浦辺徹郎の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(浦辺徹郎君) 浦辺でございます。御紹介ありがとうございます。
このような席で発表させていただきますこと、大変光栄に思っております。(資料映写)
今日はこういうタイトルで話をしたいと思います。
まず、私のおります国際資源開発センターでございますけれども、我が国の鉱物資源の安定供給に期するために、海底鉱物資源開発基礎講座の開催であったり、秋田県の小坂鉱山の跡地にあります国際資源大学校で、我が国の非鉄資源産業の若手の方を対象とした資源開発・製錬・リサイクル研修等を実施している団体でございます。
これが本日の内容でございます。
まず最初に、今日、ここが参議院の超党派の調査会ということで、英国の同じ超党派国際国会議員連盟の報告書の紹介から始めたいと思います。それで、まず陸上の鉱山がどうなっているのか、それから将来の低炭素社会に向けて、それと、その金属の資源の関係はどうなっているのか、それから海底資源ということで話を進めてまいりたいと思います。
まず、英国の超党派国際議員連盟の報告書、二〇一六年ですけど、この内容は、ローマ・クラブが一九七二年に出版しました「成長の限界」という有名な本の、その後どうなったのかというのがタイトルでございます。
このローマ・クラブの「成長の限界」は、今でいえばAIみたいな最新の手法を使って解析をしたものでございますけれども、その結論は、資源の枯渇により社会は永遠に成長することはできないという思いもしなかった結論だったわけです。この本には別に何年にそういうことが起こると書いていないんですが、標準シナリオだと二〇一五年に限界が始まるということになっていました。
これは一九七五年の第一次石油ショックを引き起こしたと言われるほどの本でございますけれども、引き続く一九八〇年代は、先進国、日本も含めまして高度成長が終わった時期で、コモディティー価格は全部下落をしました。それで、この本のことは忘れられていたわけです。
その後、中国を始めとする新興国の経済発展があって、終わってみると、現実の世界がまるで予測されたシナリオを追従するかのように変化してきたということが指摘されて、経済学者の予測でこんなに長期にわたって当たっている例はほかにないと言われたわけです。
この報告書の結論でございますけれども、地球の容量の限界が近づいているという証拠が幾つも明らかになっている、最も重要な結論の一つは、社会の崩壊が、資源の絶対的な枯渇からではなく、既に兆候が始まっている資源の質の低下から生じ得るということであるということなんです。この資源の質の低下、余り聞き慣れない言葉です。
次に、それで、世界の銅の二七%、四分の一以上を産出しているチリの例をちょっとお目にかけます。
この左手の方はチリ北部の地図でございます。黒い点がありますが、これが皆、銅鉱床です。
チリで最も大きな会社というのは国営企業のコデルコという会社ですけれども、コデルコは二十世紀の間はずっと品位、これは含有量のことですけど、銅品位が大体一%の鉱石をずっと掘ってきた。ところが、二十一世紀に入るとつるべ落としにずっと下がって、今は〇・六%の鉱石しかないということを言っているわけです。つまり、品位の低下、鉱山の高地化、様々な問題をチリが抱えている、これはチリだけの問題ではないということです。
実例を見ていきますと、ケブラダ・ブランカというチリのアンデスの本当の頂上にある鉱山です。これがオープンピット、掘り場ですけれども、高度が四千四百メーターです。港からは百六十キロ離れていて水がないものですから、港湾施設を造って海水を淡水化し、百六十キロパイプで送って、鉱山では何と〇・四%の銅を掘ると。非常に低品位でございます。それを向こうで破砕して、浮遊選鉱ということをして、精鉱を作って、それをまた百六十キロパイプ流送して港湾設備に持ってくる、これをまた日本に運んで製錬をして銅を回収するという大変なことがやらなければいけないわけでございます。
じゃ、世界で、〇・四%じゃなくて一%の鉱石、昔の二十世紀の鉱石はないのか。それは、あることはあるんです。これが北米最大の銅鉱山の開発のレゾリューション銅山というところでございます。場所はここですけれども、この図は断面図、地質断面図で、この上が、白いところと茶色の境が地表でございます。一%の鉱石は、この下に三日月形のものがあります、これが一%の鉱石ですが、地下二千メーター、しかもそこには七十六度の温泉が湧いていてとても人が行けない。しかも、その地表の部分はネーティブアメリカンの聖地ということで大変強い反対運動が起こっている。
