畑中美樹の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(畑中美樹君) 御紹介いただきました畑中でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、国際エネルギー情勢に影響を与える湾岸アラブ産油国の最近の動向につきまして、お机の上に配付させていただいております資料に基づきまして、五つの点から主に御説明いたします。
 内容的には、イランから見ますとペルシャ湾、アラブの諸国から見ますとアラビア湾と言われています、一般的には双方の顔を立てるために英語でザ・ガルフ、日本語では湾岸というふうに呼んでいますけれども、その地域にありますアラブの産油国四か国の動向につきまして主に御説明をさせていただきたいと思います。
 早速内容に入りますけれども、目次を経て一ページのところでございます。
 御承知おきのように、今湾岸地域では幾つかの対立あるいは問題を抱えております。一番大きな問題が、サウジアラビアを始めとするアラブの主要な産油国とイランの対立でございます。また、同じアラブの産油国でも、サウジアラビアですとかアラブ首長国連邦と、ガスの大国で日本も大きく輸入に依存しておりますカタールの間でもカタール危機という問題がございます。さらに、アラビア半島の南西端にイエメンという国がございますけれども、ここも内戦をしておりまして、その一方をサウジとUAE、アラブ首長国連邦が支援をしておりまして、そこと争っておりますフーシ派の背後にはどうもイランがいるんではないかということで、ここも対立がございます。
 こういう対立がある中で、どうも昨年の九月ぐらいから、イランと厳しく対立してきましたサウジアラビアとアラブ首長国連邦が少し緊張を緩和させる方向に動き出しているというのが第一点目でございます。
 一ページのところの表にまとめてございますけれども、サウジアラビア、現在、三十四歳とお若い皇太子が実権を握っておられるんですけれども、この方が、昨年の九月の下旬、アメリカのテレビのインタビューでお答えになりまして、その中で二点申し述べております。
 表一のところにございますけど、まずイランへの対応についてでございますけれども、皇太子は、サウジ・イラン関係の平和的解決を望むというふうに表明をいたしまして、同時に、トランプ・アメリカ大統領はロウハニ・イラン大統領と会談すべきであると非常に融和的な発言をしております。また、イエメンの内戦につきましても、全ての政治解決イニシアチブに扉を開いているという非常に前向きな考え方を打ち出しております。
 さらに、いま一つの問題でありますカタールの危機でございますけれども、サウジアラビアの国王、サルマンさんとおっしゃいますけれども、国王が、昨年の十二月の十日、サウジアラビアの首都のリヤドでアラブの湾岸の産油国六か国が集まる会議、これ一般的には湾岸協力会議サミット、首脳会議と呼んでおりますけれども、そこに争っておるカタールの首長を招待をいたしまして、首長御自身はお出にならなかったんですけれども、名代として首相を派遣いたしまして、サウジの国王と親しげに言葉を交わすということで、かなり雰囲気が変わってきているというのが一点目でございます。
 そして、そのサウジアラビアと同じような動きを取っておりますのが、二ページでございますけれども、アラブ首長国連邦でございます。ただ、このアラブ首長国連邦につきましても、この一月になりまして、同国のエネルギー大臣、スヘイルさんという方ですけれども、この方がやはり融和的な発言をしております。一のところで、これまで対立をしてきておりましたイランというのは隣国であって地理的にも近いと。そして、二のところで、我々が最も望まないのは新たな中東の緊張だと。そして、三として、それら関係各国に緊張の段階的緩和を改めて呼びかけるというふうに表明しておりまして、アラビア側の二大産油国であるサウジとアラブ首長国連邦がイランとの緊張の緩和に向けて動き出しているということをはっきりと表明したというところが非常に大きく違っているということでございます。これからの国際情勢、特にエネルギー情勢を見る上では、この緊張緩和に向かい出したということは非常に大きな点として銘記しておく必要があるんじゃないかと思います。
 そして、第二点目でございますけれども、三ページになります。実は、常にその内政が注目されておりますサウジアラビアでございますけれども、その王位の継承、これがこれからもしかすると問題が出てくるんじゃないかというふうに言われております。
