堀井巌の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○堀井巌君 ODA調査派遣第四班について御報告いたします。
 当班は、本年一月七日から一月十六日までの十日間、アルゼンチン共和国及びペルー共和国に派遣されました。
 派遣議員は、松山政司議員、岩渕友議員、団長を務めました私、堀井巌の三名でございます。
 本日は、今回の調査を通じて得られました所見を中心に申し述べます。
 アルゼンチンは、ブラジルに次ぐ南米の大国で、一人当たり国民総所得、GNIが一万ドルを大きく超え、ODA対象国としては比較的高い経済水準を有しております。足下のODA実績は技術支援が中心で、二〇一六年の実績では主要援助国中、日本は第三位となっております。また、穀物の生産及び輸出で大きなプレゼンスを有しており、日本の食料安全保障を考える上で重要な位置を占めていることも特徴となります。
 ペルーは、自由開放的な政策を一貫して採用しており、日本とは中南米で最も長い外交関係を有する国でもあります。一人当たりGNIは六千ドル台半ばと発展途上国で中位となっており、足下のODA実績は技術支援が中心であります。国内経済は沿岸部と内陸部で所得格差が大きく、地震や洪水など自然災害が多い点も特筆されます。二〇一六年の実績では主要援助国中、日本は第三位となっております。
 今回、我々は両国において、現地視察、要人との意見交換、さらには海外協力隊員などとの懇談を通じ、多くの新たな知見を得ることができました。それらを踏まえた所見は以下の五点となります。
 第一に、顔の見える支援の徹底であります。
 ODAにおいて日本が供与する機材や技術等は高い評価を受けており、そのことは今回の視察においても明確に感じられました。
 関係者からの評価は大変有り難いことですが、一方で、各案件が日本の援助によるものであることにつき、周知が不十分な例も散見をされました。一例を挙げると、アルゼンチンで視察した紫外線信号機にはJICAのステッカーが貼られていましたが、そのデザインは援助関係者でなければ日本に由来することが分からないもので、これでは、いかに紫外線信号機が地元の方に活用されても、日本の支援と結び付けて理解されることはないでしょう。
 今回は在アルゼンチン大使館の迅速な対応によって、日章旗のステッカーが貼付され、誰もが日本の支援と認識できる状況となりました。そのことには感謝いたしますが、あらゆる事業において当初からこうした視点での取組が徹底されるべきです。誰にでも日本の支援と分かる周知策を幅広く展開していくことは喫緊の課題と言えます。
 第二に、地政学的情勢等を見極めた柔軟な援助であります。
 今回訪問したアルゼンチンでは、新規の円借款や一般の無償資金協力は既に実施されておりません。しかし、国内の経済格差が大きく、インフラ整備も道半ばという国内事情からすれば、そうした支援に対する潜在的ニーズはまだ存在するはずです。
 アルゼンチンは世界有数の穀物輸出国であるとともに、豊かな天然資源も有しており、その地政学的重要性は非常に高いと言えます。この点、現地での概況説明によれば、中国によるアルゼンチンへの進出が強まっており、フェルナンデス新大統領の就任に当たって、二者会談を行ったのは中国を含む数か国のみだったとのことです。日本のODAも、このような実情を踏まえて、更なる関係強化に資するものとしていかなければなりません。
 幸いなことに、かつて丸ノ内線で使用していた鉄道車両をブエノスアイレス地下鉄に譲渡したことがあり、日本に対する好意的評価につながっています。その車両は既に引退時期にあるようですが、例えば、こうしたレガシーを活用し、円借款などと組み合わせて再び中古車両を譲渡するといった取組ができないでしょうか。
 また、アルゼンチンでは、大気環境や保健医療などの分野でも日本の貢献に対する期待が高いと感じました。そこで、是非、今後の支援はそのような先方の思いも踏まえた上で、地政学的情勢も加味して積極的に実施していくことを期待します。もちろん、アルゼンチンが複数回デフォルトに陥っていることに留意は必要ですが、日本に対する良好なイメージを生かすことで、両国関係をより緊密にしていくことが可能になると考えます。地下鉄車両はあくまでも一例ですが、機械的な基準で判断するのではない柔軟な援助スキームこそ求められているのではないでしょうか。
 第三に、支援実施に際する受入れ側との信頼醸成であります。
