外交防衛委員会

2019-11-28 参議院 全84発言

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会議録情報#0
令和元年十一月二十八日(木曜日)
   午後二時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十六日
    辞任         補欠選任
     清水 真人君     中曽根弘文君
     松川 るい君     上野 通子君
 十一月二十七日
    辞任         補欠選任
     上野 通子君     松川 るい君
     中曽根弘文君     山谷えり子君
 十一月二十八日
    辞任         補欠選任
     松川 るい君     高野光二郎君
     山田  宏君     森屋  宏君
     山谷えり子君     岩本 剛人君
     福山 哲郎君     石川 大我君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         北村 経夫君
    理 事
                宇都 隆史君
                中西  哲君
                羽田雄一郎君
                秋野 公造君
                井上 哲士君
    委 員
                猪口 邦子君
                岩本 剛人君
                佐藤 正久君
                高野光二郎君
                武見 敬三君
                松川 るい君
                三宅 伸吾君
                森屋  宏君
                石川 大我君
                小西 洋之君
                榛葉賀津也君
                白  眞勲君
                山口那津男君
                浅田  均君
                鈴木 宗男君
                伊波 洋一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        神田  茂君
   参考人
       中央学院大学現
       代教養学部教授  中川 淳司君
       東京大学大学院
       農学生命科学研
       究科教授     鈴木 宣弘君
       NPO法人アジ
       ア太平洋資料セ
       ンター(PAR
       C)共同代表   内田 聖子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
○デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国
 との間の協定の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
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北村経夫#1
○委員長(北村経夫君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、清水真人君が委員を辞任され、その補欠として山谷えり子君が選任されました。
 また、本日、福山哲郎君、山田宏君及び山谷えり子君が委員を辞任され、その補欠として石川大我君、森屋宏君及び岩本剛人君が選任されました。
    ─────────────
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北村経夫#2
○委員長(北村経夫君) 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件及びデジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を一括して議題といたします。
 本日は、両件の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、中央学院大学現代教養学部教授中川淳司君、東京大学大学院農学生命科学研究科教授鈴木宣弘君及びNPO法人アジア太平洋資料センター共同代表内田聖子君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、中川参考人、鈴木参考人、内田参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず中川参考人からお願いいたします。中川参考人。
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中川淳司#3
○参考人(中川淳司君) 中央学院大学の中川でございます。
 お手元にこういう資料が配付されていると思います。パワーポイントのスライドで七ページ用意いたしました。それに沿って、かいつまんで御説明いたします。
 まず一枚めくっていただいて、番号で二が付いているところですけれども、この二つの協定の経緯ということでたどっております。
 何よりも重要な文脈は、二〇一七年、おととしの一月に、アメリカ・トランプ政権が発足直後にTPPから離脱したということでありました。その後、残る十一か国が早期発効に向けてTPPをまとめるということで、昨年三月にTPP11、CPTPPに署名をし、それが昨年十二月に発効したということがございました。
 日本政府は、当初はアメリカにTPPへの復帰を求めるという姿勢を取りましたけれども、アメリカは日本との二国間交渉を要求して、その要求がどんどん強まっていったということがあります。
 その背景としては二つあろうかと思います。
 一つは、CPTPPが発効し、また日EUのEPAも発効したことで、加盟国に劣後するアメリカの農業界の要望が強く出たと。とりわけ、牛肉農家であります。
 もう一つの要素として、米中の貿易協議が非常に難航しております。トランプ政権としては、何としても選挙民にアピールできる貿易関係の交渉の成果を求めた、それが日本との貿易協定であったということがあろうかと思います。