 現在、サウジの国王、サルマン国王、八十歳の半ばぐらいでございます。皇太子が御子息の三十四歳の、まだ、ムハンマドさんという方でございます。実は、これまで、今のサウジアラビアというのは、日本でいいますと昭和七年、一九三二年に建国されておりまして、現在の国王まで七代、これは建国王の息子さんが二代目から六代目でございます。ところが、もうその国王の世代が皆さん御高齢になられたので、次の国王は次の世代に飛ぶことになります。
 そこで、今注目されていますのが国王の御子息のムハンマドさんという三十四歳の皇太子なわけでございますが、三十四歳ということは非常にお若いわけですね。したがって、まだ、そのお兄様たち、お母さんが違いますけれども、たくさんの王子が四十代、五十代、六十代とおられます。そこを飛び越えて、今の国王があえて三十四歳の方を皇太子にして後継者にしようとしているところで、実は、サウジの国内、特に王家の中ではこの後継の人事に対して余り愉快に思わない人たちもいるというのが非常に注目をされるところでございます。
 ただし、この皇太子さん、非常にお若いこともありまして、これまでのサウジの非常に保守的な、イスラム教に非常に堅実な運営から、少し開放的な、若い人たちも意見を入れた方がいいだろうという実は国政運営をしております。
 三ページのところにありますけれども、実は、サウジの首都リヤドでは、去年の十月十一日から約二か月間にわたりまして、文化、娯楽イベント、リヤド・シーズンと呼ばれていましたけど、が開かれております。
 その中で非常に注目されましたのは、四ページを見ていただくとお分かりいただけるんですけれども、十月の三十一日に、サウジで史上初となる女子のプロレスの試合が行われました。サウジというのは、平素から実は女性は髪を隠していて、さらに保守的な人は口元も隠している、そういう非常に保守的な国でございます。
 そこに、この四ページの写真にございますように、リング上で女性が髪も出していて顔も出していて、しかも格闘技をするというようなことを行いまして、そういう意味では非常に新たな動きが出てきておりまして、そのこと自体は若い人には非常に支持をされているわけですけれども、御年配の方ですとか保守的な方からは非常に批判もされているということで、サウジ、アラブの国では一番石油の埋蔵量が多いですし、日本に至っては四〇%ぐらいこのサウジから石油を輸入しておりますので、この辺りが少し気になるところでございます。
 その王家の批判について具体的に述べていますのが五ページでございます。
 これ、イギリスの新聞でインディペンデント紙というのがございますけれども、昨年の三月の十二日付けで、反政府サウジ王子がヨーロッパに体制変革を求める組織を結成したという記事を掲載いたしました。その記事、何を述べているかというと、まず、その発言をしておりますのが二〇一七年からドイツに亡命しているサウジの王子のお一人でございます。その方が何を言っているかというと、国民が政府を選んで新しいサウジをつくり出す、そういう権利を持つその他の民主国家のようなシステムが必要であるということで、今の絶対王政のサウジからサウジもやはり変革しなければいけないというようなことを王家の人が、王子がイギリスの非常に有名な新聞を使って発言したということで、非常に王家の中の動きというのが注目をされているところでございます。
 いま一つサウジの今後の安定にとって気になりますのが、五ページから六ページでございますけれども、国内外で依然テロが続いているということでございます。
 六ページのところに表の二というのがございますけれども、これ、十一月から十二月の二か月間だけに限って拾ってみたものでございますけれども、これを見ても、十一月の十一日にサウジの首都リヤドで、先ほど申し上げたリヤド・シーズンという非常に、皇太子が主催をしている、国を開くためにいろいろな行事をしておりますけれども、その中で舞台演技もやっておりました。そこの演技者が襲われるという事件が起きておりますし、十二月の六日には、アメリカのフロリダ州にあります海軍の航空基地でサウジの空軍少尉の訓練生が銃撃事件を発生いたしまして、御本人を含む四人が、八人が、亡くなるという事件が起きています。これ、サウジの訓練生、空軍の少尉がアメリカの軍の基地の中でこういう事件を起こしたということで、いまだにこの背景が何であったのかというのがひとつ分かりませんけれども、非常に注目をされているところでございます。
