富田茂之の発言 (本会議)
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○富田茂之君 公明党の富田茂之です。
公明党を代表して、ただいま議題となりました法律案につき、総理並びに関係大臣に質問します。(拍手)
二〇〇〇年五月十二日、当本会議場で、衆議院青少年問題特別委員長であった私は、提案者として児童虐待防止法案の趣旨説明を行い、五月十七日、全会派一致で成立しました。
しかし、法案作成の作業は難航しました。しつけと虐待をどこで線引きしたらいいのか、児童の人権を明記するか等につき、各党の考えに隔たりが大きかったからです。そこで、私から、各党がそろって立法化できるところから始めようと提案し、各党の理事が急速に歩み寄り、法文づくりに着手しました。
二〇〇〇年四月十二日、特別委員会のメンバーは、新宿区戸山の東京都児童相談センター等を視察しました。職員の皆様は口々に訴えられました。ここに来る子供の半分が虐待を受けている。虐待を受けているとわかっても、強制的な措置ができないので、子供を連れてくることができない。児童福祉法の改正では対応できません。虐待を定義した児童虐待防止法をつくっていただきたいと。
この視察が決定打になりました。この国会で何とかしなければという雰囲気に各党の委員がなりました。
法文の作成に当たっては、各関係省庁が消極的で、全く熱意が感じられませんでした。むしろ抵抗勢力と言えました。
この抵抗を押し切って、与野党が結束して法制定に取り組みました。特別委員会は、この瞬間に虐待されているであろう子供の将来に思いをはせながら議論しました。言論の府にふさわしい国会のありようだったと思います。
与野党の本法案責任者の皆様、立法時の経緯を、今後の与野党協議の際、ぜひとも参考にしてください。
政府は、児童相談所への虐待相談対応件数の一貫した増加や昨年三月の目黒区での虐待による女児の死亡事件を受け、昨年七月二十日には緊急総合対策、十二月十八日には新プランを策定し、児童虐待防止対策を進めてきました。
しかし、本年一月に、千葉県野田市において、関係機関がかかわりながら、児童虐待による死亡事件が発生するなど、深刻な状態が続いています。
政府は、緊急総合対策のさらなる徹底、強化についての関係閣僚会議決定をし、児童虐待防止対策を強化するため、本改正案を国会に提出しました。
これまでの対策に不十分な点はなかったのか、今回の改正法、関係閣僚会議決定をどのように実効あらしめるのか、総理の決意を伺います。
公明党の提案を受け実施した、緊急点検並びにフォローアップについて確認します。
厚生労働省では、各児童相談所が在宅指導している子供を、四月十五日まで、面接などで直接確認を進め、虐待のリスクが高いとして、一時保護百六十一人、児童養護施設への入所など三十九人、計二百人を保護者と分離しました。
また、文部科学省では、二月一日以降二月十四日まで一度も登校していない児童生徒に対し、学校の教職員らが面会し、虐待のおそれがあるとした二千六百五十六人と、面会できず、虐待のおそれがないとは言い切れないとした一万三百八十二人の計一万三千三十八人について、児相や警察などと情報共有をしました。
現場で担当された皆様の御努力に心より感謝申し上げます。
ただし、今もどこかでSOSを発信している子がいるかもしれません。所在不明の子十五名や面会できていない子供を含め、継続的な安全確認を徹底していただきたい。
どのように対応されるのか、厚生労働、文部科学両大臣の答弁を求めます。
緊急点検の中、担任の教員が自宅を訪ね、事前の打診なく子供と会おうとした事態が発生しています。何もしていないのに虐待を疑われているようで悲しい、子供にも親にもつらい調査だったとの声があります。
二月二十八日付新たなルールでは、緊急点検の対象から、不登校等による欠席であって学校、保育所等が状況の把握を行っている場合を除くとされています。
文部科学大臣、不登校の児童生徒への配慮が足りなかったのではないですか。教育機会確保法で、子供たちに学校を休んでもよいと認めた趣旨が生かされなかったのではないですか。
児童虐待防止法が成立した平成十二年度における相談対応件数は一万七千七百二十五件であり、全国の児童相談所に配置されている児童福祉司の数は千三百十三人でした。
これに対して、平成二十九年度の相談対応件数は十三万三千七百七十八件と、約七・五倍に増加しましたが、児童福祉司数は三千二百三十五人と、約二・五倍の伸びにとどまっています。
この点から見ても、児童相談所の業務が繁忙をきわめ、職員が不足していることは明らかであります。
関係閣僚会議決定において、新プランに基づく児童福祉司の二千人増等に向けた支援の拡充や、都道府県等に対し、児童相談所OBの活用や専門職採用、一定の経験年数を経た職員が確保できるような人事ローテーションへの配慮等が行われるよう要請すると決定したことは、きめ細やかな支援の拡充策として評価するものです。
他方、児童福祉司が虐待対応や児童、保護者への援助を行う力を身につけるためには、最低五年から十年の経験が必要との指摘もあります。
厚生労働大臣、児童相談所の体制強化にどう取り組みますか。