 交渉を有利に進めるために、そういうてことして、通商拡大法二百三十二条に基づく自動車の追加関税を発動するという、明確な形ではありませんけれども、そういう脅しを使って交渉に臨んだということがございました。
 昨年九月の日米共同声明で、日米貿易協定の交渉開始に合意されました。次の三ページは、日米共同声明からの引用であります。御覧いただくとして、赤字の部分、それから青字の部分に注目していただければと存じます。
 赤字は、日本政府としては、日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること、そういう立場を尊重するということが書かれています。具体的に言いますと、TPPで日本が約束した、アメリカに対して約束した内容がマックスであるということで、交渉にキャップをかぶせた意味がございました。
 それから、青字のところですけれども、協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動を取らないと。これは、具体的には自動車に対する追加関税は協議中は発動しないという、そういう約束を明確にさせたわけであります。
 次に、四ページに参ります。
 日米貿易協定、デジタル貿易協定の交渉は今年の四月に始まり、九月二十五日に交渉が妥結し、十月七日に署名されました。非常に短い期間で交渉がまとまりました。
 九月二十五日には、日米首脳会談の後に共同声明が発表されました。ここでは、その四の青字部分を注目したいと思います。日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない。協定はもとより、締結したものは誠実に履行いたしますので、この文言により、自動車に対する追加関税発動の余地を事実上封印したということになります。これは後で成果としてもう一度振り返りたいと思います。
 続いて、二つの協定について見てまいりますけれども、まずは日米貿易協定について、これが五ページと六ページにあります。五ページに表にしましたけれども、六ページの箇条書にした方で簡単に説明をさせていただきます。
 見出しに書きましたように、私は、日米貿易協定の関税交渉で日本は互角以上の成果を上げたというふうに評価しております。例えば、日本側の約束とアメリカ側の約束を比較した場合に、日本側の約束はTPPで対米約束をした内容を下回っている、そういう意味でTPPマイナスである。TPPの約束がキャップであるということを昨年九月の共同声明で言いましたけれども、実質的に、実際にはそれを下回る、日本にとっては有利な内容になっているということが言えます。
 具体的には、米に関してはTPPでは認めた無税の輸入枠を認めませんでした。また、飛ばしますけれども、幾つか、水産品、林産品については約束をしておりません。そして、牛肉に関して、まあこれはアメリカの最大の関心事項でありましたけれども、関税引下げの率はTPPと同じ、セーフガードの発動水準はやや引き下げたということであります。砂糖類、加糖調製品については関税引下げに応じず。かつ、日本側の工業製品で有税の品目が革製品、履物等ありますけれども、それについても関税引下げには応じておりません。
 他方で、アメリカに関しては、和牛の輸入枠、低関税輸入枠を二百トンから最大で六万五千五トンに拡大しました。また、日本側の関心の高いしょうゆ、柿、盆栽など農産品四十二品目について関税の引下げ、撤廃を勝ち取りました。工業製品では工作機械、3Dプリンターなどで関税の引下げ、撤廃を勝ち取っております。自動車と自動車部品については更なる交渉による関税の撤廃を約束させました。かつ、追加関税は、先ほど申し上げましたけれども、協定を誠実に履行している間はということで、実際上無期限で追加関税は発動しないということを約束させたわけであります。
 以上が日米貿易協定の概要であります。
 次に、日米デジタル貿易協定についてであります。
 これは、TPPで第十四章に電子商取引という章がございましたけれども、それを基本的に継承し、かつ、それを上回る規律を採用しております。その意味でTPPプラスの内容が盛り込まれております。箇条書でずっと書きましたけれども、赤字の部分だけ、これがTPPプラスの部分でありますけれども、そこを見ておきたいと思います。
 一つは、ソフトウエアのソースコードに加えて、アルゴリズムの開示要求の禁止であります。もう一つが、情報通信技術製品に関する暗号技術の開示要求、特定の暗号の使用要求の禁止という縛りであります。
 TPPの中でなぜこの章だけを今回合意したのか、かつ、そういうTPPプラスの内容を盛り込んだのかということを理解する上では、もう少し広い文脈を見る必要があります。
 現在、WTOでは、有志国によるデジタル貿易協定の交渉が進められています。日米が共同でデジタル貿易協定によって非常に高いハイスタンダードなルールを示すことにより、この交渉をリードしていく基盤となるというものであると考えます。これが想定しているターゲットが中国であるということは、説明多言を要しないと思います。
 また、WTOに対して非常に、何といいますか、冷淡な見方を強めているアメリカ・トランプ政権にとって、アメリカをWTOのマルチの場につなぎ止めておくということでもこれは非常に重要な意味がある規定であると考えます。
 最後に、今後の見通しについて八ページで触れます。
 今年九月二十五日の日米共同声明では、今後の交渉の見通しについて決めています。日米貿易協定、日米デジタル貿易協定が発効して、それから四か月以内に交渉の範囲について協議をし決める、その上で第二段階の交渉を開始するという、そういう決め事であります。
 この交渉範囲が非常に限定的なものになるのか、今回のようにですね、あるいはもっと広くTPP並みの広いものになるのかということについては不明であります。しかし、仮にTPPのように広範囲のルールをカバーする交渉が行われることになったとしても、それが日米間のルール交渉である限りにおいてはほとんど意味がありません。ルールはより広い場で、最終的にはマルチですけれども、合意されることが、必要があるからであります。その意味で、私は、引き続き日本は米国にTPPへの復帰を求めていくべきであるし、それだけの理由はあると考えております。
