川田順一の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(川田順一君) 私、経団連で競争法部会長を務めておりますJXTGホールディングス副社長の川田でございます。本日はこのような意見陳述の機会を設けていただき、誠にありがとうございます。
私から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、本法案に賛成の立場から経団連の考え方を御説明申し上げたいと存じます。
初めに、本法案に対する意見を申し上げます前に、経団連といたしまして、法令遵守に対する基本的なスタンスを御説明申し上げたいと存じます。
経団連では、一九九一年に企業行動憲章を定めまして、その前段におきまして、企業は、公正かつ自由な競争の下、社会に有用な付加価値及び雇用の創出と自律的な責任ある行動を通じて持続可能な社会の実現を牽引する役割を担うとしており、その実現のための原則といたしまして、公正かつ自由な競争並びに適正な取引、責任ある調達を行う、また、経営トップは、実効あるガバナンスを構築して社内、グループ企業に本憲章の精神の実現を周知徹底を図る、そして、万一、本憲章の精神に反し社会からの信頼を失うような事態が発生したときには、経営トップが率先して問題解決、原因究明、再発防止等に努め、その責任を果たすと宣言しております。
以上の経団連のスタンスを御理解いただきました上で、本法案に関する私どもの考え方を御説明申し上げます。
まず、本法案におきましては、事業者と公正取引委員会による協力型の事件処理の実現が図られております。独占禁止法違反被疑事件に関しましては、早期に実態解明を行い、速やかに事案の解決を図ることが公正取引委員会、事業者双方にとって有益であると存じます。
そのためには、従前のような、調査をする公正取引委員会と調査を受ける事業者とが相対立して、また時間を掛けて解明を行うのではなく、事業者自らが責任を持って調査あるいは証拠収集等を行い、公正取引委員会と協力して早期に解決を図る、このようなスキームを創設することが必要であると考えております。
この観点から、経団連といたしましては、公正取引委員会との議論の中で、事業者にとって調査に協力するインセンティブがより付与されるような制度設計を要望していたところでございますが、本法案はこのような我々の考えに即したものとなっており、その内容に賛同いたしたいと存じます。
また、協力型の事件処理を有効に機能させるものとしまして、弁護士・依頼者間秘匿特権制度が導入される予定でございます。同制度に関しましても、従来から私どもが要望していたものでございまして、その創設を歓迎いたしたいと存じます。
以上、本法案賛成を申し上げました上で、本日は、課徴金制度の見直し及び弁護士・依頼者間秘匿特権につきまして、要望も含めまして若干の補足の意見を申し上げたいと存じます。
まず、課徴金制度についてでございますが、先ほど申し上げましたとおり、協力型の課徴金減免制度の導入は私どもからも具体的に提言したところでございまして、積極的に評価させていただいております。単に申請順位だけでなく、申請後の調査への協力度合いに応じた課徴金の減免が受けられることによりまして、減免申請後の調査に対する事業者の協力が促進されると考えております。
他方、この協力型の課徴金減免制度に関しましては、協力度合いをどう評価するのかという課題が残されております。これに関しまして、経団連といたしましては、かねてより、予見可能性、透明性、公平性の確保が重要と申し上げてまいりました。
どのようなものを証拠として提出し、どのように調査協力を行えば、どの程度の減免が受けられるのか、これらが明らかになることによりまして、事業者として行うべき調査の手法や対象が明確となり、事業者が積極的かつ早期に効率的に調査、実態解明に乗り出しやすくなると考えております。
本法案が成立した後、事業者の協力度合いの具体的な評価方法等につきましてガイドラインが制定されると承知しておりますが、事業者がより積極的に調査に協力できるように、課徴金制度の制度設計、特に証拠の評価やそれに基づく減算率の決定に関しましては、衆議院の附帯決議にもありますとおり、是非とも分かりやすく、事業者の予測可能性の確保に資する内容としていただきますようお願い申し上げます。
