藤野保史の発言 (法務委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○藤野委員 やはりよくわからないんですね。
私は、森大臣の一連の答弁やぶら下がり等の対応も、これは法務大臣としては到底許されないと思います。同時に、何で法務大臣がこういう対応に陥ってしまったのか。これはやはり安倍総理が、安倍政権が黒川検事長の定年延長という極めて無理筋の閣議決定を行ったからなんですよね。その総理が森大臣を厳重注意する。まさにブラックジョークのような話だと私は思います。
やはり謝罪、撤回すべきは安倍総理であって、撤回すべきは安倍政権が行った閣議決定そのものだと思います。このことも厳しく指摘しておきたいと思います。
その上で、定年延長そのものをめぐっても、今の、事実をねじ曲げたり、いろいろしていくというのは繰り返されているんですね。配付資料の一をごらんいただきたいんですけれども、これは法務省が三月五日の法務委員会理事懇談会に提出してきた文書であります。全部つけているので申しわけないんですが。
実はこれは、当初は野党からの資料請求だったんですが、理事懇での議論の結果、与党の皆様の御了解も得て、法務委員会理事懇談会として正式に文書で対応を法務省に求め、それに対して法務省が文書として回答してきたものです。非常に重みのあるものだと私は受けとめております。
この四枚目を見ていただきますと、上の丸というのは理事懇側からの要求なんです。解釈変更を是とする法務省としての今般の意思決定に至る過程及び結果を跡づけ又は検証できる文書の提出、これを求めました。それに対して、回答として、法務省から、今般の解釈に関する意思決定過程等を明らかにする文書として、三つの文書が提出をされました。
そのうち、きょうは、主に「検察官の勤務延長について(二〇〇一一六メモ)」、これは資料の八枚目になるんですが、これを見ていただきたいと思うんですね。ここにこういう記述があります。
検察官の定年に関する規定については、昭和六十年の国公法改正により一般の国家公務員に関する定年制度が導入される以前に存在していたことから、定年年齢に差異がある点については、職務と責任の特殊性に由来するというほかはないが(伊藤栄樹「新版検察庁法逐条解説」)、検察官の定年制度そのものの趣旨としては、検察庁法のいわば前身である裁判所構成法(明治二十三年法律第六号)の審議においても、後進のために進路を開いて新進の者をしてその地位を進めして、もって司法事務の改善を図るということの目的のためになどと説明されていたところであって(第四十四回帝国議会衆議院)、適正な新陳代謝の促進等により能率的な公務の運営を図るといった国公法の定年制度の趣旨と差異はないと考えられる、こういう記述なんですね。
つまり、戦前の裁判所構成法と今の国公法は趣旨が同じなんだから、国公法で検察官に定年延長を認めてもいいよ、こういう論立てになっております。これは本当にそうなのか。
せっかく法務省が第四十四回帝国議会というものを示していただいたので、私は読んでみました。配付資料の二を見ていただきたいと思うんですが、これは、一九二一年、大正十年になりますけれども、二月七日、貴族院本会議の質疑であります。仲小路廉議員の質問で、ちなみにこの方は検事なんですね、こうおっしゃっています。
是ニ付マシテ私共ノ疑ヲ懐キマス点ハ、第一ニ判事ニ対シテ之ニ一定ノ年限ヲ定メテ、其年限ニ到達スレバ其職ヨリ之ヲ退カシムルト云フコトガ、是ガ憲法ニ牴触ハシナイノデアルカ、此憲法ノ精神ニ違フヤウナコトハナイカ、是ガ第一ノ疑デアリマス、ト申スハ憲法五十八条
これは大日本帝国憲法ですけれども、
憲法五十八条ニ於テ、「裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其職ヲ免セラルヽコトナシ」斯ウアル、然ニ今度ノ規定ニ依レバ裁判官ガ或一定ノ年限ニ達スルト其職務ヨリ退カシムル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアルカラ、スレバ今度ノ規定ハ憲法五十八条ノ規定ト牴触ハシナイカ、是ハ私ノミナラズ同僚各員ニ於テ多ク懐カレル疑問デアリマス、
こういう質問なんですね。
つまり、四十四回帝国議会では、裁判所構成法に定年制度、定年延長制度を導入することが、当時の大日本帝国憲法五十八条、司法の独立を害するのではないかということが大問題になったんですね。
この質問に対して答弁をしたのが原敬総理大臣、史上初の政党内閣を率いた総理大臣であります。
二ページ飛ばして、二百四十一ページの下段の方を見ていただきたいんですが、原総理はこう答弁しております。
今日提案イタシテ居ルヤウナルコトハ、左様ナル種々ノ弊害ヲ予期シテ、是ハ不当ナル案ナリト断定スルベキモノデハナカラウト考ヘル、ナゼト申スノニ、憲法ニ於テ裁判官ノ位置ヲ保証セラレタルノモ、裁判所構成法ニ於テ之ヲ保障シテ居ルノモ、要スルニ行政官ノ意思ナドニ依テ、勝手次第ニ裁判官ノ位置ヲ動カシテハ相成ラヌト云フ精神ヨリ、保障シテアルノデアリマス、
ちょっと飛びますが、
行政官ノ意思ニ依テ動カスコトガ宜シクナイト云フガ為ニ、憲法並ニ裁判所構成法ノ規定アリタリト解釈イタスノガ適当ナリトシマスレバ、今回提出ノモノハ行政官ノ意思ニ依テ動クノデアリマセヌ、
つまり、大臣、第四十四回帝国議会では、行政官の意思によって司法への介入に道を開くのではないか、裁判所構成法はそれに道を開くのではないかという懸念が示されて、当時の総理大臣始め、ほかの議事録にも、大臣とか役人が繰り返し繰り返しこれを否定しているんです。(発言する者あり)いや、これはきょう、時間の関係で、やるんですが、後でそれは、じゃ、言いましょう。
要するに、行政官の意思で勝手次第に裁判官の位置を動かしては相ならぬ精神、これこそが裁判所構成法の根本的な趣旨なんですよ。提案者の内閣トップである総理の答弁から明らかであります。
これを今になって、事もあろうに、その行政官である法務省が行う解釈変更の根拠にするなど、大臣、これは許されないんじゃないですか。