天野妙の発言 (内閣委員会)
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○参考人(天野妙君) 初めまして。天野妙と申します。本日はこのような場にお呼びいただきまして、誠にありがとうございます。
私が何者か御存じない方も多いかと思いますので、自己紹介をさせていただけたらと思います。
現在、私は、十歳、六歳、二歳と、三人の女の子の子育てをしながら働くワーキングマザーです。十年前に第一子が待機児童になりました。その後、八年後に第三子を出産するのですが、そのときは少しは状況良くなっているだろうなと思っていた待機児童問題が何も解決していない、むしろ悪化しているということに愕然といたしまして、そこで、二〇一七年の一月に、待機児童の解消と男性の家庭進出を市民発信で促していく市民団体、みらい子育て全国ネットワークというのを立ち上げまして、現在、その代表を務めております。
四十年解決してこなかった待機児童問題は、二〇一六年の日本死ねというブログを契機に世に広まりまして、国会内で子育て支援に関した議論がされるようになり、この度、子育て支援政策に予算が投入され、これまで予算配分の比率が低かった子育て分野に光が当たり、大変喜ばしく、子育て世代を代表いたしまして御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
しかしながら、現実を直視いたしますと、じゃ、幼児教育が無償化になればもう一人子供を産もうという声は、残念ながら全く聞こえてきません。むしろ、無償化よりも保育園の問題を何とかしてくれ、幼児教育費よりも高等教育費の方のお金が心配だという声が多く聞こえてきます。資料にありますとおり、ツイッターでそういった分析もさせていただいておりますので、五ページ、六ページを御覧いただければと思います。言い換えるならば、国民の多くは、かゆいところはそこじゃないよ、かゆいところをちゃんと聞いてよと言っているのではないでしょうか。
今回の法改正に関しましても、様々なところで疑問の声が聞こえてきており、当事者の皆さんからは六点、要点としてまとめ、挙げたいと思います。
一つは、さきに申し上げましたとおり、待機児童問題が先でしょうという点です。待機児童数は二万人を切ったと昨年の九月に発表がありましたけれども、資料にありますとおり、隠れ待機児童数は年々増加傾向にあります。資料十ページになります。細かく見ると、四類型のうち、特定園希望者というのが増えている実態です。更に言えば、育休中も待機児童数にカウントするはずなのですが、隠れに含めている自治体がまだ実際は多くあります。
A4の縦のこのようなリストをお配りしておりますので、こちら御覧いただければと思うんですけれども、待機児童ワースト五十というリストでございます。待機児童のランキングは、一位が兵庫県明石市、二位が岡山県岡山市、三位は東京都世田谷区となっております。これは全国的にも、新聞各紙で広報されるために、言葉を選ばずに申し上げれば、悪名高き自治体リストとして世に広まっております。ただ、実際、隠れ待機児童の四類型を入れた数字のランキングは、次ページめくりまして、一位が神奈川県横浜市、二位が神奈川県川崎市、三位が東京都港区となります。
四類型のうち、東京都で言うところの認証保育園、いわゆる認可外保育園に該当する地方単独事業の数字を除いたランキングが三ページ目にありますところになりまして、一位は神奈川県横浜市、二位は大阪府大阪市、三位は北海道札幌市となるわけです。
我々もロビー活動をしておりますと、誰とは申し上げませんけれども、地方には待機児童いないんだよとか、自分の選挙区じゃないからねですとか、東京だけの問題でしょうといった国会議員の先生方がいらっしゃるんですが、東京はこのランキングで九位の江戸川区が最高で、ワースト一位で例年有名だった世田谷区は現在十三位にあります。
本当に東京だけの問題なのでしょうか。もとより、待機児童問題は自分の選挙区だけ解決すればいいとおっしゃるのはどうなのかというふうに思っております。国の方針や立法、予算のことを考えることが責務である国会議員の先生方にいま一度お考えいただきたいというふうに思っております。
二点目ですが、パワーポイントの資料に戻りまして、十二ページの処遇改善の方が先でしょうという問題です。
待機児童問題は、少子化問題と女性活躍推進に直結しています。地方創生についても地続きでつながっていると思います。これらの課題を解決するための財政投資をする対象として最も効果的なのは保育士の処遇改善だと考えています。これらは、お配りしている我々のアンケート結果でも多く回答が得られています。
