安倍晋三の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(安倍晋三君) 斉藤鉄夫議員にお答えいたします。
 被災地の復旧復興と国土強靱化の推進についてお尋ねがありました。
 昨年の台風第十五号、第十九号等によりもたらされた甚大な被害に対し、政府としては、昨年取りまとめた対策パッケージに基づき、被災地の復旧復興に向けた取組を全力で進めているところです。
 また、集中豪雨、地震、激しい暴風、異常な猛暑など、異次元の災害が相次いでいる現状を踏まえ、平成三十年に三カ年緊急対策を策定するなど、国土強靱化の取組を抜本的に強化し、災害に屈しない国土づくりを進めてきております。
 その上で、令和元年補正予算案では、災害からの復旧復興と安全、安心の確保として約二兆三千億円を確保し、復旧復興の加速化のほか、昨年の台風被害等を踏まえ、河道掘削や堤防強化などの水害対策を中心に、更に国土強靱化の取組をパワーアップさせております。
 これらの予算を活用するとともに、防災、減災をソフト面から進めるための法案を今国会に提出するなど、ハード、ソフトを組み合わせた対策を総動員できる体制を整えます。
 引き続き、被災者の生活となりわいを一日も早く取り戻すことができるよう、被災地の復旧復興に全力を尽くすとともに、令和三年度以降も、必要な予算を確保し、オール・ジャパンでインフラ老朽化対策を含む防災・減災、国土強靱化を進め、災害に強いふるさとをつくり上げてまいります。
 東日本大震災からの復興についてお尋ねがありました。
 復興・創生期間後の体制については、昨年十二月に閣議決定した復興の基本方針に基づき、今国会に所要の法案を提出すべく、準備を進めているところです。また、この基本方針においては、今後五年間の事業規模を一兆円台半ばとし、その財源の見通しについてもお示しをしたところです。これらを踏まえ、本年夏ごろを目途に、新たな復興財源フレームを定める考えです。
 これらにより、復興・創生期間後も、復興庁を司令塔に、政治の責任とリーダーシップのもとで、福島の本格的な復興再生、東北復興の総仕上げに取り組んでいくこととなりますが、議員御指摘の五年目の再検討に当たっては、その際に、復興の進捗状況や被災地の実情等を踏まえて柔軟に対応してまいります。
 気候変動対策及びエネルギー政策についてお尋ねがありました。
 我が国は、五年連続で温室効果ガスの排出量を削減しています。これは、G20の中で日本と英国のみであります。合計で一一%を超える削減は、G7の中で英国に次ぐ大きさであり、パリ協定に基づく削減目標の実現に向けて、日本は世界の中で積極的に取り組んでいます。
 エネルギー政策においても、安全性という大前提のもと、安定供給の確保、経済効率性の追求、地球環境問題への対応といった観点について、バランスをしっかりとりながら、今後とも、再エネの主力電源化や徹底した省エネを進め、責任あるエネルギー政策を展開してまいります。
 その上で、長期戦略に掲げた脱炭素社会の早期実現には、非連続なイノベーションが不可欠です。このため、米国、EUなどG20の研究機関、世界の英知を結集し、人工光合成を始めとした革新的イノベーションによるビヨンドゼロにも挑戦いたします。
 こうした取組を通じて、日本として、これからも世界における気候変動問題への対応をリードしていく考えであります。
 年金改革と労働法制についてお尋ねがありました。
 全世代型社会保障は、人生百年時代の到来を見据えながら、働き方の変化を中心に据えて、年金、医療、介護、社会保障全般にわたる改革を進めるものです。
 その中で、年金制度においても、多様な就労への対応、より長期にわたって働くことへの支援、みずからの選択によって高齢期の経済基盤の充実を図ることができるための環境整備を進めることが必要です。
 このため、年金制度について、パートの皆さんへの厚生年金の適用を、中小企業への生産性向上支援、社会保険手続の負担軽減を行いながら、従業員五十人を超える企業まで段階的に拡大し、自分で選択可能となっている年金受給開始時期の上限について七十五歳に引き上げ、在職老齢年金については、働くインセンティブを失わせることのないような見直しを行っていくこととしています。
 また、労働法制に関しては、働く意欲のある高齢者が年齢にかかわらず働くことができる環境を整えるために七十歳までの就業機会の確保を図り、労働施策総合推進法を改正して大企業に中途採用、経験者採用比率の開示を求め、多様で柔軟な働き方が可能となるような見直しを行い、兼業や副業で働く方については、セーフティーネットを構築するための法制化を進めます。