このように、巨大鉱床というのはいずれも多くの問題を抱えているわけです。つまり、これが質の低下ということの具体例の一つでございます。
じゃ、陸上はこういう状況ですけれども、海に目を転じてみるとどうなるか。これは一つの例で、日本のEEZの中の沖縄トラフにありますごんどうサイトという海底熱水鉱床です。これは久米島から四十キロぐらいのところにあって、水深は千四百メーターです。ですので、人間はもちろん行けないわけですけれども、先ほどの二つの例でも、高地であったり地下であったり、人間がなかなかアクセスできないということで全自動化を目指しておりますから、こういうものの開発も夢ではないということでございます。
いいところは、品位がめちゃくちゃに高い。一三%と書いてあります。これはちょっとげたを履いている値でございまして、現在、経産省傘下のJOGMECがボーリングをしておりまして、数分の一ぐらい平均品位がなるというふうに言われています。
この下の図は、海中ロボット、まあドローンのようなものでございますけれども、そういうもので作った地形図、精密地形図で、ここに底径二百八十メーターの小山がありますが、これが全部鉱石、高品位の鉱石でございます。こういうものを開発できないだろうか、そういうことを考えているわけでございます。
さて、世界の銅を例に取ってみますと、この茶色で描いてありますように、これは十九世紀半ばからのデータで見るともううなぎ登りで、現在二千万トン年間銅を使用しております。
この上の緑色の図というのは、あと何年掘れるか、生産可能年数、ライフと言っておりますけれども、ライフの年数を示したものです。大体第二次大戦が終わった頃は五十年を超えておりましたけれども、それが長期低落傾向でずっと減っています。これを、じゃ、この後大丈夫なのかということを考える上で、楽観的な見方、悲観的な見方、二つがございます。
まず、楽観的な見方ですけれども、この図で、ここは二〇一〇年でございますけれども、累積生産量、この青で描いたところはもう掘ってしまった分。ただ、その上に赤で描いてある推定埋蔵量というのがありまして、これを年数、年間の生産量で割ると大体二十年分ぐらいはあると。しかし、楽観的な見方は、その上にピンクのゾーンが乗っております。これは低品位でなかなか掘れないというところですけれども、将来技術が開発されコストを下げれば掘れるようになるんじゃないのということで、楽観的な見方でございます。
それに対しまして、悲観的な見方、この三角形の山のようなものがありますが、この一番右の端は二十二世紀です。このチリ、オリーブグリーンのチリとそれぞれの国の産出額をずっとやっていきますと、大体二〇三〇年代に生産量のピークを迎える、これをピークミネラルと言っておりますけれども、迎えるであろうと。それに対して、黒い点線で描いてある需要量の方ですね、これはオーバーシュートして更に伸びていくだろうと。今までは需要と生産が非常にバランスされていたわけだけれども、二〇三〇年代になるとそのバランスが崩れるという予測でございます。
ただ、こういう予測というのは、どういう社会をつくっていくのか、景気はどうするのか、成長率はどうなるのかという様々な要素があって、一概には言えないものでございます。
そこで、次は、シナリオ別に銅の需要と供給を計算してみようというのが次の図でございます。
この図で灰色で描いてある山のようなマークは、先ほどのノーゼイの二〇一四年のデータそのものでございます。こういう図を見ると必ず皆さんおっしゃるのは、リサイクルすればいいじゃないか。そのリサイクルが、この青で描いてある二次生産でございます。圧倒的に量は足らない。これは伸びていくわけですけれども、この一次と二次を足したものが黒で描いてある銅の総生産量でございます。
これに対して、需要量はどうなるのかというのが赤で描いてあります。一番需要が要るのはEWと書いてあるもので、これは、SDGsで言います誰も取り残さない、途上国であっても先進国同様の高い経済のエンジョイできるようなシナリオですと、もちろん一番使用量が高くなります。一番少ないのはSFと書いてある、赤のSFですが、これは、途上国は今のままいてくださいという非常に社会緊張をもたらすシナリオでございます。
何がいい悪いということではありませんで、単なるシナリオなんですが、いずれのケースでもやはり、需要の多寡はございますけれども、それは総生産量を上回らない、総生産量よりもはるかに多いということで、二〇四〇年前後に銅の大きな問題が発生するんではないかというシナリオ別の試算でございます。