ただし、処遇改善といっても、いわゆるお給料などのお金の話と労働環境の話と二つあるわけです。既に御案内のことと思いますが、保育士のお給料は全産業平均に比べて三割ほど低く、ほかの仕事で働いた方がお給料が良いという声はよく上がってまいります。中には、給与明細を見せてくださった男性保育士の先生が、寿退職といって結婚を機に給料の安い保育士の仕事を辞めて、ほかの仕事に就くというのが男性保育士の慣例だという方もいらっしゃいました。
また、先日、保育士さんを対象にした座談会を実施しましたところ、正規よりも非正規になりたいという驚くべきお話が保育士さんから聞かれました。一般的には非正規よりも正規になりたいというのが常識ですので、私も大変驚きました。よくよくお話をお聞きしましたところ、正規だと強制的で無理なシフトを組まれてしまったり、持ち帰り残業が常態化したり、行政へ提出するペーパーワークが異常に多いというのです。特にペーパーワークについては、同じような書類を何度も書くという作業が多く、子供と向き合いたくて保育士になったのにという声が多く聞かれました。また、人員余裕のない状況から、あなたは正規なんでしょうという暗黙の圧力が生まれ、殺伐とした職場環境を生み、退職を考え始めるという悪循環を生んでいるようです。
ついては、特にペーパーワークの見直しについては、フォーマットの統一ですとか行政書類の簡素化が求められると考えられます。
ちょっとした労働環境改善の例ですけれども、私、在住が武蔵野市でございまして、武蔵野市は四月から使用済みおむつを園内で処理するということが決まりました。通常、保育園では、おむつを自分の子供の分持ち帰って、ごみの日にごみに出すというのが通例なんですけれども、保護者の声を吸い上げて武蔵野市の市議会でこれを施行するということになったわけですが、実際私もまだおむつの子がいますので、おむつの園内処理がこんなに有り難いというふうに思うことが新しい発見でした。荷物が軽くなるという点は一つなんですけれども、家で使用済みおむつをごみの日まで保管するというスペースと臭いの問題も解決しました。
保育園のママ友からも、これ本当にすごいと、これ訴えてくれた人、実行してくれた人に感謝状を贈りたいなどという声が上がり、何より保育士さんからお礼の言葉がたくさん聞こえてきました。子供ごとに仕分をしなければいけないので、それをまた二度も三度も触るということですとか、一つのバケツに放り込むだけでいいという作業自体がこんなに精神的にも実務的にも楽になるんだということに大変自分自身も驚いたという声を私も複数いただきました。これは、保育士さんと保護者の困っているという視点から課題解決された好事例だと思っています。
ちなみに、武蔵野市におけるごみの回収の対象施設は六十七施設、予算は年間で二千百四十三万円を計上しております。さらに、この回収ですけれども、保育園に限らず、高齢者介護施設などでおむつの処理についても同時に行政負担で回収されることで介護職員のストレスを緩和させることにもつながるのではないかなというふうに考えております。
三点目は、お話戻しまして、高額所得者優遇なんじゃないの、不公平なんじゃないの問題です。
今回の三から五の幼児教育、保育の無償化は、皆様御案内のとおり、上限が二万五千七百円で幼稚園の利用者、認可保育園の利用者は全ての人が無料となりました。御存じのとおり、応能負担の認可保育園が無償化ということは、高額所得者に対してより多くの財源が投入されるということです。つまり、より格差拡大を生む制度になっているのではないでしょうか。税のシステムそのものが何のためにあるのかという原点に立ち戻ると、税の再配分としての機能がなされていないように感じています。
また、多くの保護者からは、保育料を払うから保育士さんの処遇を上げてあげてよですとか、もう払うものは払うという声も届いています。
また、幼稚園は上限が二万五千七百円ですから、保育園の方が長く預かってくれて、さらに無料ということですので、幼稚園世帯の視点からも若干不平等な政策と言えるのではないのでしょうか。
また、新聞社の調査によれば、四割の幼稚園が値上げを検討されているということがあります。既にこの委員会で保育料の変更の理由を保護者に説明することを義務付けるとしているようですが、どんな理由ならオーケーなのか、どんな理由なら駄目なのでしょうか。それなら、公定価格で決まっている保育料を上げられるのでしょうかという点が疑問です。幼稚園の便乗値上げに関する説明がまだまだ不十分、議論が不十分ではないかなというふうに感じております。
四点目は、給食費の外出しの問題です。
給食というのは現物支給でございます。今まで保育料に含まれていた給食は無償化の範囲から外されるため、改めて園ごとでの徴収となります。給食費の別途徴収となりますと、数年前に起きた小中学校での給食費未払問題、大きく報道されましたが、それが再燃するのではないかと大変危惧しております。
