印象を持ちました。事務方としてはその点についてその時点であらかじめ準備があったかとも思いますが、その後の国会審議を見ておりますと、とてもそういう準備があったとは思えないという感じがいたしました。
私は、実は、情報の仕事は、専ら捜査あるいは危機管理の実務を通じて情報収集をする。その中にはいわゆる秘密の情報というのも含まれております。そういった仕事をする中で、その秘密の情報が外部に漏れて、オペレーション上、大変苦労したことが実は一再ならずあります。そのときにつくづく思ったことなんです。若干シニカルな言い方になるかもわかりませんが、人間というのは秘密を知っているだけで満足しない、秘密を知っているということを誰かに知ってもらって初めて満足するんじゃないかというふうに思いました。
これに対しては、いや、そうじゃない、都合の悪い情報は隠すのが人間だという主張もあろうかと思います。残念ながら、昨今の現実はこの主張をいささか裏書きしているという印象もありますし、とてもこれをはね返す力があるようには思えません。
ただ、情報の漏えいと情報の開示、情報自由とは別問題でありますが、漏えいという観点からいきますと、そのときに担当者にも申し上げたんですけれども、これは大変重要な情報だ、だからこれを漏らしたら罰則を強化するということでは秘密は守れない、問題の本質は管理だ、管理こそ最も重要なテーマであって、管理ということを中心にして法案をつくるべきだと。
実際上そういうたてつけにはなっているか、こう思いますが、例えば、この法案の名称にしても、私の印象としては、特定秘密保護法という秘密ということを中心概念にするのではなくて、特定情報の管理に関する法律ということで、管理というものを中心にすべきではないかということを印象に持ったわけであります。
次に考えたことは、管理という管理ボックスに、ある情報、秘密情報を入れる入り口の問題があります。その次に重要なのは、実は出口の問題だ。入り口と出口が問題なんだけれども、出口の方こそよほど問題なんだ、問題というか、それが重要な課題なんだということをそのときにも申し上げた記憶があります。
なぜこういうことを申し上げるかといいますと、私は、先ほど申し上げましたとおり、捜査あるいは危機管理の実務を通じて情報活動をやってきた立場である。そのためには、情報の収集、集約、分析、あわせて、それに基づく情報の発信という仕事をしてきました。その仕事をしている過程でつくづく感じたのは、実は、情報の収集にしろ発信にしろ、国民の皆さんの理解と協力がなければとてもできないということでした。とてもできないということが実感としてありました。そういう意味では、たとえ秘密の情報であっても、基本的に、国家が収集し保有する情報は、国家の専有物でもなければ、それぞれの行政機関、情報機関と言っていいかどうかは別として、行政機関の専有物ではない、あくまでも国民の共有物だという考えです。
御案内のとおり、二〇〇九年に制定された公文書等の管理に関する法律の第一条、ここでは、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とあります、公文書につきまして。当然の話だ、こう思います。この公文書の中身である情報も、当然これと同じ考え方で捉えられるべきであろうということだろう、こう思います。
その次に私が考えましたことは、一つは、組織であれ人であれ、自己観察の能力とモラルを失うと必ず崩壊が始まるということであります。
これは実は情報の話とは別なんですけれども、私が小渕恵三総理の総理秘書官をしていた当時、警察の不祥事が発生し、あるいは発覚し、国会でも大議論となりました。結果、警察刷新会議というものができて、警察改革を行った。なぜこうなったんだろうかと思ったときに、やはり、組織として自己観察の能力とモラルを失ったのではないかというふうに思った次第であります。
この情報の収集、管理、あるいは出口の問題にしても、行政機関においてこの自己観察の能力とモラルというものを持つことが極めて重要であります。
加えて、これに対する担保措置として、外部からのいわゆる監視、検証といった機能は、これも極めて重要だろうというふうに考えております。
当審査会の役割は、まさに行政機関が行う情報収集、管理につきまして、あるいはその出口も含めまして、行政機関が果たすべき自己観察の能力とモラルをいかに担保するかというのが大きな使命であろうか、僣越ながらそう思っております。これまでの議論等々を勉強させていただきまして、大変御尽力をいただきまして、ある程度の制度構築はできてきたなという印象を持っております。ただ、それで十分かどうかは、まだこれから検討しなければならないということだろう、こう思います。
時間がありませんのではしょって申し上げますけれども、公文書というものに対する日本人の感覚あるいは政府の感覚というものが、もっと強いものでなければいけないというのが私の印象です。今は、たしか国立公文書館の建てかえについて行われているか、こう思いますが、私も何度か公文書館を見たりしましたけれども、ほかの国の公文書館と比べると極めて質素なものであります。この点について、ぜひ御尽力をいただきたいなというふうに思います。
最後に、二つばかり当審査会にお願いがあります。
国家の行う情報活動というのは、いわゆる特定秘密情報には限りません。むしろ、情報活動全般について自己観察の能力とモラルを担保する機能を今後持っていただければ、それこそ行政機関にとって有用なものだろうというふうに思います。
あわせて、情報の監察あるいは検証をする上において、大変僣越な物の言い方でありますが、余り委員の皆さん方がおかわりにならないことの方が重要だろうと思っております。
私は、警察庁の外事課長のときに、外事情報部というのがぜひ必要だということで上に頼みましたけれども、結果、できました。そのときに申し上げました、上の方に。少なくとも三年はスタッフをかえないでほしいと。グローバルな情報コミュニティーの中で仕事をしていく上には極めて重要なことでありまして、人がころころかわるようであれば信用されません。
当審査会が信用の問題だと言っているわけではありませんが、やはり、蓄積された経験と能力が必要なのがこの審査会だろう、こう思いますので、今申し上げたこと、大変失礼な言い方かと思いますが、よろしくお願いしたいというふうに思っております。
今後更に充実した議論が当審査会を中心に行われることを心から願っております。
以上です。(拍手)