安倍晋三の発言 (本会議)
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○内閣総理大臣(安倍晋三君) 平成最後の施政方針演説を、ここに申し述べます。
本年四月三十日、天皇陛下が御退位され、皇太子殿下が翌五月一日に御即位されます。国民こぞって寿ぐことができるよう、万全の準備を進めてまいります。
「内平らかに外成る、地平らかに天成る」
大きな自然災害が相次いだ平成の時代。被災地の現場には必ず、天皇、皇后両陛下のお姿がありました。
阪神・淡路大震災で全焼した神戸市長田の商店街では、皇后陛下が焼け跡に献花された水仙が、復興のシンボルとして、今なお、地域の人々の記憶に刻まれています。
商店街の皆さんは、復興への強い決意と共に、震災後すぐに仮設店舗で営業を再開。全国から集まった延べ二百万人を超えるボランティアも復興の大きな力となりました。かつて水仙が置かれた場所は今、公園に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれています。
東日本大震災の直後、仙台市の避難所を訪れた皇后陛下に、一人の女性が花束を手渡しました。津波によって大きな被害を受けた自宅の庭でたくましく咲いていた水仙を手に、その女性はこう語ったそうです。
「この水仙のように、私たちも頑張ります。」
東北の被災地でも、地元の皆さんの情熱によって、復興は一歩一歩着実に進んでいます。平成は、日本人の底力と、人々の絆がどれほどまでにパワーを持つか、そのことを示した時代でもありました。
「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」
明治、大正、昭和、平成。日本人は幾度となく大きな困難に直面した。しかし、そのたびに、大きな底力を発揮し、人々が助け合い、力を合わせることで乗り越えてきました。
急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢。今を生きる私たちもまた、立ち向かわなければならない。私たちの子や孫の世代に輝かしい日本を引き渡すため、共に力を合わせなければなりません。
平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
この六年間、三本の矢を放ち、経済は一〇%以上成長しました。国、地方合わせた税収は二十八兆円増加し、来年度予算における国の税収は過去最高、六十二兆円を超えています。
そして、この成長の果実を、新三本の矢によって、子育て支援をはじめ現役世代へと大胆に振り向けてきました。
児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は二四%から四二%に上昇し、悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、大幅に改善しました。平成五年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、八万世帯減少いたしました。
五年間で五十三万人分の保育の受け皿を整備した結果、昨年、待機児童は六千人減少し、十年ぶりに二万人を下回りました。子育て世代の女性就業率は七ポイント上昇し、新たに二百万人の女性が就業しました。
成長の果実をしっかりと分配に回すことで、次なる成長につながっていく。成長と分配の好循環によって、アベノミクスは今なお、進化を続けています。
我が国の持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。平成の三十年間で、出生率は一・五七から一・二六まで落ち込み、逆に、高齢化率は一〇%から三〇%へと上昇しました。
世界で最も速いスピードで少子高齢化が進む我が国にあって、もはや、これまでの政策の延長線上では対応できない。次元の異なる政策が必要です。
子どもを産みたい、育てたい。そう願う皆さんの希望を叶えることができれば、出生率は一・八まで押し上がります。しかし、子どもたちの教育にかかる負担が、その大きな制約となってきました。
これを社会全体で分かち合うことで、子どもたちを産み、育てやすい日本へと大きく転換していく。そのことによって、希望出生率一・八の実現を目指します。
十月から、三歳から五歳まで全ての子どもたちの幼児教育を無償化いたします。小学校、中学校九年間の普通教育無償化以来、実に七十年ぶりの大改革であります。
待機児童ゼロの目標は、必ず実現いたします。今年度も、十七万人分の保育の受け皿を整備します。保育士の皆さんの更なる処遇改善を行います。自治体の裁量を拡大するなどにより、学童保育の充実を進めます。
来年四月から、公立高校だけでなく、私立高校も実質無償化を実現します。真に必要な子どもたちの高等教育も無償化し、生活費をカバーするために十分な給付型奨学金を支給します。
家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちの誰もが、自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる。そうした社会を創り上げてこそ、アベノミクスは完成いたします。
子どもたちこそ、この国の未来そのものであります。
多くの幼い命が、今も、虐待によって奪われている現実があります。僅か五歳の女の子が死の間際に綴ったノートには、日本全体が大きなショックを受けました。
子どもたちの命を守るのは、私たち大人全員の責任です。
あのような悲劇を二度と繰り返してはなりません。何よりも子どもたちの命を守ることを最優先に、児童相談所の体制を抜本的に拡充し、自治体の取組を警察が全面的にバックアップすることで、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。
女性比率僅か三%の建設業界に、女性たちと共に飛び込んだ中小企業があります。時短勤務の導入、託児所の設置などに積極的に取り組み、職人の三割は女性です。
彼女たちが企画した健康に優しい塗料は、家庭用の人気商品となりました。女性でも使いやすい軽量の工具は、高齢の職人たちにも好んで使われるようになりました。この企業の売上げは、三年で二倍、急成長を遂げています。
女性の視点が加わることにより、女性たちが活躍することにより、日本の景色は一変する。人口が減少する日本にあって、次なる成長の大きなエンジンです。
女性活躍推進法を改正し、このうねりを全国津々浦々の中小企業にも広げます。十分な準備期間を設け、経営者の皆さんの負担の軽減を図りながら、女性の働きやすい環境づくりに取り組む中小企業を支援してまいります。
