桃井貴子の発言 (経済産業委員会)

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○桃井参考人 気候ネットワーク東京事務所の桃井と申します。
 このたびは、このような発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 気候ネットワークは、市民の立場から気候変動問題に取り組み、原発に頼らず化石燃料による温暖化もない持続可能な脱炭素社会を構築することをミッションに、活動を展開しています。
 本日は、お手元に資料を配らせていただきましたので、これに沿いながらお話をしたいと思います。
 現在、世界じゅうで森林火災や洪水、熱波など気候変動の影響があらわれ、甚大な被害が起き始めています。コロナの危機は数年のうちに終息することが期待されますが、気候の危機は、今後事態がより深刻化することが科学的にも明らかで、人類が直面する最大の危機です。
 今、エネルギー政策に求められているのは、こうした気候危機への対応、そして、東日本大震災の原発事故や北海道での石炭火力発電所停止によるブラックアウトなど、大規模集中型電源がもたらした悲惨な状況を乗り越えることであり、そのために再エネを主力電源化するという方向に徹底することだと考えています。
 しかし、今回のエネルギー供給強靱化法案として束ねられた法案は、化石燃料への依存を高め、再エネ普及にブレーキをかけることになりかねないと考えています。
 まず、JOGMEC法についてです。
 最も懸念していますのは、JOGMECの業務拡大の範囲に燃料調達が含まれたことです。
 JOGMEC法改正案第十一条二の三で、「電気事業法第三十三条の三の規定による燃料の調達を行うこと。」が加えられています。また、電気事業法第三十三条三には、経済産業大臣は、電気の安定供給の確保に支障が生じ、又は生ずるおそれがある場合において、発電の用に供する燃料の調達が特に必要であり、かつ、JOGMEC以外の者による調達を困難とする特別の事情があると認められるときは、JOGMECに対し、当該燃料の調達を要請することができるとしています。
 世界的に今金融機関や投資家らによる化石燃料産業からの投資撤退、いわゆるダイベストメントが進み、その影響から、最近日本でもようやくさまざまな商社が石炭事業から手を引くことを宣言し始めています。
 例えば、三井物産は二〇一七年に燃料用石炭を産出する鉱山の新規開発から撤退を表明、二〇一八年には三菱商事がオーストラリアの炭鉱を売却、二〇一九年には伊藤忠商事が新規の石炭火力発電所関連事業からの撤退とともにオーストラリアの石炭権益の一部売却を表明しています。
 本来、この状況下で政府に求められるのは、こうした化石燃料資源からの脱却の流れを加速させ、再エネの拡大を着実に図り、安定的にエネルギー転換を促進させていくことだと思います。
 しかし、この法案はむしろその逆で、化石燃料資源の調達を民間企業が手放していることを背景に、政府が率先してJOGMECに燃料調達をさせるということができるものです。
 有事への対応などと説明していますが、気候変動こそが人類が直面する世界最大の危機であり有事ではないでしょうか。政府として対応すべき優先順位が全く誤っていると思われます。
 まずは、パリ協定に整合する一・五度に気温上昇を抑制するべく、現在のエネルギー基本計画及びエネルギーミックス自体を早急に改めることが先決だと思います。
 この間の経済産業省の政策を見ますと、石炭に対しては、やり過ぎとも言える手厚い保護を行っています。
 例えば、ことし七月から第一回目の入札が行われる予定の容量市場は、四年後に発電可能な電源であることを前提に、原発や石炭火力を含めた発電所に事実上の補助金が支払われます。いつまでも原発や石炭火力を不公正に保護する非常に問題の多い仕組みです。複数のオプションが真剣に検討されることもなく、安定供給や有事への対応を理由に導入されています。
 また、二〇一二年以降に数々浮上した石炭火力発電所の建設計画に対する環境アセスメントのプロセスでは、気候変動の最大の要因と言える石炭を燃料とすること自体に疑義を唱えることなく、全ての計画に確定通知を出しています。
 さらに、省エネ法ベンチマーク制度においてさえも、副生物活用、コジェネ、バイオマスの混焼によって発電効率を見かけ上高く見せることができる仕組みや、共同実施でベンチマーク達成を容易にする方法がとられ、実質的に石炭火力を利用し続けることを認めています。
 結局、石炭火力をとめるブレーキすら何もない状況です。まさに国連事務総長から指摘を受けた石炭中毒そのものをあらわしていると思います。
 その中での今回のJOGMEC法改正は、パリ協定のもとで日本の民間事業者などにもあらわれ始めた脱石炭の機運を潰し、むしろ時代錯誤の石炭の継続利用へとぶり返しになりかねません。これは同じくLNGの確保についても同様です。本法案の必要性は認められません。廃案にするべきだと思います。
 一方、気候変動対策の切り札である再生可能エネルギーは、今後の国内での飛躍的な拡大が求められるところです。エネルギー基本計画において、再エネは主力電源化することが位置づけられました。しかし、それにもかかわらず、二〇三〇年エネルギーミックスで二二から二四%という非常に低い割合は見直されていません。再エネを主力電源化するためには、まず、それをあらわす五〇%以上の目標の設定が不可欠だと思います。
 また、これまでは大手電力会社が新たに再エネを新設しようとする事業者に電源線の送配電網費用として多額の費用負担を求め、そのために再エネ普及が阻害されてきました。今回の託送料金見直しは、基幹系統の整備だけであって、再エネ事業者に生じる問題を解決するものになっていません。
 日本で最もポテンシャルが高いと言われている風力発電は、再エネの中でも今後の主力電源の柱になるべき電源と言えると思います。しかし、これまで系統制約や環境アセス手続などで十分な普及が進みませんでした。海外では、再エネが石炭火力などよりも価格が下がり、競争力ある電源になっていますが、日本での発電コストの単価は競争力を持つまでの途上にあります。
 再エネの大幅普及のためには、容量市場で石炭や原発を守り、経済的に救済するような制度を図る以前に、再エネの事業の安定的な拡大のための優先接続を図ることが必須です。このような過渡期にあって、今回の、再エネを普及するという名目でフィード・イン・プレミアムに移行するのは時期尚早であり、拙速過ぎます。本制度が更に再エネの普及拡大にブレーキをかけてしまうことになるのではないかと懸念しています。大規模事業者からコミュニティー規模の事業者まで、再エネ事業の大幅な拡大に寄与する制度となるよう慎重な設計が必要です。
 エネルギー転換は、気候変動の危機に対する日本経済のつくり直しを意味します。脱炭素化に向けたエネルギー転換を図ることを通じて、新たなビジネスや雇用を生み、日本の安定的な経済社会を築くことを目指す必要があり、そのためのインセンティブを付与することが政府そして政治の役割ではないかと思います。化石燃料にしがみつくために政府が一翼を担うという今回のような法案を今成立させようとしていることの意味や、時代の波に逆らうような動きをぜひ問い直していただきたいと思います。
 有事への対応は、さまざまな再生可能エネルギーをふやし、海外の化石燃料依存を減らし、燃料輸入で海外に流出するお金を国内の地域で循環させることで対応する、それが、強靱で気候に優しく、豊かな社会をつくる方向性だと思います。
 私たちが考えるこれからの日本のエネルギーについて、お手元にパンフレットを配らせていただきました。こちらもあわせてごらんいただければと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 桃井貴子

speaker_id: 16309

日付: 2020-05-20

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会