 以上で私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。
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北村経夫#4
○委員長(北村経夫君) ありがとうございました。
 次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人。
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鈴木宣弘#5
○参考人(鈴木宣弘君) この度はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 私の方からは、配付いただいております日米貿易協定の虚実というペーパーに基づいてお話をさせていただきます。本協定をめぐる議論には、私が思うには事実と異なる点があると思いますので、そのような点から所見を述べたいと思います。
 まず、一つ大きな点は、アメリカが自動車関税及び部品の撤廃を約束したという点でございます。日本政府はそのように話しまして、署名をいたしました。しかし、その後に開示されたアメリカ側の合意内容、英文だけが出ておりますが、それには今後交渉を続けるとしか書いておりません。この英文が関税撤廃を約束したと読めるというのであれば、私には全く理解に苦しみます。アメリカ側も、自動車の撤廃は約束していないと交渉トップがコメントしておりますし、影響試算についても、日本が自動車の関税撤廃を見込んで試算をしているのは理解できないというふうにアメリカ側は指摘しております。
 じゃ、なぜ、ない約束をあることにしなくてはいけないのか。それは、約束があることにしないと、アメリカ側の貿易額の九二%を含む協定であると言っているのが、自動車の部分が四割ぐらい抜ければ五割少しに落ち込んでしまう。これは過去に例のない前代未聞の国際法違反協定となります。この点だけでも国会批准は難しくなる。
 我々は、差別的なつまみ食い協定の横行が第二次世界大戦まで行ってしまったという反省から、戦後、ガットのルールで、二国間の自由貿易協定をやるときは九〇%以上を含まなきゃいけないというルールをみんなで一生懸命守ってまいりました。その結果、二百ぐらいある自由貿易協定の中で、八五%のカバー率を下回る協定はほとんどない状態になっております。
 そういう中で、日米二国のこの大きな経済圏が五十数%の協定を発効するとなりましたら、これは世界の貿易秩序に対する大きな挑戦であります。前代未聞の犯罪行為とも言える、戦後の世界の努力を無に帰すような事態が生じるわけですので、その点をどう考えるのか、非常に大きな問題です。
 それから、個別の品目でいいますと、アメリカからの日本の牛肉輸入についてはTPP合意にとどめられたという議論がありますが、日本は、牛肉についての輸入枠、低関税の輸入枠、セーフガードというのを、アメリカの分も含めてTPP11で十一か国に差し出しました、六十一万トン。それにアメリカの分が入っていたわけです。それにアメリカと二国でまた二十四万トンを加えてしまったわけです。ですから、これは既にTPP超えです。
 しかも、アメリカの二十四万トンについては、それを超えてアメリカが日本に牛肉を持ってきたら、十日間以内に協議を開始してアメリカの枠を増やしていくということをサイドレターで決めていることが後で明らかになりました。これは、結果的にはアメリカの枠をどんどん増やして、九%でアメリカは幾らでも日本に持ってこれるということをやっていくということでありまして、セーフガードのガードには全くならないという大変な事態を招くことになります。
 それから、日本からのアメリカへの牛肉輸出は、アメリカが何十万トンなのに、日本からは僅か二百トンしか低関税枠がございません。それが最大六万トンと言いますが、それはほかの国の枠も含めてのことですから、二百トンを少し超えても、まあ低関税でいいよというぐらいの約束にしか見えません。
 ところが、TPP全体のときには、アメリカはその二百トンの枠も拡大し、いずれはなくして、十五年後には関税も撤廃すると日本に約束していたんです。それを完全にほごにされて、二百トンが少し増えるだけになったことが日本の成果だというのは、私には理解できません。
 それから、米や乳製品は勝ち取ったと言いますが、米は御案内のとおりカリフォルニアの主産物で、トランプ大統領にとってはどう頑張っても負けるカリフォルニアはむしろいじめた方がいいぐらいの形で対応したと言われております。
 じゃ、乳製品などの枠はどうかといいますと、乳製品やその他三十三品目、TPPワイド枠といって、アメリカの分も含めてTPP11の国に既に譲ってしまっておるわけです。だから、TPP水準はそこで日本にとっては実現されてしまっているわけで、アメリカの分がそこに加われば、もうすぐにTPP超えになるわけです。それが回避されたからといって、それはアメリカから見ればTPPマイナスということで、先ほどの先生の評価もあり得ると思いますが、日本から見れば既にアメリカの分も含めてTPP11で実現してしまっているわけですから、その点をよく考えないといけないのではないかと思います。
 それから、奇妙なことに、今回の協定の日本側の約束内容の中に、アメリカが将来にわたって特恵的な待遇を強く要求するということが書かれております。これは、アメリカの単なる希望的観測ではございません。日本側の合意内容にこのことが書かれているということは大変重要な意味を持つと考えます。そもそも、アメリカが一度日本から得た合意内容をもう要らないと言うわけはございません。既に米の団体も酪農の団体も何とかしろと言っているわけです。だから、こういうことがこれからすぐに起こるわけです。
 そして、自動車のために農業を差し出したわけではない、こういうことはしないというように言っていますが、交渉官が既に記者会見で、これから自動車の交渉をするに当たっては、まだ日本の農産物は大分余裕があるのでそれをカードに使うと本当に言っちゃっているわけですよね。このことは非常に正直だったなと思います。
 それから、二五%の自動車関税は発動されないと本当に約束されたのでしょうか。どこにも書いてありません。むしろ、協定本文には、安全保障上の理由で、この規定にかかわらず、本協定の規定にかかわらずやれるんだということが書いてあるわけですから、そのことの意味は大きいと思います。