パワハラ、セクハラの根絶に向け、社会が一丸となって取り組んでいかなければなりません。全ての事業者にパワハラ防止を義務付けます。セクハラの相談を理由とした不利益取扱いを禁止するほか、公益通報者保護に向けた取組を強化し、誰もが働きやすい職場づくりを進めてまいります。
働き方改革。いよいよ待ったなしであります。
この四月から、大企業では、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働規制が施行となります。企業経営者の皆さん、改革の時は来ました。準備はよろしいでしょうか。
長年続いてきた長時間労働の慣行を断ち切ることで、育児や介護など様々な事情を抱える皆さんが、その事情に応じて働くことができる。誰もがその能力を思う存分発揮できる社会に向かって、これからも、働き方改革を全力で推し進めてまいります。
障害者の皆さんにも、やりがいを感じながら、社会でその能力を発揮していただきたい。障害者雇用促進法を改正し、就労の拡大を更に進めます。
人生百年時代の到来は、大きなチャンスです。
元気で意欲ある高齢者の方々に、その経験や知恵を社会で発揮していただくことができれば、日本はまだまだ成長できる。生涯現役の社会に向かって、六十五歳まで継続雇用することとしている現行制度を見直し、七十歳まで就労機会を確保できるよう、この夏までに計画を策定し、実行に移します。
この五年間、生産年齢人口が四百五十万人減少する中にあっても、多くの女性や高齢者の皆さんが活躍することで、就業者は、逆に二百五十万人増加いたしました。女性も男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある方も、全ての人に活躍の機会を作ることができれば、少子高齢化も必ず克服できる。
平成の、その先の時代に向かって、一億総活躍社会を、皆さん、共に、創り上げていこうではありませんか。
少子高齢化、そして人生百年の時代にあって、我が国が誇る社会保障の在り方もまた大きく変わらなければならない。お年寄りだけではなく、子どもたち、子育て世代、更には、現役世代まで、広く安心を支えていく。全世代型社会保障への転換を成し遂げなければなりません。
高齢化が急速に進む中で、家族の介護に、現役世代は大きな不安を抱いています。介護のために仕事を辞めなければならない、やりがいを諦めなければならないような社会はあってはなりません。
現役世代の安心を確保するため、介護離職ゼロを目指し、引き続き全力を尽くします。
二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受け皿を整備します。ロボットを活用するなど現場の負担軽減を進めるとともに、十月からリーダー級職員の方々に月額最大八万円の処遇改善を行います。
認知症対策の強化に向けて、夏までに新オレンジプランを改定します。認知症カフェを全市町村で展開するなど、認知症の御家族を持つ皆さんを地域ぐるみで支え、その負担を軽減します。
勤労統計について、長年にわたり不適切な調査が行われてきたことは、セーフティーネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆様にお詫び申し上げます。雇用保険、労災保険などの過少給付について、できる限り速やかに、簡便な手続で、不足分をお支払いいたします。基幹統計について緊急に点検を行いましたが、引き続き、再発防止に全力を尽くすとともに、統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行ってまいります。
全世代型社会保障への転換とは、高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減するとの意味では、全くありません。むしろ、高齢者の皆さんに引き続き安心してもらえることが大前提であります。
六十五歳以上の皆さんにも御負担いただいている介護保険料について、年金収入が少ない方々を対象に、十月から負担額を三分の二に軽減します。年金生活者の方々に、新たに福祉給付金を年間最大六万円支給し、所得をしっかりと確保してまいります。
こうした社会保障改革と同時に、その負担を次の世代へと先送りすることのないよう、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進めます。
少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度を築き上げるために、消費税率の引上げによる安定的な財源がどうしても必要です。十月からの一〇%への引上げについて、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
八%への引上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期してまいります。
増税分の五分の四を借金返しに充てていた、消費税の使い道を見直し、二兆円規模を教育無償化などに振り向け、子育て世代に還元いたします。軽減税率を導入するほか、プレミアム商品券の発行を通じて、所得の低い皆さんなどの負担を軽減します。
同時に、来たるべき外国人観光客四千万人時代を見据え、全国各地の中小・小規模事業者の皆さんにキャッシュレス決済を普及させるため、思い切ったポイント還元を実施します。自動車や住宅への大幅減税を行い、しっかりと消費を下支えします。
来年度予算では、頂いた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じ、景気の回復軌道を確かなものとすることで、戦後最大のGDP六百兆円に向けて着実に歩みを進めてまいります。
平成の日本経済はバブル崩壊から始まりました。
出口の見えないデフレに苦しむ中で、企業は人材への投資に消極的になり、若者の就職難が社会問題となりました。設備投資もピーク時から三割落ち込み、未来に向けた投資は先細っていきました。
失われた二十年。その最大の敵は、日本中に蔓延したデフレマインドでありました。
この状況に、私たちは三本の矢で立ち向かいました。
早期にデフレではないという状況を作り、企業の設備投資は十四兆円増加しました。二十年間で最高となっています。人手不足が深刻となって、人材への投資も息を吹き返し、五年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました。経団連の調査では、この冬のボーナスは過去最高です。(発言する者あり)