高橋亜美の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(高橋亜美君) アフターケア相談所ゆずりはの高橋です。
 今日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 アフターケア相談所ゆずりはでは、児童養護施設や里親家庭など、社会的養護を巣立った人たちを対象とした相談支援事業を行っております。社会福祉法人子供の家が運営母体となり二〇一一年に開所し、二〇一三年度より退所児童等アフターケア事業を受託して運営しています。
 限られた時間ではありますが、現場の声、日々相談してくれている人たちの声を、今日ここで少しでも届けることができたらと思います。
 初めに、社会的養護を巣立った人たちの困難な状況について。
 施設を退所した子供たちの多くは、引き続き家庭からの援助を受けることができません。生活の一切を自らで担い、働き、収入を得て日々の生活を維持していかなければなりません。セーフティーネットとなる親や家族が機能していないということは、若い彼ら、彼女たちは、失敗することも立ち止まることもできない緊張状態の中で暮らしていかなければならないということです。そして、今や社会的養護を必要とする子供たちの多くが、ほとんどの子供たちが虐待の被害や深刻な貧困を背景に施設に入所しています。虐待のトラウマが起因する精神の不安定や精神疾患の発病等によって、退所後の社会生活を円滑に進めていくのは私たちが想像する以上に難しい状況にあります。
 一般家庭の子供たちと比べて低学歴であったり、私の資料の一番初めのところに東京都の退所者の調査と大阪府の退所者の調査の簡単なまとめが載っています。御覧ください。ここから見ても、退所者の低学歴、また生活保護率の高さや、東京でも大阪でも退所者が非常に孤独な思いを抱えて社会生活を何とか営んでいる状況が数字からも分かると思います。幾重にも重なる見えないハンディを背負う中で、生活破綻に陥ってしまうケースは少なくありません。
 続いて、アフターケアの今の現状についてです。
 社会的養護のアフターケア事業を担ってきたのが退所児童等アフターケア事業です。こちらも資料に、事業の説明の資料を載せています。
 近年、各自治体、各施設のアフターケアの向上に伴って、退所児童等アフター事業所に求められる支援はより専門性を要するものとなっています。困難な相談ケースに対応していく上で、困難な相談ケースというのは、例えばホームレス状態に陥った退所者の住居の支援や生活保護の申請の同行であったり、妊娠中絶必要な人の対応、借金問題の解決、もろもろあります。これらの相談に対応していくためには、八百万弱の現予算では安定した支援を提供するのは難しいです。職員体制も、職員が常勤一名、非常勤一名、大体二名程度という運営で事業を行っている事業所がほとんどです。高い専門性が必要とされる現場でありながら、アフターケアの予算や人員配置はいまだ脆弱です。
 ゆずりはでは、私たちの事業所でいいますと、東京都のアフターケア事業の予算は千二百万円程度で、国基準より四百万円ほど上乗せされているんですが、年間の延べの相談件数は三万件を超えています。相談者数も実数では四百名を超えています。東京という土地柄、地方から上京してきた社会的養護退所者からの相談も多いです。深刻な相談内容を対応していくに当たって、今いただいている補助金だけで運営していくことはできない状況にあります。
 また、アフターケアに求められる支援のニーズは多様で、孤独を防ぐための、気軽に集い、相談できる居場所提供とともに、緊急を要する支援の対応も同時に求められています。各事業所が持ち出しで経済的支援を担う現状があります。これは、アフターケアの事業所のみならず、各児童養護施設や里親家庭でも、アフターケアに関わる住居費であったり医療費であったり食費であったり、それらを持ち出しで処遇しているところは非常に多いと思います。
 平成二十九年より社会的養護自立支援事業が創設されました。こちらも資料にあります。
 施設退所者への居住に関する支援や生活費の支給、生活、就労相談などを行う支援内容になっていて、これを受けて幾つかの自治体で事業がどんどん開始されているのですが、実際に、実情としては、任意の予算事業にとどまっているのと、この事業内容は予防的支援、退所後に困ることがないようにという事業内容が支援の基軸になっています。ただ、現場での一番の支援のニーズは、予防以上に、今困っている、今苦しいという事情を抱えた当事者の人たちの問題解決の支援が一番求められている支援であります。
 新しい社会的養育ビジョンでも記されていますが、社会的養護自立支援事業に明確な法的根拠が与えられ、自治体の責務とする法改正、法整備が必要です。そして、事業内容が、予防の観点のみならず、困難な状況にある人たちが求める支援を提供できる内容に改正されていくことが必要です。
 また、支援の中でより難しさを感じるケースとして、里親家庭を巣立った里子が措置解除後に困難な状況に陥ったときに里親を頼れない状況にあるとか、また、里子のアフターケアを里親が抱え込まなければならないケース、そして、社会的養護を必要だった人たち、すなわち、社会的養護が必要だったにもかかわらず、社会的養護の下、保護されず、取りこぼされている人たちが大人になって抱える問題への対応というのが非常に対応が難しいです。これらのケースは、相談者の方も私たち支援者にとっても孤立に陥りやすい支援のケースです。社会的養護が家庭的な支援へと今ミニマム化されている中で、どんな状況においても巣立った人たちが安心して声を上げられる仕組みを整えていくことが必要です。
 最後に、これらを踏まえて、国への要望です。児童福祉法にアフターケアが国の責務であると明記してください。アフターケア事業の人員配置を見直し、適切な予算化をしてください。児相等にアフターケアの専任職員を配置してください。
 児童福祉法では、児童養護施設など、退所者の援助を行うという定めがありますが、その支援が現実に行き届いているとは到底言えない現状です。里親や児相に至っては、退所者支援の業務がその中には盛り込まれてもいません。全国のアフターケア事業所が法的な位置付けの不明瞭な、不明確な要綱に基づく事業で、あるいは自主事業でフォローしているのが実態です。これを児童福祉法に明記して、制度的な裏付けをしっかりとしてほしいです。
 アフターケアを必要とする人たちは、年齢的に見ればもう児童という年齢ではなくなっています。しかし、アフターケア事業が、児童福祉の枠、児童福祉の観点から切り離されてはならないです。児童期に受けた虐待や困難な生活によって大人になってからも安心した社会生活が送れていない退所者の人たちがたくさんいます。傷ついてきた子供期があって今強いられている困難があるという理解の下で提供される支援が相談者の回復や問題解決のためには必要です。また、子供期に受けた深い心の傷が及ぼす社会生活を営む上での困難も、アフターケアを通じて認識しています。
 困難な状況を生き抜いてきた人たちの存在は、今苦しんでいる子供たちの支援に生かしていくことができます。アフターケアが適切になされることは、誰もが安心して生きられる社会を形成するために欠かせません。
 以上です。

発言情報

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発言者: 高橋亜美

speaker_id: 10238

日付: 2019-06-13

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会