 ペルーでは、人類共通の財産である文化遺産保護に対する支援ニーズが高く、先方の期待に沿った援助を行うことは、両国関係の発展のみならず、人類全体への貢献につながります。
 こうした実情を踏まえ、今回は、民間連携事業であるマチュピチュ地区での3D測量技術による文化遺産の保全と活用のための基礎調査を視察しました。民間連携事業は、日本企業が持つ技術等によって途上国の支援ニーズを満たすことができるか企業自らによる調査を支援する枠組みで、日本企業の海外進出を促進する意味でも重要な事業であり、これまで多くの成果を上げています。
 今までペルー政府が遺跡の保存に関して外国企業と連携した例はありませんが、それだけに、ペルー側のニーズに寄り添い、先方から支援を受けたいと主体的に表明してもらえば、大きな一歩になるでしょう。そのためには、ペルー政府の要路のみならず現場担当者レベルまで、日本の援助への信頼醸成に取り組んでいくことが重要です。
 今回の基礎調査には、日本の大学関係者も参画を予定しており、ペルー側にとって有益な支援となる可能性は十分にあります。支援実施という成果が実ることを大いに期待しています。
 第四に、青年海外協力隊員やシニア海外協力隊員に対する支援の充実であります。
 今回の視察先では、多くの青年海外協力隊員やシニア海外協力隊員、いわゆるJOCVの方々が活躍されていました。恵まれた環境とは言えない途上国で支援活動に従事するJOCVの方々は、先述した顔の見える支援という意味でも非常に大きな役割を果たしております。
 例えば、クスコで視察した日本語学校では、学生から、いつか日本に行きたい、日本で生活してみたいとの声を聞くことができ、深い感銘を受けました。こうしたことも、支援に携わるJOCVの方々の真摯な活動なくしては実現しなかったと思います。
 しかし、活動の重要性にもかかわらず、昨今JOCVへの応募人数は減少を続けているのが実情です。こうした状況を打開するには、活動終了後の支援を一層充実することが有効ではないでしょうか。例えば、経験を生かせる企業への就職に対し十分なサポートを行うほか、海外の教育機関への進学についても積極的な後押しをすべきです。
 こうした取組は、JOCVへの応募増加を図るという意義に加え、国内企業への優秀な人材の供給や、国際機関で働く日本人の増加などにもつながる効果を持ちます。このような観点を踏まえ、JOCVに対する支援の充実に万全の対応を要望するところです。
 第五に、保健医療分野における積極的な支援実施の重要性であります。
 現在、新型コロナウイルスが南米で猛威を振るっている状況を見ても、保健医療分野での支援拡大は急務であります。
 今回、ペルーでは、国立障害者リハビリテーションセンターや日系人協会百周年記念病院を視察し、日本の援助が現地の福祉、医療水準の向上に寄与してきたことを目の当たりにしました。現地での説明では、機材供与だけでなく技術面での支援にも謝意が示されたほか、多くの現地の方が施設を来訪してリハビリや療養をされている実情にも触れ、この分野での援助はあまねく人々の生活改善に貢献すると思いを強くした次第です。もちろん、ペルーのみならずアルゼンチンにおいても、先述のように保健医療分野での日本の援助に対する期待は大きなものがあります。
 言うまでもなく、こうした分野における日本の技術水準は世界に誇るべきもので、途上国に対する貢献を通じ人類共通の課題解決へ取り組むことが日本に求められていると考えます。現下の情勢で、日本の支援が多くの人々の健康確保に役立っていることを期待するとともに、今後も保健医療分野での貢献を力強く進めていくことを求めます。
 最後になりますが、今回の両国への派遣に当たっては、外務省、JICA、JOCV、現地の日系社会関係者、アルゼンチン、ペルー両国政府並びに視察先の関係者の方々に多大なる御協力と御尽力をいただきました。改めて心より感謝いたします。
 今回の視察を通じて、我々は日本外交における中南米の戦略的重要性を再確認することができました。今後、本日申し述べた観点で支援を実施するとともに、中南米におけるODAの更なる充実を期待し、第四班の報告といたします。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 120114580X00620200601_013

発言者: 堀井巌

speaker_id: 26327

日付: 2020-06-01

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等に関する特別委員会