中川正俊の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(中川正俊君) おはようございます。田園調布学園大学の中川と申します。
 本日は、このような貴重な機会を与えていただきましたことに、心より感謝申し上げます。
 私は、現在、労政審障害者雇用分科会の公益代表委員を務めており、また、精神科医としてこれまでに精神障害者の就労支援の実践及び研究に微力ながら関わってまいりました。本日は、この二つの立場より意見を申し上げたいと思います。
 初めに、障害者の雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律に関し、障害者雇用分科会の経緯も踏まえて意見を申し上げます。
 この間の分科会の大まかな流れといたしましては、平成三十年七月に研究会報告書が公表されました後、国の行政機関等における障害者雇用に関する不適切計上、いわゆる水増し問題の事案が発生し、分科会では、研究会報告書の中身に加えてこの事案に関する検討を行い、平成三十一年二月に今後の障害者雇用施策の充実強化についてという分科会意見書を取りまとめたという経緯でございます。
 分科会における議論は、大きく分けて二つございます。一つ目は、障害者の活躍の場の拡大に関する措置に関する議論、二つ目は、国及び地方公共団体における障害者の雇用条件についての的確な把握等に関する措置に関する議論でございます。
 また、これ以外にも、障害者雇用調整金及び納付金に関する事柄といたしまして、中小企業に対する適用拡大の議論や、大企業及びA型事業所に対する雇用調整金の上限設定の議論がございました。また、障害者雇用率制度に関する事柄といたしまして、長期継続雇用の評価や対象障害者の範囲についての議論がございました。いずれも多様な観点より総合的に継続検討する必要がありますことより、今後の分科会において引き続き鋭意検討していくこととなりました。
 今回の障害者雇用促進法の改正案ですが、分科会の議論を踏まえ、国等の障害者雇用の不適切計上の再発予防に関する措置にとどまらず、障害者の活躍の場を拡大し、社会参加の促進を図るための前向きな対策が打ち出されているものと評価いたします。
 しかしながら、言うまでもなく、この法律改正はゴールではなく、ここからが新たなスタートであり、その実効性をきちんとモニタリングしていく必要があることは言うまでもございません。また、今回の改正案に盛り込まれていない課題で、重要かつ議論を十分重ねる必要があるものが数多くございます。それについては今後の分科会でしっかり継続して検討してまいりたいと存じます。
 次に、精神科医の立場より、精神障害者の雇用課題について幾つか意見を述べさせていただきます。
 精神障害は、疾病と障害が共存し障害程度が固定しない特徴より、長らく雇用施策や福祉施策の対象外でした。雇用施策においては平成三十年四月にようやく精神障害者の雇用義務化がなされたところですが、身体障害や知的障害にある雇用率制度上の重度障害、いわゆるダブルカウントは精神障害では設定されていないなど、なお他の二障害と横並びとは言えない現状がございます。お手元の資料に私の論文がありますので、御参照いただけたらと存じます。これらの施策の遅れを勘案し、特に重点的に施策を講じていく必要があると考えます。
 精神障害に関する雇用施策上特に配慮を要する点を申し上げますと、一つ目に、職場定着への様々な対策を講じる必要がある点でございます。
 JEEDの研究調査におきましても、精神障害者は他の障害者と比較してその定着率は低いという結果が出ております。しかしながら、障害を開示し、職場の合理的配慮の下、医療、保健、福祉との連携に基づいた支援を行いますと、定着率は格段と改善されることが明らかになっております。
 精神障害は先ほど申し上げましたように疾病と共存しておりますので、再発を予防し、病状の安定化を図ることで定着率は改善いたします。働きながら病状の安定化を図るには、合理的配慮に加えて、医療支援、生活支援、職場のストレス対策などを総合的に講じていく必要があります。
 職場が医療、福祉、労働サイドのサービスとも連携を図り、また事業所内の産業保健スタッフを積極的に活用するなど、連携による支援体制を強化していく必要があると考えます。これに関しては、JEEDが開発した情報共有シートなどの連携のためのツールを活用していくことも一案であると考えます。
 二つ目に、短時間労働に関することがございます。
 精神障害のある方でもフルタイムで働ける方はもちろんいらっしゃいますが、緊張しやすく疲れやすい特性や服薬の影響などもあり、体力や持続力の問題を抱え、短時間勤務を希望する方が多いのも事実でございます。実際に、精神障害者の短時間労働者の割合は三割と、他障害と比べて多くなっております。
 私などの精神障害者の就労支援に携わる者は、以前より、週二十時間の短時間勤務も難しい方、例えば週三日で半日程度の勤務が適切な方に対する施策の必要性を主張してまいりました。今回の改正案は、週二十時間未満の障害者を雇用する事業主に対する手当てが盛り込まれておりまして、精神障害者の雇用環境としては大きな前進と受け止めております。
 ただ、現行の障害者雇用率制度においては、職業的自立を促す観点から、労働時間が週二十時間未満の働き方は支援の枠組みに入っておりません。もちろん、職業的自立の概念は大切であることは言うまでもありませんが、たとえ週二十時間未満の働き方であっても、当事者は福祉的就労にはない労働者としての喜びや誇りを感じ、働くことで自尊心が満たされ、そのことがパーソナルリカバリーの進展に寄与すること大であると考えます。
 このように、自立という客観的な観点だけではなく、障害のある方御自身が働くことをどのように捉え、働くことでどのような心理的効果が得られるかといった主観的側面にも十分考慮した施策を講じていく必要があると考えます。
 以上で発言を終わります。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 中川正俊

speaker_id: 27754

日付: 2019-06-04

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会