 さらに、兼業や副業の拡大に向けて、労働法制における労働時間規制及び割増し賃金の取扱いについて検討を進め、いわゆるフリーランスについては、内閣官房において、関係省庁と連携し、一元的に実態を把握、整理した上で、全世代型社会保障検討会議の最終報告に向けて検討を進めます。
 こうした改革を通じ、支え手をふやしながら、令和の時代にふさわしい年金制度と労働法制を構築してまいります。
 介護予防、健康づくり、認知症施策の推進、がん対策の強化についてお尋ねがありました。
 高齢化が進む中、元気で社会参加意欲の高い高齢者がふえる一方で、閉じこもりがちな高齢者や孤独感を感じる高齢者もおられるなど、多様化する高齢者の地域での生活を支えていくためには、介護事業者によるサービスに加え、住民が主体となった多様な取組を広げていくことも重要です。
 御指摘のとおり、通いの場は、全国で十万カ所を超え、ほとんどの市町村で取組が行われています。
 今後は、より多くの高齢者にとって魅力あるものとしていくため、例えば、体操、健康講話、会食、趣味の集いなど多彩なメニューを用意すること、保健師等の専門職が節目節目にかかわって健康に関するアドバイスをすることなどを、自治体への介護インセンティブ交付金の抜本的な強化を通じて進めていきます。
 認知症施策については、昨年六月、共生と予防の取組を車の両輪として施策を推進する認知症施策推進大綱を取りまとめたところです。
 認知症初期集中支援チームについては、御指摘のとおり、今年度において全ての市町村に設置されたところであり、今後は、大綱に基づき、先進的な活動事例の収集や横展開に取り組んでまいります。
 人生の最終段階で、がん患者が痛みや気持ちのつらさを抱えて過ごしており、痛みをコントロールする緩和ケアの充実が重要です。がん対策における緩和ケアについては、医療機関の医療従事者への研修を推進しており、この一年間で昨年度を四千人上回る一万五千人が研修を修了しています。また、令和二年度には、がんの痛みを和らげるなど、在宅医療を担うかかりつけ医等の人材育成にも対応してまいります。
 がん教育については、全国において正しい理解や知識の普及が進むよう、教師等への研修の実施など各種施策に取り組みます。また、医師等の外部講師の活用については、文部科学省と厚生労働省が連携して、体制整備を積極的に推進してまいります。
 少子化対策についてお尋ねがありました。
 少子化の問題は、結婚や出産、子育ての希望の実現を阻むさまざまな要因が絡み合って生じており、希望出生率一・八の実現に向けて、これらを一つ一つ取り除いていくことが重要です。
 これまで、公明党との強固な連立政権のもと、さまざまな少子化対策、子育て支援施策を実現してきました。その上で、昨年、恒久財源を確保した上で、幼児教育、保育の無償化という、小学校、中学校九年間の普通教育無償化以来、七十年ぶりの大改革を実現させたところです。
 今後とも、必要な財源を確保しながら、総合的な少子化対策を推進することで、希望出生率一・八の実現を目指してまいります。その具体化のため、今年度内に策定を予定している新たな少子化社会対策大綱において、目標実現に向けた道筋を示すとともに、結婚、子育てを社会全体で応援するという力強いメッセージを発信していきたいと考えています。
 女性活躍の取組についてお尋ねがありました。
 安倍内閣では、女性活躍の旗を高く掲げ、女性活躍推進法の制定などに取り組んできた結果、女性の就業者は二百八十万人以上ふえました。保育の受皿整備を進めるなどにより、M字カーブも確実に解消に向かっています。
 また、有価証券報告書に女性役員数の記載を義務づけたほか、取締役のうち少なくとも一人は女性が含まれるようコーポレートガバナンス改革にも取り組んできました。その結果、この七年間で、上場企業の女性役員は三倍以上ふえました。
 さらに、昨年、女性活躍推進法を改正し、行動計画の策定義務の対象を従業員百人を超える事業者まで拡大したところです。二年後の施行に向け、政府としては、中小企業に対し、個別企業訪問による計画策定の支援や助成金の支給など必要なサポートを行うことにより、女性活躍の裾野の拡大に努めていく考えであります。
 今後とも、政府一丸となって、全ての女性が輝く社会の実現に向けて、あらゆる施策を総動員してまいります。
 一人親に対する支援施策についてお尋ねがありました。
 未婚の一人親に対する税制上の対応については、全ての一人親家庭に対して公平な税制を実現する観点から、死別、離別の場合と同様の条件で控除を適用することとしました。
 今通常国会に所要の改正法案の提出を予定しておりますが、早期の成立をお願いし、改正法案の成立後は、新たに対象となる方に控除が適切に適用されるよう、周知徹底を図ってまいります。また、控除の申告の際には、婚姻歴の有無が職場などに知られないよう、プライバシーに配慮した制度設計とするよう努めてまいります。
