尾上浩二の発言 (国土交通委員会)

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○尾上参考人 NPO法人ちゅうぶ代表理事の尾上浩二と申します。
 きょうは、お招きいただきまして、ありがとうございます。
 提出いたしました資料に基づいて発言をさせていただきます。
 私は、子供のときから脳性麻痺の障害がありまして、養護学校、入所施設を経まして、地域の中学校、高校に進んだ後、大学に入学をいたしました。その学生時代から、四十年以上にわたり障害者運動にかかわってまいりました。現在、日常的に電動車椅子を利用して生活をしております。
 私は、特に大阪でのバリアフリー運動に当事者の立場からかかわってまいりました。全国に先駆けて制定された大阪府福祉のまちづくり条例や大阪市ひとにやさしいまちづくり、いずれも一九九三年でございますけれども、こういったものを推進してまいりました。さらに、この国会では、二〇〇〇年の旧交通バリアフリー法制定時にも参考人として意見陳述をさせていただいたものであります。
 そういった経験をもとに、今回の法案への評価を述べさせていただきます。
 まず一つ目ですけれども、心のバリアフリーと社会モデル、障害者差別解消の関係でございます。
 今回の改正法案のキーワードが心のバリアフリーということだと思うんですが、心のバリアフリーとは一体何か、その意味を明確にすることが重要なのではないかと思うんですね。
 決して思いやりといったような情緒的な解釈に流れることのないよう、二〇一七年に決定をいたしましたユニバーサルデザイン二〇二〇行動計画、そこで記されました次のような三点に基づいて進めていくことが重要だと考えます。
 その三点というのはこういうことです。
 一つ目、「障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。」二つ目、「障害のある人(及びその家族)への差別を行わないよう徹底すること。」三つ目、「自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。」こういったことが書かれているわけですね。
 今回の法律改正を受けて今後進められる国の基本方針やあるいは自治体のマスタープラン、その中で心のバリアフリー特定事業というものも設けられると聞いております、そういったもの、そして、各種研修などにおいて、この社会モデルの理解、そして障害者差別を行わないよう徹底する、このことが今回のバリアフリー法改正の中での心のバリアフリーということの肝であるということをぜひ御確認いただければと思います。
 そして、二つ目でございます、学校のバリアフリーの義務づけです。
 本改正で、小学校、中学校のバリアフリーが義務づけされることは高く評価をいたします。小さなときからともに学び共生の体験をする、そのことが心のバリアフリーの基本であり、学校のバリアフリーの義務づけは、インクルーシブ教育の基礎的環境整備という意味で非常に大きな意義があると思います。また、学校は、避難所や投票所といった地域住民にとって重要な地域施設であります。そういったものの整備としての意義も大きいと考えます。
 特に、この問題、ハートビル法、一九九四年につくられたものですが、それ以来、四半世紀にわたる長年の課題でしたが、ようやく今回の改正に至ったというのは本当に期待をするところなんですが、着実にこの期待を現実にしていただけるようにバリアフリー化が進むようにしていただければなと思うんです。
 今、少子化の時代の中で、小学校や中学校が新設されるということはほとんどないと思うんですね。ということは、つまり、学校というのは既存物なわけです。ということは、このバリアフリー法では既存物は努力義務なんですね。今回の改正の実効性を持たせるためには、国、自治体ともに、数値目標の設定や実施計画を策定する、並びに十分な予算措置を行う、そういったことをお願いをしたいと思います。
 また、移動円滑化促進地区や基本構想重点地区、そういったものの中で学校の積極的な位置づけというのを今後つくられる基本方針の中で示していただければと思うんです。
 この点にかかわって、私自身がかかわった二つの経験、事例をお話しいたします。
 まず一つは、そういう目標や実施計画の必要性ということですが、大阪市のひとにやさしいまちづくり整備要綱というもの、一九九三年、そのときから、小学校、中学校も含めて、学校のエレベーターなど、これを整備基準としておりました。と同時に、一九九一年から計画的に学校のバリアフリー化を進めてきたわけです。その結果、去年の七月現在、大阪市立の小学校二百七十六校、中学校百二十七校、すなわち合計四百十八校中四百三校、九六・四%にエレベーターが設置されるようになったわけです。
 つまり、今回義務づけするとともに、どうやって実施計画まで持っていくか、あるいはそれに伴う予算を確保するかということが重要ではないかと思うところであります。
 そして二つ目ですけれども、兵庫県の明石市、この春にマスタープランができましたけれども、全市方針として学校のバリアフリー化を掲げるとともに、移動円滑化促進地区において、小学校は二十八校中十四校、中学校は十三校中六校、要は半分ぐらいが生活関連施設というふうに位置づけられています。
 こういった事例も含めながら今後の基本方針の中でしっかりと位置づけていただければということと、あと、学校に関しましては、高校、大学、そして私立の学校、今回残念ながらバリアフリーの義務づけになっていないものにおいてもバリアフリー化が推進するような施策を進めていただければと思います。
 さて、三点目でございます、バリアフリー設備の適正な利用ということです。
 円滑な利用、その前提は、表示や情報提供であります。例えば、地下街への連絡ビルにエレベーターが設けられることがあったりするんですが、どのビルにエレベーターがあるか、ぱっと一目で見てわからないんですね。わからなければ、使いようがありません。バリアフリー設備の表示や情報提供ということを徹底していただきたいということと、そして、適正な利用の具体的な内容については、社会的障壁の除去、利用者の利便性の向上という視点から当事者参画のもと決めていく、そういったことをしっかりと進めていただければと思います。