現状、多くの民間事業者が参入している保育業界において、更なる事務負担が増え、保育園の先生が徴収の業務の一端を担うことになれば、またその精神的負担はより保育士の仕事を困難にさせるのではないでしょうか。義務教育化されている小中学校でさえこのような状況にもかかわらず、なぜ公助から逆行するような方向に行くのでしょうか。
そもそも、小中学校給食費も無料であればと願うものです。なぜ無償化の対象から外してしまった給食現物支給、これは我々保護者の観点からも保育士の観点からも疑問の声が上がっています。
さらに、五点目ですけれども、指導監督基準を満たさない認可外施設が無償化の対象という問題です。
今回の法律案では、秋田先生もお話ありましたけれども、指導監督基準を五年間クリアしなくてもいいという施設が対象になります。しかしながら、認可外施設での死亡事故が多く起きている中、指導監督基準すら守れない園を無償化の対象とするのはいかがなものかというふうに思っています。公費が入るということは親たちの警戒心を解くことにもつながります。
そもそも、認可保育園でさえ園ごとの格差は余りに激しいです。先日も認可保育園で保育士の一斉退職がありました。保護者は、怪しいかな、大丈夫かなと不安に思っていても、現状、保育園を選ぶことができない状況です。三歳児は保育士一人に対して二十人の幼児です。これを聞いたヨーロッパの教育関連の人が、日本の保育士は羊飼いなのかと言ったそうです。最低基準である、OECDの基準の最低の最低を守れない指導監督基準、これも満たせない園を五年間も猶予していいのかというのが甚だ疑問でなりません。
最後、六点目ですけれども、無償化が届かない未就園児、無園児問題です。ページでいいますと二十六ページになります。
三歳から五歳は多くの園児が幼稚園、保育園に通っているということですが、現在十三・七万人の子供たちがどこにも通っていないという状況です。この理由について、北里大学の可知悠子氏の研究によりますと、三歳以降の未就園は、低所得、多子、外国籍など社会経済的に不利な家庭、発達や健康の問題を抱えた子供が多い傾向が明らかになったとしています。彼女の論文の最後に政策提言がありますので、二十七ページを御参照ください。
無償化の恩恵が届かない無園児は、最も困っている社会的に不利な家庭にあるということです。無償化になっても、その制度の存在を知り得ない人たちにどうやってアウトリーチするのでしょうか。是非これは対策を検討いただきたいと思います。
繰り返しますが、無償化自体は悪い政策ではありません。韓国、イングランド、フランス、既に幼児教育が何年も前から無償化になっています。先進国から後れを取っている日本としては、ようやっとここまで議論の俎上に来たことは大変喜ばしいことです。ただし、税の再配分という観点からも、女性活躍という観点からも、国難である少子化という観点からも、待機児童が多数いる中で、無償化の現状の実施では大きなクエスチョンマークが付くところです。
そもそもこの法律の目的は、国難とされた少子化を克服するためのものとお聞きしております。本当に国難だと思うのであれば、なぜ少子化になってしまったのか、なぜ子供を産まないのか、その原因が幼児教育の教育費にあるからなのか、もっと検証をすべきと考えます。
私たち親は、よく、自分で産んだんでしょう、選んだんでしょう、それを選択したんでしょうといつも自己責任論を押し付けられています。正直、私も三人子供がいますが、子育てがこんなに困難の連続だとは知りませんでした。仕事と子育ての両立がこんなにも大変だとは誰も教えてくれませんでした。私も、私の子供たちには毎日、生まれてきてくれてありがとうと言いますけれども、でも本当に苦しい思いの連続です。
本当に少子化を克服したいのであれば、男性の家庭進出や労働時間の規制、子育て予算の拡充、高等教育の無償化、もっと言うのであれば、多く子供を産んだ世帯は、極端なことを言えば年金の支給額が増えるよというぐらいの政策にしていただきたいと思います。子供を産み育てることへの不安やプレッシャーを取り除き、産んだら得をするよねと思える制度にしていかなければ少子化は克服できないのではないでしょうか。
恐らく、今回の法案は賛成多数でこのまま可決してしまうかもしれませんが、実施後もきちんとウオッチしていただき、是正していただくことを求めていきたいと思います。
企業活動においては今トライ・アンド・エラーといって小さく挑戦していくということが主流ではありますけれども、子供の命にトライ・アンド・エラーは許されません。今後とも、本件に関して注視いただくよう、重ねてお願い申し上げます。
以上となります。ありがとうございました。