ヨーロッパの国々は、これに対してどういう政策を取っていくべきかということを決めております。キーワードは循環経済への転換でございます。元々、線形経済というように、原材料があって生産をして多くのものを捨てるということですけれども、捨てるんではなくて、一番下にありますように廃棄物の再資源化をすることによって、最終的にはこの原料の注入をなくして全てリサイクルだけでぐるぐる回そうということでございますけれども、なかなかこううまくはいかない可能性もあるわけです。
それで、最近、サセックス大学のソバクールという教授の方が今年論文を書きまして、提言をしました。このタイトルにありますように、世界銀行が言っているように、クリーンエネルギーへの移行は鉱物を大量に消費するということでございます。
それで、EUにおけるキーワードは循環経済でございますけれども、一次生産も必要ではないかということで、現在、EUあるいは米国で、後で説明しますように重要鉱物への関心が高まっています。重要鉱物というのは、日本語ではレアメタルとよく言われるような鉱物資源でございます。
低炭素技術の需要には、短期的には陸域での採掘で十分対応可能でございます。しかし、長期的には海底鉱物資源の抽出を慎重に検討する必要がある。その際には、サイエンスに基づいた環境保護策を設定するまれなチャンスであると。
つまり、環境問題というのを負担と考えるのではなくてチャンスと捉えるべきだと、そして、将来の低炭素技術の普及に対しては鉱物と金属の供給が不可欠なので、今までヨーロッパが取っているような気候変動に対応する政策の中にそういうものを積極的に組み込むべきであると、そして、鉱物のサプライチェーン全体の透明性を確保する必要がある、こういう提言をされたわけでございます。
ちょっとこれは忙しい図でございますけど、この図の左側の方は、石油、石炭、天然ガスを燃やして発電をするとこれぐらい金属が要りますよと。この右側の棒がたくさん立っている方は、バイオマス、風力、太陽光というような再生可能エネルギーを使うとこのようにいろんな金属がたくさん要ると。これ、縦軸は対数でございますので、数十倍から数百倍のこういうレアメタルが必要になってくるという試算が出ているわけでございます。銅の比ではない、非常にめちゃくちゃな量が要るということになります。
そこで、アメリカですけれども、トランプ大統領が二〇一七年の末に大統領命令を出しました。これは、重要鉱物の安全かつ信頼性の置ける供給を確保する連邦政府戦略でございます。その内容の一番上にありますように、重要鉱物の確実な供給及びそのサプライチェーンのレジリエンスは、米国の経済的繁栄と国防にとって必要欠くべからざる点であるというふうに書いています。下の方にありますように、こういうことで、鉱山の開発であるとかサプライチェーンの強化など様々なことをやって、二十四のゴールと六十一の勧告を出したということでございます。
これに対してソバクール教授はこういうことを言っています。米国の戦略が、同盟国やパートナーとの貿易の重要性を強調する一方、鉱物産出の場への生態学的な配慮に欠けていると、環境問題を無視していると批判をしているわけでございます。
これがリスト。米国の重要鉱物三十五、EUの二十七で、アンダーライン書いてあるのは両方に重複するもので、ほぼ重複している。これは日本のレアメタルとも重複しております。
このうち、EUの重要鉱物二十七のうちで、この地図にありますように、ここに中国があります。中国は、その二十七の重要鉱物のうち十四、半分以上で五〇%以上のシェアを有している。さらに、リチウムイオンバッテリーなんかで重要なコバルトというのは、コンゴ民が三分の二のシェアを有している。こういうリスクがあるということでございます。
さらに、赤い四角で囲っておりますように、中国は自国に豊富な鉱物資源を有するのみならず、アフリカ、南米等において積極的に鉱山権益の獲得を行っていて、日本はしばしば負けているわけでございます。自分で持っているのに、更にほかの国の権益も取っているということです。
それで、じゃ、海はどうなのか。そういうふうな陸上の状況になって、海はどうなのかということで、これは海底鉱物資源の種類でございます。まず、海底熱水鉱床、それから真ん中、ちょっと長いあれになっていますが、コバルトリッチクラスト、それからマンガン団塊、それにレアアース泥というような様々な海底資源がございます。
この中で、EU等でいろいろと検討がなされて、最も経済的に開発が近いだろうというのが海底熱水鉱床、その次にコバルトリッチクラストということになっています。マンガン団塊は非常に積極的にやられているんですけど、その後になるだろうというふうに言われています。この理由は後で説明いたします。