 逆に言えば、このような安全保障上の規定が入っているのであれば、日本の方こそ、安全保障上の理由で食料の関税障壁はもっと高めるというぐらい言い返せばいいじゃないですか。そういうことが問題です。
 要は、EUは、二五%の自動車関税で脅されても、それは犯罪行為であるから許さないといって対抗しました。日本は、その犯罪行為に対して、いやいや、それは困るから、いろいろ出すからうちだけは許してくれという話になっちゃったので、どんどんいろんなものを出さされて、そして中国との関係で余ったトウモロコシまで六百億円分尻拭いしなさいと言われて、それまで約束してしまったと。どんどん犯罪者にお金を払って許しを請うような形の交渉をやって、その挙げ句が、日米二国で更なる前代未聞の犯罪行為、WTO違反協定を今本当にこのままやるんですかということになってきたと。
 ですから、ウイン・ウインだと言いますけれども、どこがウイン・ウインなんでしょうか。農産物だけ取ってみても、日本側の農産物の関税撤廃率は七二%になっております。アメリカ側は、明治大学の作山先生が書かれていますが、何と農産物のアメリカの関税撤廃率は一%です。
 このような形で、トランプ大統領にとっては、自動車も勝ち取りました、日本には撤廃しないということを貫きました、農産物も欲しいものはもらいました。まさにトランプ大統領の選挙対策としてウイン、ウインなわけでございます。それに日本が一生懸命協力しているというのが今の状況ではないでしょうか。
 そして、三ページの試算の表がございますが、我々が政府のGTAPモデルというものと同じモデルで再計算をしました。自動車の関税撤廃が行われなかった場合には、日本のGDPの増加率はほぼゼロです。そして、日本の自動車の生産額はむしろ八百億円ぐらい減ります。そして、農産物は最大九千五百億円程度のマイナスが生じます。数字は正直です。自動車も農産物も全て失っておるわけです。
 ですから、このような完敗の、完全に日本側が負けているということが明らかな協定を前代未聞の国際法違反まで犯して批准するという事態の深刻さ、誰のために、何のためにこれをやらなくてはいかぬのですか。そのことをよく考えていただきたい。
 そして、こういうことをやっていますと、日本の農業は大変なことになります。既に御案内どおり、日本の地域の農業は生産構造脆弱化で、もう五年、十年で集落がなくなるようなところがどんどん増えています。それにこのような畳みかける自由化をやりましたら、何が起こるか。ここに一つの試算がございますが、その四ページの黄色の部分ですね、二〇三五年ぐらいに牛肉や豚肉では自給率が一割台になるかもしれない、こういう状況が目の前に来ておるわけでございます。
 だから、このように農産物の自由化を進めることは、農家の問題ではあるが消費者はメリットだと言っていると大変なことになると。安い安いと言っているうちに、アメリカの牛肉のエストロゲンは六百倍も入っているとか、成長促進剤のラクトパミン、全て乳がん、前立腺がんとの関係が強いと言われています。
 それから、BSEに、狂牛病にかかっている牛はアメリカでは十分検査がされていませんが、日本は五月十七日にこのアメリカ産牛肉を全面解禁しました。これが日米協定の最初の成果でもあります。
 それから、遺伝子組換え食品につきましては、アメリカからの要請を受けて、遺伝子組換えでないというような表示を二〇二三年に実質禁止することが決まりました。ゲノム編集については、十月一日からアメリカの要請を受けて完全野放しにしております。
 アメリカのトウモロコシ、大豆、小麦に直接掛けられている除草剤、アメリカがもっと振りかけなきゃいけないということで、日本人の安全基準値を残留が多くなるからもっと高めろということで、これも高めてしまいました。イマザリルとかOPPとか、収穫後農薬、日本では禁止ですが、アメリカから運んでくるときに掛けなきゃいけないと。食品添加物だということで無理やりそれを認めてきましたが、アメリカは、それによって表示をしなきゃいけないのがアメリカに対する不当な差別であるからこれをやめろとTPPの交渉のときから言っていまして、今の日米協定の中でこの表示を廃止する議論が行われていると。これだけ見てもリスク満載ですよ。
 これを食べ続けることで、我々は安いと言っていると病気になって早く死ぬと、どこが安いんですかと。牛丼、豚丼、チーズが安いと言っているうちに、どんどん病気が増えて、いかぬ、国産の安全、安心なものを支えなきゃいけないとなったときに自給率が一割になっていたら、もう手遅れです。その瀬戸際まで来ているということを私たちは考えなきゃいけないんじゃないかと。
 国民の命を守り、国土を守るには、どんなときにも安全、安心な食料を安定的に国民に供給すること、それを支える農林水産業の持続が不可欠であります。農は国の本なり、そのためには自給率をしっかりと維持していく、これが世界の常識です。それがどんどん下がって、三七%まで下がっても、まだ下がっても構わないと、自給率が死語になろうとしているのが我が国の現状です。
 アメリカから何兆円も武器を買いますだけが安全保障ではないと思います。食を握られることは、国民の命を握られ、国の独立を失うことだと肝に銘じて、まさに真の安全保障の一角を担う農林水産業を支える政策を再構築すると。このような止めどない自由化が本当にいいのかということを考えなきゃいけない。食料がなくなってから代わりにオスプレイをかじることはできません。
 それと、もう一つ申し上げておきたいのは、今までの経緯を見ていますと、先生方が、あるいは霞が関の皆さんが国会などで発言されたことが後になって違ってくるわけですね、現実が。そのときに誰も責任を取らなくてもいいというこのシステムそのものに私は問題があるんじゃないかと思っています。
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北村経夫#6
○委員長(北村経夫君) 鈴木参考人、時間が来ておりますので、おまとめください。
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鈴木宣弘#7
○参考人(鈴木宣弘君) はい。じゃ、これ一言で終わります。
 TPPには参加しないといって参加して、重要五品目は守るといって守らなくて、日米FTAを避けるためにTPP11だといって、今度は日米FTAになったと。ヤジ今回は、自動車関税を……