 四点目ですけれども、今回設けられますソフト基準適合義務ということについて、この実効性確保、そしてUDタクシー車両のさらなる改善をお願いをしたいと思います。
 去年十月、障害者団体の調査によりますと、UDタクシー利用の際に、二七%、四分の一を超える車椅子利用者が乗車拒否に遭った、そういう結果が明らかになっています。残念なことであります。
 バス、タクシーなどでの乗車拒否防止策として、このソフト基準適合義務、着実に効果が上がるようにしていただければと思うんですが、そのためには、対応に当たる職員への研修を義務づけるとともに、研修を受けられる仕組み、いわば仕事として研修を受けられるといいますか、そういう仕組みを導入をしていく、そして、研修修了者数を事業者が毎年定期報告をするようにしていただきたいということですね。
 それとあわせて、スムーズに乗降できるよう、やはり現在のUDタクシーはまだまだ乗降に手間がかかり過ぎます。これは当事者参画が不十分な状態で開発された結果だと思うんですね。当事者参画のもと、UDタクシー車両のさらなる改善と認定要領の見直しも進めていただきたいと思います。
 さて、五点目でございます、用途別の規模設定や社会的障壁除去のための基準設定など、建築関係の抜本的見直しをお願いしたいと思います。
 小規模店舗、ホテル、共同住宅といった建物関係については、課題が山積をしている状況であります。建物関係については、抜本的な見直しがぜひとも必要な状況にあると考えています。
 例えば、今回の改正でホテルや飲食店の認定と情報提供が盛り込まれていますが、そもそも利用できる店舗が限られている、そのことに問題があるのではないでしょうか。例えば、先週開設されました「だれでも東京」という情報サイトを調べてみますと、車椅子利用可能な店舗、飲食店は、新宿でわずか五店舗、御茶ノ水で二店舗しかない、そういうヒットしない状況なんですね。
 特に、物販や飲食など日常的に利用する小規模のバリアフリーは大きく取り残されたままにある、そのことを御認識いただき、早急な対応が必要だということを確認したいと思います。例えば、入り口の段差解消、扉幅の確保、車椅子でも着席できる可動席といった項目だけでも基準化するだけで、大分変わるのではないでしょうか。
 また、二千平米以上のテナントビルでは、ビル全体はバリアフリー化されていても、各店舗の中に残念ながら段差が設けられたり、固定席のみで車椅子で着席できない、そういった場合が往々にしてございます。
 率直に申しまして建物関係は、現行法では全ての用途で一律に二千平米以上の規模面積のものを対象にするという、非常に、ある意味で粗っぽいといいますか、そういった規定が問題なのではないかなと思うんです。用途によって規模が異なるのは当然であります。それぞれの分野で一定の割合をカバーするような、用途別の規模設定が必要ではないでしょうか。
 さらに、二〇一八年のバリアフリー法改正で、一条の二、基本理念として、社会的障壁の除去と共生社会の実現が創設されました。そのことを踏まえて、各用途の機能、サービスを利用する際の社会的障壁の除去に資するよう、店舗内やホテル居室内などの機能、サービスに着目した整備項目、情報バリアフリーも含めた整備項目を設け基準化することが必要ではないかと考えます。
 そして、六点目、マスタープラン、基本構想、委任条例の促進に向けた自治体支援の強化をお願いしたいと思います。
 この基本構想、バリアフリー法の中ではとても大切な仕組みだと考えていますが、この十年間、基本構想の策定は低調なまま推移してきております。また、二〇一八年に設けられましたマスタープラン制度、これは今後の発展に期待をいたしますけれども、まだ大きなインパクトをもたらすまでには至っておりません。委任条例も、二〇〇六年以降十四年を経た現在でも、わずか二十の自治体どまり、そういう状況にあります。マスタープラン、基本構想、委任条例、これらの促進に向けた施策や自治体支援の強化が必要と考えます。
 七点目として、より一層の取組が求められる課題ということを申し上げます。
 本改正以降検討されるバリアフリー基本方針などにおいて、以下の項目について十分な検討と明確な目標を定めていただければと思います。
 空港バス、長距離バスなどのバリアフリー化。わずか十七台しかバリアフリー化されたものがないという現状、こういった現状を変えていくために、基準適用除外認定というものを速やかに解除いただきたいと思います。ホームドアの設置促進、並びにホームと車両乗降口の段差やすき間の解消。あるいは、三千人未満の駅などのバリアフリー化。無人駅問題対策、並びに無人駅におけるバリアフリー対策。さらに、新幹線や特急車両におけるフリースペース設置。さまざまな課題、これらをより一層取り組んでいただければと思うわけです。
 それと、二〇一八年の改正で創設されました評価会議、これは当事者が参画をし評価をする大切な仕組みですが、これをより一層充実をしていただきたいと思うわけです。とりわけ、全国に十設けられました地域分科会、今、去年は年一回ずつしか開催されていません。年一回だと、名刺交換で終わってしまいます。そうではなくて、やはり国並みに年複数回開催をいただきたいと思います。
 最後に、障害者権利条約の国連審査を踏まえて、さらなる見直しをお願いをしたいと思います。
 二〇一四年に批准をしました障害者権利条約に関して、今後、国連での審査が予定をされています。コロナウイルスの関係で時期は流動的でありますが、ことしから来年には国連障害者権利委員会から勧告が出される予定であります。障害者権利条約との整合性という観点からも、さらなる法律の見直しをお願いをしたいと思います。五年後ということまで待つことなく、障害者権利委員会からの勧告を受けて早急な見直しをお願いをしまして、私の発言にかえさせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120104319X00520200331_004

発言者: 尾上浩二

speaker_id: 11206

日付: 2020-03-31

院: 衆議院

会議名: 国土交通委員会