 さらに、十二月の二十五日には、サウジの東部で自動車爆弾を使用した二人のサウジ人、これを計画していたということで逮捕されるという事件が起きておりまして、サウジについては、王家の中、そして王家の外でもサウジの在り方に関する考え方の違いを持っている若い人を中心としたサウジ人がいるということで、今後の内政については十分注意しておく必要があるというふうに考えておるところでございます。
 次に七ページ、三点目でございますけれども、カタールとの関係でございます。
 冒頭で申し上げましたように、サウジアラビアとアラブ首長国連邦、それにバハレーンという国とエジプトという、この四か国が一方的にカタールと断交いたしました。理由といたしましては、カタールの外交政策がサウジアラビア等が目指している方向性とやや違うということで、それに異論を唱える意味で外交を絶ったということでございます。
 しかし、冒頭でも申し上げましたように、ちょっとここに来て修復をする動きに出てきております。その動き自体はカタール側も認めているところでございまして、表三にまとめてございますのは、カタール外務大臣の方から、サウジ側から融和的なアプローチがあったということを認めている発言を表にしてございます。十二月の六日のところでは、①で、過去数週間で行き詰まりから一定の進展をしたという発言をしておりますし、さらに十五日には、CNNのインタビューにおいて、①のところですけれども、サウジと意思疎通を再開するというふうに明言をしております。
 ただ、少しずつ緊張の緩和は進んでいますけれども、まだ一足飛びに両国が外交関係を元に戻すというところには至っておりませんので、まだ今後、注意して見ておく必要があると思います。
 なぜかといいますと、イラン、サウジとの関係の修復には動いておりますけれども、八ページのところにございますように、カタールの首長、平たく言えば国王に当たる方でございますけれども、その方が一月の十二日にイランを訪問しておりまして、ロウハニ大統領以下のイランの首脳とも会談をしているということで、依然、イランとの友好関係も誇示しているということでございます。
 このカタールの、一方でサウジとの関係の修復に動き、他方でイランとの友好関係を保つという姿勢、これが今後どうなるかということ、恐らく国際エネルギーの面におきましては、中東、湾岸の地政学的リスク、これが収まっていくのかどうかという観点から非常にここは重視しているところでございます。
 そして、四点目でございますけれども、同じアラビア湾岸でも奥の方、北の方になりますけれども、イラクの話でございます。このイラクが今非常に注目されておりますのは、少し緩和の方向に向かってはいますけれども、アメリカとイラン、その対立の最前線の国として利用されている国家になっているというところが非常に注目をされているところでございます。
 表の四でございますけれども、昨年の十二月の二十七日ですけれども、イラクの北部のキルクークにあります軍事基地に三十発を超えるロケット弾が撃ち込まれまして、そこにおりましたアメリカ国籍の民間人の請負業者の一人とイラクの治安部隊の二人が死亡して、アメリカの兵士も四人負傷するという事件が起きました。
 そして、この事件に対する恐らく報復という意味なんだと思いますけれども、年末、十二月三十日と三十一日には、首都バグダッドにありますアメリカの大使館にデモ隊が投石をしたり壁に放火をするといったような事件が起きておりまして、イラクを舞台にしてイランとアメリカが対立を激化させるという動きが出てきております。
 このアメリカの大使館が攻撃をされたということの恐らく報復なんでしょうけれども、十ページのところで、日本の新聞でも大きく取り上げられましたけれども、今年の一月の三日の日に、イランの革命防衛隊でイラクの国内における反米のどうも闘争を指示していたんではないかと言われているソレイマニ司令官ほかが、イラクの首都バグダッド国際空港に着いたところを暗殺されるという事件が起きております。
 この事件に対しては、その五日後の一月八日にイラン側が更なる報復をしておりまして、アメリカとイラク軍が共に使っております、イラクの国内にありますアルアサドという基地と北部にありますエルビルの軍事施設、ここに十数発のミサイルを撃ち込んでいるところでございます。