関係閣僚会議決定では、都道府県等の児童福祉担当部局と都道府県警察が連携し、児童相談所への警察OBの常勤的な配置や警察職員の出向等を進める、このために必要な財政支援等の拡充を図る、警察における知識経験を生かした威圧的、暴力的な保護者への対応や、児童相談所の援助要請に応じた立入調査等への同行など、関係機関と連携して迅速的確に対応すると、これまで以上に具体的に踏み込んだ連携のあり方が示され、警察の役割は拡大しており、実効性を期待できる連携強化策であると評価します。
しかし、既に平成二十八年四月には、警察庁、厚生労働省がそれぞれ、関係機関における情報共有の徹底に係る通達を発出しています。これらが十全に機能していれば、野田の事件は未然に防げたのではないですか。なぜ、児童相談所と警察の連携がとれていなかったのですか。これを克服するにはどうすべきなのか、厚生労働大臣、国家公安委員長の答弁を求めます。
改正児童福祉法第十二条第四項は、児童相談所が措置決定その他の関連業務について、常時弁護士による助言、指導のもと、適切かつ円滑に行うため、弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとすると規定します。加えて、関係閣僚会議決定で、一時保護や施設入所等の措置の実施及び解除の判断等の意思決定に日常的に弁護士が関与するとされています。
福岡市こども総合センター所長の藤林武史医師は次のように指摘しています。
福岡市では、二〇〇九年、子供の虐待死事件が相次ぎ、この年だけで五件、計六人が亡くなりました。さまざまな検証を行いました。虐待死を防ぐためには、十分な経験を積んだ専門性の高い職員が欠かせないと感じました。そこで、児童福祉司の数をふやし、専門性の高い人を多く採用しました。全国で初めて常勤の弁護士を配置しました。現場の職員が判断に迷うとき、後ろ盾になるのが弁護士です。弁護士を置いて以来、親の同意を得ない職権の保護の件数は増加しました。親から何と言われようとも、法的に守られている安心感は大きく、職員に余裕が生まれました。子供を虐待から守るのは、子供を守ろうという情熱だけではなく、法律、そしてこれに基づく権限の適切な行使です。権限を使えば、ほぼ一〇〇%、職員が子供に会うことはできます。その権限をどう使うか、児童相談所の専門性が問われていますと。大変参考になる事例であると思われます。
野田市では、スクールローヤーの導入を決め、市内小中学校三十一校を四地区に分け、それぞれの担当弁護士計四名の配置を決めました。
このように、弁護士等の関与のあり方は地域によりさまざまな対応があると思われますが、財政的支援も不可欠です。厚生労働大臣、どう対応されますか。
親権者は、児童のしつけに際して体罰を加えてはならないこととすると児童虐待防止法第十四条は規定しました。加えて、民法上の懲戒権のあり方について、施行後二年を目途に検討を加え、必要な措置を講ずるものとされました。公明党の主張が反映されたものと評価します。
立法時にも、懲戒権の廃止や親の承諾なしに子供を保護するための親権の一時停止について、徹底的に議論しました。しかし、法務省や厚生省は全く非協力的で、異論も少なくありませんでした。特別委員会の参考人質疑で、しつけは教育であり、虐待ではないと力説した大学教授もいらっしゃいました。
しかし、同じ参考人の全国児童相談所長会の大久保隆会長は、保護者の大方は、児童に対して殴る蹴るなどの行為を行っても、これはしつけであり、それが少し行き過ぎただけだと主張していると、子供を虐待する親が親権を理由に子供の保護を阻んでいる実態を説明し、児童虐待の容認につながりかねない懲戒権は廃止すべきだと訴えられました。まさに正論です。
あれから十九年。今後、法制審議会での議論を経て、二年を目途に必要な措置を講ずることになりますが、異論をどのように乗り越えられるのか、総理のリーダーシップを発揮していただきたい。
関係閣僚会議決定では、保護者支援プログラムについて、諸外国の先行事例の把握を進めるとともに、活用方法等を周知する、さらに、保護者支援プログラムの実施を伴う専門人材の養成に取り組むとされました。
理化学研究所の調査によると、虐待で有罪判決を受け服役した親の七割が、自身の子供時代、虐待を受けていました。立法時に開催されたシンポジウムでも、子供に手を出してしまった親たちから数多く同様の報告がなされていました。
被害者から加害者へと変貌する虐待の世代間連鎖を断ち切る手だてを早急に講じる必要があります。
フィンランドでは、ネウボラと呼ばれる公的な子育て支援施設があり、出産前から就学まで七年間、可能な限り同じ保健師が家族に寄り添いサポートし、虐待防止に効果を上げているとの報告もあります。
また、アルコール依存症の家族援助に四十年以上かかわってこられた公認心理師の信田さよ子氏は、性暴力の分野で既に実施されているワンストップ支援センターを、家庭子供支援ワンストップセンターとして各地域に設置し、経験を積んだベテランの保健師やソーシャルワーカー、公認心理師などがチームを組み、ローテーションで一つの家庭を息長く継続して担当する体制を整備することが有効と指摘しています。
大いに参考にすべきと思われますが、厚生労働大臣はどのように取り組まれますか。
以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