合間利の発言 (法務委員会)

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○合間参考人 弁護士の合間と申します。
 弁護士になって十七年目、先ほどの松浦さんと同じになります。弁護士になった当初から、犯罪被害を受けられた方の支援を弁護士の立場からしてきました。
 今回は、貴重なお時間をいただいた中で、新設された第四章の債務者の財産状況の調査に関する改正について、犯罪被害を受けた方、この法案では人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権を有する方といった表現になっていますけれども、その犯罪被害者の方を支援する弁護士の立場から意見を申し述べたいというふうに思っています。
 まず、前提として、犯罪の被害者が民事執行の場面にどのようにかかわってくるかについて若干整理させてください。議論をわかりやすくするために、経済犯罪の被害者の方についてはちょっと除かせていただきます。
 犯罪の被害を受けると、治療費、仕事を休むことによる休業損害、精神的な損害に対する慰謝料など、さまざまな損害が発生します。交通事故で加害者が保険に加入している場合などはともかく、殺人や傷害、性犯罪など、被害者は、原則として、みずから加害者に対し損害の賠償を請求していく必要があります。
 示談ができるなどしてある程度賠償を受けることができれば、まだいい方だと思います。ただ、示談ができる場合といっても、早く終わらせたいからとか、お金がないからということで、本来受け取るべき金額より安い金額で終わらすこともあるということは頭に置いておいていただければと思います。
 示談ができなかった場合、損害賠償を請求する手段として、民事訴訟の提起など、加害者に請求していくことになります。ただ、その時点では、そもそも相手に資力がない、財産がわからない、それなのに費用と手間、時間をかけてやっていく必要があるのかとして、民事訴訟などの法的手段をとることをそもそも諦める場合も決して少なくはありません。
 それでも、みずから費用と手間をかけて民事訴訟を提起したらどうなるか。和解を成立させて支払いの約定を交わすこともあるでしょうし、それができなければ、判決を得るということになります。
 しかし、加害者に損害の賠償を命じる判決を受けたとしても、加害者が支払わなければ、それはただの紙切れになってしまいます。和解においても、和解ですから払われるのかと思うかもしれませんけれども、一括で支払われる場合はともかく、長期の分割の場合には、途中で滞ってしまったら、やはり同じ問題が生じます。
 この場面で、加害者の財産への執行という場面が生じます。
 ただ、その時点までに、加害者と何らかの交渉、やりとりがなされていたとしても、加害者の財産状況を被害者側が把握していることはまずありません。債務名義を得た上で、銀行に当たりをつけて、弁護士法の照会であったりとか、あるいは債権執行してみたりといったこともあり得るとは思いますけれども、なかなかうまくいくものではありません。私自身も、差押えをしてみて、結局該当がなかったという経験は何度もあります。
 また、給与債権を差し押さえようとしても、勤務先を把握することも容易ではありません。実際、私が担当した、お子さんを亡くされた事件の民事訴訟においても、結局、裁判で、お金がないとか言われて、財産の有無もわからないまま判決を得て、一円も回収できないまま終わったというような事案もありました。
 だからこそ、犯罪被害者にとって、加害者、これからは債務者という言い方もさせていただきますけれども、その財産を調査する手続というのはとても重要なものということになります。
 現行の財産開示手続は、基本的には、債務者の方からの陳述がなされなければ財産を把握できない、そういう制度であります。債務者が出頭しなかったり、あるいは出頭しても正直に話さなかったりすれば、結局、責任財産を把握することはできません。これでは実際の効果は期待できません。ですから、現行の財産開示制度は余り利用されていなかったというふうに私は理解していますし、実際、私自身もほとんど利用したことはありません。
 そこで、今回の改正案では、財産開示制度について、不出頭、虚偽の陳述に対して、三十万以下の過料であったものが、六カ月以下の懲役又は五十万以下の罰金と、その制裁が強化されるというふうに伺っています。
 確かに、罰則が強化される、特に、過料から刑事罰に変わるというのは大きな意味があると思います。そのことによって開示が進むということの効果はあるんだろうなというふうには思います。
 ただ、結局、財産開示制度自体、債務者の自主申告によるものですから、個人的には、債務者の責任財産の把握にそこまで効果的かと言われると、そこまでの感覚は私自身は持っていません。
 やはり、今回の改正でのポイントは、債務者の申告によるものではない、第三者からの情報取得手続というふうに考えています。この手続によって、不動産や給与債権、預貯金債権などの財産の情報を第三者から取得できるという点で、より実効性のある手続の創設だというふうに考えます。
 給与債権については、執行の対象となることは債務者の生活に直結するものです。慎重に考えなければいけないとは思いますが、改正案では、その情報を取得できるのは、養育費とか、先ほどの犯罪被害者といった債権者に限られているので、濫用を防止するという意味でも、限った点はいいのかなというふうに思っています。
 これまで、正直、訴訟で勝っても、相手の財産がわからない、財産開示手続は使えない、それなのにそもそも訴訟まで提起する必要があるのか、悩んできたこともあります。