 このイラクを舞台としますアメリカとイランの対立というのは恐らく、今年の十一月三日、アメリカ大統領選挙がございますので、それまで続くんだろうと。特に、私は、直前の十月に、イランがトランプ大統領の再選を望まないということで何かを仕掛けて、トランプさんの中東政策がうまくいっていないんではないかと、そういう印象を与えるようなことを起こすんではないかというところを非常に注意して見ているところでございます。
 そのイラクでございますけれども、十一ページに移りますけれども、国内では反政府のデモというのが起きています。従来の反政府デモというのは、今、イラク、非常に経済情勢が良くありませんので、その自分の生活が良くないことに抗議する一般の市民のデモが主体だったんですけれども、注目しておりますのは、十一ページの(二)の上から一行目のところですけど、一月二十四日に抗議デモが行われたんですけど、その抗議デモはイラクのシーア派の聖職者のサドルさんという人が計画したデモでございまして、要は、アメリカ軍がイラクにいるわけですけれども、その撤退を訴えるということで、呼びかけとしては百万人の行進をということでデモを行っております。これまでとは非常に性格の違うデモでございますので、イラクの内政の先行きを見る上では非常に重要なので注目をしているところでございます。
 今後の焦点としましては、十一ページの下から二行目に書いておりますけれども、一応こうした動きがあることを意識しているアメリカとヨーロッパの外交官は、イラク議会がイラクの国内にいる外国軍は出ていくべきだという法案を採決をしてそれを承認しておるんですけれども、それに応えるべく、全てではないんですけれども、一部のアメリカ軍あるいは欧州軍の撤退をしましょうということを考え、その案を作り始めているということでございまして、これが今後どうなるかというところが注目をされるというところでございます。
 そうした今まで御説明しましたアラブの国々の動きを受ける形で原油の情勢がどうなっているかというところが十二ページと十三ページのところでございます。
 後ほど岩瀬さんの方からもう少しお詳しい話があるかと思いますけれども、大きな流れで申しますと、OPECにロシア等を加えた非OPECの合計二十四か国でつくっているOPECプラスという新たな一種の組織ですけれども、ここが、今原油の減産をして何とか原油価格がこれ以上下がらないようにということを決めているわけですね。
 このOPECプラス、昨年の十二月の六日の日に新たな協調の減産というのを決めておりまして、今のところですと、この一―三月、百七十万バレル・パー・デーまで減産しようということを決めております。
 ただ、新たな事態が起きておりまして、御承知のように新型コロナウイルスというのが起きておりますので、それによってこれから世界の石油需要が落ちるだろうということで、先般、OPECプラスとしては、この百七十万BDに加えて更に六十万BD減産しましょうということを一応決議いたしました。
 ロシアとしては、反対とは言っていないんですけれども、同意はしますと言っているんですけど、明確にこれに賛成なのかどうかという姿勢を示しておりませんので、ロシアがこの更なる新型コロナウイルスを受けた後での減産に対してどういう姿勢を取ってくるのかというところが注目をしているところでございます。
 他方、我々消費国側では、パリにあります国際エネルギー機関、IEAというのが毎月月報を出しておりますけれども、この一月の十六日に出しました月報では、要は、OPEC以外の国が増産をしていますし、世界にはまだまだ備蓄が十分にあるということで、中東において何か政治的なショックが起きてもそれはそう大きくならないんではないだろうかと、そういう見通しをしているところでございます。
 現在のところ、この十三ページの①にありますように、石油供給への主要な脅威のリスクは遠ざかったように見えるというふうに述べておりますけれども、実際そうなるのかどうか、今日申し上げたアラブ四か国のこれからの動向、特にイランとの対立がどうなるか、さらには、この新型コロナウイルスの需要への影響を受けて減産がどうなるかというところを更に今後は見ていく必要があるんではないかというふうに思います。
 私の御説明は以上にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 畑中美樹

speaker_id: 33100

日付: 2020-02-12

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会