 障害年金については、現在は、障害年金額が児童扶養手当額を上回ると児童扶養手当が受給できない仕組みとなっておりますが、児童扶養手当の受給が可能となるよう、障害年金との併給調整の方法を見直すこととしており、所要の法改正を今通常国会に提出することを予定しております。
 中小・小規模事業者への支援についてお尋ねがありました。
 全国三百五十八万者の中小・小規模事業者は、オンリーワンの技術やサービスで日本の経済成長を支え、雇用の七割を担う経済の屋台骨であります。
 まず、成長の果実を全国の中小・小規模事業者の皆さんに広く行き渡らせるため、下請取引のさらなる適正化に取り組んでまいります。七年前、十年ぶりの大改正を行った下請振興基準を、更に改正し、対象を拡大します。大企業に対しても、新たに金属産業、化学産業で、自主行動計画の策定を求めます。業界ごとの取引慣行に詳しい専門人材を下請Gメンに採用し、監視、取締りを強化していきます。
 昨年は、九割近い中小企業で賃上げが実現しました。この流れを更に加速するため、三千億円を上回る、ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金により生産性向上を後押しするとともに、社会保険手続の電子化により負担軽減を進めます。
 さらに、経営者の多くが六十歳を超える中で、事業承継は待ったなしの課題であります。全国四十七都道府県に設置した事業引継ぎ支援センターにおいて、事業承継を希望する企業のデータベースの登録件数を倍増させ、マッチング機能を強化するなど、引き続ききめ細かな支援を行っていきます。
 若い世代の承継を阻む最大の壁は、個人保証の慣行です。
 この春から、先代の経営者と後継者から個人保証をとる、いわゆる二重取りを原則禁止いたします。商工中金では、今月から、年間三万件、二兆円の新規融資について、個人保証なしの融資を原則とする運用を開始しました。
 信用保証協会では、個人保証なしで後継者の皆さんの融資を保証する新制度を四月からスタートします。経営者の磨き上げ支援も行い、専門家の確認を得た後継者には保証料をゼロとします。
 個人保証の慣行は新しい世代には引き継がないとの強い決意で、あらゆる施策を総動員してまいります。
 農林水産業の活性化と、CSF、ASF対策についてお尋ねがありました。
 安倍内閣では、輸出促進や農地集積など、農林水産業を成長産業とするための政策を全力で進めてまいりました。これにより、農林水産物の輸出は六年連続で過去最高を更新し、昨年、EUへの牛肉や米の輸出は約三割ふえるなど、着実に成果があらわれています。
 一方で、我が国の農林水産業が高齢化や担い手不足といった課題に直面する中で、こうした政策を更に進めていくためには、中山間地域や中小・家族経営も含め、幅広く生産基盤の強化を図ることが欠かせません。農地の大規模化、牛の増産や水産業の生産性向上など、三千億円を超える予算で生産基盤の強化を進め、国際競争や災害にも負けない強い農林水産業、農山漁村を構築してまいります。
 CSFについては、一刻も早い終息に向けて、引き続き、防疫の基本である飼養衛生管理の徹底、経口ワクチンの散布等の野生イノシシ対策、発生農家に対する補償や経営再開への支援策を講じるとともに、消費者への情報発信など、風評被害対策にもしっかりと取り組んでまいります。
 また、我が国への侵入の脅威が高まっているASFについては、家畜防疫官の権限強化や検疫探知犬の増頭など、水際における防疫対策を強化するとともに、予防的殺処分の実施に向けた体制を整備することとしており、所要の改正法案を今国会に提出する予定です。
 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた対策強化についてお尋ねがありました。
 今般の中国・武漢市における新型コロナウイルスに関連した感染症については、現在、患者数が増加しております。
 これを受けて、一月二十一日に関係閣僚会議を開催し、私から、検疫における水際対策の一層の徹底、感染症の発生状況等の情報収集の徹底、国民に対する迅速かつ的確な情報提供などに万全を期すよう指示を出しました。
 昨日から本日にかけて、世界保健機関、WHOは、今般の新型コロナウイルスに関して緊急委員会を開催しましたが、今般の事態に係るリスク評価等については、本日、改めて委員会を開催し、検討を行うこととなったと承知しております。