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北村経夫#8
○委員長(北村経夫君) 鈴木参考人、時間が来ておりますので、おまとめください。おまとめください。どうぞ。
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鈴木宣弘#9
○参考人(鈴木宣弘君) まとめておりますので、お待ちください。
 今回もいろんなことがそうではないと言われていますが、これが本当になったときには、じゃ、どうやって責任取るんですか。このことについてきちんと責任を取るシステムをつくっていただかないと、どんどんその場しのぎの虚偽で、次々と悪い段階に物事が進んでいくという、このことを止めることができません。
 今回のような協定をこのまま承認すれば、特にアメリカは議会承認が必要ないわけですよ、日本だけがこれをやって世界から非難されることになれば、その責任を取るのは国会議員の先生方です。
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北村経夫#10
○委員長(北村経夫君) 鈴木参考人、時間がもう過ぎております。
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鈴木宣弘#11
○参考人(鈴木宣弘君) はい。
 以上でございます。
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北村経夫#12
○委員長(北村経夫君) ありがとうございました。
 次に、内田参考人、お願いいたします。内田参考人、お願いいたします。ヤジ
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内田聖子#13
○参考人(内田聖子君) よろしいでしょうか。
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北村経夫#14
○委員長(北村経夫君) 御静粛にお願いします。
 内田参考人。
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内田聖子#15
○参考人(内田聖子君) 貴重な機会を与えていただき、ありがとうございます。
 私は、NPO、そして国際NGOという立場、つまり国際市民社会の一員として、この貿易協定を、WTOの時代、そしてTPPと追ってきました。今日はその立場から分析等を述べさせていただきます。
 まず、この日米貿易協定の基本的な背景、成り立ちというのは、最初の中川先生おっしゃったことと同じですので繰り返しませんが、一点そこで私、強調したいのは、TPPからアメリカが脱退したときに、日本政府は米国抜きのTPPは意味がないと言っておりました。そして、その後、TPP11の審議の際には、日本は米国をTPPに復帰をさせる努力をするということを言っていました。そして、日米FTA、これには応じないんだという方針をはっきりと立てておりました。
 これは、日本政府のいわゆるルールベースの包括的なFTAを目指していくんだという主張に沿ったものであり、私は国際市民社会の立場として必ずしもこれに賛同はしないんですが、少なくとも当時の政府の主張には論理の一貫性というのはあったと思っています。
 ところが、アメリカが日米FTA、貿易協定を求めてきて、そこに応じてしまったわけなんですけれども、このことが日本にとっては非常に大きな方針の転換ということになったと思います。実は、このことが国会審議でも私はまだ深められていないのではないかと思っています。つまり、日本が、ルールに基づく自由貿易であったり、それからTPPにやっぱりアメリカに復帰してもらうんだと筋を通すという大義を下ろしたということになるわけですね。で、その日米同盟に縛られた関係の中で、この日米貿易協定の交渉が始まっていったと。
 つまり、これはそもそも日本が望んでいなかった協定なんです。理にもかなっていない、ルールベースということにも。多国間交渉やってきた、これをねじ曲げて交渉に応じたという点で非常にスタートの時点から矛盾の上に立つ協定だと思っております。
 ですから、その矛盾の上に立って交渉した結果、日本の利益はこうだということを後付けのような形で説明をされるわけなので、どうしてもそこには無理がありますし、協定の評価そのものも非常にばらばらだと思っております。
 かつ、この間、国会審議を私もインターネット等で見てまいりましたが、その事実関係というところがなかなか明らかになっていない、そして、資料というか根拠となるものもなかなか共有されていないということ。そちらに時間が取られ過ぎていて、やはり今一番考えるべきは、大きな転換をしてしまったというわけなんですが、じゃ、今後日本はどういう通商交渉政策を取っていくのかと、この激動の時代で、中国との関係も含めて、どういう多国間の枠組みをつくるのかという非常に長期的で本質的な議論がなされていないのではないかということに非常に懸念を持っています。
 さて、この日米貿易協定ですが、最初はTAGといって始まったわけですが、今では誰も使っていないわけなんですけれども、途中から、交渉の直前から、物品だけではなくて、その後サービスや投資もやるんだという、割と漠然とした形で明示されました。
 これは、段階方式というか、まず物品をやって次にその他をやると、段階方式というふうに私は呼んでいますけれども、この在り方自体は貿易協定の中では非常に珍しいというか異例だと思っております。どの国にとっても、どの範囲を交渉するのかということは非常に重要、基本中の基本でして、例えばWTOでも何を交渉するのかで延々と議論して決まらないという状況ありますし、例えばTPPや日本・EUの協定でも、必ず予備交渉をして、何を交渉する範囲にするのかと定義をしてから交渉に入るわけですね。
 ところが、今言われている二段階目、物品はこれで仮に批准したとして、今後二段階目やると言われている交渉分野というのはさっぱり分からないわけですね。サービスが入るのか、投資も入るのか、知財も入るのかという非常に不明瞭な状態になっております。
