工藤祥子の発言 (文部科学委員会)
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○工藤参考人 全国過労死を考える家族の会公務災害担当、神奈川過労死等を考える家族の会代表の工藤祥子でございます。
本日は、貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は、遺族、元教員の立場として、教員の経験と、あと現場の声から、本法案に対する問題点と意見を述べさせていただきます。
私の夫は、二〇〇七年六月に、クモ膜下出血で四十歳で突然他界いたしました。本日、随行席には、三十一年前に同じく中学校教師でお連れ合いを過労死で亡くされた中野さんです。
夫は公立中学校の体育教師であり、生徒指導として心身ともに健康な教師でしたが、四月に転任した早々、新しい環境の中、生徒指導専任という過重、過密な仕事が集中し、長時間労働、休日出勤、持ち帰り残業が蓄積して体調を崩し始め、夏休みになったら病院に行く、休むからといって、六月に入りまして修学旅行も体調不良を押して引率しましたが、帰ってきたその日に強い頭痛を訴え、皮肉にもやっと行けた病院の待合室で倒れて、心肺停止のまま死亡いたしました。
現在、家族の会で公務災害を担当し、多くの先生方の過労死と接した中で、私が把握した昭和五十三年から現在までの脳・心疾患の死亡事案三十五件中、夏休み前は六月が四名、五月が三名と、この二カ月間が年間で最も多い数になっております。随行席の中野さんのお連れ合いも、冬休み目前の十二月二十二日に倒れられました。長期休暇まで心身ともにもたないのです。
一年単位の変形労働時間制では、この時期の勤務時間がふえることで確かに見かけの時間外労働は減る一方で、合法的に勤務時間がふえます。業務量が減らないのであれば、むしろこの時期更に長時間労働となり、過労死を促進してしまいます。
夏休みのまとめどりに対しては、私は賛成です。先輩たちも、昔は夏休みがあって、のんびりできてよかったというふうによく言っていましたし、そんな時間が私も欲しいです。
私は、この九月より、一年単位の変形労働時間制の撤回を求めるインターネット署名を現役の高校教師の西村祐二さんと始めたところ、何と三週間で三万三千百五十五筆の署名と六百六十五のコメントが集まりました。教職員や保護者、学生を中心とした大変な市民の声です。
その中で寄せられた声は、ただでさえ夏休みに残業があり、有休もとれないのに、まとめどりができるのか、資料にもございますけれども、休息もとれないのに繁忙期に所定の時間が長くなれば過労死してしまう、今でさえ帰りにくいのに、子供のお迎えができなくなったら教員をやめる、子供を通わせる親として反対しますなどなど不安の声がいっぱいで、これがあと二年でクリアできるかどうかというふうにおっしゃっていました。
私も元小学校の教師でしたが、多忙と夫の喪失感や子育ても重なって、倒れて、離職しました。朝、児童の登校前に出勤して印刷や授業準備、休み時間は連絡帳や音読を聞いたり、クラスの児童下校後は、高学年のクラブ活動や委員会の参加、集金などの事務作業、いつもは五時過ぎに会議が始まり、その後、授業準備、八時過ぎたら、職場に次女から、またきょうも一人で御飯を食べるのという電話があっても帰れずに、とても心苦しい毎日でした。
一年単位の変形労働時間制は、一日単位、週単位の生活リズムが崩れ、家庭生活にも大きな支障が出て、また、一日で過労が回復できるかの問題点もあります。
今回、上限ガイドラインが定められましたことで、青天井になっていた勤務時間の道筋ができ、出退勤が記録される方向になったことは大変な進歩だと思っております。ただ、今より業務が減った上でなければ、勤務時間を減らさず、見えない時間外労働がふえてしまいます。現在も、タイムカードを押してから時間外労働をするような時短ハラスメントの相談が多く寄せられており、この状況がふえてしまうと考えます。上司から命令されれば断りづらいです。
必ず業務量を減らし、上限ガイドラインが実効性のあるものになるという担保を示してください。それが各自治体の教育委員会や学校が負荷なく責任を持って遂行できるようなものでなければ、今までと変わりません。労基署がない中、もし違法があった場合に全国の全ての先生が救済されるように、きちんと監督指導できなくてはいけません。
十年たった今は、もっと多くの業務量を、足りない教師の数で担っています。一貫して現場からの声は、過重勤務防止に必要なものは、教員の増員と業務の削減です。もしこれが充実していたなら、夫は過労死しなかったかもしれません。子供たちは、もっと先生と話したり、しっかりと準備された授業を受けられるでしょう。これは未来を担う子供たちのためであり、社会全体の問題でもあります。
国は教員の過労死を把握していないと、十一月七日の萩生田大臣の答弁にもありました。年間四百から五百人の教師の在職死亡者数、五千人以上の精神疾患離職者、多くの方が過労死ラインにいる業種として、過労死等の原因や実態を把握し分析することは欠かせず、これなしにして教員の業務改善はできないと思います。
一年単位の変形労働時間制をこの短期間で成立させることに反対いたします。反対の多い現場の声を聞き、まずは業務量の削減、長時間労働の削減、それと、教師の質を保つため、正規の先生をふやし、持ちこま数を減らして業務改善をし、休日のまとめどりのみ検討すべきと考えます。
衆議院文部科学委員会の議員の皆様へ切にお願いを申し上げまして、私の意見陳述を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)