井上隆の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(井上隆君) 経団連で常務理事を務めております井上と申します。
厚生労働委員会の先生方におかれましては、日頃より私どもの活動に対しまして御理解、御支援を賜り、この場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。
本題に入ります前に、一言、新型コロナウイルスの感染症への対応につきまして申し上げます。
昨日、二か月弱に及ぶ緊急事態宣言が解除をされました。現場の医療関係者を始め、国民が一丸となって取り組んだ結果、直面する危機から逃れることができました。しかし、この間、人や物の動きは停滞し、経済活動が国内外で大きく縮小、我が国企業も幅広い業種で規模を問わず甚大な影響を受けております。また、国内の感染拡大は逃れたものの、世界では毎日十万人規模の拡大が続いていることを踏まえれば、日本経済の正常化には長い時間が掛かると思われます。
経団連といたしましては、これまでも医療物資の提供、出勤の削減等々、感染拡大防止策の徹底を行ってまいりましたが、今後も、業種別のガイドラインなどを用いて、新型コロナウイルスの存在を前提とした経済活動の再開に向けた取組を進めてまいります。同時に、様々な支援策を活用しながら、全力を挙げて事業の継続と雇用の維持を図る所存でございます。
先生方には、引き続き経済の最新動向を踏まえまして機動的な御対応をいただきたく、改めてお願いを申し上げます。
さて、本日は、年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の審議に際しまして意見を申し述べる機会を頂戴し、誠にありがとうございます。
本法案は、厚生労働省の社会保障審議会における検討の結果を踏まえた内容と理解しております。審議会の検討段階でも私どもから種々御意見を申し上げたところでございまして、本日は本法案に賛成の立場から意見を申し述べます。
まず、私どもといたしましては、国民の将来の安心を支える公的年金制度につきまして、長期的な財政均衡を図るというフレームワークを維持し、制度の持続可能性、将来世代の給付水準の確保を図ることが極めて重要であるというふうに考えております。その基本の中で、近年の高齢者や女性の就業率の上昇、あるいは働き方の多様化といった社会の変化に対応して見直しを図ることが必要であるというふうに考えております。
今回の改正法案では、就労期間の延長、働き手にとって就労調整を意識せずに働ける環境を整えるために必要な事項が盛り込まれております。いずれも社会の変化にかなった改正でございまして、是非とも早期の成立をお願いをする次第でございます。
それでは、各論につきまして何点か意見を申し上げます。
まず、審議会などの議論でも焦点となりました被用者保険の適用拡大についてでございます。
働き方の多様化に対応いたしまして被用者保険の適用拡大を図るという大きな方向性に私どもは賛同をしております。
中でも、短時間労働者に対する適用拡大では、企業規模要件の見直しが重要な論点となっております。
この点につきまして、私どもといたしましては、短時間労働者の就業調整、あるいは雇用の動向、企業経営への影響などを十分検証することが必要であり、適用拡大を進める際には、負担増となってしまう対象企業への生産性向上に向けた支援策なども求めてまいったところでございます。
審議会での最終的な整理といたしましては、具体的な適用拡大は、人手不足や社会保険料負担を通じた企業経営への影響等に留意しつつ、丁寧に進める必要があるとされたところでございます。
これらを踏まえた形で、今回の改正法案では、段階的に現行の五百人超から五十人超まで引き下げるということになっております。その結果といたしまして、企業経営への影響にも配慮いただき、一定の経過措置を講じながら適用拡大を進めるものとなっておりまして、適切な措置であり、評価をいたしております。
また、適用事業所の範囲につきましては、フルタイムの労働者であるにもかかわらず適用が任意となっている業種などにも適用拡大すべきと主張をしてまいったところでございます。改正法案では、五人以上の個人事業所に係る適用業種を広げるという手当てがなされており、この点も賛同をいたしておるところでございます。
次に、就労期間の長期化への年金制度としての対応につきまして申し上げたいというふうに思います。
経団連では、毎年、労使交渉の経営側の指針となります経営労働委員会報告、略して経労委報告を取りまとめておりますけれども、その中におきましても、意欲と能力のある高齢者が、専門能力の発揮、技能の伝承、若手の育成などを通じまして企業内外の様々な場で活躍できることが重要であり、社会全体で高齢者の就労環境を整えていくべきと表明をしたところでございます。その方策の一環といたしまして、将来世代の年金の給付水準が低下しないよう、年金財政への影響を中立的にするということを前提に、社会全体で高齢者の就労環境を整えるための年金制度の見直しを行うべきというふうに主張をしてきたところでございます。
今回の改正法案では、国民年金や厚生年金の受給開始時期の選択肢を六十歳から七十五歳まで拡大すること、また、その際の年金の繰下げ増額率や繰上げ減額率は数理的に年金財政上中立を基本に見直すなどの措置が盛り込まれております。これらの見直しはいずれも妥当なものであり、賛同をいたします。
また、公的年金に加えまして私的年金の見直しといたしまして、確定拠出年金に加入できる年齢を五歳引き上げること、確定拠出年金や確定給付企業年金での受給開始年齢の選択肢を広げることも講じられております。これらの改正も、高齢者の就労拡大への対応、また、企業における高齢者雇用の状況に合わせた柔軟な制度設計の構築に資するものであるというふうに考えております。
このほか、今回の法案では、在職をしている高齢者の年金受給の在り方の見直し、確定拠出年金における中小企業向けの制度の対象範囲の拡大などの制度面、手続面の改善、短期滞在の外国人に対する脱退一時金制度の支給上限年数の引上げなども盛り込まれております。いずれも、高齢者あるいは外国人を始めとする多様な人材が活躍できる環境整備、中小企業におけます企業年金の更なる普及拡大を促進するものであり、適切かつ有用な措置と考えております。
以上、簡単ではございますが、今回の改正法案につきまして私どもの意見を申し上げてまいりました。改めまして、本法案の早期成立をお願い申し上げ、私からの意見を終わります。
ありがとうございました。