中川淳司の発言 (外交防衛委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(中川淳司君) 中央学院大学の中川でございます。
 お手元にこういう資料が配付されていると思います。パワーポイントのスライドで七ページ用意いたしました。それに沿って、かいつまんで御説明いたします。
 まず一枚めくっていただいて、番号で二が付いているところですけれども、この二つの協定の経緯ということでたどっております。
 何よりも重要な文脈は、二〇一七年、おととしの一月に、アメリカ・トランプ政権が発足直後にTPPから離脱したということでありました。その後、残る十一か国が早期発効に向けてTPPをまとめるということで、昨年三月にTPP11、CPTPPに署名をし、それが昨年十二月に発効したということがございました。
 日本政府は、当初はアメリカにTPPへの復帰を求めるという姿勢を取りましたけれども、アメリカは日本との二国間交渉を要求して、その要求がどんどん強まっていったということがあります。
 その背景としては二つあろうかと思います。
 一つは、CPTPPが発効し、また日EUのEPAも発効したことで、加盟国に劣後するアメリカの農業界の要望が強く出たと。とりわけ、牛肉農家であります。
 もう一つの要素として、米中の貿易協議が非常に難航しております。トランプ政権としては、何としても選挙民にアピールできる貿易関係の交渉の成果を求めた、それが日本との貿易協定であったということがあろうかと思います。
 交渉を有利に進めるために、そういうてことして、通商拡大法二百三十二条に基づく自動車の追加関税を発動するという、明確な形ではありませんけれども、そういう脅しを使って交渉に臨んだということがございました。
 昨年九月の日米共同声明で、日米貿易協定の交渉開始に合意されました。次の三ページは、日米共同声明からの引用であります。御覧いただくとして、赤字の部分、それから青字の部分に注目していただければと存じます。
 赤字は、日本政府としては、日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること、そういう立場を尊重するということが書かれています。具体的に言いますと、TPPで日本が約束した、アメリカに対して約束した内容がマックスであるということで、交渉にキャップをかぶせた意味がございました。
 それから、青字のところですけれども、協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動を取らないと。これは、具体的には自動車に対する追加関税は協議中は発動しないという、そういう約束を明確にさせたわけであります。
 次に、四ページに参ります。
 日米貿易協定、デジタル貿易協定の交渉は今年の四月に始まり、九月二十五日に交渉が妥結し、十月七日に署名されました。非常に短い期間で交渉がまとまりました。
 九月二十五日には、日米首脳会談の後に共同声明が発表されました。ここでは、その四の青字部分を注目したいと思います。日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない。協定はもとより、締結したものは誠実に履行いたしますので、この文言により、自動車に対する追加関税発動の余地を事実上封印したということになります。これは後で成果としてもう一度振り返りたいと思います。
 続いて、二つの協定について見てまいりますけれども、まずは日米貿易協定について、これが五ページと六ページにあります。五ページに表にしましたけれども、六ページの箇条書にした方で簡単に説明をさせていただきます。
 見出しに書きましたように、私は、日米貿易協定の関税交渉で日本は互角以上の成果を上げたというふうに評価しております。例えば、日本側の約束とアメリカ側の約束を比較した場合に、日本側の約束はTPPで対米約束をした内容を下回っている、そういう意味でTPPマイナスである。TPPの約束がキャップであるということを昨年九月の共同声明で言いましたけれども、実質的に、実際にはそれを下回る、日本にとっては有利な内容になっているということが言えます。
 具体的には、米に関してはTPPでは認めた無税の輸入枠を認めませんでした。また、飛ばしますけれども、幾つか、水産品、林産品については約束をしておりません。そして、牛肉に関して、まあこれはアメリカの最大の関心事項でありましたけれども、関税引下げの率はTPPと同じ、セーフガードの発動水準はやや引き下げたということであります。砂糖類、加糖調製品については関税引下げに応じず。かつ、日本側の工業製品で有税の品目が革製品、履物等ありますけれども、それについても関税引下げには応じておりません。
 他方で、アメリカに関しては、和牛の輸入枠、低関税輸入枠を二百トンから最大で六万五千五トンに拡大しました。また、日本側の関心の高いしょうゆ、柿、盆栽など農産品四十二品目について関税の引下げ、撤廃を勝ち取りました。工業製品では工作機械、3Dプリンターなどで関税の引下げ、撤廃を勝ち取っております。自動車と自動車部品については更なる交渉による関税の撤廃を約束させました。かつ、追加関税は、先ほど申し上げましたけれども、協定を誠実に履行している間はということで、実際上無期限で追加関税は発動しないということを約束させたわけであります。
 以上が日米貿易協定の概要であります。
 次に、日米デジタル貿易協定についてであります。
 これは、TPPで第十四章に電子商取引という章がございましたけれども、それを基本的に継承し、かつ、それを上回る規律を採用しております。その意味でTPPプラスの内容が盛り込まれております。箇条書でずっと書きましたけれども、赤字の部分だけ、これがTPPプラスの部分でありますけれども、そこを見ておきたいと思います。
 一つは、ソフトウエアのソースコードに加えて、アルゴリズムの開示要求の禁止であります。もう一つが、情報通信技術製品に関する暗号技術の開示要求、特定の暗号の使用要求の禁止という縛りであります。
 TPPの中でなぜこの章だけを今回合意したのか、かつ、そういうTPPプラスの内容を盛り込んだのかということを理解する上では、もう少し広い文脈を見る必要があります。
 現在、WTOでは、有志国によるデジタル貿易協定の交渉が進められています。日米が共同でデジタル貿易協定によって非常に高いハイスタンダードなルールを示すことにより、この交渉をリードしていく基盤となるというものであると考えます。これが想定しているターゲットが中国であるということは、説明多言を要しないと思います。
 また、WTOに対して非常に、何といいますか、冷淡な見方を強めているアメリカ・トランプ政権にとって、アメリカをWTOのマルチの場につなぎ止めておくということでもこれは非常に重要な意味がある規定であると考えます。
 最後に、今後の見通しについて八ページで触れます。
 今年九月二十五日の日米共同声明では、今後の交渉の見通しについて決めています。日米貿易協定、日米デジタル貿易協定が発効して、それから四か月以内に交渉の範囲について協議をし決める、その上で第二段階の交渉を開始するという、そういう決め事であります。
 この交渉範囲が非常に限定的なものになるのか、今回のようにですね、あるいはもっと広くTPP並みの広いものになるのかということについては不明であります。しかし、仮にTPPのように広範囲のルールをカバーする交渉が行われることになったとしても、それが日米間のルール交渉である限りにおいてはほとんど意味がありません。ルールはより広い場で、最終的にはマルチですけれども、合意されることが、必要があるからであります。その意味で、私は、引き続き日本は米国にTPPへの復帰を求めていくべきであるし、それだけの理由はあると考えております。
 以上で私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 120013950X00720191128_003

発言者: 中川淳司

speaker_id: 6614

日付: 2019-11-28

院: 参議院

会議名: 外交防衛委員会