次に、秘匿特権につきまして申し上げます。
協力型の課徴金減免制度が導入されますと、事業者が調査協力を効果的に行うために、事業者から弁護士に相談するニーズは今以上に高まるものと考えております。その際、弁護士との間の相談の内容の秘密が保障されていなければ、事業者が弁護士に相談することをためらい、結果として調査への協力が進まない可能性がございます。秘匿特権制度は、事業者が法律専門家の助言を得ながら主体的に公正取引委員会と協力して実態解明を行い、早期の事件解決を行うための制度でございまして、協力型の事件処理に不可欠な仕組みと申せます。
また、国際的なカルテル事案等におきまして、他国で秘匿特権の対象となっている事項が日本ではその対象ではないとされますと、国際的な日本の競争法制の信頼を損ねる結果となる懸念がございます。
これらのことから、経団連は、秘匿特権の導入を重要な課題と位置付け、実態の伴った秘匿特権制度、諸外国から見て日本に秘匿特権があると評価され得る制度の創設を強く要請してまいりました。この度の案につきましては、事業者の目線から見させていただいて、大きな違和感のない制度であると評価しております。
制度の詳細につきましては、今後、規則、指針等で決定されると承知しておりますが、ここでは、企業実務の観点から、特に次の三点につきまして意見をお伝えしたいと思います。
まず一点目は、判別手続に対しての訴訟救済でございます。
秘匿特権該当性に関しまして、諸外国では最終的に司法裁判所の判断を仰げる制度となっており、司法審査が受けられるかどうかは諸外国から見た制度の信頼性に大きく影響いたします。
これに関しましては、公正取引委員会より、判別官の判断に対しては司法救済はない、しかしながら、秘匿特権該当性がないと判断され審査官に移送された物件に対しまして、公正取引委員会が、秘匿特権に該当すると主張する事業者の還付請求を拒否する旨の決定を行った際には、事業者は、その決定につき、行政事件訴訟法の規定による取消し訴訟を提起できるとの見解をお示しいただきました。是非この見解を海外当局や実務家に分かりやすい形で明確化していただきたいと存じます。
二点目は、秘匿特権の対象物件の範囲でございます。
今回、相談・回答文書に含まれる事実が唯一の証拠となる場合であっても、弁護士の評価、整理が介在するものは制度の対象となる旨の整理をいただきました。これは諸外国の制度と比較して遜色のない水準であると理解しておりますが、このような整理は必ずしも現在の公正取引委員会の資料からは読み取ることができませんので、こちらにつきましても、今後何らかの形で対外的に明確化いただきたいと存じます。
三点目は、電子メールの取扱いについてでございます。
現在、弁護士とのやり取りの大半は電子メールでございますが、公正取引委員会の資料には電子メールの取扱いに関する記載がございません。実務の観点からは、紙の文書や報告書、メモと同様に、電子メールも弁護士と事業者との間の通信内容、記録でございますので、今後、この取扱いについても具体的な検討をお願いしたいと存じます。
その際には、膨大な量などの電子メールの特殊性を踏まえまして、プリビレッジログ、すなわち秘匿特権の対象物であることを示す文書の提出時期や記載内容につきまして、実務上対応可能となるよう調整いただければ幸いでございます。
以上、今後整備される予定の課徴金減免制度と秘匿特権の細部事項につきまして意見を申し上げましたが、冒頭申し上げましたとおり、繰り返しになりますが、経済界としては本法案の内容に賛成でございます。我が国の産業競争力の強化とより豊かな国民生活の実現のためには、公正かつ自由な競争環境を整備し、事業者間での競争を促すことが不可欠でございます。
他方、グローバル化、デジタル化が加速する中で、競争政策の在り方をめぐっても様々な変化や新しい課題が生じております。国際基準に劣らない競争制度を整え、グローバル化、デジタル化に対応しつつ、公正、自由な競争を一層促進する観点からも、法案の早期の成立をお願いいたしたいと存じます。
私からは以上でございます。