日本は幸いなことに、海底熱水鉱床、これ沖縄トラフ、先ほど言ったごんどうサイトもここに入っております。それから、伊豆、小笠原の島弧、こういうところに海底熱水鉱床がありますし、この赤で描いてあるコバルトリッチクラストも非常にたくさんあります。先進国の中でこれだけの海底資源を有している国は日本だけでございます。
これはなぜかというと、日本の大陸棚、陸上の国土の十二倍程度ございますけれども、これがもし陸上にあるとすると、インドよりも広くてオーストラリアよりは少し狭い非常に広大な大陸棚を有しておりますので、そういうものがあっても不思議ではないということになりますので、狭い国土の日本にとっても海底というのがそういう新たなフロンティアになっているわけでございます。
じゃ、そこからどういうものが取れるか。これは量的なことを除いて、OECDの五十一の重要鉱物についてプロットしています。
これは、五十一というのは、OECDはヨーロッパ、米国だけではなくて、様々な二十七の国が入っていますので数が増えているわけですが、この縦軸は、代替の可能性が低いリスクが上に書いてあります。それから、横軸は、中国、コンゴ民といったような地政学的なリスクの高いものが右の方に書いてありまして、上から右にかけてリスクの高い重要鉱物ということになります。
この赤で書いてありますのが海底熱水鉱床に含まれる元素、青はコバルトリッチクラストに含まれる元素、それからグレーは海底資源では取れない元素ということになりますけれども、日本の大陸棚にあるこの二つのやつをやれば、大体、上の方、右の方にあるものはカバーできるということが分かります。これは量的なことはもちろん含まれておりません。
それで、先ほど、マンガン団塊というのもある、量的にはこれが一番多いわけでございますが、このほとんどは深海底、公の海の下にあります。そうしますと、日本の大陸棚にあるものはもちろん国内法で対処できるわけでございますが、そういうふうな国家管轄権の外にあるものについては、国連海洋法条約、UNCLOSというものでコントロールされるわけでございます。
UNCLOSは、その下に管理機構として国際海底機構、ISAというものをつくっておりますが、そこで今現在開発規則を準備中でございますが、そこにある鉱物資源は、赤で書いてありますように、人類の共通財産ということでございます。ですので、そこで得られた利益に関しては、内陸国であっても分配しなければいけないということが書かれているわけでございます。
さらに、関連する法律にありますように、今、BBNJ、国家管轄権外域の海洋生物多様性ということで、多様性を保護する、海底環境を保護するために、こういう資源の開発はやるべきではないという意見も出てきているわけで、大変難しい状況にあるわけでございます。
それをビジュアルに示したのがこの図でございまして、海底資源開発をめぐる代表的ステークホルダーの間で、今では、バランスが取れるべきものが、環境NGOの力が非常に大きくなって、環境問題が非常にクローズアップされているということでございます。
海底熱水鉱床を開発する際、リスクというのは幾つもございます。
一番は、十分な資源量があるか。日本は、今五千万トンの、概略、資源量獲得を目指して頑張っております。その探査法についても、SIP、海のジパング計画でできているわけでございまして、今現在約二千万トンぐらいありますので、これから増やしていく。
それから、開発する技術。これは、JOGMECが二〇一七年に揚鉱パイロット試験というのをやりましたし、選鉱のパイロットプラント、それから製錬も終わって、亜鉛地金の製錬もできていますので、小規模ではありますけれども一気通貫の技術ができています。
経済性があるのか。これは、今のJOGMECの試算では赤字であるということですが、諸外国の同様の計算では黒字、内部収益率が非常に高いという試算もなされておりますので、これは解決ができるだろうと。
それから、環境影響評価。これについても、日本は環境のモニタリング技術、非常に世界でも一番いいものを持っていて、技術的にはこういうものに対する用意ができているということでございます。
結論ですけれども、上の三つは飛ばして四番目、海底資源開発はまだ採算性が不明でありますけれども、様々な技術開発ができていると。それは今、世界でトップクラスである。ただ、こういうふうな優位というのはちょっと油断をすると失われてしまうものでございますので、政策的な後押しが必要だろうということで、海洋の環境に対する配慮を十分にしながら、こういうものを目指す、開発を目指していく、そのための日本は海底下の国土も技術もある、そういうふうに思っております。
以上です。