 これは、日本にとっては非常に不利な立ち位置にならざるを得ないと思っています。というのは、二段階の交渉というのは、やはり先にたくさんカードを切ってしまった側が不利になりますし、あるいは力関係の中でどうしてもねじ込まれていくというか、応じていかざるを得ないということがあります。外形的にもこの日米貿易協定というのは非常に異例ですし、ある種、片務的であり、非対称ということが言えると思います。
 さて、限られた時間でありますけれども、今日、私はたくさん資料を刷っていただいて持ってきました。最初は、アメリカの交渉目的という昨年十二月に出た文書を、ちょっと私自身翻訳したものを付けさせていただいています。
 元々、アメリカは包括的なFTAを目指しているのです。ただ、トランプ大統領の選挙対策ということで、まずは物品ということに手を付けているわけですけれども、このそもそもの交渉目的を読むと、もちろんそれはTPPをベースにして、さらにそこに為替操作禁止条項を入れてほしいとか、あるいは非市場国排除条項、これは中国を指しているわけですが、というものも入っている。あるいは、個別の分野でも、様々TPPをよりアップグレードするものをこの協定で最終的には求めているということなんですね。
 アメリカは、こうした包括的なFTAを目指すのは、九〇年代以降ずっとそうでして、なぜならば、物品だけでは足りず、やはりルールの部分、非関税部分を求めることによって利益が最大化するからです。ということで、アメリカは、昨年の交渉前から、どの分野をやりたい、どういうふうにやりたいということを明示してきたわけです。
 ところが、じゃ日本はどうかというと、これは交渉に入る前に、何が目的か、何を獲得するのかということは明文化はもちろんされておらず、そもそも望んだ協定ではないわけですので、かつ、やはり今回の交渉の問題の大きなところは、日米貿易交渉の最大かつ唯一の目的と言っていいと思いますが、通商拡大法に基づく高関税措置をアメリカにとらせないことと、これがもうマックスな目的になったという設定です。
 ですから、ここでもアメリカとは全く立場が違っていて、ですから、その非対称、片務的ということはそういうところにもあるわけなので、是非国会では、そもそもTPPにアメリカを復帰させるという大義はどこに行ったのか、あるいは日本が求めるべき目的は高関税措置を回避をすると、そういうことでよかったのかということを基本中の基本として検証いただきたいと私は強く思っています。
 それからもう一つ、非常にアメリカペースでこの交渉進んでいて、実は私、一月一日に発効を目指すと新聞などでも書かれているわけなんですが、この理由がよく分かりません。日本に少なくともこの協定を一月一日に発効しなければいけない合理的な根拠というのはないというふうに思います。トランプ大統領の選挙のためにそうしたいということなんじゃないかと私は思っていますが、そのおかげで非常に拙速な審議が国会でも行われているのではないかと思っています。
 TPPや日EUの頃は、少なくとも合意があって、その後、影響試算等も出て、そして議員の皆さんが協定文を、初めて合意後に開示されるわけですから、一定程度、何か月とか吟味をするような時間があって、そして国会審議という流れ、そして国民への説明も、まあ不十分だとは当時から言っておりましたが、一定程度なされてきたわけです。
 ところが、今回は、それが圧倒的に日数も足りず、対策予算あるいは政策大綱ですか、農業の、これももう衆議院の可決が終わる頃、あるいは終わった後に出されてしまうと。これでは、やはり議会の権限ですとか透明性、説明責任、そして何よりも打撃を受ける農家の方々に対して非常に私は不誠実ではないかと思っています。国会軽視ということを改めて指摘したいと思います。
 そして、この協定の中身の問題ですけど、これは個別に様々あるので、そして鈴木先生も今農業面述べましたので繰り返しませんが、やはり気になるところとしては、この自動車の関税引下げを本当にアメリカが約束をしたのかと、これはWTOの抵触問題ですね、国会でも指摘がなされています。
 これについては資料の中に幾つかあるわけなんですけれども、実は九月の合意がなされる前後から、アメリカの側でも、貿易の専門家ですとか、それから研究者、それからシンクタンク等々でこのWTO違反の問題というのはずっと指摘をされてきております。詳しくはこの資料にいろいろ書いておりますけれども、日本の私たちだけが指摘しているわけではなくて、アメリカの側でも専門家はこれは危険だと言っていますし、日米だけでなくて、例えばEUであったり、その他の国の専門家も同じような指摘をしているということを申し上げたいと思います。
 そしてもう一つは、高関税措置が本当に回避できたのかということに関しても、これは非常に解釈の余地を残すような文言が共同声明にあるものですから、理解も様々です。日本の中でも政府の見解と違う見解もありますし、これは同じようにアメリカの側でもあるんですが、おおむね必ずしもトランプ大統領は高関税を課さないということを約束したわけではないという理解で共通していると私は思っております。
 実は、今日、時間の許す限り、アメリカの議会や業界団体の受け止めは何かという、どういうふうになっているかというのを御紹介をしたいと思っているんです。というのは、これ、同じ事実、確定した事実を基にそれぞれの国で議論する、これはもうやればいいんです。ところが、今言ったように、事実のところがどうもぼやけてはっきりしない、あるいは日米の政府の説明がどうやら何か食い違っているようだということなので、必然的にというか仕方なくというか、やっぱりアメリカではどういう受け止めがあって、どういう議論がされているのかということを我々はしっかり知る必要があるという意味で、少し御紹介をします。
 WTO違反の問題の指摘は今言ったとおりですし、加えて、実は先週の二十日、アメリカの下院歳入委員会の貿易小委員会というところで公聴会がありました。ちょうど今日のような形で四人の専門家が証言をしたわけですが、そこの場でも、改めてアメリカが自動車や部品の関税撤廃をしていないという証言が、例えば全米自動車労組の方からもなされています。これは明言されています。それから、CSISといって、国際戦略研究所ですか、のマシュー・グッドマン氏という方も、ワシントンはTPPの下で段階的に削減されるはずだった日本製の自動車への二・五%の関税及び自動車部品への関税を削減することに同意しませんでしたというふうに言っています。これは日本政府の説明と真っ向から矛盾しているんですね。一体、これ事実がどこにあるのかということをもっと深く検証しなければならないと思っております。
