嶋崎量の発言 (文部科学委員会)
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○嶋崎参考人 弁護士の嶋崎です。
本日は、参考人として意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
私は、労働者や労働組合の権利擁護のために活動する、日本労働弁護団という団体で活動する弁護士であります。本日は、労働側の弁護士として意見を述べさせていただきます。
まず、結論を述べたいと思います。七条関係、業務量の適切な管理に関する指針についての規定ですが、不十分な点、疑問点などはありますが、大まかな方向性には賛成であります。しかし、五条関係、一年単位の変形労働時間制の導入については強く反対をいたします。導入すべき必要性も許容性もありません。
そもそも、この法案は、深刻化する教員の長時間労働の実態を踏まえて提起されたものです。その際に、まずもって念頭に置くべきは、いわゆる給特法の抜本的な改正であり、その点に目を背け、そこを抜きに改正をしても、長時間労働の是正は不可能であると考えます。
公立学校の教員は、給特法により教職調整額を支給するかわりに、時間外労働手当などが支給されず、超勤四項目を除いて時間外労働を命じることはできないというのが建前であります。
しかし、現実には時間外労働が常態化をし、にもかかわらず、これらは教員の自発的な行動であるとして、労働と取り扱われておりません。多くの教員の皆さんが子供のために情熱を傾けている、例えば部活動、これが労働ではないというのは、法律実務家からすると全くあり得ない、不可解きわまりない運用であると思います。
そもそも、労働基準法がなぜ残業代の割増し賃金の支払いを命じるのか、その趣旨は、端的に言えば、長時間労働の抑制であります。使用者は、割増し賃金の支払いを避けるために、長時間労働削減に向けて真摯に努力をいたします。しかし、給特法では、残業代の支払い義務が課されず、使用者による長時間労働管理の意識が甘くなり、時間管理も曖昧になり、教員に過大な業務を命じることにためらいがなくなり、長時間労働が蔓延するという元凶になっております。
この給特法の問題に切り込まずに、教員の長時間労働の是正はなし得ません。そこに手をつけなければ、将来改正をするんだという方向性すら明示せずに、その場しのぎのごまかしでは、将来に向けて禍根を残すと思います。
以下、各規定について具体的な意見を述べさせていただきます。
まず、七条関係。客観的な在校時間の把握を前提にし、そして、勤務時間に上限を設けようと設定された指針に法的根拠を与え、実効性を持たせよう、この方向性には私も賛成であります。
しかし、この指針では、労基法では認められている罰則もなければ三六協定による歯どめもなく、さらなる実効化が必要だと考えます。
また、ガイドラインでは、超勤四項目以外の業務は労働ではないという解釈には手をつけずに、労働ではないはずの部活指導などの時間も含めて勤務時間として管理するとしております。労働ではないはずなのに、ガイドライン上、勤務時間として在校等時間などという欺瞞的な概念で管理をすることは、本来取り組むべき給特法の改正に目を背け、そこに向き合う機運が失われるのではないかという危惧がございます。
次に、五条の関係。一年の変形労働時間制の関係ですが、改正の狙いである休日のまとめどりには私は賛成です。教員に必要なのは、残業代、お金ではなく休日です。ですが、その目的達成の手段として一年間の変形労働時間制というのは合理性がありません。
そもそも、休日のまとめどりを実現したいのであれば、地方公共団体においてそれを可能とする条例を制定する、その条例制定を促すような法律を国会で端的にダイレクトにつくればよいのです。
変形労働時間制によって初めて休日のまとめどりが可能になるという理解は、法的には誤りです。しかも、必要性もなく導入される一年間の変形労働時間制は、憲法に由来する労基法が定める厳格な導入要件をゆがめて導入される危険が高いです。
そもそも、この制度は、一日単位、一週間単位の労働時間規制の枠を取り払う、労働者の命や健康にとって危険な、例外的な制度であります。ですから、労基法は、詳細に定めた労使協定、そしてその協定の監督署への届出、そして、恒常的な長時間労働の職場では導入ができないというのが今の厳格な縛りであります。
ですが、この法案は、労使協定もない、労働基準監督署への届出もない、教員職場は恒常的な長時間労働であり、導入すべきような前提条件を欠いております。
多くの職場で既に導入されておりますこの一年の変形労働時間制、労働時間の削減ではなく、残業代を使用者が逃れようと、残業代を削減し、残業代不払いの脱法手段として今実務では悪用されております。
しかも、給特法のある教員の場合は、そもそも残業代がゼロであります。残業代削減のために導入メリットはございません。にもかかわらず、あえて導入する狙いは、繁忙期における残業時間を見せかけ上減らし、見せかけの残業時間を削減することにあるとしか考えられません。
その本音を隠し、見ばえのよい、休日のまとめどりを可能にするという点のみが強調され、労基法という大原則をゆがめて改正を通そうとするのは、政府の対応は余りにも無責任です。
教員の仕事は、これは私ごとですが、私は両親が教員です。祖母も教員です。教員の仕事は今も昔も魅力的なんです。教員の志願者を失わせているのは、給特法により長時間労働を放置した職場環境の劣悪さです。
現在の教員の皆さんの職場環境を固定化する、そして目をそらすようなことにつながる、さらには労基法の規定をもゆがめるこの一年単位の変形労働時間制には断固として反対いたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)