 政府としては、現在、中国において患者が更に拡大していることを踏まえ、武漢市に対する感染症危険情報レベルを二に引き上げ、不要不急の渡航はやめるよう促すとともに、中国からの全ての航空便において機内アナウンスにより体調不良の自己申告を呼びかけるよう各航空会社へ要請すること、我が国に入国後、発熱やせきなどの症状が発生した場合に医療機関を受診するなど、滞在時の留意事項を記載した健康カードを配布する航空便の対象を中国からの全ての便に拡大するよう各航空会社へ要請すること、全国で患者の検査を可能とする体制を整備することなど、検疫における水際対策や国内における検疫体制の強化などを図ることとしています。
 引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて全力を尽くしてまいります。
 中東情勢への対応と同地域への自衛隊の派遣についてお尋ねがありました。
 我が国の原油輸入量の約九割を依存する中東地域における緊張の高まりを深く憂慮しており、船舶の航行の安全を確保することは、我が国のエネルギー安全保障上、死活的に重要です。
 事態のさらなるエスカレーションは避けるべきであり、全ての関係者が緊張緩和と情勢の安定化のために外交努力を尽くすことが必要です。
 我が国は、米国と同盟関係にあり、同時にイランと長年良好な関係を維持するなど、中東各国と良好な関係を築いています。私自身、これまで、トランプ大統領、イランのハメネイ最高指導者、ローハニ大統領と会談を行うほか、今月、サウジアラビア、UAE及びオマーンを訪問しました。これからも、日本ならではのさらなる外交努力を粘り強く展開していきます。
 こうした外交努力と調和を図る形で、自衛隊の護衛艦及び航空機を派遣することとしました。これは、各国の軍が中東地域において艦船、航空機などを活用した航行の安全確保の取組を強化していること等も踏まえ、日本関係船舶の安全確保のため、我が国独自の取組として、情報収集態勢を強化する必要があるからです。
 今般、閣議決定に当たっては、与党においても十分に御議論いただきました。政府一体となった総合的な施策を関係省庁が連携して実施することに加え、自衛隊を海外に派遣することの重要性や国民の皆様に対する説明責任の明確化のため、閣議決定を行いました。この中で、活動期間を一年とし、さらに、国会報告も行うこととしましたが、この際、公明党からいただいた御意見も踏まえてこれらの判断をしたところです。
 自衛隊員の使命は国民のリスクを下げることであり、このため、自衛隊員の任務は常にリスクを伴うものですが、今般の活動においても、きめ細やかな準備や安全確保対策により、対応に万全を尽くしてまいります。
 核軍縮の進展に向けた決意についてお尋ねがありました。
 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードしていく使命を有しています。これは私の揺るぎない信念であり、我が国の確固たる方針です。
 近年、核軍縮をめぐっては、核兵器国と非核兵器国のみならず、非核兵器国同士、さらには核兵器国同士の間で、各国の立場の隔たりが拡大しています。我が国は、唯一の戦争被爆国として、これらの国々の橋渡しに努め、対話のための共通の基盤の形成や相互の関与に向けて、粘り強く各国を促していく必要があると考えています。
 本年は、議員御指摘のとおり、広島、長崎への原爆投下から七十五年、NPT発効五十年という節目の年であり、四月から五月にかけてNPT運用検討会議が国連で開催される予定です。
 政府として、この会議が有意義な成果をおさめるものとなるよう、核兵器のない世界に向けた決議や核軍縮の実質的な進展のための賢人会議における議論の成果もしっかりと活用しながら、核軍縮の進展に向けた国際的な議論を積極的にリードしてまいります。
 広島県の旧陸軍被服支廠についてお尋ねがありました。
 被爆者の減少や高齢化により被爆体験の風化が危惧されている中、我が国は、唯一の戦争被爆国として、世代や国境を越えて被爆の実相を承継していく務めがあると考えております。
 自治体が行う被爆建物等の保存の取組に対しては、従来から、保存工事に対する補助により支援を行っています。
 広島県が所有する旧陸軍被服支廠の取扱いについては、現在、広島県において検討が行われていると承知しており、広島県における議論を踏まえ、国としてもしっかりと対応してまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣赤羽一嘉君登壇〕

発言情報

speech_id: 120105254X00320200123_004

発言者: 安倍晋三

speaker_id: 26067

日付: 2020-01-23

院: 衆議院

会議名: 本会議