 アメリカの政府も、この件に関してははっきりとした態度を示していないんですね。ですから、非常に奇妙な構図が生まれていて、日本とアメリカのそれぞれの専門家や議員の方、業界団体、この人たちは、これWTOに違反しているんじゃないかといっていろんな対策も考えているわけです。ところが、両国の政府が、はっきりとそれはどうなのかということを共通の理解として示していないという非常に奇妙な状況が生まれております。
 しかも、もしWTO違反であればどうしなきゃいけないかというと、そういう協定は結ばない、あるいは中間協定として位置付けるという方法があります。アメリカの側では、今どちらかというと、こっちの中間協定にして、後付けなんですけれども、そしてWTO違反を回避して、これは、つまり二段階目の交渉というのをかなり期限も内容も明確化してやらなければいけないということになるわけなんです。
 というように、様々な議論が今あって、そして二段階目の交渉についてもいろんな意見出ています。お米や乳製品をもっと交渉しなければいけないとか、あるいは、自動車の方は、関税削減なんてもうとんでもないと、むしろ日本の非関税障壁を撤廃させてアメリカの車を日本にもっと売るようにしなさいとか等々やっております。
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北村経夫#16
○委員長(北村経夫君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
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内田聖子#17
○参考人(内田聖子君) はい。
 ですから、熟議が足りていないということを改めて指摘をしておきたいと思います。
 デジタルについても述べたいことはあるのですが、これはもし質問いただければお話をしたいと思います。
 ありがとうございました。
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北村経夫#18
○委員長(北村経夫君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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猪口邦子#19
○猪口邦子君 ありがとうございます。
 本日は、三人の参考人の先生から、それぞれのお立場、それぞれの観点からお話を伺いました。まず、ありがとうございます。
 まず、私の全体的な認識として、日本と世界の状況について考えますと、世界では、保護主義、ポピュリズムと自由貿易、自由主義、この相克が勢いを増しています。その中でどういうふうに日本が自由貿易推進の側に立って、そういう勢いの中でそれを推進していくことができるかというのが一つ大事なことかと思いますし、また日本は戦後一貫して資源が乏しい中成長し、自由貿易の恩恵を受けながら成長して今日に至っているという、これが基本の私の認識なんですけれども。
 そこで、中川参考人にお伺いしますが、まず今回の交渉ですが、非常に圧縮した時間の中で非常に水準の高い緊張感及び集中力を持ってそれぞれが交渉したんだと思います。先生は互角以上の成果があったというふうに説明されましたけれども、その背後にあるものはどういうことかと考えていらっしゃいますか。
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中川淳司#20
○参考人(中川淳司君) いろんな理由があろうかと思いますけど、私の見立ては、アメリカ側がどうしても早くしたかったということはあるかなと思います。特にいろんな、アメリカ・トランプ政権は発足後いろんなことをやってきていますけれども、通商協定として成果を上げたものは今回が初めてなんですね。USMCAというNAFTAを見直したやつがありますけど、あれ、まだ議会で審議中で、成果として上がっていませんし、EUとはもう交渉の入口にも立てないというところで、米中がこういう形で膠着に近いような状態で来ていますから、そういう中で通商分野で成果として選挙民にアピールできるものとしては日米、しかもそこで牛肉を取った、そういうこと、非常に象徴的な記者会見があったと思いますけれども。アメリカ側がとにかく早く目に見える成果を上げたかったということがあったと思います。
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猪口邦子#21
○猪口邦子君 つまり、アメリカの側には、やはり先ほど申し上げた相克の勢いが世界にある中で、やはり自由貿易に何らかの形で対応していくというようなことに価値を持つ無数の有権者がいて、もちろんアメリカにとっては選挙の年ですしということがあったかと思われます。
 そして、今回の協定で、先生もここで説明されたんですけど、まず交渉中においては、その協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動は取らない、それから、その後、協定が妥結した後には、日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、本協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らないと。こういう形で、私は経済や通商の方の国際法については余り通じていないんですけれども、軍縮交渉についてあるいは軍縮関連の国際法についてはいろいろ経験があるんですけれども、こういう内容ですね。
 最近では、例えばデータ・フリー・フロー・ウイズ・トラストとか、フリー・ウイズ・トラストというものを、何かこの困難な中、組み込んでいくという、こういうことが経済の方ではあるのかしらと思いますけれども、先生はこういう立て付けのこういう成果について、いかがお考えですか。
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中川淳司#22
○参考人(中川淳司君) 意見陳述のときも申し上げましたけれども、私は、いい成果、互角以上の成果という、その一つの要素はそこだと思うんですね。