 実際、社会内にいて働いているのは確かなんですけれども、その勤務先がわからない、もう事件から離れたいというお話を受けて、結局訴訟を諦めたということも経験しています。被害者にとっても、訴訟をするということは、加害者にかかわり続けるということになり、費用の問題をおくとしても、簡単に選択できる手続ではないからです。比較的執行しやすい、給与債権や預貯金債権などの情報を明らかにできる手段があるのであれば、執行まで考えた訴訟の提起を考えるに当たって、プラスに働く要素だと思っています。
 ただ、この手続は、残念ながら、使いにくい面も残っているかなというふうに思っています。
 まず、不動産や給与債権に関する情報取得について、財産開示手続を前置しなければならないとなっているのは、手続的な負担が重いかなというふうに感じています。
 例えば、財産開示手続の要件として、強制執行の不奏功、つまり、強制執行がうまくいかなかったことというのが依然として要件となっています。こういった要件を経て、財産開示手続を経てということを考えていただけると、手続的負担が重いというのもおわかりいただけるのではないかなというふうに思います。
 また、財産開示手続は、一回行うと三年間は使えない、できないという制度になっています。特に、給与債権については、債務者の勤務先がかわった場合であっても、三年間は、前置ということが前提であれば、改めて情報取得ができないことになってしまいます。
 給与債権は、継続的に回収が可能、払われるたびにお金を差押えすることができるという点でも、被害回復に役立つものですし、改正案でも、給与債権について情報取得手続を申し立てるのは、先ほど申し上げたとおり、限られた債権者になっていますので、より使いやすい手続を検討していただければなというふうには思っています。
 また、預貯金債権などについては、確かに、金融機関から情報を取得できる点ではとてもいいのですけれども、その金融機関を特定するのはやはり申立人ということになっているようです。その申立人が特定をするということは、やはり使いにくくなるのではないかなという危惧を抱いています。
 そもそも、金融機関が絞れていないので情報が欲しいわけであって、無数にある金融機関のそれぞれについて、では、情報を開示してほしいというような、取得したいという申立てをすると、それだけで極めて大きな負担になってしまう可能性があるのかなというふうに思っています。
 また、預貯金等の債権についての内容の面でも、これまでの債権執行の場合と変わらず、取得できる情報は預貯金の有無と残高といったところになるようです。結局、開示されたその時点の静的な、静的という言い方が正しいかわかりませんが、情報になります。極端なことを言えば、前日に預金を引き出していれば、残高はゼロ、お金がない、資力がないということになります。
 より知りたいのは、預貯金の動き、動的な情報ですので、例えば、年数を限って、債権者などの要件も限るなどして、取引履歴などについての情報を取得することができないかということも検討していただきたいなというふうには思います。
 第三者からの情報取得手続について少しまとめますと、債務者の陳述に頼ったこれまでの財産開示手続に比べ、取得できる情報の質という点ですぐれていますし、実際に使ってみたい制度だと思います。その意味で、今回の改正案は、被害者保護の点から、一歩前進した改正案だと思います。
 ただ、現時点で想定してみると、これまで述べさせていただいたとおり、使いやすい手続とは言えない部分もあります。債務名義を得るだけでも相当負担であるのに、報われるとは限らない執行やその前段階の調査について申立人側が手続的負担を負うという実情に変わりはありません。被害者は、貸付けのリスクや回収のコストといった観点は全く関係なく、ただ、こうむった損害を少しだけでも填補したいというだけなのに、むしろ負担がふえていってしまうという現実には残念ながら変わりはありません。
 本当に使いやすい、使える制度なのか、改正法の施行後も調査を継続し、一定期間経過後にはぜひ検証していただきたいと思います。
 最後に、ちょっと長いですが、債務者の財産調査や執行は、被害者にとってやはり負担なのです。
 そこで、被害者等の限られた債権者に対しては、国側が債務者の資産を調査し、情報提供する制度も考えられてはいいのではないでしょうか。申立人が抽象的に調査を申し立て、国側が各所へ情報提供を求めて、申立人にその情報をフィードバックするといったことも考えてもいいのではないかなというふうに思います。
 更に言えば、犯罪被害者は、多くの場合、加害者側に資力がないという問題に直面しています。その状況下で、最初にも述べさせていただいたとおり、早期解決のため、あるいはお金がないからということで、判決であれば認められるであろう金額に満たない金額で示談することもあります。
 示談せず、賠償金の一部を受け取るだけだったり受領を拒絶して、その上で民事訴訟などの法的手段をとり、債務名義を得たとしても、金銭的、心理的負担にもかかわらず、支払いを受けることができる可能性は極めて低いのが現実です。ですから、訴訟提起の前に諦めてしまうこともありますし、現実的な支払いを受けられないということをわかって、刑事だけでなく民事上の責任も理解してほしいという一点だけで訴訟を提起する場合もあります。時効消滅を避けるためだけに一旦債務名義をとっても、改めて訴訟を提起せざるを得ない場合もあります。
 これでは被害者は負担ばかりふえていってしまいます。
 そこで、債務名義を得た場合には、国がその一部でも肩がわりし、その分は国が加害者、債務者に請求、求償していく、執行していく。将来的な課題として検討していってほしいと思います。財源の問題、債務者とのバランスなど、検討すべき問題はありますが、ぜひ議論していっていただきたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119805206X00820190403_006

発言者: 合間利

speaker_id: 16308

日付: 2019-04-03

院: 衆議院

会議名: 法務委員会