 アメリカは、例えば中国に対する関係でも、三〇一条とかいろんな武器を使って中国をねじ伏せようとしてうまくいっていない、そういう感じがありますけれども、自動車を持ち出して日本とEUからディールを勝ち取ろうとしたわけですけれども、そこに対しては、交渉をスタートする段階で、まず交渉中はやらないと、でき上がった段階でこれを誠実に守る限りはやらないということで、そこを完全にねじ伏せたというか抑え込んだというところは高く評価できるところだと思います。多分、欧州の人たちも、ああ、そういう手があるのかというふうに見ているんじゃないかと思います。
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猪口邦子#23
○猪口邦子君 それでは、三人の先生方にちょっと全体のことでお伺いしたいと思うんですけれども、この自由貿易を推進するときに、まずマルチの、WTOの枠とか昔のガットの枠とかがありまして、それからこういうバイの、特に大国間バイの今度新たなこういう本格的な交渉、日本とEUのEPAのような形もあります。そして、TPPのような、TPP11のようなリージョナルマルチといいますかね、こういう形もありまして、それでTPPに戻った方がいいという御意見は、中川参考人もそうですし、内田参考人もそういう意見を表明されたと思うんですけれども。
 こういう、まずはいろいろ困難があるときに大国間協調という、グレート・パワー・コーディネーションというかコオペレーションというか、そういう一つのバイの形があって、それがまたリージョナルマルチとか大きなマルチの枠と、整合性の中でできるだけそういう交渉をしていくということの価値というのをどういうふうに考えていらっしゃるか、それぞれにお伺いしたいんですけど、まず内田参考人の方から伺っていいですか。
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内田聖子#24
○参考人(内田聖子君) ありがとうございます。
 ちょっと的確なお答えになるか分かりませんけれども、結局この今の二国間FTA、あるいはこのTPPのような地域間協定というのが、二〇〇〇年代以降、まあ米国は九〇年代以降ですけど、進んできたのは、やはりWTOが機能しなくなったからそうなってきているわけですね。
 ですから、私は、今のWTOというフォーラムは様々な問題を抱えていると思うわけですが、ですけど、やはり唯一の多国間交渉を保障する場であり、途上国も含め百六十か国以上入っていると、一国一票制であるということですので、私たちは、実は市民社会はWTOにもどんどん批判をしてきたわけなんですけれども、つまり途上国がやはり非常に不利な立場になる。
 ですけど、時代はどんどん変わっていて、もはやFTAなどでどんどんいろんなレベルのいろんなルールが生み出されて、それが込み入ってスパゲッティボウルというような状況になるくらいであれば、やはりきちんと原点のWTOというところに返って、やはりそこできちんと合意をつくって、透明性も高め、民主的な意見、意思決定をするというところが今一番世界の経済体制、貿易体制が直面していることなのかと。ですから、WTOというところに戻る。
 その意味で、アメリカはやはりWTOを非常に軽視していて、問題だという行動を取っていると思っております。
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猪口邦子#25
○猪口邦子君 まさに今申し上げたようなこういう保護主義、ポピュリズム対自由貿易の中で、様々なこういう努力ですね、TPP11もそうですし、今回の、昔だったらグレート・パワー・ウオーズの時代だったのが、今度はグレート・パワー・コオペレーションのこういう流れをつくって、WTOがその本来の任務をする、そういうモメンタムをつくる努力をそれぞれがするべきだというようなことにつながればと思いますが、鈴木参考人と中川参考人、今、私が先ほどからお伺いしているこういうマルチ、それからバイ、そしてリージョナルマルチ、それがどういう相乗効果を持つかということについてお伺いします。
 鈴木参考人、お願いします。
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鈴木宣弘#26
○参考人(鈴木宣弘君) 私も基本はWTOのような形のマルチの交渉が重要であると。WTOが全ていいわけではございませんが、無差別原則でみんなに同じ条件を与えつつ、世界が全体で発展するようにという考え方が重要で、特に日米のような大きな経済圏がその二国間だけで差別的な協定をやる、しかも部分的な協定をやるということは世界の貿易をゆがめる要素が強いと。これは経済学的にも日本が議論してきたことで、そもそも二〇〇〇年までは日本はWTOを重視して二国間協定を否定してきました。国際経済学者もそういう方がほとんどだったと思います。
 そういう中で、WTOが機能しなくなってこういう事態になっておりますけれども、やはり内田さんも言われたとおり、そろそろ、これだけいろんな協定ができて、いろんなルールが錯綜してくると、いろんな弊害も出てくるということで、特に日米貿易のような形の協定は、以前はこれは一番あってはならない協定だと国際経済学者の方々も言っておられた方が多かったと思います。
 そういう意味で、こういう形の弊害も見直しつつ、全体として平等に発展できるような仕組みをどうつくるかということを議論すべきじゃないかと思っております。
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北村経夫#27
○委員長(北村経夫君) 時間が来ておりますので、簡単におまとめください。
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中川淳司#28
○参考人(中川淳司君) WTOが今機能しないので、現実には有志国でデジタル貿易ルールを決めるという、もうそれしかないと思います。その場合に、日米で今回決めたルールというのを反映していくというのが現実的にはベストなシナリオだと思っています。
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猪口邦子#29
○猪口邦子君 ありがとうございました。終わります。
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